ディズニー総チェック 評論

【映画記事】『シュガー・ラッシュ』ーなんでも「ディズニファイ」できちゃいますー【ディズニー総チェック】

2021年6月12日

 

今回も「長編ディズニーアニメーション」を公開順に鑑賞し、評論していく「ディズニー総チェック」

今日は、通算52作品目『シュガー・ラッシュ』を深堀りしていきたいと思います。

 

 

この作品のポイント

  • どのような題材も「ディズニファイ」可能。
  • 「なりたい自分」と「現実の自分」の悩み。

『シュガー・ラッシュ』について

基本データ

基本データ

  • 公開 2012年
  • 監督 リッチ・ムーア
  • 脚本 フィル・ジョンストン/ジェニファー・リー
  • 声の出演 ジョン・C・ライリー/サラ・シルバーマン ほか

あらすじ

長年ゲームセンターのゲームの中で悪役を演じ続けてきたラルフ

本当の自分は悪者ではなく、心優しきヒーローなのだとみんなに認めてもらうため、アクション満載の冒険へと飛び出す。

他のゲームの世界でラルフは、ちょっと生意気なひとりぼっちの少女ヴァネロペ・フォン・シュウィーツをはじめ、今まで知ることのなかったキャラクターたちと出会う。

ある日、本物の悪者が現れ、世界に崩壊寸前の危機が迫る。

ゲームセンターの運命はラルフの大きな手にゆだねられた。

ディズニープラスより引用

もはや何でも「ディズニファイ」出来る!

題材の自由度が広げる

 

今作はゲームの世界がテーマとなっているのが特徴だ。

 

我々の知らぬ間に「ゲームセンター」のゲーム内のキャラクターたちは自我を持っており、自由に行動をしている。
この設定自体は非常に『トイ・ストーリー』的だ。
つまり、身も蓋もない言い方をすると、今作は非常に「PIXAR」的な作品だといえるのだ。

 

 

 

この構図をどう捉えるかだが、実は「ディズニー」「PIXAR」の合併後、面白い事が起きている。
それは、「ディズニー」が「PIXAR」的な作品を作り、「PIXAR」は割と「独自路線」で作品作りをしているということだ。

 

もちろん「新生ディズニー」は「プリンセスもの」「動物もの」「世界の童話」など、これまでの路線に沿った作品も多く制作している。
だが、『ボルト』や『シュガー・ラッシュ』のように、「PIXAR」が制作しそうな作品も公開している。

 

方や「PIXAR」はというと、たしかに人気タイトルの続編(『トイ・ストーリー4』『ファインディング・ドリー』など)を制作・公開しているが、最近は非常に「チャレンジング」な作品が多い。

例えば『ソウルフル・ワールド』や、今夏公開の『あの夏のルカ』
一見すると、「それは面白いのか?」と疑問を抱く、設定や世界観の作品を多く制作・公開しているのだ。

 

 

つまり現状はこのような構図になっている。

 

 

  • ディズニー・・・伝統的作風の作品/従来「PIXAR」が制作していた系統の作品
  • PIXAR・・・チャレンジングな設定・世界観の作品

 

 

なので、現状の体制としては「ディズニー」では「外さない」作品。
「PIXAR」は「挑戦」という意味合いの作品。

このような棲み分けになっているといえる。

 

 

恐らくこれは「PIXAR」で「成功」した要素は「ディズニー」に還元。
「PIXAR」はどんどん挑戦する土壌になっているのではないだろうか?

 

 

つまり、ディズニーで今、語れる作品の系統が増えてきているとも言えるのだ。
ちなみに、少し先の話だが『ベイマックス』など「マーベル」系統も原作に作品制作するなど、その幅はどんどん拡充していっている。

 

そして重要なのは、そのディズニーで語られなかったタイプの作品も、つまり今作も大変おもしろいということだ。

それが何を意味するかと言うと、これまでの「ディズニー」が制作しなかったタイプの作品。
これらもキチンと「ディズニー」は「ディズニーらしく」見せることが出来る、つまり幅の広さを手に入れたということだ。

 

つまり、「ディズニー」は現状どのような題材の作品だったとしても、それを「ディズニーらしく」それすなわち「ディズニファイ」して見せること出来るようになったということだ。

 

 

 

ポイント

✅ディズニーの作品の幅の広がりを感じさせる作品である。

 

 

「なりたい自分」「現実の自分」

認められない2人の邂逅

 

