映画評 評論

【映画記事】「千と千尋の神隠し」 ”一生に一度は、映画館でジブリを”

2020年7月12日

さて、今日も絶賛リバイバル公開中の「ジブリ作品」を見て感想を語っていこうと思います。

取り上げるのは「千と千尋の神隠し」です。

 

言わずと知れた名作。
「第75回アカデミー賞長編アニメーション部門」(2003年)を獲得したことでも有名ですね。

ちなみに、当時から今に至るまで「アニメ」はピクサーを中心とした「CG」時代に突入。
そんな中で、今作品はこの部門受賞作で唯一の「手書きアニメーション」である。

 

この点からも、やはり歴史に残る作品言っても過言ではないでしょうね。

 

しかも、いまだに日本で公開された国内映画の興行収入歴代1位の記録は破られていない。

ということで、今作も今更僕なんかが語る必要もない「名作」ですので、とにかく映画館で見てない人はいくべし!!

 

って締めてもいいんですが・・・。

一応、今日も語っていきます笑

今作のポイント

  • 油断できない「宮崎駿」の作家性。
  • 10歳の少女のための物語。
    教訓に満ちた作品。

「千と千尋の神隠し」について

基本データ

  • 公開 2001年(2016年、2020年リバイバル上映)
  • 監督/脚本 宮崎駿
  • 声の出演 柊瑠美/入野自由/夏木マリ ほか

 

あらすじ

両親と共に引越し先の新しい家へ向かう10歳の少女、千尋

しかし彼女はこれから始まる新しい生活に大きな不安を感じていた。

やがて千尋たちの乗る車はいつの間にか“不思議の町”へと迷い込んでしまう。

その奇妙な町の珍しさにつられ、どんどん足を踏み入れていく両親。

が、彼らは“不思議の町”の掟を破ったために豚にされてしまい……。

TSUTAYA映画紹介より引用

ジブリ人気の高さを証明する順位ですね!!
僕も「もののけ姫」「風の谷のナウシカ」「千と千尋の神隠し」見ました!!

”少女目線”の不思議な話

「雑っちゃ、雑」でも「気にならない」という「暴力的魅力」

今作を見て、「これは千尋が”社会”を知り成長する」物語。
と僕は感じました。

 

物語の冒頭、転校することになり「ぶーたれてる」千尋。
その引越し途中の寄り道で、両親の行為。
どうしても擁護できない無銭飲食シーンから物語は幕を開ける。

 

ちなみに父親は内藤剛志、母親は沢口靖子。

まさかの科捜研コンビでしたね。

 

個人的にはその道中の林道を「猛スピード」で運転するあたりにも、ツッコミを入れたくなりましたが・・・。

 

「ジブリ」と言ったら「食事シーン」ですが、ここまで「下品」なのは過去類を見ないんじゃないでしょうか?

 

そんな両親が勝手に食事をしたせいで「ぶた」にされる。

それを千尋は救うために奮闘するというのが、今作のメインの物語なんですが。

 

この時点で「無銭飲食はだめ」という教訓が我々に提示されるわけですけども。
この千尋が物語の流れに流される過程が「雑っちゃ、雑」なんですよね。

 

で、個人的には「千と千尋の神隠し」は、この「雑っちゃ、雑」って展開がいくつかあるですよね。

話は前後しますが先に挙げておくと「ハクの名前」のシーンですね。
これめちゃくちゃ良いシーンです。
でもよく考えると「脈絡」がない。

 

これ事前に少なくとも「川」について、そこで「溺れかけた」エピソードは提示しておくべき。と思うんです。

しかも冒頭にわざわざ父の「川を作ろうとした」というセリフを用意しているのに・・・。
ここで一言「川の出来事」を話しておくべきだったとも思うんですがね・・・。

 

ただ、ここが気にならないほど、圧倒的な画面に「引き込む力」に満ちた作品であるということには変わりありませんが。

 

