PIXAR総チェック 映画評 評論

【PIXAR総チェック#1】『トイ・ストーリー』ーアニメ新世紀幕開けー

2021年9月23日

 

さて、今日から【PIXAR総チェック】を始めたいと思います。

こちらも【ディズニー総チェック】と同じく「公開順」に「評論」をしていきたいと思います。

 

ということで、最初はやはり説明不要の名作映画『トイ・ストーリー』を深堀りしたいと思います。

 

この作品のポイント

  • 素人集団の起こした奇跡。
  • 世界初の偉業に挑戦!!
  • 申し分ない「PIXAR史上」最高傑作。

 

こちらの放送は「前段階」の予備知識となりますので、よければ聞いてみてくださいませ!

『トイ・ストーリー』について

基本データ

基本データ

  • 公開 1995年
  • 監督 ジョン・ラセター
  • 脚本 ジョス・ウィードン/アンドリュー・スタントン/ジョエル・コーエン/アレック・ソコロウ
  • 製作総指揮 エドウィン・キャットマル/スティーブ・ジョブズ
  • 声の出演 トム・ハンクス/ティム・アレン ほか

あらすじ

「トイ・ストーリー」は、子供たちが留守の間に動き出す、おもちゃたちが主人公のワクワクするファンタジー。

カウボーイ人形のウッディ(トム・ハンクス)と、宇宙ヒーローのアクションフィギュア、バズ・ライトイヤー(ティム・アレン)はライバル同士。

2人は張り合いながらも、それぞれのいいところを学んでいく。

そんな2人が持ち主のアンディとはぐれてしまうことに。

無事にアンディの元に戻るためには力を合わせて頑張るしかない。

ウッディとバズの大冒険が今始まる!

ディズニープラスより引用

不可能に挑戦せよ!

まさに「プロジェクトX」

 

今では当たり前だが、この『トイ・ストーリー』以前には、「長編3DCGアニメーション」というものは、存在していなかった。

それこそ1937年にウォルト・ディズニーが『白雪姫』を制作してから、「アニメ」とは「手描き」が主流だった。
だが、今作はそんな「アニメ制作」の方法論を全て変化させるきっかけになる作品となる。

 

今となってはポピュラーな手法になりつつある「3DCGアニメーション」
現在では手描きアニメの第一人者である「ディズニー」も「手描きアニメ」を完全やめ「CGアニメ」の制作に移行した。

そのため「CGアニメ」は今では当たり前なのだが、この作品が生まれるまでに多くの困難があった。

 

 

もともと「PIXAR」は「ルーカス・フィルム」の一部門である「コンピュータ・アニメ部門」を「スティーブ・ジョブズ」が買収して立ち上がった会社だ。

しかも「PIXAR」は会社設立当時、「アニメ会社」ではなく、政府や企業に「ピクサー・イメージ・コンピュータ」というCG制作用の専用コンピュータを売ることを念頭においていた。

つまり「PIXAR」はハードウェアとCG用のソフトを開発、販売する会社としてスタートしたのだ。

 

その顧客の一つが「ディズニー」だったのだ。
そして「PIXAR」は「ディズニー」と共同で「CAPS」というソフトを開発するために手を結んだのだ。

『リトル・マーメイド』『ビアンカの大冒険 ゴールデン・イーグルを救え』『美女と野獣』でこの技術はふんだんに使用されている。
(詳しくは「ディズニー総チェック」の当該記事に譲る)

 

【まとめ記事】ディズニー総チェック一覧

 

だが、それでも「ピクサー・イメージ・コンピューター」は売上が伸びず、「PIXAR」の業績は悪化した。

 

そこで、「PIXAR」は自社製品の売上を伸ばすために「短編アニメ」を制作していたのだ。

その中心人物が「ジョン・ラセター」である。
彼はずっと「長編アニメ」を「CG」で制作したいと考えていたのだ。

しかし、それはジョブズの意に反することだ。
あくまで彼は「ピクサー・イメージ・コンピューター」や「ソフト」を売ることを第一としていたのだ。
これは、彼自身を追放した「Apple」への復讐心でもある。

 

つまりこの当時「PIXAR」は2つの考え方に別れていた

  • あくまで「ハードウエア」「ソフトウェア」を売りたいジョブズ
  • アニメ製作をしたいラセターたち

 

