
さて、今日も「ディズニー総チェック」
ということで今回はこの作品。
「イカボードとトード氏」について語っていきたいと思います。

今作のポイント
- 「バンビ」以降の作品としては、間違いなく「一番面白い!」
- きちんと「二本の短編」を並列する理由づけがある。
- 「お金持ち」のワガママと「粗暴な男」が描かれる、なんとも「アメリカ」ウケしそうな物語
目次
「イカボードとトード氏」について
基本データ
今作品は「たのしい川べ」と「スリーピー・ホローの伝説」の短編二作品からなる作品である。
「たのしい川べ」基本データ
- 公開 1949年
- 監督 ジャック・キニー/ジェームズ・アルガー
- 脚本 ウィンストン・ヒブラー/テッド・シアーズ/ハリー・リーヴズ
ホーマー・ブライトマン/ポール・ジラール・
「スリーピー・ホロウの伝説」基本データ
- 公開 1949年
- 監督 ジャック・キニー/クライド・ジェロニミ
- 脚本 アードマン・ペナー/ジョー・リナルディ/ウィンストン・ヒブラー
作品紹介
児童文学の名作「たのしい川べ」と「スリーピー・ホロウの伝説」がすばらしい冒険物語となってオリジナル劇場版で登場。
まずはヒキガエルのトード氏が仲間とワイルドなドライブへ。
モグラや川ネズミやアナグマは危険な目に遭い大騒ぎ。そしてひょろ長いイカボード・クレーンは美しいカトリーナ・ヴァン・タッセルの心を奪うことを夢見るがライバルは同じくカトリーナを狙う町のガキ大将ブロム・ボーンズ。
ディズニープラスより引用
2人のバトルは首なし騎士の伝説を巻き込みドキドキのクライマックスへ!
英米の「児童文学決戦!!」

意味のあるオムニバス
ということで今作品。
まずは結論めいたものを先に言っておくと。
ここまでの「総チェック」で指摘していた「短編どうしに、最低限の繋がりがない」という問題点を、見事に払拭した。
少なくとも「バンビ」以降の作品では、「一番面白い作品」だと断言することができる。
というのも、今作品は「英米」の児童文学を並列し語られ、ある種の「自慢対決」という体裁になっている。
つまり、「当たり前」のことだが「同じ括りで語る」のに相応しい作品となっているのだ。

ということで、ここからは二本の短編について、深掘りしていきたいと思う!
「たのしい川べ」(トード氏)
とにかく、大金持ちの富豪カエル「トード」が好き勝手に行動することでトラブルが起こる。という今作品。
原作はケネス・グレアムが発表したイギリスの児童文学「たのしい川べ」
今作品はそのアニメ化だ。
このトードは「親の遺産」を引継ぎ、わがまま放題で、割と迷惑千万極まりない存在だ。
しかも金遣いが荒い・・・。
ストレートな言い方をすると「クズ」であると断言してもいいでしょう。
とにかく素行に問題がある存在だ。
そんな彼を支えるのが、彼の会計士である「マクバジャー」、そして「ラット」と「モール」だ。
友人たちがみんな「いい奴」で、常にトードに「無駄遣いはやめろ」と注意をするのだが、聞く耳持たず。
新しいもの好きのトードは「馬車」にはまり、そして「車」にはまり、それらを手に入れるために浪費をしようとする。

そしてついに「お小遣い」を止められたトード。
だが、彼は「車を盗んだ」という嫌疑をかけられ逮捕され、裁判に出廷させられてしまうのだ。
いくらなんでも「窃盗」はしない。
そう信じていた友人たちだが、判決は「有罪」
トードは監獄に収監されてしまう。
そしてこの牢獄の中で一人反省しているトード。
普通ならここで「心を入れ替えて」そして「正しく生きよう」と決意する、なるほど、そういう教育的視点で描かれてるのね!!
と思う方が多いと思うのだが、ここで一瞬、その展開に持っていきつつ、「脱走」という・・・。
全く教育的ではない、罪に罪をガンガン重ねるトード。
そのある意味で、迷いのなさには、正直笑っちゃったりもしましたね。

最終的には、実はトードは無罪で、その濡れ衣を着せた犯人に、友達と立ち向かう姿を描く今作品。
そして、結果は見事「無罪」であるという証明を勝ち得るという点に落ちる。

っていうね、まぁツッコミは野暮なのかな・・・!?
ちなみに、ずっと友達がトードに付き従うのも、なんやかんや一緒にいて「楽しい」「豪快で気持ちの良い」そしてトード自体に「裏表」がない。
その真っ直ぐさが、魅力なのだという結論に至る。
それもすごくわかるというか、周りでいません??
無茶苦茶なのに、放って置けないアイツ!!
みたいな人、それです笑
ここを「深掘り!」
ちなみに今作品の結末、実は「ディズニー版」の方がパンチが効いている。
というのも原作ではトードは、事件の後、すっかり落ち着いた「紳士」になる。という結末になるのだが、ディズニー版は真逆だ。
一瞬トードが「大人しくなった」かと思いきや、今度は「飛行機」にハマり、また浪費をする。
ある意味で、物語が説教臭くならないようにしているとも言える。

