映画評 評論

【映画記事】「新感染半島 ファイナル・ステージ」−正当なパワーアップ続編!!−

2021年1月3日

 

今日は劇場公開作品、いわゆる「映画初め」した作品のご紹介!

ということで「新感染半島 ファイナル・ステージ」について語りたいと思います!

 

編集長
2021年も映画を色々見てきて語ります!!

 

この作品のポイント

  • 前作からの「テーマ」は引き続き語られる。
  • 続編をされにエスカレートさせた、「盛り思考」で作られた正統続編!

音声評論配信中

「新感染半島 ファイナル・ステージ」について

基本データ

基本データ

  • 公開 2021年
  • 監督 ヨン・サンホ
  • 脚本 リュ・ヨンゼ ヨン・サンホ
  • 出演 カン・ドンウォン イ・ジョンヒョン キム・ドユン ほか

 

あらすじ

感染爆発が半島を崩壊させてから4年後、家族を守れなかった元軍人のジョンソクは、亡命先の香港で廃人のような暮らしを送っていた。

そんな彼のもとに、ロックダウンされた半島に戻り、大金を積んだトラックを見つけ、3日以内に帰還するという仕事が舞い込む。

だが、潜入に成功したジョンソクのチームを待っていたのは、さらに増殖した感染者たちと、この世の地獄を楽しむ狂気の民兵集団631部隊

両者に追い詰められたジョンソクを助けてくれたのは、母ミンジョンと二人の娘の家族だった。

大金を奪えばこの国を出られるという最後の希望にかけて、手を結ぶことにした彼らの決死の作戦とは──?

公式サイトより引用

これぞ「正当な続編」

前作から共通するテーマ

 

ということで「新感染半島 ファイナル・ステージ」を見て、まずは率直な感想として、これは前作「新感染 ファイナル・エクスプレス」から、正当な続編だと感じた。

まず作品として、前作は「列車」という限定空間でのアクションから、今回は「ポストアポカリプト」
つまりゾンビに支配された、崩壊した韓国を舞台に展開される、空間的スケールアップ。

当然ゾンビの数も前作以上。
見せ場の派手さも向上。

基本的には「盛り」思考というか、「足し算思考」で作られた続編だと言える。

ただ、個人的にはその「映像的」な「盛り」「足し算」よりも、この物語の根幹にあった、テーマのブラッシュアップに関心させられた。

 

この「新感染」という作品に共通して描かれるのは、極限の状況下で「利己的な行動」をした者が、最後には「利他的な行動をする」
というテーマが描かれている。

前作ではソ・ソグという男は、自分と娘のスアンだけが助かればいいと、他人も見捨てようとしたが、ユン・サンファたちと行動するにつれて、心境が変わる。
そして、サンファの残した妻とスアンを守ろうと奮闘する。

その中で、自分のと同じように「利己的行動」に走る人間に不信感を抱く。

編集長
でも、その行動は今までの自分と変わらない、という事に気づき、自分に嫌悪感も抱く


そして、最後には他人のために命をなげうつ「利他的な行動」をするに至る。

いわばなけなしの勇気を振り絞る男の姿を描いた作品だと言える。

 

今作の主人公ジョンソクも、4年前に韓国を崩壊させた「ゾンビパンデミック」の最中、一つの家族を見殺しにしたことを後悔していた。
彼もまた「姉家族」を守るために、いわば「利己的行動」をした男だ。

そして、何よりも優先して守った「姉家族」もゾンビ化、そして死別という悲劇。
生き残った義理の兄と2人だけ香港に逃げ延びることになる。

 

深堀りポイント

ここで香港の人々から投げかけられる「ゾンビ菌扱い」という差別。
これは悲しいかな「コロナ禍」の世界、日本においても「他府県ナンバー」への嫌がらせなど、昨年に起きた様々な出来事を鑑みると、フィクションのことではない。

これは昨年、自分たちの身の回りで実際に起きた「差別」なのだ。

ある意味で「自分たちが感染したくない」という「自分中心の考え」が他人を傷つける、そういう意味では「ゾンビ」と同じ「心無い」行動だと言える。

 

そんな最悪の状況から、「金品」を半島から回収。
一気に貧困からの脱出を図るために、韓国に戻ることになる。

 

だが、今作最大の敵は「人間」だ。
これはある意味で、前作での「利己的な行動をする人間」が恐ろしい、というテーマを深堀りしたものだといえる。

今回はゾンビの支配する地獄の韓国で、そこで生き延びた軍人たちが、支配する集落が登場する。
地獄の状況そのものを楽しむ狂気の集団「631部隊」
彼らとの死闘が物語のメインに据えられる。

