映画評 評論

【映画記事】「すみっコぐらし 」なぜ2019年のNo. 1映画なのか! 徹底解説

2020年4月22日

 

ちょっと手が伸びづらい映画でも、「面白かった」「面白くなかった」だけでは勿体ない!

との思いではじめましたこのブログ。

今日紹介するのは「すみっコぐらし」です!!

もしかして、タイトルだけ聞いて「読まなくていいや」と、侮ってはいませんか!?

でしたら、それはもったいない。と断言しちゃいます!!

 

この記事を読むと

  • 子供向けと侮ると、名作映画を見逃す危険性があることがわかる。
  • クライマックスの演出が、引き算なのが素晴らしい。
  • 映画表現の極意が見えてくる。
  • 映画の喜びに満ちた作品だとわかる。

ちなみに今作は僕の昨年度「最優秀作品」ですよ!

「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」について

主題歌「冬のこもりうた」が沁み渡りますね

基本データ

  • 公開 2019年
  • 監督 まんきゅう
  • 脚本 角田貴志(ヨーロッパ企画)
  • 出演 井ノ原 快彦 /本上まなみ

▼あらすじ▼

ある日、すみっコたちは、お気に入りのお店「喫茶すみっコ」の地下室で、古くなった一冊の「とびだす絵本」を見つける。

絵本を眺めていると、突然しかけが動き出し、みんなは絵本に吸い込まれてしまう。

絵本の世界で出会ったのは「どこから来たのか」「自分が誰かもわからない」という「ひよコ?」

「このコのおうちを探してあげよう!」と新い仲間のために、すみっコたちは一肌脱ぐことに。

絵本の世界をめぐる冒険へ旅たつことになる。

商品紹介ページより抜粋

ここからは、物語の確信に迫る「ネタバレ」があります!
未見の方はご注意!!

初見時の衝撃は忘れられない!

何度も劇場に足を運んでしまった!

まず、この映画を昨年劇場で鑑賞した後、ちょっと言葉にならない衝撃を受けましたね。

映画好き。

といいながら今まで劇場で涙ぐむということがなかったんですけど、恥ずかしながら初見時のエンドロールは目に込み上げるものがありました。

 

その時点で 「だって初めて感動で涙ぐんだんですよ」
それだけでこの作品に好感を持たないワケがないんですよ!

 

ついでにいうと、この映画は僕の中では「2019年度」「No. 1」の作品で、しかも「オールタイムベスト級」なんです。

 

当時はTwitterで「すみっコぐらし」が凄いと、まぁそれは今も変わらずですけど、タイムラインに投稿しまくった記憶があります。

あまりの感動に1日で、間を開けて二回鑑賞。

その後もう一度劇場で鑑賞。

そしてしっかり「Blu-ray」も購入しちゃいました!

 

編集長
本当に、僕はこの作品が大好きです!!

手際いいキャラ紹介

まずこの映画の導入部、ほとんどの方々が「知らない」であろうこの世界独特の「すみっコ」たち。

彼らを紹介する手際の良さ

 

そこでの手腕が素晴らしく「知らない」存在であった彼らのことを、ものの数分で「大好き」と思わせられてしまう。
さらにこの「可愛さ」の表現たるや。

 

この時点で観客をうまく「すみっコ」と出会わせてくれる。

彼らのことを数分前まで知らなかった我々に、「古くから知っていた」かのような気持ちにさせてくれる、つまり感情を乗せやすくする種が、既にこの時点で撒かれている。

 

この時点で「滑り出し快調」と、僕もまんまと乗せられてしまいましたね!