 

ただ、この「川」について面白い説があるので紹介します。
岡田斗司夫氏曰く、「千尋」と「ハク」は兄妹である。という説ですね。

個人的にこの解釈筋が通ってるな。と思います。
「銀河鉄道の夜」との比較など、興味深いのでぜひチェックしてください。

解説について詳しくはこちら

 

 

引き込むといえば、圧倒的なのは「久石譲さん」の音楽ですね。

特に「あの夏へ」という作品を象徴する音楽は、胸を打つ。

無条件でこれだけで「泣かせる」ってもんですよね。

 

 

 

 

  • 雑と思えるシーンも正直ある。がそれを差し引いてお釣りのくる「画面」の圧倒的密度。それは、「アニメを見る喜び」に満ち溢れていると言える。
  • 音楽もまた「暴力的な魅力」に満ちている。

「社会」とは”こういうもの”という視点

両親を救うために「湯屋」という八百万の神訪れる「温泉」で働くことになった千(=千尋)。

 

この「湯屋」が実は「性的サービス」つまり「風俗」であるというのは、今では有名な話。
つまり「千」というのは源氏名で、ある意味で「風俗女」であるということなんですけど。

宮崎駿も、暗に示唆する発言をしているので・・・。

まぁその点を深掘りするつもりはありませんが。

 

そこを取り仕切る「湯婆婆」
ただ、今作の「悪」ではないんですよね。

もちろん「ハク」に対する仕打ちなどは、酷いところもありますが「湯婆婆」はある意味で「社会」というものを「千」に教える存在とも言える。

 

特に「腐れ神」のシーンなどは、接客業の長として、割と真っ当だったりするんですよね。
真相を見極めてからは、近づくのを嫌がる従業員に指示をしたり、ちゃんと千を褒めたり。

 

そして、そもそも「働かない者は消えて無くなる」というこの世界特有のルールに基づき、基本的には「従業員」になりたい。
という願いを聞き入れて働かせているわけですから、割とルールは遵守しているとも言える。

 

ハクに関しても、究極のところ彼が志願して弟子入りしてるのでね・・・。

 

だからこそどうしても「湯婆婆」が悪いとも一概には言えないな、って大人になった僕なんかは思っちゃいましたね。

そして重要なのはこの「湯屋」で千は、おそらく多くのこと、それこそ「社会」で必要な「教訓」を学んでいるという点だ。

 

  • 「無銭飲食」はダメ
  • 「お世話になった人(カマ爺)にはお礼をする」
  • 「どんな人でも”お客様はしっかりもてなす”」
  • 「”契約”とは”重いもの”」 など

 

この「教訓」を見てもわかるかと思うが、例えば先日僕も評した宮崎駿の過去作「もののけ姫」などのいわゆる「禅問答」のような「教訓」とはまた違う。

 

どちらかというと「昔話」的教訓に今作は満ちている。
これはある意味で「子供目線」だと言える。

 

そもそも今作は宮崎駿が「ジブリ」スタッフの娘である「奥田千晶」という子のために作った作品だ。
そもそもの着想で「10歳の女の子のための作品」だと宣言して制作されている。

 

だからこそ「少女=子供目線」で物語は進んでいく。

 

ただこの宮崎駿という監督が油断ならないのは、前述したが、実は舞台が「風俗」だという強烈な「アク」に満ちた要素を盛り込んでいるのだ。
この点は「本当に油断ならない」なと思わされる。

この一筋縄でいかないのが「宮崎駿」の作家性である「面白い」ところだとも言える。

 

  • 基本的には「少女目線」で描かれる「少女のため」の映画。
  • ただ、そこにとんでもない「アク」が滲み出ている。
  • 宮崎駿という人間の、やはり強烈な作家性に満ちた作品である。

宮崎駿からのメッセージ

名前とは”祈り”

今作のもう一つのテーマに「名前の力」という点があるのも見過ごせない点だ。

千とハクは互いに「名を奪われた存在だ」

今作品でこの二人は「互いの名前を知っている」という点で不思議な繋がりを持っている。
そもそも「名前」には「祈り」の側面もある。

 

「名前」にはいろいろな意味が込められている、そこには「祈り」の意味もある。
だからこそ「名前」は重要なのだ。

 

これは僕の勘ぐりもありますが、今作品はその「名前の意味」、その「重要性」をもう一度解き直す作品だったのではないか?

