ディズニー総チェック 評論

【映画記事】「トレジャー・プラネット」ーこれぞ、隠れた良作!ー【ディズニー総チェック】

2021年4月18日

 

さて今日は「長編ディズニーアニメーション」を公開順に鑑賞し、批評する「ディズニー総チェック」

今回は「トレジャー・プラネット」を深堀りしたいと思います。

 

 

この作品のポイント

  • これこそ「隠れた良作」
  • ジムとジョンの関係性は「火の鳥(黎明編)」のナギと猿田彦とち近い。
    (こういう関係性が個人的にGOOD)
  • 「アトランティス」の反省を活かした点も多し!

「トレジャー・プラネット」について

基本データ

基本データ

  • 監督 ロン・クレメンツ/ジョン・マスカー
  • 脚本 ロン・クレメンツ/ジョン・マスカー/ロブ・エドワーズ
  • 声の出演 ジョセフ・ゴードン=レヴィット ほか

あらすじ

ロバート・ルイス・スティーヴンソンの不朽の名作に未来の要素を取り入れた作品は、秘密の地図に導かれ、宇宙を旅し財宝を目指す物語。

ジム・ホーキンス少年と陽気な船員たちは、アメリア船長の指揮のもと“運命”を求めて宇宙へ出発。

ジムが宇宙船で出会ったのはサイボーグの料理人ジョン・シルバー
シルバーはジムに友情と夢が持つ力について教えてくれる。

ジムはお調子者のロボット、ベンと変幻自在のモーフの協力もあり、想像していた以上の財宝を発見する。

ディズニープラスより引用

「ディズニープラス」の作品紹介はいつも微妙なんですよね・・・。

きちんと作られた良作である!

「アトランティス 失われた帝国」からのリベンジ

 

今作は宇宙を冒険するSF作品である。

そういう意味では、前々作にあたる「アトランティス 失われた帝国」と非常に似通ったテーマを持つ作品だと言えるのだ。

 

なので、まずは「アトランティス」の反省を活かせているのか?
そこから「トレジャー・プラネット」という作品を紐解いていきたい。

 

ということで結論ですが、「驚くべきほど、よく出来た作品」だし「反省を活かしている」点が随所に見える。

そういう意味で観ていて感動すらさせられる出来栄えになっていた。

 

ではどこが「格段」によくなっていたのか?

まずは第一に「冒険シーン」がキチンと描かれてるという点だ。
馬鹿にしていると思われるかも知れないが「アトランティス」はここが出来てなかったのだから・・・。
そこから考えると大躍進だ。

そして、詳しくは後述するが、この「冒険」がキチンと描かれることで、作品のドラマ部分に深い描写を加えることが出来ているのも、加点ポイントだ。

つまり、きちんとした「冒険シーン」があることで、作品内の「ドラマ」がより良く描けているのだ。
ここがまず非常に良く出来ている点だと言える。

 

さらに、「トレジャー・プラネット」内での「謎解き要素」も、きちんと「推理パート」が用意されている。
特に海賊フリントの元仲間でロボットである「B・E・N」と出会い、彼のメモリーを探すなど、確かに「取って付けたような」気もしなくはないが、それでも「アトランティス」と雲泥の差がある。

 

ということで、まず今作品はキチンと「過去作」の失敗している点をキチンと修正してきた、そういう意味で「僕は大満足」させられた作品であると断言できる。

 

 

ポイント

✅「過去作」からの修正がキチンとされている作品である。

鬱屈した日々から「宇宙」へ

 

今作品のメインストーリーは「トレジャー・プラネット」という、かつて伝説の「宇宙海賊フリント」が遺した金銀財宝の眠る「星」を目指す物語だ。

だが、その裏で描かれるのは主人公「ジム」と、半身サイボーグの「ジョン」の交流だ。
それに関しては後で後述したい。

 

ちなみに「トレジャー・プラネット」はロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説『宝島』を原作にしている。
その中でジョンは「片足義足」の男であるが、それを拡大解釈して「サイボーグ」という設定になったと思われる。

さらに、この作品は『宝島』を「SFアレンジ」しているので、ジムと共に冒険するのは「エイリアン」である。

 

