
2021年公開される「シン・ウルトラマン」
この作品は間違いなく話題騒然になるはず。
ならば、その前に「ウルトラマン」が今どうなっているのか?
分かっておけば、さらに深く楽しめるはず!
ということで今回は「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」を評論します。
この記事を読んでわかること!
- 「ウルトラ銀河伝説」から「ウルトラシリーズ」の方向性が変わったことが理解できる!
- 「シン・ウルトラマン」の方向性がわかるかも・・・、知れない。
- 「ウルトラシリーズ」への理解度が深まる!
必ず「シン・ウルトラマン」は話題になるんだから
今から「ウルトラマン」を予習しておこう!
目次
「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」について
基本データ
- 公開 2009年
- 監督 坂本浩一
- 脚本 岡部淳也/樫原達郎/小林雄次
- 出演 南翔太/黒部進/森次晃嗣/小西博之 他
「坂本浩一」という名前は覚えて帰ってくださいね
▼あらすじ▼
地球から遠く離れたウルトラマンたちの故郷、M78星雲・光の国。
まばゆく輝くプラズマスパークタワーの光を闇が包んだ。
それは、復活した悪の戦士ウルトラマンベリアル(声:宮迫博之)の仕業だった。
大昔、ウルトラの一族でありながら暗黒の力に魂を奪われ、光の国に反旗を翻したベリアルは、ウルトラマンキング(声:小泉純一郎)によって宇宙監獄に幽閉されていた。
だが、封印を破って復活。
さらに、強大な力を持つレイブラッド星人(声:蝶野正洋)から授かった脅威のアイテム“ギガバトルナイザー”で100体もの怪獣を意のままに操り、破壊の限りを尽くしてゆく。
立ち向かうウルトラ戦士たちだったが、ベリアルの前に次々と倒れてゆく。
さらに、続々と蘇るかつての強敵怪獣たち。
全宇宙に危機が迫る中、傷ついたウルトラマンメビウス(五十嵐隼士)は地球の怪獣使いレイ(南翔太)に協力を求める。
ベリアルと同じ“レイオニクス”の能力で怪獣ゴモラとともに戦うレイは、求めに応じて光の国を取り戻すために立ち上がる。
そして、辺境の惑星で厳しい修行を積んでいた新たな戦士ウルトラマンゼロ(声:宮野真守)も、故郷の危機に駆けつける……。
キネマ旬報データベースより
ここからはネタバレをしながら、解説していくよ
「神」から「人」へ

一度、「完全に終わった」シリーズであるという前提
この作品について語る前に、さらりと「ウルトラシリーズ」がここまでどうなっていたか?
という点を見ていこう。
今作の前作にあたる2008年に公開された「大決戦! 超ウルトラ8兄弟」
この作品で、ウルトラシリーズは「一旦の終わり」を迎えたと言っても過言ではない。
メタ視点を取り入れた作劇。
そして「昭和」「平成」という今までは交わることのなかった「ウルトラシリーズ」の共演。
まさに、この作品は「総決算を目指す」という言葉通りの作品となった。
V6の長野博さんが、ダイゴ(ティガ)を再演するのでも話題になったね
だが、同時に「超ウルトラ8兄弟」は、「これ以上ウルトラシリーズは作れないんじゃないか?」「今までの路線では少なくともシリーズの延命は不可能だ」
と思わせるのに、十分インパクトのある作品だったのだ。
このような前提があり、「ウルトラ銀河伝説」はシリーズのリブート的要素を持たざるを得なかったのだ。
大幅な路線変更/3つの新要素
スペースオペラ(スター・ウォーズ)化
今作を見ると顕著なのはまず作劇が完全に「スペースオペラ化」している点だ。
もっというと「スター・ウォーズ化」していると言っても過言ではない。
我々が想像する「ウルトラマン」といえば「光の国」から「地球」にやって来て怪獣を倒す。
僕が子どもの頃、慣れ親しんできたのは、そういう物語だ。
だが今作では「地球」は出てこない。
ずっと「光の国」そして「怪獣墓場」という宇宙空間を舞台にしている。
そして「宇宙空間」などの描写、これも大きく今までと一線を画す作りとなっている。
それが全編グリーンバックでの撮影によるCG描写である。
従来のシリーズのようにミニチュアを作って、撮影を行っていないのだ。
それに伴い、アクション面も大きく変化をしている。
地球を舞台に巨大なウルトラマンが戦闘をする。
そのために重量感を感じるアクションがシリーズの醍醐味だったが、それも廃止。
今作ではワイヤーアクションを多用し。
縦横無尽にウルトラマンが重力的なものを感じさせずに、戦闘を行うのだ。
「スター・ウォーズ化」という点でいうと、ウルトラマン達がマントを羽織っていたり
人間体に変身した際の服装は「ジェダイ」を彷彿とさせる
さらに、音楽面でも「スター・ウォーズ化」は明らかだ。
これを手掛けるマイケル・バータがジョン・ウィリアムスを意識しているのは、間違いない。
ここまでも十分な路線変更だが、さらに大きな変更点が今作にはある。
「神的」要素の喪失
前述したように、ウルトラマンは従来「地球」を怪獣から守る
「神秘的」いわば「神」的な存在として描かれてたよね
今作からの「ウルトラマン」は神秘性を剥ぎ取られている。
彼らも我々のように「悩み」「間違え」「成長」する存在なのだ。
言い換えると非常に「人間的」になったとも言える。
これは、今作で初めて語られた「ウルトラマン」という種族がどうやって生まれたのか?
