映画評 評論

【映画記事】「デッド・ドント・ダイ」は「想像以上に”深い”作品」 その理由を解説!

2020年6月6日

本日は久しぶりに、劇場へ足を運び映画鑑賞!
そんな観賞後ホヤホヤの評論をお届けします。

今日紹介するのは「デッド・ドント・ダイ」です。

この記事を読んでわかること

  • 本作品が「変」な映画であるということ。
  • 本作品は実は周到に考えられた作品だということ。

 

久々の映画館で鑑賞した作品の評論だけど、非常に「評論」しづらい作品です 笑!!

「デッド・ドント・ダイ」について

基本データ

  • 公開 2019年(日本 2020年)
  • 監督/脚本 ジム・ジャームッシュ 
  • 出演 ビル・マーレイ/アダム・ドライバー/ティルダ・スウィントン/クロエ・セヴィニー ほか

あらすじ

警察官が3人しかいないアメリカの田舎町センターヴィルで、前代未聞の怪事件が発生した。

無残に内臓を食いちぎられた女性ふたりの変死体がダイナーで発見されたのだ。

困惑しながら出動した警察署長クリフと、巡査ロニーは、レイシストの農夫、森で野宿する世捨て人、雑貨店のホラーオタク青年、葬儀場のミステリアスな女主人らの奇妙な住民が暮らす町をパトロールするうちに、墓地で何かが地中から這い出したような穴ぼこを発見。

折しも、センターヴィルでは夜になっても太陽がなかなか沈まず、スマホや時計が壊れ、動物たちが失踪する異常現象が続発していた。

やがてロニーの不吉な予感が的中し、無数の死者たちがむくむくと蘇って、唖然とする地元民に噛みつき始める。

銃やナタを手にしたクリフとロニーは「頭を殺れ!」を合言葉に、いくら倒してもわき出てくるゾンビとの激闘に身を投じるが、彼らの行く手にはさらなる衝撃の光景が待ち受けていた……。

公式サイトより抜粋(https://longride.jp/the-dead-dont-die/

ここからはネタバレを含みながらの評論になります!

奇妙なゾンビ映画

今作を語るにあたり「奇妙」という言葉は、まず鑑賞した方々の頭には残るのは間違いない。
しかし、その「奇妙さ」が、むしろ「ゾンビ映画」の本質に立ち返っているとも言える。

本来のゾンビが意味するものとは「何か?」
まずはそこから本作へアプローチすることにしよう。

「死んでも」「死なない」のが「ゾンビ」

元々「ゾンビ」とは何か?