主人公のジムは、かつて「宇宙海賊」の財宝が隠された「トレジャー・プラネット」の存在を信じる子どもだったが、船乗りである父親の家出。
それが心の傷になり、その傷から逃れるように「非行」に走り、警察に御用となる姿が描かれる。

 

そんな彼の元にひょんなことから「トレジャー・プラネット」の場所を示した地図が転がりこみ、彼はこの「鬱屈」した日々から脱する為、母「サラ」を説得。
「デルバート教授」と共に、宇宙の旅に出ることになる。

 

 

編集長
そのために立ち寄る「スペースポート」が同時期に制作公開されている
「スター・ウォーズ(プリクエル)」の「コルサント」っぽいというのはご愛嬌。

というか、ジムが日々に満足ができず、突然の出来事に「旅立つ」という構図が、
そもそも「スター・ウォーズEP4 新たなる希望」っぽいんだけどね

 

 

 

そして「アメリア船長」や、優秀な「アロー航海士」が乗る「レガシー号」に同乗し、「トレジャー・プラネット」を目指すことになるのだ。

ちなみに、この作品の世界観は、やはり原作が『宝島』ということもあり、宇宙を航行する「宇宙船」も「帆船」である。
こうした、いわゆる「SF」的な宇宙船ではなく、「帆船」が宇宙船になるというのは、「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」的なアイデアと非情に近いと言える。

 

 

ポイント

✅鬱屈した日々を送るジムに突然「チャンス」が巡ってくる。

✅旅立ちまでの長れは、「SW EP4」と非上に近い。

ジムとジョンの出会い

 

ジョンは結論から先に言うと、今作の「ヴィラン」といえる存在だ。

だが、今作での彼の立ち位置は、一概に「ヴィラン」とも言い難い、なぜならジムと最も深く交流し、そして彼の成長を促すのがジョンだからだ。
ちなみにこれも先に結論になるが、ジョンは「レガシー号」に乗組員として搭乗しているが、彼は「トレジャー・プラネット」の宝を全て横取りしようという海賊なのだ。

そして、彼は仲間とともに船に潜り込んで、その時をずっと伺っていいるのだ。

 

 

最初はジムはジョンをひと目見て「怪しい」と直感している。
これは、ジムの「不良」一面が嗅ぎ取ったのかもしれない。
それをマズイと感じたジョンは、ジムをこき使い、自分たち周辺を嗅ぎ回る余裕すらないようにボロボロにしようと企むのだ。

 

最初は狙い通り「グウの音も出ない」ほどにこき使われるジムだが、彼は徐々に仕事に慣れ、最終的に仕事を完璧にこなすようになってしまうのだ。
徐々にジョンは彼を認めるようになっていくのだ。

そして「宇宙用セーリング」2人で乗り。
2人の間に奇妙な信頼が生まれるようになる。

 

 

ジムはいなくなった「父親」の面影を「ジョン」の中に感じ取るのだ。
そしてそれはジョンも同じだ、彼を「息子」のように愛情を抱くようになるのだ。

 

 

この、本当は消さねばならない相手に情が移る。
そして、愛情すら抱いてしまうという構図は、「火の鳥 黎明編」「ナギ」「猿田彦」の関係だといえば、一番わかりやすいのではないか?
(いや、そもそも「火の鳥」を読んでる人が少ないか・・・)

 

 

こうして徐々に、ジムは「ヴィラン」のジョンは奇妙な信頼関係を築いていく。

この構図は基本的に物語の終盤まで変わらない。

 

たとえばジョン一味の「スクループ」は、「超新星爆発」の際に事故に見せかけてアローを殺害。
その際に「命綱」を確認したのはジムで、彼は「自分の落ち度でアローを死なせた」と深い悲しみくれるが、それを慰めるのはジョンなのだ。

 

ジョンにとってアローは邪魔者、だけど彼を殺したことでジムが「悲しむ」そこに深い同情をしてしまうのだ。
そしてジムをそっと抱きしめて慰めることになる。

 

このように「海賊」であり「ヴィラン」のジョンは、ジムと関わることで、どんどん「人間味あふれる人物」になっていくのだ。

そして、その思いを振り切るのに必死になっていく。

 

 

ポイント

✅今作は「ヴィラン」である「ジョン」が人間味あふれる人物に変化していく。

✅主人公ジムを成長させるのは、他ならぬ「ジョン」だ。

奇妙な信頼関係の着地地点

 

