
今日は劇場公開作品、いわゆる「映画初め」した作品のご紹介!
ということで「新感染半島 ファイナル・ステージ」について語りたいと思います!

この作品のポイント
- 前作からの「テーマ」は引き続き語られる。
- 続編をされにエスカレートさせた、「盛り思考」で作られた正統続編!
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目次
「新感染半島 ファイナル・ステージ」について
基本データ
基本データ
- 公開 2021年
- 監督 ヨン・サンホ
- 脚本 リュ・ヨンゼ ヨン・サンホ
- 出演 カン・ドンウォン イ・ジョンヒョン キム・ドユン ほか
あらすじ
感染爆発が半島を崩壊させてから4年後、家族を守れなかった元軍人のジョンソクは、亡命先の香港で廃人のような暮らしを送っていた。
そんな彼のもとに、ロックダウンされた半島に戻り、大金を積んだトラックを見つけ、3日以内に帰還するという仕事が舞い込む。
だが、潜入に成功したジョンソクのチームを待っていたのは、さらに増殖した感染者たちと、この世の地獄を楽しむ狂気の民兵集団631部隊。
両者に追い詰められたジョンソクを助けてくれたのは、母ミンジョンと二人の娘の家族だった。
大金を奪えばこの国を出られるという最後の希望にかけて、手を結ぶことにした彼らの決死の作戦とは──?
公式サイトより引用
これぞ「正当な続編」

前作から共通するテーマ
ということで「新感染半島 ファイナル・ステージ」を見て、まずは率直な感想として、これは前作「新感染 ファイナル・エクスプレス」から、正当な続編だと感じた。
まず作品として、前作は「列車」という限定空間でのアクションから、今回は「ポストアポカリプト」
つまりゾンビに支配された、崩壊した韓国を舞台に展開される、空間的スケールアップ。
当然ゾンビの数も前作以上。
見せ場の派手さも向上。
基本的には「盛り」思考というか、「足し算思考」で作られた続編だと言える。
ただ、個人的にはその「映像的」な「盛り」「足し算」よりも、この物語の根幹にあった、テーマのブラッシュアップに関心させられた。
この「新感染」という作品に共通して描かれるのは、極限の状況下で「利己的な行動」をした者が、最後には「利他的な行動をする」
というテーマが描かれている。
前作ではソ・ソグという男は、自分と娘のスアンだけが助かればいいと、他人も見捨てようとしたが、ユン・サンファたちと行動するにつれて、心境が変わる。
そして、サンファの残した妻とスアンを守ろうと奮闘する。
その中で、自分のと同じように「利己的行動」に走る人間に不信感を抱く。

そして、最後には他人のために命をなげうつ「利他的な行動」をするに至る。
いわばなけなしの勇気を振り絞る男の姿を描いた作品だと言える。
今作の主人公ジョンソクも、4年前に韓国を崩壊させた「ゾンビパンデミック」の最中、一つの家族を見殺しにしたことを後悔していた。
彼もまた「姉家族」を守るために、いわば「利己的行動」をした男だ。
そして、何よりも優先して守った「姉家族」もゾンビ化、そして死別という悲劇。
生き残った義理の兄と2人だけ香港に逃げ延びることになる。
深堀りポイント
ここで香港の人々から投げかけられる「ゾンビ菌扱い」という差別。
これは悲しいかな「コロナ禍」の世界、日本においても「他府県ナンバー」への嫌がらせなど、昨年に起きた様々な出来事を鑑みると、フィクションのことではない。
これは昨年、自分たちの身の回りで実際に起きた「差別」なのだ。
ある意味で「自分たちが感染したくない」という「自分中心の考え」が他人を傷つける、そういう意味では「ゾンビ」と同じ「心無い」行動だと言える。
そんな最悪の状況から、「金品」を半島から回収。
一気に貧困からの脱出を図るために、韓国に戻ることになる。
だが、今作最大の敵は「人間」だ。
これはある意味で、前作での「利己的な行動をする人間」が恐ろしい、というテーマを深堀りしたものだといえる。
今回はゾンビの支配する地獄の韓国で、そこで生き延びた軍人たちが、支配する集落が登場する。
地獄の状況そのものを楽しむ狂気の集団「631部隊」
彼らとの死闘が物語のメインに据えられる。
この部隊の人間はゾンビとの生存争いすら楽しんでおり、ゾンビを使った「人間狩り」をショーとして楽しむなど、常軌を逸した行動をする。