 

ちょうど、この2000年代って「キラキラネーム」が増えたりしてきて、「名前の”本質的な意味”」が薄れつつある時代に入ってきていた。

そんな時代に「宮崎駿」からの「名前は大切」という強烈なメッセージの側面も今作にあったのではないか?

 

  • 名前の意味を見つめ直せ。というメッセージが篭っているのかもしれない。

誰の心にも”カオナシ”はいる

カオナシという存在も非常に興味深い。

彼は「どの世界のコミュニティにも存在していない」ある意味で「寄る辺なき存在」だ。

 

 

だからこそ「そこ濡れますよ」をいう優しい声をかけてくれた千に固執をする。

そんな彼女なら自分を認めてくれる。
そんな希望を抱いて喜ばせるために「物で釣ろう」とするのだ。

ただ千はそれを拒絶する、だから怒り狂うわけなんですが。

 

ある意味でカオナシは自分の居場所を求めるために、そうした即物的なことしかできない哀れな存在だと言える。

 

これってある意味で「承認欲求」の”極み”みたいな存在ですよね。
その「欲求を満たすために、もので釣ろうとする」

ただこの欲求とは、我々の心には存在するものでもある。

 

今作品ではそれを満たすために「即物的なことをする」そのことの否定する存在として「カオナシ」を描いているのではないか?

だからこそ最後に銭婆婆という居場所を得た時、彼の表情は晴れやかにも見える。

 

「居場所」はどこかに”必ず存在する”。

今作で最も優しい結末がカオナシには用意されているのだ。

 

  • 承認欲求を満たすための「即物的」な行動はいけないという。これも教訓。
  • ただし、これは誰の心にも存在する「欲求」
  • 居場所は必ずあるという、ある意味で最も優しい結末がカオナシに用意されている。

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

宮崎駿は油断ならない男!!

ここまで油断ならない監督も珍しい

まとめ

個人的に本作は「物語」という観点から見ると、非常にシンプルだ。

 

それよりも今作は「10歳の視点」という点から考えると多くの教訓に満ちた作品だと言える。
「物語」よりも「教訓」という点に力を入れた作品だとも言える。

 

だが、そこに「多くの隠し要素」つまり「油断ならない要素」を詰め込んでくるあたりが、「宮崎駿」の「作家性」だとも言える。

 

印象的な「湯屋」のデザインにも宮崎駿はこうした旨の発言している。

「和風なのは建前で、エレベーターなどがあるのは、品がない」

この発言からもやはり「油断」ならなさが透けて見える。笑

 

ある意味で、作品を分解すると、ヒットするとは思えない要素で構成された今作。

元々は「ジブリのスタッフの娘」のための映画が「日本歴代一位」となった。

そう考えると、ははりこれは「異例」の積み重なりの作品だ。

ただ、やはり「アニメ」
いや「絵」の持つ力と言えばいいか。

説明のつかない魅力に溢れているとも言える。

この「なんとも言えない」感覚こそが「宮崎駿」の魅力なのかもしれない。

まぁ本当「油断ならない監督ですよ」笑

 

今作の振り返り

  • 「教訓」に満ちた「10歳の少女」の物語でもあり、「10歳の視点」の物語。
  • ある意味でヒットしたのが不思議な要素で構成された作品。
  • 油断ならない「宮崎駿」の面白さ。

 

 

ということで、読了お疲れ様です。
また次回の記事でお会いしましょう!!

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