映画評 評論

【映画記事】「スペシャルアクターズ」を鑑賞すると見えてくる「優しさ」について解説

 

さて、今日はBlu-ray、DVDも発売となりました作品「スペシャルアクターズ」について語りたいと思います。

 

今作のポイント

  • 今作を見て「上田慎一郎」監督作の「よさ」とは「何か」という点。
  • 「演じる」という点を突き詰める作品が続いているという点。

 

生まれて初めて「舞台挨拶」を見た、思い出の作品ですね!!

「スペシャルアクターズ」について

 

基本データ

  • 公開 2019年
  • 監督/脚本 上田慎一郎
  • 出演 大澤数人/河野宏紀/富士たくや/北浦愛/上田耀介 ほか

あらすじ

売れない役者の和人は、約5年ぶりに疎遠になっていた弟・宏樹に再会する。

兄と同じく役者として活動している宏樹は俳優事務所「スペシャルアクターズ」に所属しているといい、和人もその事務所に誘われる。

そこは映画やドラマといった普通の役者の仕事の他に、演じることを使って依頼者の相談や悩み事を解決する何でも屋としても活動している特殊な事務所だった。

映画のサクラなどで仕事をこなしていた和人だったが、ある日、「カルト集団から旅館を守って欲しい」という依頼がスペアクに入る。

カルト集団「ムスビル」が厄介そうな集団であることから綿密なシナリオを練り、スペアクの役者陣で演技練習を重ねることとなったが、あろうことか、和人が今回の依頼の中心メンバーに選ばれてしまう。

しかし、和人には他人に隠していた特徴があった。

それは、極度の緊張状態に陥ると気絶してしまうというものだった。

ウィキペディアより抜粋

監督、キャストの「サイン入りパンフレット」は一生の宝!!

過去の「上田慎一郎監督」作品について

「カメラを止めるな!」「イソップの思うツボ」

まず僕の「上田慎一郎監督作品」についてのスタンスについて、そこからまずおさらいしておこうと思います。

 

カメラを止めるな!

まずやはり2018年の邦画界最大のサプライズ「カメラを止めるな!」

これ、むちゃくちゃ面白かったです。

うだつの上がらない主人公の日暮監督をはじめ、どこか曲者揃いのメンバーがどんな逆境にも諦めず、一つの作品を生み出すことに情熱をかける。

そのことで僅かではあるが、仕事への情熱、プライド、意地。少ないながらの自己実現を達成する、という物語も大好きだし。

 

実際に二重、三重の意味で多くの計算をし尽くして撮影した「グダグダ」「イレギュラー」も含めた現実での撮影など、これら何重の意味も込めて、本当によくできた映画であると思いました。

そして結論として、2018年に「カメラを止めるな!」に出会えたことは、僕は一生忘れないんじゃないかな? 
と思えるほどでした。

 

 

イソップの思うツボ

ただし、この「イソップの思うツボ」に関しては、僕は過去のブログで酷評しておりまして・・・。

3人の監督が今作に出てくる「3組の家族」について、それぞれが監督をし物語を組み立て、それを最後の合流させるという点は、非常に興味深い試みだったと思いますが・・・。

如何せん、作中に登場する「戌井家」の扱い方とか、色々と「うまく」いってない。
と断言せざるを得ない作品になっていたことは、これは認めざるを得ない。

はっきりと上手くない部分が目立つ作品でしたね。

 

そして話は前後しますが僕は「スペアク」を見て「イソップ」の悪い点を明確に見たというか、理論的に見出すことができたんですね。

つまりそれは「上田監督作」の「いいところ」を明確にすることができた。
ということなんですが。

 

やはり、上田監督の真骨頂は「無駄のない」ストーリーテリングなんですよ。
見えるシーンの隅々、聞こえるセリフ、細かい目配せ。
本当に映画のずみずみまで「無駄」がないのが特徴なんですよ。

そして「優しさ」に満ちている。
これも大きな「よさ」だと思います。

その「よさ」を見つけるために「イソップ」を見たことは、僕の中では「いい体験」だったとも言えるんですよね。

 

 

 

ポイント

✅「上田監督作」の良さは「無駄ない話運び」と物語全体を包み込む「優しさ」である。

✅「イソップ」の弱点は「スペアク」で完全にカバーしている。

「スペアク」は上田監督作品の「よさ」が詰まっている

「裏切られる」気持ちよさ、「優しさ」にあふれた物語

 

私生活では「裏切られる」なんて目にあいたくない、それは全人類共通の認識でしょう。
しかし、人間というのはワガママなもので、こと映画においては「裏切られる」というのに一種の「快感」を覚えてもしまうものだ。

編集長
みなさんもそうですよね!?笑

 

この「裏切られる」「気持ちよさ」というのを描くのが「上田監督」の最大の特徴といってもいいでしょう。

そしてその工程には前述したように「無駄がない」のだ。

 

そしてもうひとつの特徴は「優しさ」で包まれている作品を作る。という点だ。
これは、後述するが、とにかく「悪人」というのが出てこない。

 

この「悪人」の存在こそが「カメ止め」と「イソップ」の最大の違いだ。

「イソップ」で物語を構成する上で出てくる「黒幕」
彼らは「悪人」だし、「戌井家」はその悪人を「殺す」そのためだけにしか、存在意義がない。

前述したように「戌井家」の登場することの蛇足感、そして存在意義が「殺人」をするだけ。

そして、最終的には割と陰惨な事件になる「イソップ」では、「裏切られる」そのことの「気持ちよさ」も最終的に「殺人」に繋がるので、半減していたり・・・。

 

これも先ほどからの繰り返しになりますが「スペアク」を見たことで「イソップ」の悪い点。
逆にいうと、僕が「上田監督作」に求めているのが「何か」
というのが明確にもなったと言える。

 

ポイント

✅「スペアク」は「イソップ」にがっかりした方にこそ、オススメ。

「悪」のいない物語

「ジョーカー」に通ずる主人公

さてさて、まずね僕が今作品で注目したのは、タイミングなど偶然も重なってのことですが、主人公である「大野和人」の設定ですね。

この作品は「ジョーカー」と同時期に公開されている。

 

 

彼は、心理的な病のため、プレッシャーがかかると失神してしまう。という重度の心理病を患っている。

でも本人は「役者」を目指そうと日々努力している。
しか当然オーディションでは失敗続き、アルバイトでもヤンキーに絡まれ失神し、クビになる。

そして家賃が払えず非常に苦しい生活をしているという描写が序盤から続く。

 

編集長
 これはまるで「ジョーカー」のアーサーではないか。という点がまず頭から離れなかった

 

心理的な病を患う者が、どん底に落とされる。
そこからどう這い上がるのか?

 

「ジョーカー」は人生を自分自身の現状を「悲劇」としてみるのをやめ、「喜劇」として生きることに決めるという選択をした。

そして自分を「笑った者たち」に復讐をする、そういう生き方を選ぶことになる。

 

今作の主人公、和人はどうするのか?
「役者」になるために、この病を克服しなければならない、それは「役者」としてプレッシャーの中で戦うことに慣れることでしか果たせない。

 

そのために和人は、兄である宏樹が所属している「スペシャルアクターズ」なる組織に、最初は渋々ながら、参加することに決めるのだ。

 

ポイント

✅アーサーとある意味、同じ和人の立場。

✅今作は彼が、その立場がら脱却しようと努力する姿を「ポジティブ」に描く。

「ケーパーもの」的、用意周到に「騙す」ことの面白さを描く

 

和人が所属することになる「スペシャルアクターズ」という事務所。

ここは、「役者」が様々な問題を「演技」で解決するという特殊な俳優事務所だ。

 

例えば占い師から依頼があれば、「当たっている」ということを仕切りにリアクションしたり。

試写会などに潜り込み「爆笑」するなど、いわゆるセコい「サクラ」を演じることで利益を稼いでいる。

 

そこに「カルトに騙された姉を救ってほしい」という依頼が舞い込む。

 

依頼者の姉をどう救うのか? どうカルト教団に一泡吹かすのか?

彼らは、緻密な作戦を用意し、周到に計画を重ねていく。
すなわち「ケーパーもの」の様相を強くしていく。

そして、降りかかる大きなプレッシャーに果たして和人はどう乗り越えていくのか?

物語は大きくこの二点を軸に動いていく。

 

まずは巧みなのは、物語構造の面白さだ。

今回は「カメ止め」のようにパートを分けて進行せずに、パート分けなく一本道だ。

途中まで完璧な作戦だ、それが破綻しかける。そこで若干の不穏さが見えるが、実はそれも・・・。

 

ちなみに、この「実は・・・」というのがまさしく我々に「裏切られる」「喜び」をもたらしてもくれる。

 

と、物語的に作戦が成功するか、否か。
そこでのギリギリの駆け引き的な面白さもある。

 

ちなみにこの「騙す」「罠を用意する」
この面白さって「オーシャンズシリーズ」の楽しさにも近いんですよね。

 

しかも、この作戦の成功には和人の「心理的な病」の克服が必要なのだ。

作戦が成功するのか? というドキドキと、和人の成長というのが物語として有機的に絡まるのだ。




ポイント

✅今作最大の作戦の成功。そこには「和人の成長」というワンロジックが必要。

✅二重の意味でラストに「深み」が出る。

ささやかな「自己実現」

さらに今作品最大の白眉であるクライマックス。
和人がずっと憧れていた「レスキューマン」というヒーロー。

このヒーローの活躍のシーンを模した、クライマックスの怒涛の展開。

憧れたヒーローの姿。
その姿に自分を重ねて、映像やトリックがわかっているからこそ、このクライマックスはバカバカしくて、本当に爆笑展開なんですけど。

 

そこで和人が、なりたい自分になり、ささやかながらも自己実現をしながら、そして自身にぶつかるプレッシャーに抗いながらも、勝利をする。

実は考えれば、非常に「感動的シーン」にもなっている。

 

ただ、あまりにも起こることのバカバカしさに、笑っちゃうんですけどね!
(このバカバカしいは褒めまくりの意味ですよ!笑)

ラストに「レスキューマン」を模してヒロインにキスするシーンまで再現しようとして、ビンタされる。

ここは現実の厳しさを表現していたり? するのかな・・・笑

 

ただ、とにかく、このシーンはバカバカしさの中にも、「自己実現」の喜びさえ携えており、感動すらしてしまうのだ。

 

ポイント

✅バカバカしいながら、「自己実現」という感動すら帯びているラスト。

最後には、やはり「裏切られた」「気持ちイイぃ」ってなります笑

 

今作のクライマックスの展開は、物語的に「ムスビル」というカルト教団との勝利であることはもちろんのこと、自分自身の病気への克服、つまり勝利でもある。

そういう物語構造の面白さはもちろんのこと。

 

例えば兄弟で「レスキューマン」というヒーローを巡っての会話。

普通に見ていると、ただ和人を勇気付けるためだけのセリフに聞こえるが、実はこれも大オチを見た後だと、若干ニュアンスが変わって聞こえたり、そういうキチンと何度も見たくなる工夫がなされている。

 

2度目に今作を見ると、セリフのニュアンスなどが微妙に変化するという気の利いた配慮もあり、何度も見たくなる作品に今回もなっていた。

 

 

さらには「スペシャルアクターズ」の面々の何ともイキイキしたことか。

「ボス」とよべという社長だったり、その娘「鮎」の厳しすぎる演技指導。
シナリオライターのできる奴感。最後に彼が「ボス」と呼ぶシーンよかったです笑

 

 

カルト教団「ムスビル」の何とも馬鹿らしいこと笑

「エアおにぎりを握って食べる」とかもうアホかってなりましたけど、確かにでも「カルト」ってこういうバカみたいなことを本気でやりきる。

これもいわば「演技」で人を騙すという。
ある意味でこういう問題の本質を付いていたり、笑えるけれど、これ多分世の中の真実だよな。って思わされてね。

ある意味で今作は「演技」対「演技」という構造になっていたりね。

 

ちなみに上田監督は「カメ止め」「イソップ」「スペアク」と「演技」「作品を作り」というのをテーマにし続けてますね。

おそらく上田監督は、「演技」を心底「面白い」と思っているし。
その「可能性」を信じているんでしょうね!!

 

特に教祖「タマル」の何とも不気味なこと、でもこういう教祖いてもおかしくないというリアル感も含めて、不気味さがあったのもよかったです。

 

でもこの映画さらに大オチで、実は本当の「悪人」というのが存在しなかったことが明らかになり、本当に優しい終わり方をする。

和人も冒頭と似たシチュエーションでのオーディションで今度は失神しない。(演技力はまだないんだけれど笑)
そういう成長を遂げている。

 

ただ、こうした感動を残すだけでなく、それら大きな、つまりこの物語で起こっていることすべてが、一つの大きな「演技」で構成されていたという、また気の遠くなるラスト。

こりゃ本当に一本取られたという感じ。

 

ということで、結論として今回も「裏切られて」「気持ちよかった」です。

 

ポイント

✅大オチで完全に「気持ちよく」「裏切られます」

今作を振り返って

ざっくり一言解説!

今回も「裏切られました」!!

最後は和人と同じく、気が遠くなりました!!

まとめ

というわけで、今回またも「気持ちよく裏切られ」
上田慎一郎監督の手腕にやられてしまった。

そしてやっぱり、彼の映画は、誰も「悪人」がいないのがいい。

そして和人が、ささやかな自己実現を遂げ、それでもこの先に人生は続く。
でもそのささやかな「自己実現」が少しそのさきの人生を豊かにしてくれる。

非常に「優しい」道を示しているのも本当に見ていて安心ができる。

 

「カメ止め」「イソップ」と見続けてきたことで、僕自身が彼に何を期待しているのかより明確にできることができました。

やっぱり、上田監督の映画を今後も楽しみに待ち続けたいし、その価値は十二分にあると確信させていただきました。

 

まとめ

  • 「気持ちよく」「裏切られる」これぞ「上田慎一郎」作品!!
  • 「優しさ」に満ち溢れた作品である。
  • 「悪人」がいない、そこも本当に「優しい」

舞台挨拶

ということで、昨年の舞台挨拶でキャスト及び、上田慎一郎監督とお会いできて、本当に思い出に残っている今作品。

みなさんのサイン入りのパンフレットは一生の宝です!!

みなさんの今後の活躍を微力ながら応援しています!!

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