ディズニー総チェック 評論

【映画記事】「ラマになった王様」ー完全、コメディに振り切った作品ー【ディズニー総チェック】

2021年4月1日

 

今日は「ディズニー長編アニメーション」を公開順に評論していく「ディズニー総チェック」をやっていきたいと思います!

ということで、「ラマになった王様」について、今日は語っていきたいと思います。

 

 

今作のポイント

  • 終始ギャグ映画的な作劇。
  • 「クスコ」の成長譚である。
  • 「甘やかされる」ことについて。

「ラマになった王様」について

基本データ

基本データ

  • 公開 2000年
  • 監督 マーク・ディンダル
  • 脚本 デヴィッド・レイノルズ
  • 製作 ランディ・フルマー
  • 声の出演 デヴィッド・スペード ほか

 

あらすじ

王様クスコは全てを手にしていると自負していた。

献身的な国民に華やかな衣装、そして揺るぎない“グルーヴ”
ところが、相談役のイズマと彼女の手下クロンクによって、ラマに変えられてしまい、クスコの世界は一変!

最強の王だったクスコは、陽気な農夫のパチャと最悪のコンビを組むハメに。

彼らは身分の違いを超えて、グルーヴィな冒険に乗り出すことになる。

果たして2人は、相手の長所を認めて協力しあえるのか?

ディズニープラスより引用

これまでの「長編ディズニー作品」と一線を画する作品

完全「コメディー路線」に振り切った作品

 

今作は「ディズニー長編アニメーション」の中でも異例の作品といえる。
それは、「完全コメディー路線」に振り切っているということだ!

 

物語は、王様であることをいいことに、ワガママ放題の「クスコ」
そんな彼がひょんなことから「ラマ」に変身させられ、元に戻ることを目指すというもの。

 

そして「ラマ」になってしまったクスコは、「パチャ」と出会うことで、徐々に「自分の生き方」を反省し、悔い改めることになる。

 

 

この構造は「黄金期」の作品「美女と野獣」と非常に似通っているといえる。

 

ただし、あちらは「プリンセスもの」「恋愛」「ミュージカル」
いわゆる「ディズニー」の十八番といえる作劇だ。

 

だが、今作はそれとはまるで違う。
もちろん「ストーリーライン」は似通っているものの、完全に「ギャグテイスト」で約70分間を駆け抜けるのだ。

 

 

ポイント

✅「完全コメディ路線」であることが、最大のポイント。

この作劇を見ていられる理由

さて、「コメディ路線」ということで、正直、「深堀り」のしようもないというのが本音なのだが、頑張って評論していきたいと思う。

この作品最大のポイントは、「なぜ、このストーリーをギャグとして見ることが出来るのか?」だ。
それは主人公である「クスコ」に対して感情移入することが困難だからだ。

この「クスコ」というキャラクターは「わがまま放題」を極め、自分の別荘を作るために「村」を潰そうとする。
気に入らないものは「クビ」
邪魔者は「ポイ捨て」(これはあくまで「ギャグ」としてやっているだけで、本質は「殺人」と同義だと思っていいだろう)

などなど、感情移入することが困難、むしろ我々観客を、どこまでも「イライラ」させるキャラ造形がなされている。

だからこそ、彼がどんなに酷い目にあっても、我々はそれを「笑って」見ることができるのだ。
言い換えるならば「ざまあみろ」と思ってしまうわけだ。

これがもう少し「まとも」なキャラ造形をしていたら、可愛そうに思えたりして、こうはならなかっただろう。

そんなクスコに対して、旅のお供をする「パチャ」は、どこまでも「イイヤツ」
彼は、クスコを何度も見捨てようとするが、優しさから、見捨てることが出来ない。

そんな彼の姿が、クスコの心情を変化させていくのだ。

そしてこのパチャの優しさに触れたクスコは、何度も「心を入れ替えよう」とするのだが、素直になれず、意地悪な態度を取ってしまう。
そんな彼の心の変化を汲み取るパチャ。
いわゆる「関係性萌」要素がギャグテイストと混ざりながら、随所に拝されているのも特徴だ。

なので、ストーリーを追っていると「あぁ、こいつ反省してるな」「でも素直になれない」という、クスコの変化がキチンと描かれているのだ。

類似作である「美女と野獣」
この作品で「野獣」が、なぜ改心したのか?

