映画評 評論

【映画記事】「哀愁」徹底解説

2020年5月11日

「モノクロ映画」「古い映画」だと敬遠していると、素晴らしい映画体験の機会を逃す。
それは勿体ない!
という思いで、今日もお届け!

今日は映画史に残る名作「哀愁」のご紹介をします!

 

この記事を読むと

  • 悲しき「すれ違い」の物語であることがわかる
  • 観客の心情を大きく動かす、「巧み」な「視点移動」の凄さに気づく。
  • 昔の映画が見たくなる。



「哀愁」について

基本データ

  • 公開 1940年(日本 1949年)
  • 監督 マーヴィン・ルロイ
  • 脚本 S・N・バーマン/ハンス・ラモー/ジョージ・フローシェル
  • 原作 ロバート・E・シャーウッド
  • 出演 ヴィヴィアン・リー/ロバート・テイラー/ヴァージニア・フィールド 他

▼あらすじ▼

空襲下のロンドン。

英国将校ロイ・クローニンはフランス前線に赴く前日、ウォータールー橋でバレリーナのマイラと出会う。

瞬く間に恋に落ちたふたりは結婚を約束するが、ロイがフランスに渡って数日後、マイラは彼の戦死を新聞で知る。

絶望感から“夜の女”へと身を落としていくマイラ。

しかし、1年後、ふたりは思わぬ再会をする・・・。

「YouTubeムービー」概要欄より抜粋

というわけで、今日もネタバレを辞さずに行ってみよう!

悲しい勘違いに涙

展開のはやさに驚き

 

この作品は、主人公の英国将校のロイが、対独開戦(第二次世界大戦)の日に、過去を振り返る形で語られる。

時は遡り、第一次世界大戦中。
ドイツ軍の空襲の警報が鳴り響いていた頃、ロイとマイラは出会う。

そこからデート。
そして婚約に向けての行動をするという展開は、正直早すぎる。と思うのだが・・・。

 

時代は戦争中だ。
いつ愛するロイが戦場に赴くことになるのかわからない。
この時間は、マイラにとってはかけがえない時間だったのだ。

 

そして、ロイは戦地に赴くことになる。
そして彼が死んだとマイラは聞かされるのだ。

 

だが、ここで「死んだ」ということに対して、我々観客は「そうではない」ことを知っている。
冒頭のロイが過去を振り返るという描写があるからだ。
これが、この物語の「悲劇性」を強めるのだ。

 

ポイント

✅展開は非常にスピーディーである。

✅ロイの「死」を我々は「誤報」と知っているからこそ、この後の展開が辛い。

分かっているからこそ、辛い

その後の展開は急転直下だ。

 

結婚間近という幸せな瞬間からマイラは地獄に叩き落とされる。

 

彼女は元々バレリーナだったが、彼と結婚するために団体を脱退している。

全てを投げ打ってでも、愛する彼と添い遂げたい、マイラは本気だった。

だが、そこにきた「ロイの死亡の知らせ」
マイラと一緒に暮らすキティ(彼女を庇い一緒に団体を脱退した)、2人は仕事見つからず、貧困に陥ってしまう。

 

「彼の死」「貧困」
「生きていく希望」と「生きていく術」を失った二人は、生きるために「夜の女」へと身を落とすことになる。

 

マイラの初めての「夜の相手」は皮肉にも、ロイと初めてあった思い出の場所。
ウォータール橋という悲劇なんだ

 

だが、我々はロイが生きていることを知っている。

だからこそ、マイラの行動が辛い。

真実を知っている我々は「やめてくれ」と悲痛な思いを掻き立てられる。
だが、今作品はさらにここから、別の角度での「掻き立て」を我々に投げかけてくる。

 

ポイント

✅事実を知る我々、知っているからこそ「悲劇性」がどんどん増していく。

幸せになってほしい、だからバレないで・・・

見出しの通りの展開が、これから訪れるんだ

だが運命の悪戯が訪れる。

いつものように客引きのために帰還兵を誘う、すっかり「夜の女」となったマイラ。

その帰還兵の中にロイがいたのだ。
再会後、2人は、恋心を以前よりも深める。

だが、ロイは知らないが、我々は知っているのだ。

彼女は「汚れてしまっている」ということに。
そのことを当然、心苦しいとマイラも思っている。

 

何度も打ち明けようとした。
だが、彼との幸せがほしいと願い。
過去のことを隠すことになる。

ここで、僕らは今度は過去の出来事が「バレないのか?」というハラハラを味わうことになる

 

マイラとロイの間はそのまま上手くいき、いよいよ婚約。
二人は、彼の実家にあるスコットランドに赴くのだ。

 

ポイント

✅マイラの過去がロイにバレないか!? という点でハラハラさせられる

マイラの嘘をつく辛さに心えぐられる

ロイの実家を訪れたマイラ。
ここで、彼女は、クローニン家の方々から「いい子」「素晴らしい」と褒め称えられる。

 

これはヴィヴィアン・リーという役者の持つ
圧倒的存在感と説得力のなせる技だ!

 

自分を「善良」「純潔」と信じているクローニン家の人々に対して、マイラは後ろめたさを感じて、いたたまれなくなる。

 

褒められれば褒められるほどに、自分が最低なことをしている。
クローニン家の人々を裏切っている。
嘘をつくことに負い目を感じるマイラ。

あの辛い過去の出来事が、彼女を苦しめるのだ。

そして、いたたまれなくなり、ついに過去のことをロイの母に打ち明ける。

 

だがロイの母は、そんな彼女の辛い過去を知ってなお、優しい言葉をかける。

気づいてあげられなかったとことへの謝罪だ。

 

この優しい言葉はさらに彼女を追い詰めたんじゃないかな?