という設定の追加からも明らかだ。
そもそも数万年前、ウルトラマンは我々「人類」と同じ姿をしていたということ。
それが「プラズマタワー」の光を浴びて「突然変異」してあのような姿になった。
つまり「ウルトラマン」も元々は「人間」だったのだ。
だからこそ、彼らの内面は「神」でもなんでもない、我々と変わらない存在なのだ。
ダークサイドに落ちたウルトラマン/二世ウルトラマンの登場
悪のウルトラマン「ベリアル」
こうした「スペースオペラ化」「神的要素の喪失」という2点。
これをさらに深掘りするキャラクターの登場もこの作品を語る上では欠かせない。
まずは「悪に落ちたウルトラマン」である「ベリアル」の存在だ。
彼は力を求めて「プラズマスパーク」の力を欲し、追放される。
その後、復讐のために怪獣を引き連れ「光の国」を襲うのだ。
しかし、敗北し牢獄に封印されてしまう。
そんな彼が復活し、銀河に危険が迫る。それが今作のメインシナリオだ。
ちなみにこれも「スター・ウォーズ」でいう「シス」的なポジションだと言える。
ベリアルは「力を欲する」存在だ。
これこそ、まさに「神秘性を奪われたウルトラマン」を象徴している。
これまで同様ウルトラマンが「絶対的正義の象徴」
だったなら、このキャラは登場しなかっただろう!
セブンの息子「ゼロ」
そしてもう一人が「ウルトラマンゼロ」
ウルトラセブンの息子というキャラの存在だ。
そもそも「息子」というのが「人間的」という要素の極みのようなものだ。
そのゼロもまた、ベリアルのように「力を欲する」のだ。
そして彼も「ウルトラ戦士」の称号を剥奪され、「光の国」を追放される
だが、彼はそこから「真の強さ」とは何かを学ぶ。
「失敗」から「学び」そして「成長」する。
彼の存在は、まさに「人間的ウルトラマン」の象徴なのだ。
ベリアルとゼロは対を成す関係性だね
さらに「強い相手と戦いたい」という「孫悟空」的な思考。
そして精神年齢は「高校生」
明らかにこれまでの「ウルトラマン」とは一線を画している。
さらに特徴的なのは、これまで「シュワ」など、掛け声?、しか戦闘中発しない。
それがウルトラマンのお約束だった。
しかしゼロは違う、軽口を叩き相手を挑発するのだ。
人間には理解できない「声」を発することで、神秘性が担保されていたウルトラマン
戦闘中に「ペラペラ」しゃべることで、その神秘性を無くしているのだ
その後のシリーズへの影響

まずは今作の総論
ていうか、そもそも今作をどう思っているか。だね
狙いは概ね上手くいっている良作
新しい要素の提示をして見せた「ウルトラ銀河伝説」
僕は概ね上手くいっていると思っている。
逆にここまで「従来」のシリーズ方大きな方向転換をしなければ、やはりシリーズの存続は難しかったと思う。
さらに、これまでは「別世界」として設定されていた「ネオフロンティアスペース」(ティガ・ダイナ)「M78星雲系統」(ウルトラマン〜80、メビウス)など。
これまでのウルトラシリーズを全て「並行宇宙」としてクロスオーバー可能な設定に変更した。
そのことで、今までは設定上ありえなかった、共闘などが可能になった。
これがなければ傑作「ウルトラマンサーガ」も作れなかった。
そのことを考えると恐ろしい・・・。
そして僕が一番評価しているのは、勝利のワンロジックが用意されていることだ
そして、今作は基本的にはウルトラマンの内輪揉めの話しだが、人間も重要な活躍をする。
それが、今まで「ウルトラマンが地球人を守っていた」ことに対する恩返しにもなっていると、僕は思った。
というのも、今作品で最後にベリアルに打ち勝つのにレイ(宇宙人の血を引いてはいるが)という地球人が大きな役割を持つ。
彼がベリアルの武器を利用して、彼の行動を制限する、それが勝利の大きなワンロジックとして機能している。
ウルトラマンにありがちだった、急に光って、理不尽なパワーアップなどではない。
しっかりと「なぜ勝てたのか?」が明確になっているのが、今作最大の良さだと言える。