今作で強烈に描かれるのは「なりたい自分」「現実の自分」のギャップについてだ。

 

 

「フィックス・イット・フェリックス」というレトロゲーム内の登場人物であるラルフは、そのゲーム内では「悪役」と設定されている。

そんな彼の望みは、自分も「ヒーロー」になりたい、というものだ。
それは、他人から認めてもらいたいという欲の現れだとも言える。

しかし、彼は「悪役」だ、同ゲーム内のヒーロー、「フィックス・イット・フェリックスJr」とは違い、彼は「破壊」という役目を担わされている。

 

 

深堀りポイント

おもしろのは、冒頭、同じ悩みを抱えていたであろう、様々なゲーム世界の「悪役」が一同に介する「セラピー」が行われているシーンだ。
そこではラルフ以外の「悪役」は、なんとか立ち直り、「今の自分=悪役」を肯定して生きている。

 

 

 

そして、もうひとりの主人公「シュガー・ラッシュ」というゲーム内キャラクターの「ヴァネロペ・フォン・シュウィーツ」もまた、「レーサー」になりたいという願いを持っている。
しかし、彼女は「不具合」を抱えており、そのため、その望みを叶えることが出来ないのだ。

 

今作は、この2人に対する周囲の登場人物の風当たりが、メチャクチャリアル。
これは上手いということだが、正直見ていて「胸糞悪い」レベルで、描かれるのだ。

 

そんな、自分たちの住む「ゲーム」でのけ者にされた2人が出会うのが、今作のメインストーリーだ。

 

 

ポイント

作中で基本、ヴァネロペは「生意気口調」でラルフと会話する。
これでも相当な生意気娘っぷりだが、日本語版では非常にマイルドになっている。

 

 

この2人は多くの共通点がある。
一つに「ゲーム内」で、他者から爪弾きにされていること、そして「今の自分に納得していない」点だ。

この2人の悩み、特に後者はある意味で現実に「我々」も感じる「悩み」と近い。

 

 

ようは「自分が思い描いている理想」と、目の前にある「現実」が異なり過ぎているのだ。

 

 

編集長
こういうことは、仕事をしていたら、時々考えたりしちゃうものではないだろうか?
自分の「理想」とすることと「現実」が違うこと、そんなことに悩んだりしないだろうか?

 

これは「PIXAR」と合併後の「新生ディズニー」の特徴なのだが、今までならば「描かれなかった」ことを描いている。
つまり「現実」にも起こりうる悩みを、ディズニーは作品に落としこんでいるのだ。

 

それはある意味で「ディズニー」の描いていることが「現実に即さなくなった」
意地悪な言い方をすると「夢見心地」な作品(=安易なプリンセスもの等)が、受け入れられなくなってきたことによる反動とも言えるのだ。

 

 

これまでの総チェックでも評論してきたが、ジョン・ラセターがディズニーのCCOに就任してからの作品は、このように過去の「ディズニー的」な要素を批評する側面。
今ままで取り入れなかった価値観を取り入れている。

それこそが、「新生ディズニー」
つまり、新時代にディズニーが生き残る唯一の方法だったのだ。

 

 

 

ポイント

✅「現実」と「理想」に悩むこと、親近感すら湧く設定。

✅過去の「ディズニー」では描きようもなかったテーマ。

ささやかな自己実現

 

今作は、「ヒーロー」になりたいと願うラルフの、ある意味で身勝手な願いが暴走することで展開される。

「ヒーロー」に認められるには「メダル」が必要。
その「メダル」を手に入れるため「ヒーローズ・デューティ」という別ゲーム世界に行き、そこで非合法的な方法で彼は「メダル」を手に入れる。

そこで、このゲーム内の敵キャラである「サイ・バグ」と共に運悪くゲーム内から飛び出して、「シュガー・ラッシュ」に墜落する。

 

この作品の全ての元凶はラルフなのだ。

正直、この「身勝手さ」にノレないという人には、今作はきついかも知れない。
だけど、これも前述した、「なりたい自分」と「現実」の自分のギャップに悩まされた、結果だと考えれば、、まぁ溜飲も下がるのではないでしょうか?

