
今日は「ピクサー」最新作ということで、大注目の作品「2分の1の魔法」について語りたいと思います。

今作のポイント
- もはや「ピクサーにハズレなし!」
では、なぜ「ピクサーはハズレなしなのか!?」 - クライマックスのある展開は「品」すら感じる。
惚れ惚れするストーリテリング力。
目次
「2分の1の魔法」について
基本データ
- 公開 2020年
- 監督 ダン・スキャンロン
- 脚本 ダン・スキャンロン/ジェイソン・ヘッドリー/キース・ブーニン
- 声の出演 トム・ホランド/クリス・プラット/ジュリア・ルイス=ドレイファス/オクタヴィア・スペンサー など
- 吹き替え 志尊淳/城田優/近藤春菜/浦島りんご など
あらすじ
妖精たちが暮らす不思議な世界――。
美しい大自然を背景に、ユニコーンのような角を持つ美しい白馬のペガサスが空を飛び、色とりどりの尾びれを持つマーメイドたちは自由を謳歌し、神秘的な魔法が満ち溢れている・・・がそれは、はるか昔の話。科学や技術が進化するにつれ、小人や妖精たちも便利な世界に慣れ、この世から魔法は消えてしまった―。
いまや空を飛ぶのはジャンボジェット機。
美しい白馬のペガサスは“野良ペガサス”となり、街の地べたでゴミを漁る迷惑な存在に―。
主人公は魔法が消えかけた世界に暮らす魔法を使えない内気な少年イアン。
イアンは自分が生まれる前に亡くなった父に一目会うために、好奇心旺盛な兄のバーリーと共に、魔法を取り戻す冒険に出る。
かつては魔法があふれていたが、技術が進歩し魔法が消えかけてしまったら?
ピクサーの描くワクワクの世界が登場!
Disney Movie より抜粋
ピクサー作品にハズレなし!

そもそも「ピクサー」とは? 30秒で歴史を振り返ろう!

この本自体がめちゃくちゃ面白いので、映画好きなら必読ですよ!
ということで「2分の1の魔法」について触れる前に、まずは「ピクサー」の歴史を振り返りたいと思います。
そもそも、「ピクサー」は1979年。
「ルーカス・フィルム」の特殊効果部門「ILM」に創設された「コンピュータ・アニメーション部門」が母体となった組織である。
少々話が逸れるが、ジョージ・ルーカスが、自社にこの部門を作ろうとしたきっかけが、
「スター・ウォーズ EP4 新たなる希望」の「デス・スター攻撃」のグリッド上での作戦説明のシーンを作るため。
そう思うと、あのシーンは鳥肌もんです。
そして、多くの作品で技術を磨き、「スター・トレック2 カーンの逆襲」などでCG演出を手がけるなど、着々と活躍の場を増やしていく。
その後、これも運命のいたずらか、1986年。
「Apple」を追放された「スティーブ・ジョブズ」に買収され「ピクサー」と名乗り、独立した経緯を持つ。
ここで「ピクサー」が本来やりたかったこと、「スティーブ・ジョブズ」が目指したものの違いなど、
これはぜひ「メイキング・オブ・ピクサー」を読んでください。
本当に面白すぎる駆け引きなど、
これだけで一つのドラマになりそうなエピソード目白押しです。
その頃「ディズニー」はアニメーション技術を、「手書き」から「CG」に置き換え、効率化しようとしており、「ピクサー」に目をつけ、技術協力を依頼。
「ディズニー」と「ピクサー」は協力企業となる。
そして「技術協力」だけではなく「CGアニメーション」を作りたいと考えていた「ピクサー」
彼らは、その後も独自に「アニメーション制作」を進め、1995年世界初の長編フルCGアニメ「トイ・ストーリー」を作るに至る。
そして2006年、ディズニーに完全買収された「ピクサー」
子会社化されたが、彼らは経済的自立を勝ち取っている。
そればかりか「ピクサー」のトップであった「ジョン・ラセター」が「ディズニーアニメ作品全体を統括」する「CCO」という役職につくなど、実質は「頭脳」の部分で「ディズニーがピクサーに吸収された」という状態になっている。
というわけで、今や「ピクサー」はアニメ制作という部門において、いや映画制作という点においても、業界トップの力を持っている。
まさに「盟主」と呼ぶべき存在に登り詰めたのだ。