そこに、キチンと道筋を示さなかったことを考えれば(僕が思う、明確な道筋がなかった)、「ラマになった王様」は、そこで描けなかったポイントをキチンとブラッシュアップしているとも言えるのだ。

ポイント

✅ここまでのギャグ路線が許されるのは、特に中盤までの「クスコ」に感情移入することが出来ないから。

2人の「クスコ」

 

この作品は「感情移入」不可能な存在であるクスコが、少しずつ「他人を思う」気持ちを学んでいく様子が描かれる。

これは先程の繰り返しになるが、それを手助けするのが「パチャ」である。
彼は冒頭クスコに呼び出され、村からの立ち退きを命じられる。

 

 

その理由というのが「クスコリゾート」なる施設を作るためであり、当然反発をするのだが、聞き入れられることがない。

そんな彼がひょんなことから「ラマになったクスコ」と出会い、彼を「ラマ」に変身させた「イズマ」を探すために王宮を目指すことになる。

 

 

その道中で、なんどもパチャはクスコを見捨てようとする。
だけど、毎回呆れながらも彼の改心を望む、どこまでも「お人好し」なのだ。

 

 

編集長
2人の、しょうもない言い争いなど、みていて楽しいやり取りも魅力!

 

 

パチャがクスコに「イズマが、クスコ殺害をしようとしている」と教えた際の仲違い。
それが「雨に濡れるラマ」の冒頭場面につながる。

今回だけは、もう完全に「自分のしでかしたこと」に気づいたクスコが、パチャに見捨てられる辛さを知り、ラマとして生きようと決意した時。
その時でさえパチャはクスコ見捨てようとしなかった。

 

 

正直、度が過ぎるほど「優しい」パチャだが、この作品では「感情移入できないクスコ」と並ぶと、これくらいがちょうどいいバランスになっているのだ。

 

 

ちなみにこの作品、冒頭の「雨に濡れるラマ」つまりクスコの、なぜこうなるに至ったか? を回想しながら、中盤にこの場面にたどり着く作りになっている。
ここでのクスコのナレーションは、どの言葉も他人を見下すものだし、特にパチャのことを疑っているセリフも多い。
(物語の特性上、彼に「変身」させられたと感じている)

 

 

だけど、中盤「雨に濡れるラマ」のシーンにたどり着いた際、ここまで「他人を見下してきた」「偉ぶってきた自分」
そんな彼のダメなところが凝縮された「ナレーション」に対して(このナレーション事態がギャグ演出にもなっているのだが)、クスコ自信が反論をする。
そのことで、自分で自分を批判させることで、彼の成長を描いている。

 

 

このように、今作は彼の精神的成長を、2人の「クスコ」を通して描いているのが特徴だ。

1人は、物語を語る「語り部」としてのクスコ。
このクスコは、自分に何の否もない。
偉ぶっている、鼻持ちならないクスコ、つまり彼のダークサイドの結集だと言える。

 

それに対して、実際のストーリーで描かれるクスコ。
彼が、ダークサイドの部分と良心の間を葛藤しながら、最終的には「良心」を手に入れる。
それは、自分で自分を否定することなのだ。

 

 

つまり今作は「他でもない自分自身」が「まちがった考えを持つ自分」を否定することで成長を描いているのだ。

 

 

ポイント

✅「語り部のクスコ」と「実際のストーリーで描かれるクスコ」の比較で成長が描かれる。

✅「他でもない自分」が「自分」を否定する、そのことで成長を描く。

自分よりも他者

 

この作品で最終的に描かれることは「自分のことより他者を思う」ことの大切さだ。

ある種それは、「パチャ」の姿とも重なる。
クスコは、常に「手本」となる人間と共にいることで、成長出来たのだと言える。

 

 

なにがあってもクスコを見捨てなかったパチャ。
今作では最後、クスコが「自分」よりも「パチャ」を選ぶことで、クスコの成長を描いている。

 

 

転落しそうなパチャ。
人間に戻れる薬。

 

この選択で、薬よりもパチャを選んだクスコ。
彼は、誰も信用せず、自分の事だけ考えていた。
だけど最後には「友」を選んだのだ。


この作品は「わがまま」放題だった「クスコ」が「他者のため」に行動する、その尊さを描いて、彼の成長として幕をおろすのだ。

最後には、結局隣の丘に「クスコリゾート」を建造、パチャと仲良く遊ぶ姿が描かれる。
(結局リゾートはつくるのか! って思わなくもない)

 

 

ここから少々想像になるが、恐らくクスコは「他者」とまともに交流をしたことが、これまでなかったのかも知れない。
物語の冒頭、ぬいぐるみが壊れた際、周囲から手がいくつも伸びてきて「ぬいぐるみ」が差し出されるシーンがある。

