ディズニー総チェック 評論

【映画記事】『シュガー・ラッシュ:オンライン』ーここ最近ぶっちぎりのワーストー【ディズニー総チェック】

2021年8月6日

 

さて、今日も「長編ディズニーアニメーション」を公開順に鑑賞し、評論していく「ディズニー総チェック」

今回は通算57作品目となる『シュガー・ラッシュ:オンライン』について、深堀り解説していきたいと思います。

 

編集長
総チェックも残りあと僅か!!

 

この作品のポイント

  • 『モアナと伝説の海』と共通する弱点がある。
  • 「ディズニー」が巨大化したことを象徴する、描写の数々。
  • 「前作」の素晴らしさはすべて失われた・・・。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』について

基本データ

基本データ

  • 公開 2018年
  • 監督 リッチ・ムーア/フィル・ジョンストン
  • 脚本 フィル・ジョンストン/パメラ・リボン
  • 声の出演 ジョン・C・ライリー/サラ・シルバーマン ほか

あらすじ

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオがお贈りするアクション満載のアドベンチャーで、ラルフがインターネットの世界を騒がせる。

ラルフヴァネロペのでこぼこコンビは、ゲームのパーツを手に入れてシュガー・ラッシュを救うため、危険を承知でインターネットの世界に繰り出す。

難しいミッションに頭を抱えるふたりが助けを求めたのは、人気動画サイト「バズチューブ」のアルゴリズムであり流行の最先端をいくイエスや、治安が悪いオンラインカーレースゲーム「スローターレース」の筋金入りのレーサーであるシャンクなど、インターネットの住人たちだった

ディズニープラスより引用

結論:個人的には好きではない・・・。

前作の良さは「死んだ」

 

まず『シュガー・ラッシュ:オンライン』という作品について、僕なりの結論ですが・・・。

正直「好きにはなれない」
「これなら続編を作らなくて良かった」と言わざるをえない。

 

ということで、ここから先は結構この作品に対して「厳しい」ことをメチャクチャいいますので、「好きな方」はもうね、この先読まなくて大丈夫なので・・・。

ぜひその辺り、よろしくお願いしますね。笑

 

 

編集長
ここから思う存分
深堀りしていきますよ!!

 

まず今作の前作にあたる『シュガー・ラッシュ』についてだが、詳しくはこちらで語っていますが、一応振り返っておきたい。

 

 

この作品は「悪役だから」という理由で、自身の住む世界から爪弾きにされた男「ラルフ」
「不具合=バグ」があるからという理由で、こちらも自分の住む世界で居場所のない少女「ヴァネロペ」

そんな似たもの同士の2人が、自分の居場所を見つけ、そして「親友」という存在を手に入れる物語だ。

 

さらに個人的には『シュガー・ラッシュ』で描かれていた、「なりたい自分」と「現実の自分」
という、悩みの中でもがいたラルフが、最終的に「自分の居場所」というものを、自分の中で折り合いをつけ、手に入れる姿に感動させられた。

 

そして、ささやかながら「ヴァネロペ」の「ヒーローになる」という、本当にささやかな「自己実現」する姿に勇気づけられた。

だからこそ、今こうして「総チェック」してきた中でも『シュガー・ラッシュ』という作品は、かなり高い評価をしているんですが・・・。

 

そんな僕がこの『シュガー・ラッシュ:オンライン』を見て、こうした前作の「良さ」の大部分は失われてしまったと言わざるを得ないのは、本当に悲しいことで。

 

 

で、誰もが議論したくなる今作の結末の話をいきなりすると、この作品はヴァネロペは「自分の夢のために、新天地へ行く」
そして「親友とも、時間の経過とともに別れることもある」という決断をする。

この決断は、2006年以降の「ジョン・ラセター体制」の「ディズニー作品」としては、芯の通ったものだといえるし、理解はできる。

 

 

ヴァネロペという「シュガー・ラッシュ」というゲームで生まれた存在が、外の世界で「生きたい」と願う。
そしてその夢を叶える。

何度も言うが、この決断そのものは理解できる。
それこそ『アナ雪』に通ずる「ありのままで」というメッセージだとも言える。

 

だが、それを『シュガー・ラッシュ』という作品シリーズでやって欲しくなかったというのが正直なところで・・・。

 

なぜなら、前作の良さとは、まさに「この逆」だったからだ。

ラルフという男が「理想の自分」と「現実の自分」の間で、悩み、そして苦しむ。
その中で、「自分なりに折り合い」をつけて、そして「今いる場所の見方を変えて生きる」

そんなラストが前作最大の良さだったはずだ。

 