それは「死んだ人間」が「死んだまま」「動く」状態だと言える。

そんな「ゾンビ」はそのまま「生きている人間」に襲いかかり、血肉を食べる。
食べられ、死んだ人間は、その後「ゾンビ」として生き返る。

このように「ゾンビ」はどんどん「ねずみ算式」に数を増やしていく。

彼らの行動原理は「生前」の「思い出」など「欲」の対象に固執している場合が多い。

本作の「ゾンビ」もそういう存在だ。

ちなみに最近の「ゾンビ」は動き自体が素早くなったり、個体によって個性があったり、作品によって多種多様な描かれ方をしているケースも多い。

だが、今作では「ゆっくり徘徊」する。
というように、非常に「ゾンビ」らしいオーソドックスな行動をとるのだ。

一見古臭いスタイルに思えるかも知れないが、「『ゾンビ』とは元々こういうものだった」と、「ゾンビ」の本質に立ち返った設定、演出をしている。

この「オーソドックス」な演出が、後に重大な意味を持つんだ。

ポイント

今作のゾンビは、生前の「思い出」「欲」に固執する。

✅ 気をてらった動きなどせず、「ゆっくり徘徊」するなど、オーソドックスな行動をする。

✅ ゾンビの本質に立ち戻った演出だと言える。

普通の「ゾンビ映画」ならば「団結」して戦うのだが・・・。

このような「ゾンビ映画」ならば、普通は危険に晒された人間たちが一致団結して戦い生き残ろうとする。

いくつかの「ゾンビ映画」を思い出すと幾つものシーンが脳裏に浮かぶことだろうと思うが、今作はそうはならなない。

今作のヒーロー的ポジションになってもおかしくない警察署長のクリフ、巡査のロニー、特にロニーの様子が「ゾンビ出現」してからおかしいのだ。

最初のダイナーでのゾンビ被害現場にいった際に顕著だ。

ちなみに、ここの場面。
クリフ、ロニー、ミンディと3人が事件現場で遺体と対面するのだが、3回同じ演出で天丼ギャグに仕立てられている。

ここでゾンビに内臓などを食い散らかされた遺体を見た際、クリフとミンディは「猛獣の仕業」というのだが、クリフだけは違う。
「ゾンビの仕業」と断定するのだ。

それは、当然真実なのだが、それにしたってロニーの判断の早さはおかしい。
そして「悲惨な結末が待っている」と予言めいたセリフをいうのだ。

さらに今作品の作中ない世界でヒットソングとされ、多くの人間に愛されている楽曲「デッド・ドント・ダイ」えをテーマソングだと言いだす始末。

その言葉通り、この楽曲が序盤から終盤に至るまで、今作品の中でしつこいくらいに流れる。

「ゾンビの首を切断すればいい」ロニーの言葉を半信半疑で聞くクリフだが、結局武器になりそうなものを買い揃える。
そして町の住人も「ゾンビ」がいると信じて武器を揃えるのだ。

ここまで、本来ならばヒーロー的活躍するはずの「クリフ」「ロニー」は、主体的に行動しようとしない。

そして2日目の夜、本格的にゾンビが住人を襲い出し町はパニックに陥る。

そして今作の登場人物たちはそれぞれに抵抗を始めるのだ。

抵抗するハンクとボビー。
なすすべなく襲われる、人種差別主義者のフランク。
そして少年院に収監されている3人の子供たち。

日本刀でゾンビの首を狩る、葬儀場の管理人であるゼルダ。

彼女は特に、今作品内ではおかしな人物設定をされている。
直角に歩きながら曲がるなど、個性が際立つ存在だ。

ゼルダを演じているティルダ・スウィントンは、
「ドクター・ストレンジ」で「エンシェント・ワン」を演じている。
こういう謎の人物を演じるのがうまいんだ。

普通ならば、こうして散り散りに奮闘する者たちと力を合わせて「ゾンビ」に対抗するのが普通だが、そうはならない。

むしろ終盤のゾンビに囲まれたパトカーの中で、クリフとロニーは一向に戦おうとしない。
奮闘していた登場人物たちも「ゾンビ」に殺されていく。

これはいったいどういうことだ?
その疑問が払拭できぬまま物語は最後に急転直下を迎える。

ポイント

妙に落ち着いているロニーへの違和感が拭えない。

✅ 戦おうともしない2人、死んでいく住人たち。

おかしな登場人物のおかしな物語

クリフは絶体絶命のピンチの中でロニーに問いただす。

「どうしてそんなに冷静なのか?」と。
その答えが今作では最大のサプライズと言える。

「台本を読んだから」
「ジム(本作の監督)から全体の台本をもらった」
というロニー。

ここで、いきなりのメタ視点的展開が繰り広げられる。

だからロニーは「嫌な結末が待っている」「テーマソングがある」ということがわかったのだ。

それに対するクリフの返答も予想外

「俺は自分のセリフの分しかもらっていない」

ここでどうやら、この2人は今作の「台本」を読んでいるということで一致はしていた。ということが明かされる。

ではこの作品は「カメラを止めるな」のように「ゾンビ映画」を撮影している様子を描いた映画なのか?
と考えるが、それがそうでもないらしい。

その真相が明らかになる前には、ゼルダというキャラクターが「UFO」に乗って地球を離れるという描写まである。
彼女は「おかしな人物」だったが、どうやら「宇宙人」だったのだ。

もう訳が分からない。

そして最後に意を決した2人がゾンビに立ち向かい、ここで通常の「ゾンビ映画」のように2人が英雄のように立ち居振る舞うのか?