 

これは一見、ギャグ演出だが、実は今作を通じてクスコは一度も「両親」のことを口にしない。
それはが意味するのは、恐らく彼の両親は、生まれてまもなく死んだのでは? ということだ。

 

「両親」というのは、ある意味で最初に目にする「他者」であるはず。
そういう存在がいないことは「他者」という存在が彼の中に確立されてなかったことを意味する。
だからこそ、彼には「他者」というものが理解できないのだ。

 

つまりこの物語は「他者」を知らない男が、「他者」を知る物語だとも言えるのだ。

 

そう思うと、終始ギャグ、悪ふざけで物語は進むが、非常に深いテーマを持った作品だといえるのではないか?

 

 

ポイント

✅「他者」という存在が無かったクスコが「他者を知る」物語だとも言える。

どこまでも「甘やかされる」ことに対して

 

ただ、僕は今作を見て一つどうしても「嫌だな」と感じる事があった。

それが「クスコ」がどこまでも「甘やかされる」ということだ。

 

 

中盤の「ラマとして生きる」決意をした時でさえ、パチャはクスコを迎えに来る。
これはどこまでもクスコが「甘やかされている」こと他ならない。

 

 

今作を通じてクスコは、確かに「改心」するのだが、それは、どこまでも「自分を甘やかしてくれる」存在がいたからこそだ。

 

 

その点が、正直なところ「気に入らない」

 

この流れにするならば、クスコは自らパチャを探しに行かなければならないのだ。
そして悔い改める必要があるのではないか?
そうしなければ、「反省した」とはいえ、やはり「ただ単に甘やかされている」ようにしか見えない。

 

 

「子ども向けのコメディ映画」だから、「気にするな」という声もあるだろう。
だけど逆に僕は言いたい。
「子ども向け」だからこそ、こういう「バランス」に気を使わなければならないのだ。

 

 

現実に、どこまでも「甘やかしてくれる」それこそ「パチャ」のような存在がいるのか?
それは「NO」だ。

このままでは、「自分を甘やかしてくれる存在」が現れて、「助けてくれる」
そう捉えかねないのだ。

 

 

この作品が教えなければならないことは、「自ら恥をしのんでも」「否を認めるのが怖くとも」
それでも、勇気をだして「人に歩み寄る」
そういう努力もせねばならない。

「クスコ」の姿を通じて、そういったことを子どもたちに伝えねばならなかったハズだ。

 

だけどこの作品は「世界には、自分を甘やかしてくれる存在」がいる。
そういう風に、間違ったメッセージに捉えかねない危険性があるのだ。

 

 

この点だけを持って、僕は今作品を「歴代ディズニー作品」でも「ワースト」と評しても構わないと思っている。

 

 

そう考えると「コルドロン」「王様の剣」などは、ただ単に「話運びが下手」とか、そういう「構造」のヘタクソが問題だった。
だが、今作はそれらとは違い「メッセージ性」が「間違っている」という、またベクトルの違う「大問題」を抱えているとも言えるのだ。

 

 

ポイント

✅クスコが「甘やかされる」展開が続くことに感じる疑問。

✅「子ども向け」だからこそ、こういうバランスは重要だと感じる。

 

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

何も考えずに見るべき作品!!

ある意味で「総チェック」泣かせの作品でした

まとめ

 

今作は全体を「完全コメディ路線」で描き、クスコの成長にフォーカスした作品だ。

そういう意味ではあまり、深堀りしようもない作劇になっている。

 

ヴィランであるイズマと、その部下クロンク。
この2人の仲良しかよ! と言いたくなるコンビネーション抜群のギャグは最高だ。

さらにクライマックスの「変身しまくり」など、楽しいところもある作品だと言える。

 

ただ、個人的には「甘やかされ続ける」展開には、正直「嫌だな」と感じたし、かなり想うところも多い作品出会ったことも事実だ。

 

あと、いわゆる「カートゥン・アニメ」っぽさが「ダイナソー」以前と以降で増した感じがして、それもちょっと、僕が求めてる「ディズニーらしさ」ではないのかな?
個人的には「ある程度の写実的手描きアニメ」の質感が好きなのかな?
などなど、色々考えさせられもしました。

 

 

 

まとめ

  • クスコの成長を分かりやすく描く作品。
  • コメディテイストで全編描かれるのは「長編ディズニーアニメ」では珍しい!
  • 終始「甘やかされる」展開は「好きではない」

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