今作は、終盤に至ってもジムとジョンの「奇妙な関係」は変わらない。

中盤以降正体をあらわにしたジョン。
「アロー号」を乗っ取り、宝の強奪を目指すものの、ジムと対立。
そこで「非情」だった男が、「非常になりきれない」そんな苦悩も描かれる。

 

一方「裏切られた」ことで、ジムはジョンに悪態をつくが、それでも、「旅路」でのことを思い出し、どこか彼を信じたいと思っているのだ。

 

 

このように今作は、終盤にかけて対立をするジムとジョンだが、互いに互いを気にかけるシーンも多く、非情にもどかしい気持ちにさせられるのだ。

そしてそれが顕著になるのが「トレジャー・プラネット」の大爆発シーンだ。
わずかに残った「宝」を持ち逃げしようとジョンはするが、絶体絶命のジムを放ってはおけず、結局宝を手放し、彼を助ける。

 

 

ちなみに、「宝」を持ち去ろうとすると、「星が爆発」する設定。
確かに「宝」の隠された神殿などから、それが持ち出されると「神殿ごと崩れる」的な設定はよくある。

だが、そうまでして「持ち去られたくない」なら「宝の地図」を残したりするのをやめろ!って想うんだけどね・・・笑

 

そして、それと対比になるように、ジムがジョンの脱走を見守るシーン。

この作品で「自分の道を自分で決めろ」という言葉が何度も使われるが、結局今作では、2人は「信頼関係」を築き、そして「疑似親子関係」を結ぶのだが、同じ道を歩もうとはしない。

 

 

別れる、でも「この旅」で得たものはお互いに残る。
いわば、それこそ「2人に取って宝」だったという、キレイすぎるオチが付く。

 

 

編集長
最後に、ジョンがジムの実家の「レストラン」を延焼させたが、その修理代もジムに渡すなど、ここも「キレイすぎる」んだけどね

 

そしてこの旅路での活躍が認められてジムは「アカデミー」に進学。
更生するラストに着地する。

これは、「父親」代わりになったジョンを「反面教師」にしているということなのかも知れない。

 

 

こうして、ジムは、決して「褒められる人間」「善人」といえないジョンと出会うことで、「人生を前向きにとらえることが出来る」ようになったのだ。

 

ある意味で普段出会う人間(善人)との交流ではジムは変われなかった。
彼に必要なのは、彼を「叱る」「否定」する人物ではなく、それも含めて「肯定」してくれる人物だったのだ。

それは、同じ「ワル」という性分をもつジョンだから出来たのだ、そしてジョンもまたジムと出会うことで、人を愛する。
「父親の気持ち」を手に入れるのだ。

 

確かに旅の目的は果たせなかったが、2人はやはり、この旅で「かけがえのない宝」を得た。

 

今作はそんな様子を丁寧に描いた作品なのだ。

 

 

ポイント

✅2人にとって、互いの存在こそが「宝」というキレイすぎるオチ・・・嫌いじゃない!

 

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

個人的には、めちゃくちゃ楽しめる、予想外の「良作」でした!!

キレイすぎるオチも、まぁ、これはこれでいいでしょ!!

まとめ

 

今作は「アトランティス」の弱点を概ねカバーした作品で、その反省を活かしたと思しきシーンを見ることが出来て、非情に楽しめる一本だった。

 

ジムとジョン。
共通点は「決して人に褒められる存在」ではない、という点がある。
だからこそ互いに理解を互いにすることが出来たのだ。

 

そして、2人とって「宝」よりも大切な「関係」を結ぶことができた。
それこそが、この旅で2人が得たものなのだ。

 

この作品でこのオチが許されるのは、少なくとも作中で「ジョン」は殺人を行ったりはしていないからだ。
(過去には行ってきただろうが)

そういう面も、ジョンにも感情移入出来るように、バランス面もよく考えられて作られた「トレジャー・プラネット」
予想よりも、遥かにできの良い、まさに「良作」でしたので、ぜひ見てもらえればと思います!!

 

この機会に見ることが出来てよかった作品でした!!

 

 

まとめ

  • 今作は、隠れた良作だと言える!
  • しっかり「アトランティス」からの進化が見えるのが素晴らしい。

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