この極限状態で、「利己的」つまり「自分たちの楽しみを優先して行動する」というのは、「ゾンビ」よりも人間が怖いという点を深堀りしているということだ。
このように前作からのテーマを引き継ぎつつ、映像的スケール感はアップ。
まさに今作は「正しく」つくられた続編だと言える。
地獄にも家族がいる
今作は、崩壊した世界、無法・秩序ない世界を支配する「631部隊」との、戦いがメインで描かれるが、主人公の味方になる一家が現れる。
これが非人道的集団である「631部隊」との大きな対比になっている。
彼らは「極限状態」で人間性を失い、狂気に楽しみを見出す。
ある意味で「ゾンビ」よりも恐ろしい集団となる。
かたやジョンソクを救うミンジョンと二人の娘、そして部隊長のキム。
彼女たちは「極限状態」であろうと、人間性を失わず、「家族」として暖かく、幸せな日々を過ごしていた。
深堀りポイント
だがこの2つの「集団」には共通点がある、それは「極限状態」の中の「幸せ」を生きているということだ。
「631部隊」の人間も、ある意味で「極限」の中、生き残るために、狂気に身を委ねている。
ミンジョン一家は「極限」でも「家族の温かみ」を持ち、そこに幸せを見出して、生き残ろうとする。
どちらの願いも「生き残りたい」という点では一致しているのだ。
そしてジョンソクは、ミンジョンたちと関わるにつれて、かつての「利己的行動」をした過去に報いるため(そもそも、彼が見捨てたのが、ミンジョンたちだ)に立ち上がることになる。
生き残るために「見捨てよ」という考えから、全員で生き残ろうと奮闘することになる。
「利己的」から「利他的」へ
そして、今作のジョンソクは、前作のソ・ソグと同じく、最後には「利他的」な行動をする。
ただ前作と異なるのは、その行動結果も「変化している」
ある意味で「アップデート」されているということだ。
前作では、最終的にソ・ソグは目的を達するが、ゾンビ化して死亡。
非常に悲しいエンディングを迎えたが、今作は違う。
今回は、自分の命も、ミンジョン一家の命を救い(キムさん以外)、半島から生還する。
今作でも一度は、ミンジョンの命を犠牲にしようとする。
だけど、ジョンソクは「諦めない」
確かにベタだが、でもその勇気を振り絞った結果、前作と違い、今度は全員の命が助かるのだ。
そういう意味で、作品の結末も今回は、前作と違い救いのあるものになっている。
終始テンションの高い作劇
「アップデート」という点でいうと、限定空間から、街という舞台の広がり、ゾンビの多さ。など前述したが、今作はさらにアクションも「盛りに盛られている」
個人的にはカーチェイスは「マッドマックス」「怒りのデスロード」を彷彿とさせる、血圧高めのシーンが延々と続く。
しかも今回は、ゾンビがメインの敵ではなく、ある意味「ゾンビ」は舞台装置として機能している。
ゾンビを如何に利用して、敵を出し抜くか・・・。
「ゾンビ映画」なのに「ゾンビ」と戦わない(戦うけど笑)、というのは新鮮だった。

個人的には全然あり!
前作同様、とにかく「面白い」アイデアは詰め込んでしまえという気概に満ちた本作品は、やはり作り手のドライブするテンションと作品が呼応して、やはり血圧の高い仕上がりになっているのだ。
そして、この「面白い要素全部のせ」が、やはり「新感染」らしさとして確立されているのだから凄い・・・。
今作を振り返って
ざっくり一言解説!!
とにかく「足す」が信念!!
きちんと、前作からの要素を「盛り」「アップデート」している!!
まとめ
ということで、今回は「ゾンビ映画」されに「お祭り映画」的なブチアゲ作品なので、あまり長々語っても仕方がない。
ただひとつ言っておきたいのは、今作品が、やはり、正当な続編だということだ。
舞台の広がり、テーマの拡充など、「続編というのは足してこそ」というサービス精神で作られた今作品。
個人的には非常に満足のできでした。
そして見ていて心に刺さるのは、半島から逃げた人々にかけられる「差別」「心なき言葉」
これらは、昨年現実に「日本で起きたこと」でもある、そのことは肝に銘じなければならない。
今年も「コロナ」の影響は大きいかも知れないが、そんな「危機的」「極限状態」だからこそ、他人に思いやりを持つべきなのだ。
そういう意味で、ぜひ今、見てほしい作品である。

まとめ
- とにかく「足し算」で作られた続編。
- コロナ禍だからこそ、刺さるシーンも多い。
- 前作のほうが「好き」という声も多いのもわかる作品(僕は、好きです笑)