だがラセターたちは、ジョブズを無視することは出来なかった。
その都度、理由をつけて、何とかジョブズを説得するしかなかったのだ。
なぜなら彼のポケットマネーで、「PIXAR」は会社の体裁をなしていたからだ。

 

そこから駆け引きがあり、「ディズニー」から、共同で「長編CGアニメ」を作りたいという申し出があり、なんとか『トイ・ストーリー』制作にこぎつける事ができたのだ。

 

しかしこれは「世界初」の試みであり、様々な困難にぶち当たるのだ。

 

  • 金銭面のトラブル
  • ディズニーとの交渉
  • 二転三転する物語
  • ジョブズの気分で制作中止の危機(「PIXAR」を「マイクロソフト」に売却しようとするなど)
  • 突然ジョブズが「PIXAR」を「上場する」宣言

 

上げればキリが無いほどのトラブル、困難が待ち受けていたのだ。

今『トイ・ストーリー』というものが当たり前に存在しているが、様々な面で大きな困難に直面し制作された「奇跡」のような作品なのだ。

 

 

ポイント

✅様々な困難を乗り越えて制作された、奇跡の作品。

なぜ、おもちゃが題材なのか?

 

この作品は「おもちゃ」が題材だ。

それはひとえに、この時点での技術的限界があったからだ。

 

これも今の基準で考えると信じられない、それこそ近年のディズニー・PIXAR作品の「CG表現」は「不可能がない」と思えるほどに熟練されている。
だが、この時点では、例えば「人間描写」などが不可能だったのだ。

 

 

編集長
だからこそ本編を見ると「人間描写」に稚拙な面が目立つ

 

 

つまり、この時点の技術では「人間」を主軸に映画作りは到底行えなかった。

この時点で「挑戦」して「成立する」のは「プラスチックの質感」や「布の質感」が限界だったのだ。

だからこそ「おもちゃの物語」を描いたと言える。

 

 

ポイント

話は少々ずれるが、「PIXAR」の初期作品は技術の進歩と映画の題材がリンクしている。

  • 『モンスターズ・インク』は「モンスター」の毛並み表現。
  • 『ファインディング・ニモ』は「水中表現」
  • 『カーズ』は「重力表現」

このように、「技術」の発展と、作品の「題材」が密接に関わっているのだ。

ちなみに、『バグズ・ライフ』『トイ・ストーリー2』までは、とはいえ「CGアニメ」の再現性を念頭に制作されている。

 

なので、『PIXAR』初期作品に顕著なのは「技術の進歩」によって、描かれる「題材」が選定されているということだ。

 

 

ポイント

✅「PIXAR」初期作品は、つねに「技術」と兼ね合いで「題材」が決定している。

 

「アンディのおもちゃ」だからこそ幸せ

「アイデンティティ」喪失

 

この物語は主人公のカーボーイ人形「ウッディ」が、理想の場所から追い出され、そんな彼が追放された場所から「成長」して戻ってくる物語だ。

 

余談

初期構想ではウッディは「腹話術人形」だったが、怖すぎてやめたという経緯がある。

 

基本的にシリーズは全てこの体裁をなしている。
いわゆる「行って帰ってくる話」だと言える。

 

今作において「理想郷の追放」は、「アンディ」という理想の持ち主との場所からの追放だと言える。
そして、彼は「おもちゃ」にとって地獄とも言える「シド」の部屋に連れて行かれることになるのだ。

もう一つは「アンディ」の「お気に入りの座」からの追放だとも言える。

 

この二重苦をウッディは今作では味わうのだ。

 

 

その直接的影響は「バズ・ライトイヤー」の存在だ。

彼は人気のTVアニメキャラクターの「おもちゃ」で、自分自身を「スペースレンジャー」の「バズ・ライトイヤー」だと信じている。

彼は、ウッディのように旧式の「おもちゃ」とは違い、超合金のようなクオリティ、翼のギミック。
音声、発光など「おもちゃ」としては非常にスペックの高い存在なのだ。

だが、彼は頑なに「おもちゃ」であることを認めようとしない。

 

 

ポイント

ただし、彼は「アンディ」や「人間」の前では「動かない」という、
「おもちゃ」としての「領分」は犯していない。

つまり、本質的に己が何者なのかは理解していたとも言える。

 

 

そして、そんな「自己の存在」を「おもちゃ」だと認めないバズが「アンディ」のお気入りになること、それが許せない「ウッディ」
彼はあろうことか、事故ではあるが、バズを窓際から叩き落としてしまうのだ。