そして「ウルトラマン」がこれまで地球を守ってくれたおかげで、レイ達の世代まで人類は生き延びることができた。
(本作設定での地球は、宇宙開拓できるほどの遥か未来だ)
そんな人類がウルトラマンたち最大の危機を救う。
これは長年かけてようやく、人間がウルトラマンに恩返ししたと言っても過言ではない。
そこに僕は個人的に感動をせざるをえない。
粗も見受けられる
だが、今作は志は高いし、概ねうまくいっているのだが、それでも粗さも目立つと言わざるをえない。
重力という制限のない宇宙空間。
そこで繰り広げられるウルトラマンのアクションは見応え十分だが、それにしても怪獣の動きなどが、軽やかすぎるのは問題だ。
あと、どの程度のダメージで怪獣は爆発するのか?
それもよくわからない、投げ技で爆発していたりするが、やはり光線で倒してもらいたいと思ってしまう。
忖度するなら「怪獣墓場」から復活したということで、幽霊的な存在だとも
考えられなくもないかなぁ
あと仕方ないが、歴戦の猛者であるウルトラマン達が苦戦する怪獣やベリアルに対して、ゼロがアホほど強い。
これは、新ヒーローを立てるというマーケティング的には理解できる。
だが、それにしたって常軌を逸した強さだ。
そしてウルトラマン側でも重要な役割を担っていたメビウス。
いくら手負いとは言え、乱戦中に観戦してるだけなのもいかがなものか?
ここも忖度すれば、パワー回復してラストのフォームチェンジへの布石だったのかもしれないが・・・。
と、まぁ粗は正直多い作品だと思う。
だが前述したように、僕はやはり「志」「挑戦への姿勢」を評価したいな!
ポイント
✅粗も見受けられるが、概ね新機軸を楽しんで見ることができる、高いレベルでまとまっている作品だと言える。
今作以降、ウルトラマンの人間化が進む
今作が以後のシリーズに最大の影響は「人間化」の部分だ。
この先さらに「ウルトラマン」は人間化していく。
後年作られる「ベリアル銀河帝国」「ウルトラマンサーガ」
今作を合わせて「ゼロ三部作」と銘打ってもいいが、これらでそれはされに加速する。
例えば、ゼロの「2万年早いぜ」という決め台詞、そしてギャグ描写などコミカル演出、それらが目立ってくるのだ。
さらに戦闘中の会話の常習化。
今後のシリーズでは戦闘中「ウルトラマン」は普通にしゃべるのだ。
今の子達は「ウルトラマン」は普通にしゃべると思っているに違いない。
そういう意味では、彼らウルトラマンは大変、身近な存在になってしまったということだ。
そしてそこに当然「神秘性」は介在していない。
さらにこの動きを加速させるのは「二世」の増加だ
先ほど、人間化の最たるものだと言った「二世」の存在。
それがこのあと展開されるシリーズ(「ニュージェネレーション」と呼ばれている)でも増えるのだ。
まずはベリアルの息子シードの存在。
そしてタロウの息子タイガだ。
「血族的」な繋がりを感じる要素の作品が増え、今後もこの流れは加速していくように考えている。
そういう意味で、「人間化」はこれからも続いていくと思われる。
ミニチュアへの回帰
しかし、もう一つの大きな要素であった「スペース・オペラ化」
つまりグリーンバックのCGでの画面作り。
それは、今作の続編にあたる「ベリアル銀河帝国」で使われなくなる。
その後の「ウルトラマンサーガ」や「ニュージェネレーション」シリーズでは、従来の特撮、つまりミニチュアを用いたセットでの撮影が復活する。
そして「地球」をやはり舞台にする。
そういう意味では、そこは従来の僕らが慣れ親しんできたウルトラマンと変わらない。
「地球」を守るのが「ウルトラマン」だというのは、今も昔も共通している。
ちなみに「スター・ウォーズ化」の決着は「ジード」まで持ち越すんだ
いわゆる「ジェダイの帰還」をウルトラマンでやってしまうんだよ
「シン・ウルトラマン」の方向性

間違いなく神秘性の担保は行われる
「シン・ウルトラマン」の総監督を担う庵野秀明は、「大のウルトラマンファン」だ。