と考えるが、それもそうはならない。

2人はゾンビに囲まれ体を食われ、おそらく死んでしまった。

それを「世捨て人」のボブが見つめてこの作品は幕を下ろすのだ。

ゾンビから逃れるために少年院を脱走した3人の子供たち。
その行方などは全て投げっぱなし。

普通に見終わると「意味がわからない」「訳が分からない」と思う人多数だと思う

ポイント

異常事態に対してロニーがなぜか冷静。

✅ 「台本」を読んでいる。というメタ視点発言。しかし2人は死ぬ。

✅ 投げっぱなしの伏線も多数

「欲」を持つことへの痛烈な批判

このように物語の表面だけをなぞると、非常に理解し難い今作品。

だが、こんな物語であろうと、観賞後に振り返ると実は作り手の主張を100%描き切っている。
見事なネタの振りがされていることに驚嘆せざるを得ない。

「ゾンビ」は「欲」に従い行動する

先ほど「ゾンビ」は生前の「欲」に従い動くといった。
まさにこの点を作り手は、今作品を通じて痛烈に批判している。

そもそも本作の「ゾンビ」が生まれた理由も少々おかしな設定が用意されている。

それは、あるエネルギー企業が「新エネルギー開発」のためにどうやら「極地」で実験を行ったことに起因しているのだということ。

それが原因で「地球の地軸」がズレてしまい、異常気象や日照時間の変化。

動物たちの凶暴化など、様々な影響が出ているということが、作中のニュースで説明されていた。

そして地軸がずれたことで、「月の光」に何かしらのエネルギーが含まれ、それらが「死者」を蘇らせている。
そのことは推察が可能だ。

さて、これはどう意味なのか?

そもそもの原因である「エネルギー開発」
これは「人類」が「より良い生活」また、それに伴い得られる「富」への執着など「欲」からの行動だと言える。

その「欲」が生み出した「ゾンビ」もまた「欲」に従い行動する。

特に僕は痛烈に風刺が効いていると感じたのは「スマホ」を持つゾンビだ。
「Wi-Fi」を求めて彷徨う「ゾンビ」
これは、正直我々が街中で無料の「Wi-Fi」などが使える場所を探している姿と重なってしまった。

それだけでなくとも、我々には様々な「欲」がある。
そしてそれは、往々にして過剰な「欲」だ。

この「欲」に支配されている「ゾンビ」
彼らは我々の姿なのだ。

そこから考えるとクリフ、ロニーは我々の「欲」の化身である「ゾンビ」をバッタバタと殺すシーン。
これは強烈な我々へのメッセージなのだ。

しかし、それでも最後には彼らは「負ける」
これは「ゾンビ」である我々の「欲」が結局世界を破壊することになる。
そういう戒めでもあるのだ。

ポイント

✅ 「欲」から生まれた「ゾンビ」は、我々の姿の具現化。

2人の敗北は「欲」に対する敗北と言える。

✅ 「欲」が世界を破壊する、そういう痛烈なメッセージ。

「子供」と「世捨て人」そして「宇宙人」

描かれない「子供」の結末にも意味がある

先ほどもいったが、今作では少年院の子供の結末が一切描かれない。

ゾンビから逃げることができたのか?
それとも・・・?

これはどういうことだ?