深堀りポイント

これは『仮面ライダーカブト』という作品で主人公の天道総司のセリフだが、

「自分の為に世界を変えるんじゃない…。自分が変われば、世界が変わる!」

というように、ラルフは、自分で「世界の見方を変えた」ことで、今いる「世界が変わった」といえる。
それが良さだったはず・・・。

 

 

そして、さらに前作のヴィランである「ターボ=キャンディ大王」はある意味でラルフと鏡写しの存在だった。

ターボは「自分のために、世界を変えた男」だ。
それは、ある意味でラルフのダークサイドとも言える存在だった。
前作では、それに打ち勝つラルフ達、という構図も相まって、最終的には大きな感動につながったのだ。

 

だけど『シュガー・ラッシュ:オンライン』のラスト。
何度も言うが、「新生ディズニー」の掲げたい理念は、十分に理解できるが、だけどヴァネロペの決断は、いうなれば「ターボ」しているのと同義だ。

それは前作で打倒した、それもヴァネロペを最も苦しめた張本人と、同じ決断をしているように見えてならないのだ。

 

しかも彼女は「シュガー・ラッシュ」という世界で、もはや人気のキャラクターだ。
彼女がこの「シュガー・ラッシュ」という世界を去ることで、例えば「ゲーム人気」がなくなれば、この世界に住む住人は居場所を失う可能性だってあるのだ。

 

 

要はこのオチだと、それ自体は「正しい」と思える決断も「他人のことを鑑みないワガママ」と捉えかねないのだ。
どう考えても、このヴァネロペの「生き方」が正しいものに思えない。

そして、それはまさしく「前作」と真逆の行動に見えるからこそ、僕は今作が全く評価できないのだ。

 

編集長
もしも、これが『シュガー・ラッシュ』でなければ、評価できたかも知れない

 

ちなみに、今作と似た構図を持つ作品で「PIXAR」の『トイ・ストーリー4』があるが、僕はこちらの作品は高く評価している。
詳しくは後の「PIXAR総チェック」の評論に譲るが、あちらは再度「フォーキー」に「ウッディ」が「おもちゃとは?」
というのを再度解くシーンから始まる。

そして、ウッディの中にある「生命」として「どう生きるのか?」という点をキチンと悩ませているのだ。
しかも、そこまでシリーズを積み上げてきた「重さ」があるので、見ている側も納得させられた。

 

 

ポイント

✅「理念」はわかるが、『シュガー・ラッシュ』としては「首をかしげる」ラストになっている。

「ラルフ」の扱い方について

 

さらに、今作を輪をかけて「悪く見える」要因に「ラルフ」が挙げられる。

彼は前作で「一人ぼっち」だったが、最後には仲間や「ヴァネロペ」という親友を手に入れる。
それが故に「親友」を失うことに、強烈な「不安」を抱いているのだ。

 

彼の行動そのものは、前作と同じく「他者」への、ある種の「依存」「承認欲求」的な面から来ている。
だが、今回は特に「依存」という面が「強烈」に描かれすぎているので、正直見ていて「気持ち悪い」レベルに昇華しているのだ。

 

その最たるものが増殖した「ラルフ」だろう。

 

 

今作はある意味で、「依存」から脱却する、つまり「ラルフ」の心にある「不安」を打ち破ることでラルフの成長を描いている。
だから、この構図事態は理解できるのだ。
だけど、それにしたって「気持ち悪い」という感情が勝ってしまう・・・。

ここがキツイ。

 

 

さらに気になる点が今作にはある。

それは「変わらないこと」をラルフは求めている。
対してヴァネロペは「変わりたい」という思いを持っている点だ。

今作は「変わること」に重きをおいているので、ラルフの「変わりたくない」という思いが軽く扱われている感も否めない。

 

 

確かに「自分の新しい世界」を求めて「変わろうとする」
それ自体は、正しい価値観だ。
だけど、それに対して「変わりたくない」という思いを持つことが、果たして「悪い事」なのか?

そこはすごく疑問が残る。

 

なんにせよ、とにかく「ラルフ」が非常に「気持ち悪く」見えてしまう点は、少々やりすぎと言わざるを得ない。
そして、この点が非常に今作を見づらいものにしているのも事実なのだ。

 

 

ポイント

✅「ラルフ」の扱いが、どうしたって悪すぎる・・・。

実は『モアナと伝説の海』と「問題点」は共有している

 

さて、この間評論した『モアナと伝説の海』
この評で、僕は伝えたいメッセージについて、「確かに理解できる」が「すこし嫌な部分が滲んでいる」と述べた。

具体的には「恋愛をしない”プリンセス”」
それは、「新しい価値観」として理解できるが、あまりに『モアナ』は「その部分を強調しすぎている」ということだ。

 

要は「恋愛」とは、そこまで「否定」されて然るべきモノなのか? ということだ。

 

2006年以降の「ディズニー」は、過去の価値観を刷新することで「名作・傑作」を連発してきた。
いわゆる新時代に語りたい「おとぎ話」として、作品を作っているのだ。

それ自体は、素晴らしい。

だけど『モアナ』は、「新時代のプリンセス像」として、やろうとしていることは理解できるが、強引な点が目立つのだ。

 

 

 

それは『シュガー・ラッシュ:オンライン』も同じだ。
今作は最終的な結論として「ありのままで」という点を、さらに突き詰めたメッセージを語る作品だと言える。

 

だけど今作の描き方は「ありのままで」という価値観の抱える、「負」の部分がどうしても目立ってしまうのだ。
つまり、このような描き方だと「ありのままで」生きることは、「わがまま」と捉えかねないのだ。

 

 

何故『アナ雪』の「ありのままで」は世界で受け入れられたのか?

それは、エルサが「一人」になる、「孤独」に身を落とすことで、「ようやく安住の地を手に入れられる」
その様子を「ありのままで」のシーンで彼女は歌にしていた。

確かに「ありのままで」のシーンで、彼女は「望んだ世界」を手に入れた。
だけど、それは非常に悲しい「孤独」への入り口だったのだ。

そんなエルサが、最終的に自分を受け入れてくれる「世界」を見つける。
そこまでの苦悩をキチンと描いているからこそ、『アナ雪』の「ありのままで」は受け入れられたのだ。

 

 

 

つまり、『モアナ』と今作は「メッセージ」に含まれる「悪い部分」「強調しすぎると嫌味になる点」が、浮き彫りになる作品になっているのだ。

 

これが、この二作品の評価がパックリと割れてしまう点ではないだろうか?

 

 

ポイント

✅語りたい「メッセージ」の負の部分が「目立つ」作品になっている。

ただし「面白い」点もある!!

 

ここまで主に「ダメな部分」を論じてきたが、もちろん今作にも面白さはある。

それは、やはり「ディズニー」の世界を、「ディズニーアニメ」で描いた点ではないだろうか?

 

以前の『ベイマックス』評論で、「ボブ・アイガー」は「ディズニー」という言葉の「最大化」を狙っていると述べた。
今作のインターネット世界での「ディズニー世界」は、まさにそれを象徴しているシーンだ。

 

「S・Wシリーズ」のマシンが「ディズニーキャッスル」をバックに空を飛び交い、さらに「マーベルヒーロー」「PIXARキャラ」の登場。
「ディズニーキャラ」の出演。
ちなみに「帝国のマーチ」などBGMも使用するなど、抜かりないのだ。

さらに「ディズニー・プリンセス」勢揃い。

 

編集長
個人的にシンデレラが「ガラスの靴」を割って「凶器」にしたり、白雪姫の服の柄が「毒りんご」なのも、笑っちゃったりしました

 

まさにこの「豊かなキャラクター」を一同に介することができるのは、すべてが「ディズニーの手中」にあるからだ。

このワンシーンでは、「ディズニー」という意味が、肥大化していることを象徴しているのだ。
つまり「ボブ・アイガー」の狙いの具現化とも言うべきシーンに仕上がっている。

これぞ、まさに「ディズニー」が「エンタメ界」の覇権を握っていることの証明なのだ。

 

そして、これは単なる「ファンサービス」にとどまらない。

 

 

これまで「新生ディズニー」は「新時代の価値観」を描く方向にシフトしてきたことは、これまで何度も述べてきたが、今作はいよいよ「そのことを」直接「プリンセス」に語らせるのだ。

 

 

良くも悪くも「ディズニー・プリンセス」は「夢と希望」そして「偏見」を振りまいてきた存在だ。
そんな「プリンセス」の口を通じて「男がいないと何もできない、と思われてない?」
など、これまでの「価値観」をメタ視点で指摘するのは画期的だ。

つまり、これからのディズニーは「過去の価値観」を刷新していくということを、公式に言及した形になっている。

そんな「宣言」を「プリンセス」にさせるのが、この映画の革新的な点だと言える。

 

 

ポイント

✅「ディズニー帝国」を象徴する、キャラクターを湯水の如く使う采配。

✅これまで「作品内」で語っていた、「新しい価値観」について「プリンセス」を通じて言及するのが「素晴らしい」

 

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

面白い作品ではあるんですが・・・、前作が好きな身としては複雑!!