「ロイ・E・デイズニーの思い出」を読んでいただければ、
もっと深く知識を深めることができます!
ポイント
✅「ピクサー」は「ジョージ・ルーカス」「スティーブ・ジョブズ」という「天才」と関わりを持ちながら発展した歴史を持つ。
✅ディズニーはピクサー買収後(実質”ピクサーに買収された”と言っても過言ではない)、「ルネッサンス」突入。
「ジョージ・ルーカス」「スティーブ・ジョブズ」から受け継がれた「イズム」
このようにジョージ・ルーカス、スティーブ・ジョブズと密接に関わり発展した「ピクサー」
この2人の「天才」との関わりが「ピクサー」の「作品作り」という点において、大きな影響を与えているのではないか?
それは、新い技術、視点で「時代を切り拓く」ということ。
そして「妥協しない」ということ。
この2点だ。
「時代を切り拓く」
1つ目の「時代を切り拓く」という点だが、「ジョージ・ルーカス」は、1977年の「スター・ウォーズ 新たなる希望」を当時の技術で「試行錯誤」を重ね、そこにリアルな世界観を構築した。
まさに「時代を切り拓く」に相応しい作品を、生み出した。という功績は、真っ先にあげられるだろう。
さらに、1999年に公開された「スター・ウォーズ エピソード1」
この作品を作るにあたり「デジタル革命」と呼ばれるCGを多様し、「今までは作れなかった絵作り」を可能にしたルーカス。
この革命で、今までにない「映画作りの方法」を確立したのだ。
今までなら「不可能な世界」「描けなかった世界」を「作ることができる」
夢のような技術を、世界の人間に見せつけ、そして「映画作り」の方法が大きく変わった。
今の映画は全て「ルーカス」の革命の影響下にあると言っても過言ではない。
まさにルーカスは「時代を切り拓く」存在なのだ。
そしてかたや「スティーブ・ジョブズ」はどうか。
「時代を切り拓いた」という点で、彼の功績は語り尽くせない。
「マッキントッシュ」の開発。
そしてなんと言っても、このブログを読んでいる”あなたが手にしているデバイス”「iPhone」の開発。
これを生み出したことで、「世界が変わった」
このことは、この時代をリアルタイムで生きている我々が一番よくわかっていることだろう。
このように「時代を切り拓いた」ルーカス、ジョブズ。
これまでの発想に囚われず、新しい技術で世界の人間を納得させ、世界のあり方を変えた2人。
今では信じられないが、ルーカスの「デジタル革命」は、「一般映画」では使えないテクニックと否定的意見で溢れていた。
さらに「iPhone」も最初は一般的には普及しないと、否定的な視線で見られていた。
この「イズム」があるからこそ、ピクサーは「世界初の長編CGアニメ」という「世界に今まで存在しなかった技術」で「トイ・ストーリー」を作った。
それが認められ今では「ディズニー」や「ドリーム・ワークス」など世界の巨大アニメ企業が「CGで当たり前のようにアニメを作る」時代になった。
まさにピクサーも2人のように「時代を切り拓く」存在となったのである。
☑︎ルーカス、ジョブズの「時代を切り拓く」という「イズム」がピクサーに影響を与えた。
☑︎そしてピクサーも「時代を切り拓く」存在となった。
妥協しない
2点目の「妥協しない」という点だが、ルーカス、ジョブズは「妥協」をしない人物だ。
2人は周囲と軋轢を産んだとしても「できない」ということを嫌う。
常に気に入らないことを「改善」しようとするのだ。
そもそも「今までにない技術」でモノをつくる。
そこに「妥協」という余地があれば、そもそもモノづくりなどできない。
その姿勢もピクサーに引き継がれている。
彼らは「ミーティング」や「作品クオリティ」のチェックを繰り返し、厳しい「自己研磨」に努めて映画を世に送り出す。
映画作りのトップの人間、天才が、毎日互いに厳しくチェックしあい、高みを目指す。
そこに「妥協」はない。
ルーカス、ジョブズという「天才」が「妥協をしない」というのを間近で見てきたピクサー。2人の姿勢は確実にピクサーにも引き継がれているのだ。
☑︎妥協しない2人との関わりが、ピクサーの作品作りの精神にも「引き継がれている」
厳しい「自己研磨」に励む姿勢があるからこそ、ハズレなし
ということで、なぜ「ピクサー」にハズレなしか。
それは2人の天才と関わり、影響を受けたからであり、彼らの「イズム」が「ピクサー」に根付いているからなのだ。
だからこそ、毎回「ピクサー」の映画を見ると関心させられるし、毎回見なければならないという気持ちにさせられるのだ。
ポイント
✅ピクサーにはルーカス、ジョブズの「イズム」が引き継がれている。
✅だからこそ、毎回「素晴らしい」作品を生み出す。
ここからネタバレも少し含むので、注意!
圧倒的クオリティに脱帽