 

さらにこの時点で、例えば「とんかつ」「えびふらいのしっぽ」の持つ本懐、つまり彼らの願望を描いておいて、それを中盤、逆転の発想でギャグにして見せる布石をきちんと見せている。

その辺りの目配せも、この作品を侮れない理由の一つだと言える。

 

ポイント

✅キャラ紹介に無駄がなく、そして愛着を持たせる手腕が見事

各キャラ設定の寂しい側面も垣間見える

「すみっコぐらし」のキャラたちには、明確な中心キャラがいない。
そして誰もが、少し寂しい側面を持つというキャラ付けをされている。

 

例えば「たぴおか」というキャラがいるのだが、彼らは「飲み残されたタピオカ」なのだ。

そこには「残された寂しさ」は当然。

それに加えて、昨今のインスタ映えばかりを考え、飲み残しをしてしまう”フードロス”ということを彷彿とさせる。

ちょっぴり「社会的風刺」という面すらある。

 

だがこの作品であくまでその負の部分は描かずに「ギャグ」として描くに留める。
彼らの「負」の側面。
それを一身に背負い登場するのが「ひよコ?」だ。

「身寄りもない」「自分が誰かもわからない」そういう「寄る辺なさ」を体現するキャラである「ひよコ?」

だが今作が「明るさ」に満ちているのは、同じような境遇である「すみっコ」たちが、別の世界で「すみ」にいることを余儀なくされている存在に対して、優しいのだ。

「弱さ・痛み」を知るものが、同じ境遇のものを救う「思いやり」の心。
それに心打たれないワケがない!

2019年といえば「ジョーカー」が話題になったけど、僕はこの作品が、その問題提起に対する日本からの解答であるとも思っているよ!

そして僕は、この映画を「ジョーカー」のカウンターだと考えている。

アメリカ社会で「障害」のために世界の中心から弾き出されて、「隅」に追いやられた者が悲しい覚醒を描いた「ジョーカー」

それが世界中で大ヒットした。ということ、そこには多くの人間が「社会から隔絶」されているという、感情を抱いていることも原因であると思う。

 

 

この作品で「すみっコ」たちは「ひよコ?」という、「居場所なき者」に居場所を与える。

 

そこが例え「すみ」だとしても、その「すみ」の中心。
それはまさに「この世界の片隅」かも知れない、でも居場所無き者にとっては「世界の中心」なるのだ。

そんな、ささやかな「すみっコ」たちが行う「すみ」のお裾分け・・・。

泣かないわけにはいかないでしょ?

生まれて初めて「ともだち」とともにいる、「ひよコ?」の姿を見ると、ダメだ・・・。また目頭が・・・。

 

このように、映画で語られる物語に完全に乗せられてしまっている、だが、この作品はクライマックスに大きな「映画を見る喜び」を用意しているのだ。

 

ポイント

✅各キャラに寂しい側面を持たせているが、それを深掘りしない。

✅負の側面は「ひよこ?」に背負わせ、「すみっコ」は手を差し伸べる存在として描いている。

映画表現として「品」のよささえ漂うクライマックス

映画とは時間表現であるが故に・・・

今からものすごく、当たり前なことを真面目にいいます!

映画は「時間表現」である。

 

だからこそ「クライマックス」の展開が「良い」と感じると、それまでの評価が「高く」なくとも、「面白い」と感じがちになってしまうことが多々ある。

つまり「クライマックス」が盛り上がれば、評価が上がりやすいということだ。

だからこそ「映画」のクライマックスは「盛り上がる」展開を続けるし、見せ場のエスカレートが生じる。

 

それは何も「アクション映画」の話だけではない。
「感動系」と呼ばれる作品でもクライマックスはやはり「盛り上がる」展開を用意する。

 

情緒的な音楽、感傷的セリフの応酬など、皆さんも容易に想像がつくことだろうと思いますが。
だからこそ「クライマックス」でこの「盛り上がり」のために「要素」がモリモリ、汁だく状態になってしまうことも多々ある。
あまりに、それをやりすぎると、食傷気味にもなってしまう。

 

そうすると、「作り手の意図」は「盛り上げる」というところにあるのにも関わらず、我々観客は「盛り下がる」「白けてしまう」と別の感情を抱いてしまう。

そういうことに陥っている作品も少なくない。
だが今作品はクライマックスを必要最低限の要素で描ききるのだ!