これは僕の考えだが、マイラは罵られたかったのかもしれない。

そうすれば「憎しみ」という感情を持って逃げることができたから。

だけど、かけられたのは「優しい言葉」

こんなにも優しい人々を騙そうとしていた。そう考えたに違いない。

 

彼女は、これ以上クローニン家の人々を裏切ることができない。
そう考え、彼らの元を去ることを決めるのだ。

 

ポイント

✅先ほどまでは「バレないで」と思い物語を見ていた。

✅徐々に「バレない」ことで、マイラの後ろめたい気持ちに共感するようになってしまう。

✅「バレない」それが、マイラの苦しみになるのだ。

悲劇

意味の違う「さよなら」

その後、マイラは最後にロイとキスをする。

これから永遠に愛しあえると信じているロイ。

「これからは一心同体」

かつてマイラから手渡されたお守りを、二人で持とうと提案するロイ。

 

だがマイラの心は決まっていた。

 

「おやすみ」と夜の挨拶をするロイ。
「さようなら」と返すマイラ。

眠る間、その些細な時間すら「永遠」に感じる。だから”さよなら”なのだとマイラはいう。

それにロイも、「さよなら」と返す。

 

「さよなら」
この言葉が、二人の間では意味が大きく違う。

 

ロイには「再会」がある、だが彼女にはない。

 

そして彼女は夜更けに家を出る。
お守りをロイに返して・・・。

真実を知るロイ

その後、ロイも後を追いかけ、マイラとキティが暮らしてた家にいく。

そこで、2人は彼女がいきそうなところを探す。

その場所の雰囲気から、ロイはマイラが自分が戦地にいた間、何をしていたのか、その真実を知る。

 

だが、それでも彼女を必死に探す。過去がどうであれ彼は、マイラを心の底から愛している。
しかし、同時に「もう二度と会えない」ことを心の中で悟るのだ。

マイラの最期

かたやマイラはどうしているのか?

当て所なく彷徨う彼女は、思い出の場所「ウォルター橋」に来ていた。

 

彼女は愛する人を失った。
だけど「愛している」それは変わらない、だからこそせめて思い出の地に足を運んだのだろう。

 

マイラは一人思い悩む。
生きるために「夜の女」に戻ることはできない、彼を愛しているのだ。
だから、もう愛のない行為をすることも、自分にも嘘を付きたくない。

 

だけど、彼を騙して一緒になれない。

 

もはや、彼女に残された手段は一つしか残ってなかった。

彼女はふらふらと車道に飛び出し、トラックに跳ねられ自殺するのだった。

 

追い詰められた彼女は「死」を選ぶシーンは辛すぎる

 

その後、時は冒頭の時間軸に戻る。

ロイはあれから、会えなくなったマイラとの思い出、そして「お守り」を今も大切にしているのだ。
こうしてこの悲しい物語は幕をおろすのだ。

 

ポイント

✅最後の「さよなら」は2人の間で異なる意味を持つ。

✅マイラはロイを「愛する」からこそ「死」を選ぶしかなかった。

✅悲劇が胸に刺さる。

モノクロでも色あせぬ輝きに注目

画面の粗さにも負けない魅力

正直この作品、かなり経年劣化からしているのか?

画面に粗が目立つ作品だった。それは認めざるを得ない。

いくつかのシーンで光のあたり具合が強すぎるのか、マイラの表情などが読み解けないシーンもあった。

 

だけど、それが逆に「魅力」「輝いている」のかとも思えてくる。
これも「ヴィヴィアン・リー」の力であることは間違いないのではないか?

モノクロだろうと、そんなものは関係ない。
溢れ出る魅力をしっかりとカメラが切り取っているのだ。

 

それが時代を超え、そして僕らが目にする。

映画とは素晴らしい。
今作品は僕に、このことを再確認させてくれた。

今作を振り返って

ざっくり一言解説!

思わずスクリーンに向かって叫びたくなる!

マイラに「ロイは生きてるよー」って叫びたくなる

まとめ

情報伝達技術の未発達な時代。また戦局の混乱。
これらが招いた「悲しい勘違い」が産んだ「悲劇」の物語。

これは、誰の胸にも刺さるのではないだろうか?
過去を隠し、幸せになろうとした。
だけど嘘をつくのが辛い。

それでも、そんな自分に「優しくしてくれる」存在がいた。

 

本論でも述べたが彼女は「嘘つき」と、罵られた方がよかったんじゃないか?
そうすれば、少なくとも「憎しみ」という感情を糧に生きていけたのかも知れない。

 

でもロイの家族、クローニン家の人々は優しかった。
悲しいことに、それがマイラを追い詰めたのかも知れない。

そして、ロイとの悲しき「さよなら」
これを悲劇と言わずして、なんと表現すればいいのか?

さらに度々、演奏される「蛍の光」が、この物語に深みを与える。
印象的なBGMとして脳裏にこびりついて離れない。
それほど印象的な使われ方をしている。

 

 

非常に「悲劇的」ながら、素晴らしい一本に出会ってしまった。

まだまだ、過去の名作を鑑賞しなければならない・・・。
そう思わされてしまった。

 

まとめ

  • これぞ「悲劇」としか言いようがない。
  • 過去を隠したい気持ち。
    嘘をつくことで、後ろめたい気持ち。
    そのどちらの「気持ち」にも深く共感をしてしまう。

と、いうわけで今日も読了お疲れ様でした!
また次回、お会いしましょう。

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