この部隊の人間はゾンビとの生存争いすら楽しんでおり、ゾンビを使った「人間狩り」をショーとして楽しむなど、常軌を逸した行動をする。

編集長
この設定からわかるように、今作は「マッドマックス」などを彷彿とさせられるね

 

この極限状態で、「利己的」つまり「自分たちの楽しみを優先して行動する」というのは、「ゾンビ」よりも人間が怖いという点を深堀りしているということだ。

 

このように前作からのテーマを引き継ぎつつ、映像的スケール感はアップ。
まさに今作は「正しく」つくられた続編だと言える。

 

ポイント

✅「利己的」行動から、「利他的」行動をする、その変化が描かれる。

✅実は「人間」も怖い、そのことが引き続き描かれる。

地獄にも家族がいる

 

今作は、崩壊した世界、無法・秩序ない世界を支配する「631部隊」との、戦いがメインで描かれるが、主人公の味方になる一家が現れる。

これが非人道的集団である「631部隊」との大きな対比になっている。
彼らは「極限状態」で人間性を失い、狂気に楽しみを見出す。
ある意味で「ゾンビ」よりも恐ろしい集団となる。

かたやジョンソクを救うミンジョンと二人の娘、そして部隊長のキム。
彼女たちは「極限状態」であろうと、人間性を失わず、「家族」として暖かく、幸せな日々を過ごしていた。

 

深堀りポイント

だがこの2つの「集団」には共通点がある、それは「極限状態」の中の「幸せ」を生きているということだ。

「631部隊」の人間も、ある意味で「極限」の中、生き残るために、狂気に身を委ねている。

ミンジョン一家は「極限」でも「家族の温かみ」を持ち、そこに幸せを見出して、生き残ろうとする。

どちらの願いも「生き残りたい」という点では一致しているのだ。

 

そしてジョンソクは、ミンジョンたちと関わるにつれて、かつての「利己的行動」をした過去に報いるため(そもそも、彼が見捨てたのが、ミンジョンたちだ)に立ち上がることになる。

生き残るために「見捨てよ」という考えから、全員で生き残ろうと奮闘することになる。

 

ポイント

✅「631部隊」「ミンジョン」どちらも、極限を生きるために、「極限」の中に幸せを見出そうとしている。

「利己的」から「利他的」へ

 

そして、今作のジョンソクは、前作のソ・ソグと同じく、最後には「利他的」な行動をする。

ただ前作と異なるのは、その行動結果も「変化している」
ある意味で「アップデート」されているということだ。

前作では、最終的にソ・ソグは目的を達するが、ゾンビ化して死亡。
非常に悲しいエンディングを迎えたが、今作は違う。

今回は、自分の命も、ミンジョン一家の命を救い(キムさん以外)、半島から生還する。

今作でも一度は、ミンジョンの命を犠牲にしようとする。
だけど、ジョンソクは「諦めない」
確かにベタだが、でもその勇気を振り絞った結果、前作と違い、今度は全員の命が助かるのだ。

そういう意味で、作品の結末も今回は、前作と違い救いのあるものになっている。

 

ポイント

✅結末の「利他的行動」の結果も、前作とは違う!

終始テンションの高い作劇

 

「アップデート」という点でいうと、限定空間から、街という舞台の広がり、ゾンビの多さ。など前述したが、今作はさらにアクションも「盛りに盛られている」

個人的にはカーチェイスは「マッドマックス」「怒りのデスロード」を彷彿とさせる、血圧高めのシーンが延々と続く。

しかも今回は、ゾンビがメインの敵ではなく、ある意味「ゾンビ」は舞台装置として機能している。

ゾンビを如何に利用して、敵を出し抜くか・・・。
「ゾンビ映画」なのに「ゾンビ」と戦わない(戦うけど笑)、というのは新鮮だった。

 

編集長
ここが前作が好きな人が、今作でノレない要因でもあるんだけれど・・・
個人的には全然あり!

 

前作同様、とにかく「面白い」アイデアは詰め込んでしまえという気概に満ちた本作品は、やはり作り手のドライブするテンションと作品が呼応して、やはり血圧の高い仕上がりになっているのだ。

そして、この「面白い要素全部のせ」が、やはり「新感染」らしさとして確立されているのだから凄い・・・。

 

ポイント

✅「面白い要素全部のせ」をてらいなくやる!、それが「新感染」!!

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

とにかく「足す」が信念!!

きちんと、前作からの要素を「盛り」「アップデート」している!!