 

ポイント

✅最近の映画に多いクライマックスに”盛りすぎ”問題、それを本作は解決している。

要素を少なく、シンプルに

元々この映画のキャラ「すみっコ」たちは喋らないという設定だ。

基本的に彼らの行動の説明や、内面描写の補完、ギャグ演出へのツッコミというのは必要最低限の「井ノ原さん」のナレーションで処理する。

絵本世界での「それぞれの世界の物語進行」
例えば「桃太郎世界」での「おじいさんは山に芝刈りに」など、そうした地の文的進行を語るのは「本上さん」のナレーションで、これも必要最低限行われる。

つまり元々、映画の構成要素が「音楽」「絵」「ナレーション」と少ないのだ。

 

しかもクライマックスでは、そこをさらに削る。

クライマックスではナレーションもなく、あくまで映画的な見せ方、つまりキャラの動きと音楽のみで構成される。

 

だがこれだけの要素にも関わらず効果は絶大。
見事な感動ポイントを作り上げている。
これは「引き算」の演出だと言える。

 

これがもし、普通にセリフがあると「説明的」になりすぎる危険性がある。

 

工夫ポイント

このラストの展開は「ひよこ?」のみがこの後の展開を予見していて、そのことを察してしまい、自分は「すみっコ」とは別れなければならないということを悟り、自ら彼らと別れることを決める決意をするのだ。

もしもセリフがあると「どうして行けないのか」をやり取りするシーンになってしまい、愁嘆場としてクドくなる危険性がある。

しかもタイムリミットがあるにも関わらずにセリフのやりとりを見ると、「喋る前に動け」ってなるんですよね。

 

 

このような、白けがこないように「引き算」「最低限」の見せ方をしている。

 

キャラの動き、表情。
そして画面で起こる出来事、そして音楽。
これだけの要素で語られて感動すること。

 

それは映画黎明期、映画が「サイレント」と呼ばれていた時代から変わらない、「映画を見る喜び」だと言える!

そして今まで登場した絵本キャラ大集合、など盛り上がる展開も入っている。
そして「しろくま」の配った仲間の印が桜吹雪のように空から舞う。
そこに「ひよコ?」がただ仲間のいなくなった空を見つめている。

 

最低限と言いながらも実に泣かせる演出もちゃんとしている。

 

その手際に無駄がない、それが心底偉い。

そしてフェードアウトしながら「いつまでも手をふっているのでした」と一言のみの本上さんナレーション。
涙腺崩壊間違いなし!

 

そして、最後に「すみっコ」が「ひよコ?」のためにする、ささやかな行い。
そしてエンドロール。
彼らの優しさがつまったクライマックスはぜひその目で確かめて欲しい。

 

ポイント

✅映画的表現で感動を最高潮に持っていく、見事な「映画的表現」に脱帽!!

今作を振り返って

ざっくり一言解説!

足しすぎはよくない!

何事も「足し」すぎはよくない
「引き算」を覚えることも大切かも!

まとめ

「すみっコぐらし」見なくては!
という気になったんじゃありませんか?

紹介した他にも、アニメーションとしての質の良い作画、てか「普通」にレベルの高い品質にまとめられている今作品。
子ども向け。キャラ映画だと思って、見ない。

見ないで「侮る」のだけは避けてもらいたい

たったの60分で、「映画を見る喜び」を伝えてくれる今作品。

見終わった時、誰かに「オススメ」したくなる衝動に駆られることは間違いなし!

主題歌も本当に素晴らしいです・・・

 

まとめ

  • クライマックスの見せ方は、これぞ「映画」と言えるほどに「映画的」である。
  • 丁寧な演出、子供向けと侮れない作品である。

ということで、読了ありがとうございました!!

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子供向けと侮れない作品

 

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