そもそも彼の代表作「エヴァンゲリオン」はウルトラマンで描かれる特撮ミリタリズムの影響を受けているのは有名な話。
さらにエヴァでいうと、「ケーブルが外れてからの活動時間が3分」
これは当然ウルトラマンの地球での活動時間だ。
さらにエヴァの全長、猫背姿勢は「初代ウルトラマン」からインスパイアされている。
こんなウルトラマン愛、溢れる庵野秀明。
当然、今までの作品作りには、「昭和ウルトラマン」の影響をモロに受けている。
ちなみに庵野秀明は「帰ってきたウルトラマン」がお気に入り
そんな彼が「大好き」なウルトラマンを描くのなら、間違いなく「神秘性の担保」
つまり、「神的な存在」として「ウルトラマン」を描くはずだ。
そこには、おそらく「人間的」な思考をする余地は見せない。
つまり、「宇宙人」として「理解できない」存在として描く可能性が高い。
「宇宙人」というと、「シン・ウルトラマン」ではウルトラマンの体にカラータイマーがない。
生物的におかしなギミックであるカラータイマーを外すデザイン。
さらに当然だが、着ぐるみ感などは全て排している。
スーツ着脱のために「背鰭」がウルトラマンにはあるが、それもない。
生物としてのリアリティを追求している。
徹底して、ウルトラマンを、生物的、宇宙人的な存在として描くことに重きをおくはずだ。
庵野秀明の大好きな、科特隊による特撮ミリタリズム要素
最近のウルトラシリーズは「地球防衛チーム」が存在しない場合も多い。
当然、庵野秀明はそんなことはしないはずだ。
徹底的に嗜好を凝らした「ミリタリー」描写をするはずだ。
これは現行シリーズが今は全くしていないことで、ここは大きな差別化になるはずだ。
さらに特撮面も、ミニチュアでの撮影をするはずだ。
ここは「シン・ゴジラ」でも見せてくれたように、迫力の映像が期待できる。
さらに、そこに「平成ガメラ三部作」の樋口真嗣も参加する点からも、そこに期待してもいい、それは間違い無いだろう!
怪獣よりも宇宙人
そして過去のインタビューを見る限り、どうやら「ウルトラシリーズ」の怪獣よりも、宇宙人に興味がある庵野秀明。
「災害」のように暴れる「怪獣」ではなく、何かしらの「目的」を持ち地球に侵攻する「宇宙人」
人間と宇宙人の、駆け引きなどが見所になる可能性は多いにある。
そこにどう「ウルトラマン」が絡むのか、そう言ったドラマ展開になることも予想できる。
個人的には「ウルトラセブン」の「ノンマルトの使者」のようなエピソード。
深みのあるドラマになることに期待している。
今作を振り返って
ざっくり一言解説!
今のウルトラマンは身近な存在!
普通に、会話するし、悩む。
ウルトラマンはもう、人間と変わらない存在だ
まとめ
「ウルトラ銀河伝説」は「ウルトラマン」の在り方を大きく変えた一本だ。
そして、この流れは現行のシリーズにも影響している。
そういう意味ではやはり今作が「転換点」として重要な作品であるということは、ご理解いただけたと思う。
また、そうした「狙い」もさることながら、新しいウルトラマン象を確立しようという姿勢。
これを僕は評価したい。
勝利のワンロジックの設定なども、「インフレ化」して勝利という、展開になっていないのも評価できる。
粗も確かにあるんだけどね
そして、こうした流れの逆を「シン・ウルトラマン」は間違いく描く。
「神秘性」「神的」な理解不能な存在としてのウルトラマン。この姿を早く劇場でみたい。
そして「シン・ゴジラ」「シン・エヴァンゲリオン」「シン・ウルトラマン」、「シン三部作」と呼ばれる作品群についても、当ブログで追っていきたいと思う。
まとめ
- ウルトラ銀河伝説から10年以上が経ち、ウルトラマンの人間化は加速している。
- 「シン・ウルトラマン」はそんな「ウルトラマン」を再び「神秘性」を持つ存在として「先祖返り」を図ると思われる。
というわけで「ウルトラマン」に興味が出てきましたか?
今日も読了、お疲れ様でした。
また、次回お会いしましょう