「ピクサー」ここまでできちゃいます! を見せつける作品
さて、ようやく「2分の1の魔法」について語っていくんですが、そもそも「ピクサー」作品。
黎明期の頃はそれぞれの作品に、技術的に「これが見せたい」という点を盛り込んで作品を作っていた。
「トイ・ストーリー」では、そもそも「CGで長編アニメを作る」という面。
「モンスターズ・インク」では「モンスター」の質感表現。
「ニモ」では水中を表現。
「インクレディブル」は人間をCGで表現すること
「カーズ」ではCGによる重量表現。 など
この繰り返しで、これらを高いクオリティで表現できるようになり、最近では手に入れたテクニックを織り交ぜて作品を作っているピクサー。
今回の作品もそういう意味で「テクニック総決算」という意味合いが強い。
今回の個性豊かな登場人物の質感表現。
モンスターの一体一体の種族ごとの個性表現。
舞台が現代に似た世界観から、未知の世界へと二転三転すること。
カーチェイスシーン。
水表現など。
など見ていて、「総決算」してるな、と思わされた。
一昔前では「一つの映画に、一つの技術面」を持ち込むのに限界だったが、最近は平気でそれらを当たり前のように織り交ぜる。

ポイント
✅当たり前のように「見せられる画面」の一つ一つに「技術力」を感じてしまう。
物語はお得意の「バディもの」
「ピクサー」といえば主人公がバディで活躍する作品が多い。
ウッディとバズ、サリー、マイク。など、あげればどんどん最高バディが出てくる。
今回もイアン、バーリーの兄弟コンビが「父親を生き返らせる」ために冒険の旅に出る。
ここで重要なのはこの2人が「兄弟」
互いに良いところを「半分ずつ」持っている。
つまり「2分の1」だという点を強く強調させられている。
例えば性格面。
イアンは引っ込み思案、だけどバーリーはこれは良くも悪くもだが「出しゃばり気質」だ。
他にもビビリなイアン。強気なバーリー。など2人は正反対だ。
これってでも「兄弟」「姉妹」がいるとわかるかもですが、割と性格とか気質って正反対になるもんですよね。
そういう意味で「わかるわぁ」と共感させられたりね。