語っているテーマも悪くはないんですが・・・。

まとめ

 

今作と『モアナ』は共通している「問題点」がある。

それは「メッセージ」の本質は「素晴らしい」にもかかわらず、その「メッセージ」が抱える「負」の側面が、浮き彫りになってしまっている点だ。

 

「ありのままで」というのは、ある一線を超えると、それは「ただのわがまま」と思われかねない。
今作は、その一線を超えているのだ。

しかも、今作の結末は「前作」の「良かった点」を、僕はことごとく壊しているようにしか見えない。

今作のヴァネロペの結末が、前作のヴィランを肯定しかねない点は、どうしたって評価することは、申し訳ないができない。

 

もちろん面白いと感じる点はあるが、僕は今作のダメな点が目についてしまった・・・。
ということで、僕は今作は2006年以降「ディズニー作品」でワーストと言わざるを得ない。

 

 

まとめ

  • 新生ディズニーの投げかける「メッセージ」は素晴らしいが、一歩間違えると「負」の部分が浮き彫りになる。
  • 「プリンセス」に新しい価値観について発言させるなど、革新的な面もある。

PIXAR総チェック 評論

2022/6/15

【PIXER総チェック #8】『レミーのおいしいレストラン』〜ネズミはピクサーだ〜

  さて、今回は「ピクサー総チェック」をやっていきたいと思います。 と言うことで、「ピクサー作品」としては通算8作品目となる『レミーのおいしいレストラン』を深掘りしていきたと思います。   ポイント レストラン=ディズニー、ネズミ=ピクサーの図式 ブラッド・バードの作家性がやはり漏れ出ている つきまとう欠点! 目次 『レミーのおいしいレストラン』について基本データあらすじディズニー・ピクサーの関係と、作品の構図に注目!!ディズニーを揶揄した設定漏れ出るブラッド・バード監督の持ち味バードの信条と相反する、「 ...

ReadMore

映画評 評論

2022/6/8

『トップガン マーヴェリック』〜映画館で見るべき映像体験〜【映画評論】

さて、今回は公開からSNSや、自分の身の回りでも話題沸騰の作品を評論したいと思います。 ということで『トップガン マーヴェリック』を今日は取り上げたいと思います。   この作品のポイント トム・クルーズの自伝的映画である。 まさに多幸感溢れるハリウッド映画! 映画館で見るべき作品   目次 『トップガン マーヴェリック』について基本データあらすじトム・クルーズとマーヴェリック自伝的映画要素映画としての喜び今作を振り返ってざっくり一言歌解説!まとめ 『トップガン マーヴェリック』について ...

ReadMore

映画評 評論

2022/6/8

『シン・ウルトラマン』激推しできる理由を解説【新作映画評論】

  さて、今回は、2022年邦画ではぶっちぎりの成績を叩き出している注目作品を紹介します。 と言うことで、日本を代表するキャラクター「ウルトラマン」を「エヴァンゲリオンシリーズ」の制作者にして、自身もファンだと公言する「庵野秀明」が企画・脚本・総監修を担当。 監督は庵野秀明と苦楽を共にしてきた「樋口真嗣」が務めて映画化した、『シン・ウルトラマン』こちらついて今日は語りたいと思います。   今作のポイント ウルトラマンとエヴァンゲリオン ウルトラマンたちの目的とは? それでも人間を「愛してしまう」 目次 『 ...

ReadMore

PIXAR総チェック 映画評 評論

2022/5/23

【PIXER総チェック #7 】『カーズ』〜人生で大切なもの〜

  さて今回も「ピクサー作品」を公開順に鑑賞して評論をしていく【ピクサー総チェック】 「ピクサー」としては通算7作品目となる『カーズ』こちらを鑑賞しましたので、深掘りしていきたいな、と思います。   この作品のポイント 実に渋い、玄人好みの映画 いよいよディズニーが、「ピクサー」と合流を決める歴史的瞬間 目次 『カーズ』について基本データあらすじ実に渋い映画なんです!破綻か、それとも合流か? 運命の分かれ道久々のジョン・ラセター監督作非常に渋い作劇と、かわいいキャラクターの両立尊いものとは?ハドソンと言う ...

ReadMore

PIXAR総チェック 評論

2022/5/8

【PIXER総チェック #6】『Mr.インクレディブル』を評論!

  今回は久々に「ピクサー映画」を公開順に鑑賞していく「PIXER総チェック」企画を進めましょう! ということで今回は、「ピクサーアニメーション」として6作品目の『Mr.インクレディブル』を評論していきたと思います。   ここがポイント ヒーローを誰が見張るのか?実は深い「ヒーロー論」に追及する作品 本当にヴィランに対しての扱いは、あれで良いのか!? 目次 『Mr.インクレディブル』について基本データあらすじ実は作家性が強い作品「ピクサー」のこれまでを、振り返りブラッド・バード監督作品であるということ才能 ...

ReadMore

-ディズニー総チェック, 評論
-

Copyright© Culture Club , 2022 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.