 

余談

初期構想では、このシーンは「事故」ではなく「故意」にバズを落としている。
さらに極めつけに「この世は食うか、食われるか」というセリフがあった。

さらに、スリンキーに「俺がいないと、アンディはお前なんかに目もくれない」など、クズ発言のオンパレード。
まさに畜生の極みだったと言える。

 

当初の予定では、ウッディを「嫌われ者」にしてストーリーを展開しようとしていたが、彼らは、後にこれが間違いだと気づいたのだ。

もちろんこれはウッディが最終的に「無私無欲」になる物語である。
というアイデアからきていて、筋は通るが、そのせいで「ディズニー」は「こんなもの誰も見たくないだろう」と激怒。

物語を作り直すことになるのだ。
こうした作業が何度も繰り返されたのだ。

後に脚本に参加した「ジョス・ウェドン」は「構造は素晴らしが、筋書きがダメだった」と述べている。
(後に『アベンジャーズ』『エイジ・オブ・ウルトロン』の監督となる)

 

こうしてウッディは安住の地を追われることになるのだ。

 

ここから「ウッディ」と「バズ」が「おもちゃとは?」というのに向き合っていく。

個人的に「バズ」が自分の「おもちゃ」のCMを見て「飛べないシーン」は、悲しい名シーンだ。
ここで彼は「スペースレンジャー」というアイデンティティを喪失することになるのだ。

 

 

 

 

そこから彼が再び「アイデンティティ」を取り戻していくまでが、今作の見どころだ。

ちなみに今作は随所にキャラクター描写をカバーするような「歌」が流れるが、これは「ディズニー側」から「ミュージカル要素を入れろ」という指示があったが、ジョン・ラセターが抵抗したからだ。

 

当時の「ディズニー」は「黄金期」で「ミュージカル全盛」だった。
だがジョン・ラセターは「おもちゃが生きている」という大きな今作の抱える大きな嘘に、「ミュージカル」という「非現実要素」は食い合わせが悪いと判断し、これを固辞。

 

最終的に「キャラの心情」をあくまで「挿入歌」とすることで、エモーショナルを掻き立てる作りにしたのだ。

それが最も「よく描けているシーン」だと言える。

 

 

ポイント

✅「スペースレンジャー」としての「アイデンティティ」を失うバズ。

「一般的、おもちゃの幸福論」を今作は描いていない。

 

実は『トイ・ストーリーシリーズ』で世間一般に考えられている。

この世界における「おもちゃ」の「幸せ」とは「子供に遊ばれてこそ」というものがある。
後年『トイ・ストーリー4』が批判されたのはそのためだ。

 

「おもちゃの幸せ」それは「子供に遊ばれること」と描いてきたシリーズで、「そのオチはないだろう」という具合の批判を公開当初、よく目にした。

 

 

だが、実際に蓋を開けてみると、それは『トイ・ストーリー2』でのみ語られていることだ。
これは、当該作品評論時に言及するが、この作品は制作に十分時間が取れず、不本意な形で世に送り出された作品なのだ。
つまり、内容的ブラッシュアップが出来ていなかった。

 

そのため、この作品の本来の「言いたいこと」とは違う、「一般的おもちゃの幸福論」を安易に提示してしまった。

 

だが、作品は大ヒットして、いつしか「おもちゃ」の「幸せ」
それは、「子供に遊ばれること」だと世間に浸透したのだ。

 

(詳しくは下記放送もお聞きください)

 

 

今作でアイデンティティを失ったバズに、ウッディが伝えたのは「おもちゃの幸福」についてではない。

正確には「アンディのおもちゃ」であることの幸せについてだ。

 

「取るに足らないおもちゃ」だとアイデンティティを喪失した失意の中バズは吐露する。
そこにウッディは「お前は最高だー」「ーそれはアンディのおもちゃだからだ」と返すのだ。

 

つまり、この作品でバズを立ち直らせるのは「アンディのおもちゃ」であるというアイデンティを再獲得するからだ。

 

 

だからこそ今作では「おもちゃ」をいじめる「シド」に対して、ウッディたちは反撃をする。
仮に「おもちゃは遊ばれること」が「幸福」だとするならば、シドの遊び方も「おもちゃ」にとっては幸せということになりかねない。

 

