
さて、いよいよ2020年のド本命の一本が公開されましたね。
ということで今日はやっぱり「TENET」以外にはあり得ませんよね!
この記事のポイント
- ぶっちゃけ「TENET」は面白いのか、否か。
- 難解な謎解き考察ではなく、「TENET」を映画としてどう評価するのか。

目次
「TENET」について
基本データ
基本データ
- 公開 2020年
- 監督 クリストファー・ノーラン
- 脚本 クリストファー・ノーラン
- 出演者 ジョン・デヴィッド・ワシントン/ロバート・パティンソン/エリザベス・デビッキ
ディンプル・カパディア/マイケル・ケイン/ケネス・ブラナー ほか
あらすじ
ウクライナでテロ事件が勃発。
出動した特殊部隊員の男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、捕らえられて毒を飲まされる。
しかし、毒はなぜか鎮静剤にすり替えられていた。
その後、未来から「時間の逆行」と呼ばれる装置でやって来た敵と戦うミッションと、未来を変えるという謎のキーワード「TENET(テネット)」を与えられた彼は、第3次世界大戦開戦の阻止に立ち上がる。
Yahoo映画より抜粋
「 TENET」は駄作か傑作か。

率直な総評

まずはこの作品について、僕が、素直にどう思っているのか?
その点からお話ししたいのですが・・・。
「悩ましい」
これが僕の素直な感想です。
まず第一に、これは見た方のほとんどが思うことでしょう、「難しい」「わかりにくい」「一回では理解できない」
これは僕もそのまんまそう感じていて、特に初見時は「ポカン」状態でしたね。
もちろん、この作品で語られるべき物語。
「世界を破滅させる」いわば「マクガフィン」を巡って、時間の巡行と逆行が同時に描かれ、そして結末が描かれる。
それは、一応の理解ができる。
でもそれ以上に、初見時では理解できない要素があまりにも多い。

そして、この作品。
これも多くの方々が言われているように「2度」「3度」と繰り返し見ることで「面白さが増す」「理解できる」
これも事実なわけですよ。

「よくこんなの思いついたな」と関心させられました
ある意味でこの作品は「一度」で観客を「満足」させられ作りになってはいないのだ。
繰り返し見ることで「面白さが増す」という前提で作られている。
そのことは否定できない。
そしてそれを「面白い」と言っていいのか?
「傑作だ」と手放しで褒めていいのか?
この点で僕は非常に今作の評価をするのが「悩ましい」という思いにかられている。
その前提で僕は「TENET」という作品を、「悩ましい」という思いがあること、そのことが”前提”でですが「とにかく繰り返し見る、その上で”面白い”」と結論付けたい。

ことを前提で語られるべき作品だと思います
ノーランだから「許される」作品
もう少しだけ、この作品の是非についての話を続けたいと思いますが・・・。
そうそう、先に言っておくと、僕はこの作品の物語の構造解説や設定について深掘りは今回しません。
(最後にちょっとやりますが)
そういう作品考察は、是非こちらを読んでいただけると良いかと思います。

参考資料・ブログ
話しがそれたので戻します。
そもそも「数回見る前提」で作られているということには議論の余地がありますが、ことクリストファー・ノーランという監督に限って言えば、それが「許される」のではないでしょうか?
彼は「フォロウィング」から「メメント」「ダークナイト」「インターステラー」「インセプション」など、そのキャリアで作られた映画は、どれも「難解」で「深読み」できる作品だ。
いわば作品を見た我々が、映画館の外で「議論」し「意見を言い合う」
そういうタイプの映画を作り続けてきたのだ。
ただし今回の「TENET」は彼の過去の作品の中でも、特に「難解」であり「深読み」できるという点に特化しているのだが・・・。
(少なくとも過去作の”初見時”はここまで「ポカン感」はなかった)
そういう意味では、ノーランがこの作品の着想に20年費やし、脚本には6年費やしたてきた肝煎りの今作。
その構想をいよいよ現実にできるタイミングが今だったからなのかもしれない。
それは、これまで一貫して「難解」「深読み」できる映画を作り続けてきた。その実績が、あったからこそ成し遂げられた作品なのだ。
つまりこの作品は、やはりノーランでなければ作れなかっただろう。
そもそも「複数回見ることが前提」という映画を作ることが「許される」地位に、長年かかってようやくたどり着いたのだ、とも言える。
ということで、この作品は一旦、現時点でのノーランの「全てが詰まった」映画であるし、ノーラン以外には作れない・許されない。
今までのどの映画よりもノーランらしい作品なのだ。
作品考察

注意
ここからはネタバレを含むので注意
「円」と「充足理由律」
僕は今作品のメインテーマは時間よりも「円」そして「充足理由律」にあると感じた。
「円」について
「円」というのはこの作品が、実は綺麗な円環構造を成していたという点にある。
これは作品のラストで明らかになるが「ニール」と主人公である「謎の男」
その関係、友情が「始まり」であり「終わり」である。そういう意味での「円」
時間の「順行」「逆行」により、世界の危機を救い、そして救うための「順行」「逆行」が始まる。
いわばこの物語で成し遂げたこと、そして”これから”成し遂げるべきこと、それらが「円」として繋がって終わるということ。
言ってしまえばこの話は「終わり」でもあり「始まり」でもある。
そういう意味でこの物語は「円」がテーマになっている。
ちなみに「TENET」というタイトル、これも「回文」だ、順に読んでも逆に読んでも同じ、ここにも「円」がある。
そして「円」にかけて「縁」
これも特筆すべき要素だ。
この作品におけるニールの役目。
彼の正体は、マックスだという説もありますが・・・。
彼はいわば全てを知って行動している「まどか・マギカ」における「ほむら」なのだ。
そういう意味でニールと謎の男の「縁」の物語だということができる。
「充足理由律」
充足理由律とは?
石を投げる ➡︎ 5メートル飛び、落ちる ➡︎ そして1メートル転がる
この時に、この石の飛ぶ距離・転がる距離には全て理由がある。
つまり、石の形状、投げる力、空気抵抗、重力などの要因で、「石がどれだけ飛んで、転がるのか」それらは元々決まっている。という考え方。
それは自由意志のある人間の場合も同じだ。
目的なく散歩をする ➡︎ 横断しようとしたが車の往来が激しいので渡らない ➡︎ 小腹が空いてコンビニへ行った
このような意思決定も実は、全て予め決まっているということ。
散歩に行く、通りを横断しようとしたら車の往来が激しくて、渡らない。
コンビニでお腹が減って買い食いをした。
これらは実は予め「そうなるように」決定されていて、つまり他の選択肢などは元々存在しなかったのだ。と考える。
つまり・・・
時間の流れは、全て予め「決定」されており、そして全ての事象の結果に「他の可能性」は存在しない。
全ての事象は必然だと考えるのが「充足理由律」だ。