 

しかし、ここでラルフが出会うヴァネロペは、ある意味でもっと不遇だ。
彼女はバグ持ちで、そのため彼女はゲーム内世界で光を浴びることのない、日陰者だと言える。

だからこそ、周囲のキャラから、イジメを受けてしまっている。
このシーンもリアルで、残酷なイジメシーンだからこそ、ここも相当見ていて辛い場面となっている。

 

ある意味で彼女は「シュガー・ラッシュ」では役目もない存在だ。
ラルフのように「悪役」であることに「悩む」ことも出来ない、「存在しない者」として扱われている。

これはラルフの立場よりもキツイと言えるのだ。

 

 

だからこそ、ラルフは「シュガー・ラッシュ」世界で孤独に過ごす彼女の痛みに寄り添うことになる。

今作はそんな「はぐれ者同士」が、親友となっていく過程を描く作品なのだ。

 

 

そして、今作では最後に、これまで「ヒーロー」になるという「形」として「メダル」に固執していたラルフが、ささやかながら自己実現をする。
つまり、「メダル」が重要なのではない、「誰かのために」という思いが、ラルフをヴァネロペのヒーローにするのだ。

この「ささやかな自己実現」は、『ボルト』や『トイ・ストーリー』のラストとも非常に近いものになっている。

 

そして最後には、割と全てが綺麗に完結するが、そこは「ディズニー」らしいというか、ご愛嬌というか・・・。
(このあたりも賛否別れるとこではあるとは思いますが)
まぁ、ディズニーらしいバランスに帰結しているとは言える。

 

そして、周囲に認められたことで、ラルフも「自分の現実」の姿を、自分自身で肯定する
「悪役」に誇りを持って取り組めるようになるのだ。
でも、これは現実でも、非常に大切なことだとも言える。

 

 

この構図は実は『プリンセスと魔法のキス』で「夢」に固執するな。というメッセージ。
『塔の上のラプンツェル』での、「夢」は「幸せへの道」で、「夢」の先に「夢がある」
そして、今作で「夢」は叶わなくとも、今の自分を「肯定」しよう。

 

 

このように通ずる要素だとも言えるのだ。

 

編集長
ラストでは「悪役」セラピーで、自分に自身を持ったラルフがいるのも印象的

 

 

だからこそ、今作は、大人にも刺さる。
むしろ「勤め人」にこそ刺さる作品だと言えるのだ。

 

そして、この「層」に刺さる作品をディズニーがつくっていること、これこそ、まさに「新生ディズニー」最大の特徴だといえるのだ。

 

 

 

ポイント

✅「理想」の自分になれないけれど、でも「今」の自分を「肯定」することも重要。

✅実は共通する軸が『プリンセスと魔法のキス』からつながっている。

バグは直さない

 

今作の最後にヴァネロペは、本当の自分。
つまり、「シュガー・ラッシュ」世界での「プリンセス」の地位を取り戻すのだが、彼女の「バグ」「ノイズ」は決して直ってはいない。

 

 

これは『アナと雪の女王』でのエルサにも通ずるが、決して「他人との違い」は「直す・治す」べきものではない、つまり「個性」として自己肯定しようというメッセージでもあるのだ。

 

そう考えると、次作の『アナと雪の女王』は、この点をさらにフォーカスしていると言える。
これこそまさに現代の様々な「価値観」をも受け入れていこうという「ディズニー」からのメッセージだとも言えるのだ。

 

 

編集長
まぁゲームバランス的に、バグで急に勝てちゃうとかはさ・・・と言いたくならないでもない笑

 

 

このように作品を「点」で見るのではなく「線」で見る。
だからこそ「ディズニー総チェック」はおもしろい!!

 

 

ポイント

✅次作では「人との違い」にフォーカスしている、これが「新生ディズニー」の大切な価値観だ。

 

 

AKB48が、過去になりつつあるので、
これが「シュガー・ラッシュ」がゲームとして、
若干古くなっている、という演出にもなっているのが良い

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

普通におもしろい優秀作品!!

ただ、続編にはかなり言いたいことがあるので、覚悟しとけよ!!笑

まとめ

 

ということで『シュガー・ラッシュ』は、「ゲーム」というこれまでのディズニーでは、テーマにしなかった要素で攻めている。

そしてその作中で描かれる「理想」と「現実」の間でもがく構図も、また「新時代」に即した内容となっているのだ。

 

 

そして、ささやかな「自己実現」でヴァネロペにとってのヒーローになれたラルフ。
彼は、こうして自分を自分で肯定して、「悪役」という役目に誇りを持てるようになったのだ。

これは、ある種「理想」の自分になれずとも、今の自分を肯定してもいいのだ、というメッセージだといえる。

そして、これもまた「夢は叶う」という単調になりがちだった「ディズニー作品」のこれまでの系譜に終わりを告げる、つまり「新時代」に即したものだと言えるのだ。

 

 

「夢」「理想」は「呪い」にすらなる。
これらが叶わぬから不幸なのか?