まとめ

 

ということで、今回は「ゾンビ映画」されに「お祭り映画」的なブチアゲ作品なので、あまり長々語っても仕方がない。
ただひとつ言っておきたいのは、今作品が、やはり、正当な続編だということだ。

舞台の広がり、テーマの拡充など、「続編というのは足してこそ」というサービス精神で作られた今作品。
個人的には非常に満足のできでした。

 

そして見ていて心に刺さるのは、半島から逃げた人々にかけられる「差別」「心なき言葉」
これらは、昨年現実に「日本で起きたこと」でもある、そのことは肝に銘じなければならない。

今年も「コロナ」の影響は大きいかも知れないが、そんな「危機的」「極限状態」だからこそ、他人に思いやりを持つべきなのだ。

そういう意味で、ぜひ今、見てほしい作品である。

編集長
年明けにテンションブチアゲ、ゾンビ祭りはいかがですか!?笑

 

まとめ

  • とにかく「足し算」で作られた続編。
  • コロナ禍だからこそ、刺さるシーンも多い。
  • 前作のほうが「好き」という声も多いのもわかる作品(僕は、好きです笑)


編集長
ということで、2021年もよろしくおねがいします!!

 

映画評 評論

2023/4/23

『名探偵コナン 黒鉄の魚影』〜初期コナンファンとして言いたいこと〜【映画評論】

  今回は、毎年作品公開されるたびに日本記録に迫る勢いを見せる、春の風物詩映画。「名探偵コナンシリーズ」の劇場版26作品目となる最新作『名探偵コナン 黒鉄の魚影』 こちらを鑑賞してまいりましたので、感想・評論を述べていきたいと思います。   編集長ちなみに前作はラジオにて評論しております   目次 『名探偵コナン 黒鉄の魚影』について基本データあらすじコナンに対しての考え方しかし、今回は無茶苦茶がすごい関係性萌えが好きならそれでもいいかも知れぬが 『名探偵コナン 黒鉄の魚影』について 基本データ チェック ...

ReadMore

映画評 評論

2023/3/26

『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』〜シリーズ屈指の傑作誕生!〜

  今回は「春休み映画」の風物詩、ドラえもん映画の最新作『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』こちらを鑑賞してまいりましたので、評論をしていきたいと思います。 ちなみにシリーズ全体としては通算第42作目。そして、アニメ二期シリーズ(水田わさび版)としては、第17作目。かなり歴史の深いシリーズになっている「ドラえもん映画」ですが、今回の作品はどうだったのか? ちびっ子たちを尻目に大きなお友達も劇場でしっかり鑑賞してまいりました!   目次 『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』について基 ...

ReadMore

映画評 評論

2023/3/21

『シン・仮面ライダー』〜”シン”シリーズ最終章を徹底評論〜

  今回は1971年放送開始の特撮テレビドラマ「仮面ライダー」この作品を「シン・エヴァンゲリオン劇場版」「シン・ゴジラ」の庵野秀明が監督・脚本を手がけて新たに現代風にアレンジして映画化した、『シン・仮面ライダー』を評論したいと思います。     目次 『シン・仮面ライダー』について基本データあらすじ庵野監督が描きたい「当時の時代感覚」「シンシリーズ」の描くのは「人間讃歌」だ映画として目立つブサイクな点もちろんいい点もいっぱいある 『シン・仮面ライダー』について 基本データ 基 ...

ReadMore

映画評 評論

2023/3/13

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』とは何か?

今回は第99回アカデミー賞、作品賞のど本命と評価の高い作品『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』通称『エブエブ』について語りたいと思います。 前評判の通り「カオス」な「マルチバース」作品となっているので、一見すると難解なこの作品について今日は語っていきたいと思います。   目次 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』についてあらすじ全力で作ったトンデモ映画!様々なマルチバース作品一番ダメなエヴリンだから・・・ 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』について ...

ReadMore

映画評 評論

2023/3/2

『ワース 命の値段』について考える!

目次 基本情報あらすじ命に値段をつける男 基本情報 監督 サラ・コンジェロ脚本 マックス・ボレンスタイン原作 ケネス・ファインバーグ(『What Is Life Worth?』)出演 マイケル・キートン スタンリー・トゥッチ 他 あらすじ 2001年9月11日、アメリカで同時多発テロが発生した。 未曾有の大惨事の余波が広がる同月22日、政府は、被害者と遺族を救済するための補償基金プログラムを立ち上げる。 プログラムを束ねる特別管理人の重職に就いたのは、ワシントンD.C.の弁護士ケン・ファインバーグ(マイケ ...

ReadMore

-映画評, 評論
-

Copyright© Culture Club , 2023 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.