逆の考え方
ちなみにこの考えと逆の思考法が「パラレルワールド」「多次元宇宙」だ。
散歩に行き、横断歩道を、「横断した時」「しなかった時」で世界が分岐するという考え方だ。
全て”うまく行く”ことがわかっている作品
この「TENET」では全てのことには理由があるという、「充足理由律」に基づいて物語が展開されていると言える。
そのため、実はこの物語は、敵であるセイターの計画は元々成就し得ないということが提示されている。
つまり登場人物が命がけで「世界の滅亡」を食い止めようとするが、そうした未来は起こり得るはずがないのだ。
ちなみに敵であるセイターは、自由意志により様々な可能性が並列に存在する。
つまり「多次元宇宙」「パラレルワールド」を信じて行動している。
なぜなら、その先の未来があることは明確だからだ。
「世界は滅亡せず」だからこそ、未来がある。
未来があるからこそ「逆行扉」や「銃弾」が未来から現代に届いたのだ。
あそこで「ああすれば」などと別の可能性は存在しない。
主人公やニール、そしてセイターの行動すら、全て予め「決定」されていて、そこに「自由意志」による意思決定。
それに伴う並列の可能性は起こり得るはずもないのだ。
ということで、この作品。(偉そうに言ってますが、2回目や解説を見てわかったこと)
実は「未来から来た技術」があるという時点で、世界は滅びないということが、決定しているのだ。
そう考えれば全く持って今作は全て「茶番」なのだ。
ただし、この全てが「決定している」「別の可能性はあり得ない」つまり「充足理由律」がこの作品の根底にある。だから全て「茶番」「わかりきっている」というのには、おそらく初見では気づかないと思いますが・・・。
残酷な未来を知りながらも、そこに進む「信条・信念」
先ほど「充足理由律」に基づいて、「世界は滅亡しない」
そのことが明らかであると言いましたが、この考えがあることで、一つの重要なテーマがこの作品には浮かび上がってくる。
それは「信条・信念」だ。
この作品でニールは自分がどうなるのか?
そのことを知っている、その上でミッションに参加をしていたことが終盤明らかになる。
このミッションの成功のためには自分が「死ぬ」しかない。
わかっていながらも、ミッション成功のために行動をしているのだ。
先ほどから繰り返すが「別の可能性は存在しない」という考えが根底にある今作品。
「世界は滅亡しない」そのことが決まっているこの世界では、彼は必ずこのミッションで死ぬ。
それを本人も知っているのだ。
だが、それでもその運命に進んでいく。
彼の死を含めて「予め決定されている」
そこに向かって進んでいくニール。
その「信条・信念」の強さが、このことに気づくとより際立つのだ。
この物語は冒頭からそうだが、「他人のために死ねるのか?」「その強さがあるのか?」
それを問うている。
主人公も仲間のために「自殺」しようとした、そのことで彼はこの物語の「主役」なり得たのだ。
「TENET」とは「信条・信念」を貫く。
そんな男の物語でもあるのだ。
今作を振り返って
ざっくり一言解説!!
人間讃歌は「勇気」の讃歌ッ!!
人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!
ある意味で「死」すら受け入れる「勇気」の物語だとも言えるね!
まとめ
今作は前述した「深掘り」要素はもちろんだが、ノーランらしい「IMAXカメラ」を用いた「シャープな画面」もやはり魅力的だ。
この映像体験はやはり「映画館」でするべきだろう。
おそらくこの映画を家で見たら、おそらく評価は5割減はするだろう。
「映画館で見るべき映画」であることは間違いないし、ノーランが配信公開は絶対しない。と決断したのは正しい。
この世界には「映画館で見るべき映画」がある。
間違いなく「TENET」はそんな作品だ。
ちなみに音響面も爆音に近く、ある意味でこの爆音がないと、もしかしたら意味不明すぎて寝落ちするかもしれない・・・。
個人的にはこうした「深掘り要素」「頭使う系」の映画は大好物なので、ものすごく楽しめた作品だ。
もちろん全てを理解できたとは思っていない、それこそ「考えるな、感じろ」でなんとなく理解した気になっている部分も多い。
それはまだまだこの作品を楽しめる余白だと思っている。
この作品は、観賞後にみんなで「ああでもない」と語り合うこと、「意見しあう」ことで楽しみが増すタイプの作品だ。
僕のこの評も、そうした「楽しみ」の一つとして見ていただければ幸いだ。
まとめ
- 「”映画館”で見るべき」映画であることは間違いなし。
- 観賞後に考察する、それが楽しいタイプの作品。
- 映画を見た後も楽しめる、「費用対効果」が高い作品。
ということで、読了ありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう!