映画評 評論

『さかなのこ』〜文句なしの、今年ベスト級映画!〜【新作映画評論】

 

さて、今回は最新映画を評論していきたいと思います。

ということで、今回は「さかなクン」の人生を題材にした『さかなのこ』
こちらを鑑賞してきましたので、その感想を語っていきたいと思います。

 

この作品のポイント

  • 主演「のん」の意味
  • 「好き」を突き詰める生き方を描く

一応の原作はこちら!

『さかなのこ』について

基本データ

基本データ

  • 公開 2022年
  • 監督 沖田修一
  • 脚本 沖田修一/前田司郎
  • 原作 さかなクン『さかなクンの一魚一会 〜まいにち夢中な人生!〜』
  • 出演 のん/柳楽優弥 ほか

あらすじ

お魚が大好きな小学生・ミー坊は、寝ても覚めてもお魚のことばかり。

他の子供と少し違うことを心配する父親とは対照的に、信じて応援し続ける母親に背中を押されながらミー坊はのびのびと大きくなった。

高校生になり相変わらずお魚に夢中のミー坊は、まるで何かの主人公のようにいつの間にかみんなの中心にいたが、卒業後は、お魚の仕事をしたくてもなかなかうまくいかず悩んでいた…。

そんな時もお魚への「好き」を貫き続けるミー坊は、たくさんの出会いと優しさに導かれ、ミー坊だけの道へ飛び込んでゆくーー。

公式サイトより引用

全ては「普通じゃなくていい」を描くため

キャスティングにも意味がある

 

今作はタレント・イラストレーター、そして魚類学者としてテレビでも人気の「さかなクン」の半生を綴ったエッセイを題材にしている。

そんな中、主演が「のん」ということで、女性が、男性である「さかなクン=ミー坊」を演じるということに話題が集まっていた。

 

確かにのんさんの不思議な魅力は、さかなクンに通ずるところはあるし、なんとなく雰囲気は似ているな。
という具合にキャスティングを見た際に、そんな軽い感じで受け止めていましたが、まずこのキャスティングに相当深い意味があったことに驚かされた。
その点からまず述べていきたい。

 

まず映画開始、太く力強い毛筆で「男か女かはどっちでもいい」という宣言から今作は始まる。

 

これは、非常に素晴らしい今作の「パンフレット」にも書いてあるのだが、この一言は台本の読み合わせの時から常に掲げられていたテーマだそうだ。
実はこのテーマは今作ではかなり重要になってくる。

ちなみにこの「男と女かはどっちでもいい」というのは「魚類」的な視点から見ると、魚類は雌雄同体だったり、雌雄入れ替わることもあり、魚類視点的な意味合いも含んでいるとのことだ。

 

編集長
今作のパンフレット、かなり読み応えがあるのでオススメです!

 

 

そこから飼育している「イシガキフグ」に餌やり、そして歯磨きをするシーンで一気に「あぁこの人は魚好き」なんだという、つまり「のん」が「さかなクン=ミー坊」であるという点を一目で観客に提示して見せるのだ。

 

そこから彼の小学生時代から物語が語られていく。

 

ではなぜこのキャスティングが重要なのか?
それは今作が描くテーマが「普通じゃない」こと、それを魅力的に描く作品だからだ。

 

今作は一応「さかなクン=ミー坊」の半生を綴ったエッセイが原作だ。
なので当然主人公は「男性」なわけだ。
「普通」ならば「男性」をキャスティングする。

 

でもそうはしない、なぜならこの映画は「普通じゃない」を描くからだ。

 

 

作中でも描かれるミー坊の魚への「愛」は常軌を逸するレベルだ。
つまり「普通」では考えられない程の愛で、時に生きづらささえ感じてしまう程なのだ。

 

ちなみに、この「一応」というのは、実は今作「正確にさかなクン」の半生を綴っているワケではない。
このミー坊はさかなクンとほぼ同一人物だが、監督の沖田氏曰く「さかなクンであり、さかなクンではない」というライン引きをしているのも特徴だ。

 

そんなミー坊を「普通」でなくていい、「好き」に正直になっていい。
ミー坊の真っ直ぐさを作中では終始描き続ける。

 

そんな今作はそこを敢えて「女性」である「のん」をキャスティングしている。
この「普通ではない」キャスティングにこそ大きな意味がある。

 

このテーマの置き所に対して、キャスティングから「普通」ではないを体現していることに、僕はまず大きな意味・意義を感じた。

 

今作は「のん」が主演ではいけないという、確固たる芯が貫かれているのだ。

 

 

ポイント

  • なぜ「のん」が主演なのか、はっきりとした「意味」がある!

「普通」でなくてもいい!

 

先ほどと内容は被るが、今作のメインテーマは「普通でなくてもいい」だと言える。

 

子供の頃、水族館に行き、母親に図鑑を買ってもらったミー坊。
彼はそこから魚の魅力に取り憑かれて、毎日「魚」のことだけを考えるようになった。

他の勉強は一切せずに、全ての時間を「魚」に注ぐミー坊。
彼は小学校でもかなり変わった存在になっていく。

 

だが、母親は彼を決して型にはめようとしなかった。

 

 

今作は作中至る所で「普通とは?」という問いかけがある。

一番心に刺さるのは、やはり父親と母親が夜中に「ミー坊」について語るシーンだろう。
「あんなに魚が好きなんて、普通じゃない」「魚のことしか考えないなんて、普通じゃない」

この作品のミー坊は冒頭から異常なまでの「魚愛」を我々に見せてくるのだが、それは確かに「普通」とは違う。
やはり変わり者にも見えてしまう。


だが今作はミー坊の「魚愛」を母親は決して否定せず、「普通」という枠組みにはめ込もうともしない。

 

そんな「普通」ではないミー坊の、屈託のない「魚愛」
何年経っても変わらない姿に、周囲の人々は勇気づけられていくし、その姿に憧れの思いを重ねていく。

 

これは自分達にも突き刺さる「ここまで熱中できるもの」それが自分にあるだろうか? と。
作品を見ている中で、僕は「羨ましさ」まで感じてしまったのだ。

 

 

この作品を見ていて思うのは「普通」であることで失われるものもあるということだ。
日本の教育は作中見ていてもわかるが、個性を重んじることはせず、どちらかと言えば「人間を平坦」にする教育をする。

本当はあるはずの「個性」を決して、平均的な人間を作ることに重きを置いている。
高校時代にカブトガニの人口孵化に成功するなど、非凡な才能を常に発揮しているが、それは「役に立たない」と一蹴されてしまうのだ。

そしてそれは学校教育だけではない。
社会そのものが「平凡」な人間を求めようとするのだ。

 

高校卒業後もミー坊は事あるごとに「普通」ではないことで、大変な人生を歩む。
誰からも才能を認められず、一歩間違えれば家無しの状態にもなりかねないほどに苦労している。

 

だが、それでも彼の根底には「魚が好き」という確固たる芯がブレずに存在し続けているのだ。
何度も言うが、ここまで「好きなもの」が自分にはあるのか?
すごく自問自答させれる作劇になっている。

 

そして、この「魚が好き」と言う思いがブレない彼の姿は、かつての友達をも巻き込んでいく。
この作品では、確かにミー坊はみんなの思い出、そして現実でも大きな存在として描かれている。

 

印象的なのは、成長しヒヨとその彼女とミー坊が食事をするシーンだ。
ミー坊の夢を笑う彼女、ミー坊がどれだけ「魚が好きか」知っているからこそ彼は彼女怒りをぶつけた。

真っ直ぐに「好き」を追求するミー坊を笑われたことが許せなかったのだ。

 

ある意味で「好き」を「生きる」ことが難しい世界で、そんな中で「好きを生きる」ミー坊の姿はきっと輝いていたことに違いない。

 

 

そして我々は現実として「さかなクン」のこの非凡な才能が発揮され、絶滅したとされる「クニマス」の発見や、活躍を目にしている。
ミー坊も多くの先生に「普通」であることを強要されるが、それを母は固辞した。
周囲の人間も最初は笑ったが、彼の真っ直ぐさを徐々に受け入れていった。

 

周囲に理解者がいたからこそ、彼の非凡さは開花したとも言える。
逆に現実社会でも「普通」であることを求めらて、失われた才能がどれほどあるのか・・・。

考えさせられる面が非常に多いのも今作の特徴だ。

 

さて、この映画に関してはスタンドFMでコラボライブをしたのだが、そこでも出た意見として「甘い幻想」であるというものがある。
正直この点に関しては「そうです」と言わざるを得ない。

意図的にこの作品はミー坊を否定する存在や、彼の苦労を大きく描かいておらず、ミー坊の真っ直ぐさを描くことに特化している。
そのため作品に対して「甘い」と言う指摘はあって然るべきだ。

むしろ多くの人々は「普通であること」を強要されて、自分の「好き」を貫けない人生を歩んでいるに違いない。

 

 

 

ポイント

  • 「好き」を貫ける人生は難しい
  • だからこそ、変わらないミー坊にみんなが感化されていく

魚が好きだけど、食べるのも好き

 

ここまで映画のテーマについて話してきたが、もちろんこの作品は見ていて「笑える」シーン非常に多いのが特徴だ。

 

冒頭から一家で魚を毎日ひたすら食べるシーン。
海でタコを捕まえてペットにしようとしたが、父親が目の前でシメて「丸焼き」にして食べるシーン。
特にこのタコをシメるシーンは劇場でも爆笑がおこるほどだった。

だが、このシーン。
本当はミー坊はショックを受けてしまうはずだが、彼はそのタコの丸焼きを食べるという。

 

ここでミー坊の「好き」は「観察対象」だけではなく「食べる対象」としても「好き」であることが明らかになるのだ。

 

 

このことが最も効果的な爆笑になるのが「ヤンキー同士」の戦いをミー坊が「魚釣り」をして収めるシーンだ。
これはさかなクンの実際のエピソードなのだが、ここはかなりエッセイでも印象的な描かれ方をしていたので、製作陣も相当力を入れたそうだ。

 

ここで、ある種ミー坊の理解できない「魚愛」が炸裂する。
魚の死体を指差し「お前が魚を殺したんだろ?」と籾山(もみやま)がさかなクンに詰め寄るが、「殺してないシメたんだ」と返すなど、一見すると無茶苦茶な理論だが、ミー坊の中ではこれは矛盾しないのだ。

 

なぜなら、彼は「食べる」ことで「好き」を表現しているからだ。
それはただ殺しているのとは違うと言うことだ。

その後この騒動は、魚を釣り上げる際のミー坊の馬鹿なほどの真っ直ぐさにヤンキーたちは感化される。
そして「お前すげーな」と周囲に認められてミー坊は友人を作っていくのだ。

さらにこの出来事が籾山の人生を大きく変えることになり、それが回り回ってミー坊の人生を好転させることになる。
この辺りの作劇も非常にうまい作りになっているのも特徴だと言える。

 

あと、今作で「さかなクン」がミー坊の近所に住む「魚好きのおじさん」と言う役回りで登場している。
そこで衝撃だったのが、トレードマークのハコフグの帽子を取るシーンだ。

国会出席、天皇陛下との謁見でも脱がなかった帽子をまさか脱ぐとは・・・。
割と衝撃のシーンだったのも追記しておこう。

 

 

ポイント

  • ミー坊の魚好きは「見ること」「飼う事」「食べること」が矛盾せずに存在している

今作品を振り返って

ざっくり一言解説!

「好き」に素直に生きる姿が素晴らしい!

憧れる生き方に拍手!

まとめ

 

僕はこの作品を見て「好き」を懸命に生きるミー坊の姿に感動させられたし、この生き方を非常に憧れの目で見た。

「普通」であることを強要されがちな世界で「好き」に正直に生きることが、どれほど難しいのか。
そのことを痛感させられもした。

だからこそ、この生き方に「憧れ」てしまったのかもしれない。

 

ミー坊は「魚博士になる」とゴールだけ設定しているが、そこに至る道を全く考えずに「目の前の好き」に没頭する。
「普通」ならば「大学へ行く」「修士号をとる」と考えるが、そうはしない。

ただ「好き」に正直に生きる。
そのことで夢を叶えることも出来るのかもしれない。

「夢」を追いかける人。
「夢」を諦めてしまった人。

さまざまな立場の人間に刺さる映画だったのではないか?

 

個人的には今年ベスト級に刺さる作品でしたので、おすすめです!

 

 

まとめ

  • 「好き」に正直に生きる姿に感動
  • 「普通」とは何か? をキャスティングから体現している!

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