という理由づけにもなっているんだけどね
このアレンジは中々に興味深い点でもある。
というのも。ディズニーは長い歴史で、多くの「童話」を「正しく」描こうとしていており、原作にある「ダーク」な部分を切り取っていた。
しかしこの作品に関しては、その逆を行っている。
これは原作のあるディズニー作品群の中でも非常に珍しいのではないだろうか?
ある意味でディズニーを批判する上で、「童話などを”ディズニー化”して”無害化”するのはどうなんだ?」というものが多いが、今作品に関してはそれは当てはまらない。
そしてこのオチは作品の締め括り方として、非常に良いアレンジだったと個人的には思った。
「スリーピー・ホロウの伝説」(イカボード)
さて、「英米物語自慢対決」
次はアメリカの作品である、「スリーピー・ホロウの伝説」だ。
原作はアメリカ北部の伝説であるスリーピー・ホロウに着想を得て書かれたワシントン・アーヴィングの小説「スリーピー・ホロウの伝説」
こちらはざっくばらんに、どんな物語か? というと、「ホラーテイスト」な作品だと言える。
ちなみに1999年にティム・バートン監督。
主演ジョニー・デップで実写映画にもなっているので、ぜひそちらも興味があれば、ぜひご覧ください!
ということで「スリーピー・ホロウの伝説」なんですけど、ネットなどを見ると人気があるのか、こちらの評論・感想はそれなりにある。
それは前述した同原作を実写化した作品があるから、などの理由があるとは思いますが・・・。
この作品で僕が興味深いと思ったのは、アメリカの「マッチョイズム」が最終的には勝利するということだ。
この物語は、「スリーピー・ホロウ」の町にやってきた先生であるイカボードと、町のヤンチャな力持ちブロムが、町一番の美女カトリーナを巡って争う話となっている。
例えるなら、「ドラえもん」におけるジャイアンとのび太・・・。
と言いたいところだが、イカボードの立ち居振る舞いや、品位はむしろ、出来杉に近いだろうか。
とにかくそんな二人の争いだ。

カトリーナも非常に癖のある人物で、美しいのだが、その美貌で男を手玉に取ることを楽しんでいる節があり、彼女も一筋縄ではいかない人物として描かれている。
イカボードも、カトリーナに惚れてるのは事実だが、実は彼女の親の持つ「財産」に目が眩み、しかも彼女の農園で取れる野菜が「お金」に見えるなど、正直ゲスい。
それに比べてブロムは、ただ単にカトリーナに惚れてるように見受けられた。
全員どこか「一癖」ある人物設定になっているのも今作品の特徴だと言える。
これ、我々の感覚なら粗暴なブロムではなく、イカボードがカトリーナと結ばれる話だと思って見るのではないだろうか?
(ちなみに途中で、カトリーナがブロムの粗暴さに呆れるシーンもあり、それは確信にも近くなる)

だが、この物語ではそうはいかない。
パーティの最後に催された「怖い話」対決でイカボードは町に古くから伝わる「首なし騎士」の話にビビり、醜態を晒す。
そして、その帰り道も恐怖が彼を襲う。
ここも途中までは「ビビりすぎて森が不気味に見えた」だけ。
そのことに気づく、さながら「白雪姫」の森でのシーンを彷彿とさせる流れになっている。
だが、それも束の間、イカボードは本当に「首なし騎士」に追われ、ついにその首をはねられたのか・・・?
彼は消息不明となる。
そしてイカボードなき後、ブロムはカトリーナと結ばれるのだ。
深掘りポイント
この最終的には「マッチョイズム」が「インテリ」に勝つというのが、なんともアメリカらしいところだ。
そうそう、先ほど「ドラえもん」について話たのでついでに語ると、アメリカでは「ジャイアン」「スネ夫」の人気が非常に高いとのこと。
ちなみに「ジャイアン=ビックG」「スネ夫=スニーチ」と呼ばれており、「ギャング」「金持ち」キャラが人気というのも、アメリカらしいな。と言える。
なのでイカボードが負けるのも、アメリカらしさと言えるのかも知れない。
そしてこの作品で最も語られる「イカボードの生死」についてだが、この作品では「生死不明」
つまり「首なし騎士」に殺されたのでは?
という可能性を示唆して物語が閉じられるのだが、個人的には、まぁイカボードは普通に別の町で「生きてるんじゃないか?」と思います。
今作を振り返って
ざっくり一言解説!!
この「オムニバス期」の作品の中では間違いなく一番良い!!
個人的には「トード氏」推しかな
まとめ
今作品は「英米の児童文学決戦」の様相で描かれる作品だ。
「トード氏」のパートでは「お金持ちのワガママ」が描かれ、「イカボード」パートでは「マッチョイズムの勝利」が描かれる。
実にアメリカらしい価値観で描かれているのが特徴ではないだろうか?
普通に考えたら「トード」は塩らしくなるべきだと思うし。
イカボードが勝つ。そういう予想を我々はしがちだが、そうはならない。
個人的には、そこに「面白味」を感じた。
そして、今作品は短編内で「現実とアニメの融合」という、ここまで散々やってきた演出をせずに「アニメで勝負」するというところに立ち返っているのが、非常に偉い!
ここまで「予算がない」などの逆風に晒されながら、それを加味したとて「いい加減な作品」を粗製濫造したディズニー。
ようやく「アニメ」という本分に立ち返ったように見えて、この「オムニバス地獄」にようやく終わりを告げることのできた安堵感もある。
この感覚を味わうには「全作品・制作順」という縛りがなければならなかったし、この安堵感を味わうことができた。
それだけで「総チェック」してきたことに、何かしらの意味を見出すことができた。
ということで、「イカボードとトード氏」はオススメですが、ぜひ「ラテン・アメリカの旅」から順を追って、ここにたどり着いていただけると、その感動が増しますので、そんな楽しみ方もオススメです!
まとめ
- 作品クオリティは「バンビ」以降間違いなくNo. 1
- 「お金持ち」「マッチョイズム」を押し出す作劇が面白い。
- 「アニメ」で勝負。というディズニー本来の姿を取り戻した作品。
ということで、次回はいよいよ「シンデレラ」です。
この「オムニバス」を抜けた先で見ると、また格別なんだろうなぁ!!