
平成の日本が生み出した最高のカルチャー「ポケットモンスター」
それがいよいよ日本を飛び出し、ハリウッドで実写化。
そんな奇跡の作品を今日は紹介。
「名探偵ピカチュウ」について今日は語りたいと思います。
この記事を読むと
①「ポケモン実写化」において、避けれない懸念ポイントを回避している設定の巧みさに気づく
②今作のポケモンデザイン、それが「リスペクト」であることに気づく
③今作のクライマックスの弱さが気になる
④「名探偵ピカチュウ」を見たくなる
ポケモンをもっと好きになろう!
目次
「名探偵ピカチュウ」について
基本データ
- 公開 2019年
- 監督 ロブ・レターマン
- 脚本 ダン・ヘルナンデス/ベンジー・サミット/ロブ・レターマン/デレク・コノリー
- 出演 ライアン・レイノルズ/ジャスティス・スミス/キャスリン・ニュートン 他
- 吹き替え 西島秀俊/竹内涼真/飯豊まりえ 他
▼あらすじ▼
かつてポケモンのことが大好きな少年だったティムは、ポケモンに関わる事件の捜査へ向かったきり、家に戻らなかった父親・ハリーとポケモンを、遠ざけるようになってしまった。
それから年月が経ち、大人になったティムのもとにある日、ハリーと同僚だったというヨシダ警部補から電話がかかってくる。
「お父さんが事故で亡くなった―」。複雑な思いを胸に残したまま、ティムは人間とポケモンが共存する街・ライムシティへと向かう。
荷物を整理するため、ハリーの部屋へと向かったティムが出会ったのは、自分にしか聞こえない人間の言葉を話す、名探偵ピカチュウだった。
かつてハリーの相棒だったという名探偵ピカチュウは、事故の衝撃で記憶を失っていたが、一つだけ確信をもっていることがあった……。
「ハリーはまだ生きている」
ハリーは何故、姿を消したのか?
ライムシティで起こる事件の謎とは?
ふたりの新コンビが今、大事件に立ち向かう!
YouTubeムービー紹介文より抜粋
この画面が見れただけで満足という至福

ポケモンバトル・ゲットに関する生命倫理に対する疑問の排除
ポケモンシリーズを実写化にする上で最もネックになるのは、「生命倫理」視点だろう。
そもそも野生の動物を捕まえて、戦わせる。
そのことに対する、我々がゲームやアニメだからという理由で目を瞑ってきた問題。
それをリアルに見せる実写版にすると、どうしてもその部分は浮き出てきてしまう、そういうリスクは避けられない。
だからこそ「名探偵ピカチュウ」というゲームを実写化したんだ
今作の原作にあたる「名探偵ピカチュウ」は本筋のシリーズのスピンオフで、基本的にこのゲット・バトルというものが主として描かれない。
今作の舞台である「ライムシティ」では独自のルール設定が決められている。
その前に、そもそものこの「ライムシティ」の描写だ。
これは誰もが指摘するところで、わざわざ僕が指摘するまでもないが、今作品のこの街のファーストカット。
この場面のカメラワークなど、ぶっちゃけ「ズートピア」を強烈に意識せざるを得ない。
というより、そもそも今作品の真相。
それもほとんど「ズートピア」と同じ着地になっている。
原作のゲームが出たタイミングと「ズートピア」公開のタイミングから考えると、これは偶然だろうと思われるが・・・。
それは置いておいて今作では従来のポケモンとは違い、2つのルールが制定されている。
- ボールによるゲットの禁止
- ポケモンバトルは違法
これを設定しているおかげで、今作品は「ポケモン」につきまとう「生命倫理的」疑問点に一応の目配せをし、回避している。
これは実写化にする上で大切な設定だといえる
その分、ゲットの場面は序盤、ティムが田舎で友人とポケモンをゲットしようとするシーンで描いている。
バトルは中盤の違法闘技場やクライマックスで描かれているので、この部分もしっかりフォローはしてあるのだ。
世界観の構築は観ていて「なるほど」と関心させられた。
ちなみに、本作の「ライムシティ」でルーシーとティムが出会うあたりまでのシーン。
「ネオン」そして雨に濡れたアスファルト。
そう言うビジュアル面から「ブレードランナー的」な「ノワール」な空気感が醸し出される。
これが今後、何か大変な事件が起きるのでは?
と期待させられる大きな要因にもなっている。
クールな画面にポケモン、その反比例感覚も素晴らしい
イチオシポイント
✅ポケモンシリーズの持つ「ゲット」「バトル」という生物倫理的に考えると、疑問が浮かぶ設定をオミットしている点
「ポケモンとの共生」がGOOD
これは先日評した「ポケットモンスター みんなの物語 評」でも語ったが、僕はこの映画に大きな魅力を感じている点がある。
「ライムシティ」での人間とポケモンの交流描写。
カイリキーが4本腕で交通整理している。
ウォーグルが鉄塔の上に物を持ってきてくれたり、ルンパッパとマスターがカフェを経営していたり。
いたるところまで人間と生活している実写世界(リアルな情景)にポケモンが溶け込んでいるという場面の数々。
ブルーとヨシダ警部の「顔不機嫌そう」という表情のリンク。
警察署のゴルーグの一々怖そうな感じ。
ゼニガメ消防隊。
これアニメの無印からの引用だよなぁ、とかニヤついたり。
ポケモンプレイヤーならば誰もが夢見た(?)現実世界にポケモンと人間が助け合い、共生する世界観。
それを見ることができた、それで、僕はもう今作を好きにならずにはいられないのだ。
長年の夢が叶った映画なんだ
イチオシポイント!
✅ポケモンと人間の助け合いを描く世界観
➡︎僕の個人的には「ポケモンシリーズ」最大の肝
ポケモン描写は最大のリスペクト
初期のポケモンは今よりも生物的だった。
ある意味で悪趣味な部分があった。
今作のポケモンデザインは、この部分へのリスペクトだと個人的には感じた。
特にゲーム初代の「赤・緑」にあった、ポケモンという生物が現在のようにデフォルメされず、ダークリアル化悪趣味方向という面。
その面で、原点に立ち返っているのが今作のポケモンデザインだといえる。
ちなみにこれ、僕は全然ありですけど、これは一般客に受け入れられるのか・・・。
と思いましたが。
冒頭のベロリンガとか、バリヤードの描写などはヤバイ
ゲンガーも中々の悪趣味感。
張り付いて就寝中のキモリの爬虫類らしさ。
これは実写なので当たり前だが「現実にポケモンがいたら?」
そういう点をしっかり構想しデザインされている分、そこにやはり「センスオブワンダー」を感じさせられた。
悪趣味、悪趣味と繰り返したが、可愛い部分もある。
ピカチュウの毛並みの感じ。
そしてライアン・レイノルズの表情をトレースしているおかげで、異常な表情の豊かさ。
シワシワに顔を崩してなく姿はキュン死にポイントだ。
森のフシギダネのあのヨタヨタ感の可愛さ。
ニューラのあのツンデレ感とか。カビゴンふかふかそうだし抱きつき心地の良さそうなこと。
そして巨大なドダイトス。
あれは完全にゴジラ描写。
今作は「レジェンダリー」制作。
だからこそあのシーンは、ゴジラ・怪獣映画っぽ描いたのだろう。
そういう魅力に溢れるポケモンを画面のあえて端とかでも見せるので、発見できる喜びなども味わうこともできる。
イチオシポイント
✅リアル化実写デザインは、初代の「悪趣味路線」を感じる、ファンには嬉しいポイント
人間とポケモンの共生を問う

解決すべき事件
今作は「ライムシティ」で急にポケモンが凶暴化し暴れ回る。
これが解決すべき、メインの事件だ。
ちなみにこれも「ズートピア」っぽい事件だといえる。
大人しいエイパムが凶暴化して襲いかかってくる、そこでの群れに襲われる恐怖感などが描かれている。
その謎と並行しながら主人公のティム、名探偵を名乗るピカチュウそして事件の取材をしているルーシー。
この3人が事件解決に尽力することになるのだ。
さらにこの事件におそらく父のハリーを探すティムの姿が主に描かれる。
だが、今作の最大のテーマは「事件解決」と言うよりは「人間とポケモンの共生」だ。
人間とポケモンの共生
その共生というものを問うてくる存在が「ミュウツー」である。
つまりこれは、ある意味でテーマはあの「ミュウツーの逆襲」でも描かれたことを下敷きにしているという、考え込まれた作りにもなっている。
ちなみに時系列でいうと、「ミュウツーの逆襲」から20年という月日が流れている。
やはりこのポケモン世界特有、そして根幹でもある「共生」
それを問いかける存在は「ミュウツー」であるというのは作り手も重々理解していてるのだ。
今回の真犯人は「ポケモンと人間の共生ではなく、同化」が目的になっている。
この思想は「人間は誰かが管理しないと滅びる」と言うお節介な上から目線的思考から生み出されている。
言うなれば「アベンジャーズ」のサノス的思考だ。
ポケモンの進化の力、それを人間にもたらせ、新しい生命として生まれ変わろうとする。
この人間をその意志とは関係なく高度な次元に共生的に引き上げようろする思考。
それは「エヴァ」の「人類補完計画」も彷彿とさせられる。
進化の可能性を示すシーンで「イーブイ」が例にあげられる
これは「イーブイ」と言うポケモンの特性を活かすナイスチョイスだ
強制的に人間とポケモンの同化が行われるクライマックス。
ここでの「人間とポケモン」の合体は「赤・緑」のマサキの実験のオマージュでもある。
だが、人間とポケモンは隣に立ち、「共生」することでより良い世界を作る。
そのためにこの「同化」を否定する。
このラストは非常に素晴らしい物だ。
ただし・・・
ただ、僕は今作の最大の欠点はこの部分だとも思っている。
映像としては「ポケモンと人間」が同化している「ポケモン人間」化していると言えばいいだろうか?
映像としては非常に面白いシーンを作れそうなところだと思うのだが、実際はここがあまりうまくないのだ。
結局ティムとピカチュウがミュウツーに立ち向かう構図で話が進む。
「ポケモン人間」がその特殊な姿をしている時だからこそ出来るアクションなど、そこが見たかった。
ここはクライマックスの大きな盛り上げにもなっただろうに、残念なポイントだといえる。
もしくは、分離して「人間」と「ポケモン」が協力して「共生」を勝ち取る。
そう言う描写にしてもらいたかった。
イチオシポイント
✅「同化」を拒み「共生」こそが「人間とポケモン」最良の関係と言う着地
惜しいポイント
✅とは言え、「同化」した姿を活かした描写が欲しい
➡︎クライマックスの盛り上がりに欠ける
ただ、やはり「共生」こそが理想の関係と言う着地にするには
「同化姿」での描写に力を入れすぎると、「同化」したままでもいい。
と言う考えになるかも知れないと考えたんだろう。とは思う
無視できない「おっさんピカチュウ」の可愛さ
今作の最大のポイントでもある「おっさんピカチュウ」の可愛さ。
前述したように「ライアン・レイノルズ」のモーションを表情に取り入れているために、多彩な顔がキュートだ。
これだけで見る価値ありと断言しちゃう!
さらに「声」が「おっさん」
これが若干の不憫さを伺わせ、このなんとも言えぬ「不自由さ」が可愛く見える要因ではないだろうか?
本作では、原作と違い「なぜピカチュウが話せる?」と言う点にも答えが出る。
そこでティムと彼の奇妙な関係の謎。これはぜひ今作をチェックしてもらいたい。
今作を振り返って
大満足!
長年のポケモンプレイヤーは納得の出来だね!
まとめ
本作は「ポケモンデザイン」は特に「赤・緑」時代のデザインへのリスペクトを感じる。
この異形なモンスター感。これこそが僕が「はじめにふれたポケモン」だ。
だがそれでも、愛嬌を感じるポケモン。
当たり前だ、ずっと大好きなキャラクターたちだから・・・。
そもそも、子供の頃誰もが夢見た「実写世界」に存在する「ポケモン」と言う画面。
これが見れただけでもこの作品は評価せざるを得ないのだ。
そしてやはり「ポケモン」「人間」が協力する世界。
それがなんと豊かなことか。
確かに映画としてクライマックスの弱さは感じる、だけどそれが気にならないほど、夢に溢れた「ポケモンワールド」
それを堪能できて大満足だ。
ぜひ、ポケモンファンだった方々に見てもらいたい一本である!
要点整理
✅実写化にするにあたり、独自のルール設定がうまい
✅デザインの初代リスペクトに感動。でも可愛いポケモンたち
✅ポケモンと人間の共生。
そこに描かれる世界観の「豊か」さに感動
➡︎僕が思う「ポケモン」世界最大の良さは「共生」の「豊さ」
だからこそ「大満足」
と言うわけで。今日も読了お疲れ様でした!
また次回の記事でお会いしましょう!
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