だがこの作品ではハッキリそこに「NO」を突きつけるのだ。

 

 

この作品でウッディがバズに説くのは、あくまで「アンディのおもちゃ」であること、それが「幸せ」だし、「素晴らしいことなのだ」という点である。
実はそれが後年のシリーズ作品と、大きく異なる点だと言えるのだ。

 

 

ポイント

✅安易な「一般論」のような「おもちゃ幸福論」を描いてはいない。

ささやかな自己実現

 

こうして「おもちゃ」の敵シドに反撃し、見事に反省をさせた「ウッディ」と「バズ」
彼らは引っ越しをする「アンディ」を追いかけることになる。

 

余談だが、ジョン・ラセターは今作を作る上で、古典的な映画作品や、カーチェイスなど含んだアクション映画をスタッフで鑑賞する、勉強会を開いていた。
(今作のストーリーラインは基本的に物語の「原典」ともいうべき「行って・帰る」話だ。)

このような「泥臭い努力の姿勢」は「PIXAR」の「自分たちで自分たちの作品を厳しく批評し合う姿勢」に繋がっていったのかも知れない。

 

このアクションシーンの見どころはは「バズ」のささやかな自己実現である「空を飛ぶ」点だ。

この作品では物語冒頭、中盤、終盤。
三度彼の「飛ぶシーン」を描く。

 

最初は偶然「飛ぶ」事ができた。
それをウッディが「カッコつけて、落ちている」と称していた。

二度目は無情にも落下し、「おもちゃ」である現実を突きつけられる。

そして三度目は、おもちゃであることを認めたが、飛ぶことが出来た。
ここでは彼は自分自身で「カッコつけて、落ちているだけ」と認める。

 

このシーンでバズは「おもちゃ」であることを認めた、だが彼が夢見ていた「空を飛ぶ」という願望を叶えるのだ。

そのささやかな自己実現が非常に泣かせる展開になっている。

 

そして最後、アンディたちの新居で迎えるクリスマス。
ここで「犬」がプレゼントされたことを知った、ウッディとバズの表情で映画は締めくくられる。

 

ここは、本来は「犬の鳴き声」で終わるはずだったが、マイケル・アイズナーが「鳴き声を受けた上でのリアクションで物語を閉じろ」というアドバイスをしたのだ。

これによって、二人から「大人の余裕」のようなものが垣間見え、物語全体を通じて、彼らが成長したことを伺わせる事ができるのだ。

まさに、ナイス改変だったとも言える。

 

深堀りポイント

アイズナーは、2000年代「ディズニー低迷期」の諸悪の権化とされ、「ロイ・E・ディズニー」の起こした「セーブ・ザ・ディズニー運動」を経て追放される。

だが、彼も元々「パラマウト社」を再生した手腕があり、このアドバイスには、やはり「やり手」な部分が見て取れる。

 

 

ポイント

✅全体を通じて「ウッディ」「バズ」の成長がきちんと描ける、最高の「バディムービー」になった。

 

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

まさに奇跡の一本!!

もしも、初期構想のまま突き進んだら、目も当てられない作品になったかも・・・

まとめ

 

今作は、この評論でも一部紹介したが、前途多難、紆余曲折の末に生まれた作品だ。

もしも初期構想のままのウッディだったら、もしもミュージカル要素が入っていたら・・・。
など考えると、ゾッとする。

そういう意味でも「奇跡」のバランスで作られた映画なのだ。

 

しかも「PIXAR」にとってこの映画は、ただ作るだけではダメだった。
「映画」を制作した上で「大ヒット」させ無ければならなかったのだ。

そんな社運をかけ、大プレッシャーの中で、今作は「ホームラン」となる。

 

こうして今作は、表現の歴史に「CGアニメ」という新たなページを刻み込むことが出来たのだ。
そして「アニメ」という表現の方法を大きく変えてしまう「エポックメイキング」な作品となった。

まさに歴史を変えた映画だといっても過言ではないのである。

 

 

そしてそれは「ディズニー」を戦慄させることになる。
「アニメはディズニーを中心にしている」と思われてきた。
「PIXAR」は今作の成功で、世界の常識とも思われてきた、この価値観を崩すことになるのだ。

 

 

 

まとめ

  • 映画が成立した経緯も「奇跡」
  • この映画が「アニメ表現」を変えてしまった。
  • 実は「一般的おもちゃ論」は語っていない。

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