実はこの投げっぱなしも作り手のメッセージの現れだ。

先ほどから指摘している、そもそもの原因。
これは現代の「エネルギー事情」に置き換えることができる。

「今の生活を豊かかにする」行き過ぎた「欲」
そのために「未来の資源を使う」「未来の環境を汚染する」
そのことへの問題提起なのだ。

「地球温暖化」を例に・・・。


今を生きる我々の生活を豊かにする「欲」に支配される人間の行動。

そのことで、未来の「子供たち」へ「汚染された未来」「燃料不足」など、様々な「問題」を押し付ける。

そのことへの「批判」「問題提起」だと言える。

あの子供たちが「生き残れる」はたまた「死ぬ」それは、我々の行動にかかっているということだ。

だからこそ彼の結末は描かれないのだ。

そしてそれを決めるのは、実はこの作品を見ている我々だということを突きつけられる。

全てを傍観する「世捨て人」

今作で序盤から終盤まで「森」でサバイバルをして生きている「ボブ」

彼がなぜ最後まで傍観者だったのか、この点も実は「欲」への批判という観点から、答えることができる。

それは「欲」を捨てているからだ。

彼は序盤から終盤まで、森にあるキノコ、ゴミを漁って生活をしている。
そんな彼と対照的な「欲」を持つものは皆「ゾンビ」に殺される。

これも監督からの強烈なメッセージだ。

行き過ぎた「欲は身を滅ぼす」という・・・。

謎の「宇宙人」

さて、この中で最も解釈に困ったのがゼルダがUFOで宇宙に帰るシーンだ。

ただこの疑問も、同じ理屈で答えることができると思っている。

それは「アイデアがあれば助かる」かもしれないということだ。
(この解釈は、正直一番自信がありません。異論があれば深めたいポイント)

「欲」が世界を滅ぼす危機。

だがそんな危機でも既存の価値観に囚われない存在であるなら(になれば)。
それこそ「宇宙人」的なアイデアがあれば。
もしかすれば危機を救える
かもしれない。

一種の希望に満ちた存在だと、僕はゼルダに関しては考えている。
ただ、今作の中で最も「サプライズ」な彼女の存在だからこそ、この考えが正しいかどうかは分からないのだが・・・。

ポイント

「子供(未来)」の生死は、実は我々の行動が握っているというメッセージ。

✅「欲」を持たなければ、生存できるという視点。

✅既存の価値観に囚われない、その思考の必要性。

今作を振り返って

ざっくり一言解説!

「変」な映画です!!笑

ただ、考えれば、その練り込みの深さに脱帽だね

まとめ

観賞後「変な映画を見た」と感じていたが、振り返れば今作品は「欲」への批判を丁寧に描いていたことに気づく。

それを「欲」に従い行動する「ゾンビ」を通じて語るなど、非常に考えられたアイデアである。

また「アダム・ドライヴァー」
彼の今作ではどこか、事態に動じてない演技。このおかしみ。

彼を「スター・ウォーズ」ネタでイジるなどニヤリとさせられるシーンもあるので、ポイントアップしている。笑

このように全体的に「笑い「ユーモラス」にも溢れているのも特徴だ。

だけど、その裏側には痛烈な「行き過ぎた欲」への批判も描かれている。

トータルでは非常に「奇妙」なバランスの作品に仕上がっており、賛否分かれるのも仕方ないことなのかな? と思った。

「ゾンビ映画」という「ジャンル映画」のつもりで見ると満足できないかもしれないが、今作は観賞後に考えを張り巡らせると「より楽しめる」一本であると言える。

この記事がその少しでも助けになれば、と思う。

今作の総括

  • 「行き過ぎた欲」への痛烈な批判を、「欲」に従い行動する「ゾンビ」を使い語っている、そのスマートな手際。
  • 投げている「子供」の未来を決めるのは、我々という痛烈なメッセージ性。
  • ただし、賛否が分かれる作りなのは、これは認めざるを得ない。
  • こういう考えさせられる系の映画は、個人的には「好み」
    そういう視点で映画を楽しみたい方には、間違いなく「オススメ」

と、いうわけで今日も読了お疲れ様でした。
また次の記事でお会いしましょう!!

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