 

そうではない。

 

 

ディズニーはこれまで積み上げた「夢叶う」=「成功」という構図を刷新していく。
今作もまた、こうした要素を持っているのだ。

 

 

まとめ

  • これまで、語らなかった題材・テーマで勝負した作品。
  • 「夢叶う」こと、それだけではないというメッセージが「新生ディズニー」らしいと言える!

 

 

映画評 評論

2021/7/22

【映画記事】『竜とそばかすの姫』ーネットと現実ー

  今回は久しぶりに「新作映画」の評論です! ということで今日は、細田守さんの新作映画『竜とそばかすの姫」を見てきましたので、早速深堀り解説していきたいと思います!     今作のポイント 細田守の総決算!! 作り手は、ネット・SNSが悪いものではない、それ以上に「人間を良くする」と信じている! 今の「現実」と「ネット」の複雑な関わりが、物語を複雑にしている。 目次 『竜とそばかすの姫』について基本データあらすじインターネットの可能性を信じる男、細田守細田守の足跡ネガティブではなく、ポジティブに「インター ...

ReadMore

ディズニー総チェック 評論

2021/7/10

【映画記事】『ズートピア』ーディズニー史上、最もパーフェクトな作品ー【ディズニー総チェック】

  さて、今回も「長編ディズニーアニメーション」を公開順に鑑賞し、批評する「ディズニー総チェック」をやっていきたいと思います! ということで今日は通算55作品目の『ズートピア』を取り上げます。   とにかく「パーフェクト」「非の打ち所がない」作品なので、語るのが大変ですが、今日も頑張って深堀りしていきたいと思います。   今作のポイント 過去のディズニー作品の「負」を精算する作品。 ストーリー、物語構成、テーマ、全てが素晴らしい! 「新生ディズニー」の到達点! 目次 『ズート ...

ReadMore

ディズニー総チェック 評論

2021/6/28

【映画記事】『ベイマックス』ーDIY精神こそ「マーベル」【ディズニー総チェック】

  今日も「ディズニー長編アニメーション」を公開順に鑑賞・評論をしていく「ディズニー総チェック」 ということで、今回は通算54作品目『ベイマックス』について深堀り解説していきたいと思います。   今作のポイント 原作が「マーベル・コミック」であるということ。 「ヒーロー映画」と見るか、「ハートフル映画」と見るのか? DIY精神こそ「マーベル」である。 目次 『ベイマックス』について基本データあらすじ特筆すべきは原作が「マーベル作品」であるということ「ディズニー帝国」の歩み原作は「マーベ ...

ReadMore

ディズニー総チェック 評論

2021/6/22

【映画記事】『アナと雪の女王』ー史上最高傑作誕生ー【ディズニー総チェック】

    さて今日は「長編ディズニーアニメーション」を公開順に評論していく「ディズニー総チェック」 今回は通算53作品目、そして、現状「ディズニー史上最高傑作」の一本と誉れ高い『アナと雪の女王』を徹底的に深堀りしていきたいと思います。   思えば、人生で最初に「映画評論」的なことをした作品も、『アナと雪の女王』で。今にして思えば、この作品を語ったところから、「映画を見る」だけでなく、そのあと「評する」楽しさを教えてくれたのが、この作品なんですよね!   ということで、 ...

ReadMore

映画評 評論

2021/6/15

【映画記事】『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』ーできるだけ、わかりやすく深堀りー

  さて、今日は久々に新作映画の深堀り解説をしていきたいと思います。 ということで紹介するのは『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』です!   この作品のポイント シャア・アムロの思想を受け継ぐのが、ハサウェイ。 しかし、理想と現実に隔たりがある。 それでも「テロ」を起こして世界を変革しようとする男の物語。 目次 『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』について基本データあらすじシャアとアムロを継ぐ男簡単に今作までを振り返る大きすぎる思想と、現実のギャップ今作を振り返ってまとめ 『機動戦士ガンダム 閃光のハ ...

ReadMore

-ディズニー総チェック, 評論
-

Copyright© Culture Club , 2021 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.