最初イアンはちょっとバーリーに苦手意識を持っていたけど、自分にないものを兄が持っていると気づいたり、時にケンカし、そしてまた距離を縮めていく。
見ていてその自然な2人の関係性の変化などが丁寧に描かれる。
この辺りの物語の展開のうまさなど、何度も繰り返しにはなりますが、「当たり前のようにやってるけれど、そのレベルの高さ」に今回も驚かされてしまいました。
ポイント
✅さらりとレベルの高いことをやってのけている。
✅兄弟の心情変化など、丁寧に描かれている。
父に会うのは誰か
話は一気に飛びますが、僕は今作品で「父に会う」のが実際には誰か。
という点にこそ、一番感動をしてしまって。
普通こういう作品だと、安易に兄弟・家族全員を父と再会させようとしてしまう。と思うんですが、今作品はそうはならない。
バーリーは父と思い出があるが、イアンは生まれる前に父が亡くなっているので、そもそも会うことができていない。
ここで重要なのは「死別」をした経験をしている兄と、そもそも「父を知らない」弟。
どちらも「父と会いたい」と強く思っている。
だけど今作で感動なのは、クライマックスで死別を経験しているバーリーだけが父と再会をするという点だ。
バーリーは死別した当時、父との別れを「怖がり」最後の「さよなら」を言えていない。
これは幼い子供ならば尚更だろう。
大好きな父が死ぬ、そこに居合わせて「さよなら」ということ、それがどれだけ辛いことか。
その辛さを知ったからこそ、イアンは、自分も会いたいはずなのに、バーリーに「父にさよならを言え」と、背中をおす。
この兄弟の思い合う精神にこそ泣かされてしまう。
だが今作は、それだけでも泣けるのにイアンにも「父」と会う。そういう場面もきちんと用意している。
下半身しか蘇らなかった父、その父とバーリーとの冒険。
その道中彼が書いた「父とやりたいことリスト」
そのリストが、実はバーリーとの冒険でかなえられていた。
つまりイアンにとってバーリーは「兄」であり「父」の側面を持っていたのだ。
イアンはリストにはしていなかったが、彼はきっと父に「抱きしめてもらいたかった」に違いない。
2分の1、つまり「下半身だけの父」ではそれはできない。
だけどその半分を埋めたのはバーリーの「父の側面」だ。
最後に抱き合う2人。
「2分の1」という言葉に様々な意味を込めて描かれたこのシーンは、我々の胸を深く打つのだ。
ポイント
✅「2分の1」に込められた様々なメッセージ。
感動だけではなく、きちんと笑える展開も!
そして毎回、これも驚かさられるのだが、きちんと「笑えるシーン」というのを用意しているという点だ。
例えばマンティコア”コーリー”のキャラの濃さ。
店が炎上するシーンでの、爆笑・唖然の展開。
ここ劇場でも笑いが漏れていました。
そしてピクシー(妖精)暴走族の「アホか」(これ褒めてます)っていうバイク乗りこなしシーン。
父のメンチ切りシーンなど、これらの展開も、本当に笑えて、コメディとしても上等な出来でした。
こういう「笑えるシーン」をきちんと毎回用意している。「笑える工夫」をしているのもクオリティの高さを感じさせられます!
そしてこのキャラたちが「コメディリリーフ」としてだけでなく、「魔法を忘れた世界」に微かだが、また「魔法」が戻ってくる。
というラストの展開に呼応している。この辺りの回収のうまさ・・・。
用意周到すぎて怖いです笑
そして僕が一番好きなのは「グウィネヴィア」の最期のシーンですね。
この最後に別れのBGMをかけて特攻・・・。
バーリーの精悍な、その中にも微かな悲しみを携えた表情。
展開だけ見れば、そんな無茶な。
と思うんですが、心の中では「グウィネヴィア!!」と叫んでいる自分がいたり。
この辺りも本当に面白い。
そして母ローレルとケンタロスのコルトのエピソード。
兄弟としては、コルトを認められない気持ちもわかるが、最後まで兄弟を心配して追いかけてきたのはコルトだ。
そんな彼の危険を顧みずに兄弟を追いかけてくる気持ちが、兄弟の心を少しずつ開いていったのだ。
そして、このコルトも最後には微かに「魔法」を取り戻すというね。
母ローレルも今回は最後は大活躍。
個人的には近藤春菜さんの吹き替えは非常によかったです。
顔もローレルと近藤春菜さんめちゃ似てるし。
息子のためなら母強し。などいいますが、まさにその姿をきちんと描いてましたね。
ポイント
✅登場キャラクター皆が、物語に彩りを与えている。
今作を振り返って
ざっくり一言解説!
「ピクサー」半端ないって!!!
絶対おもろい映画作るんやもん。
そんなん出来へんやん、普通!!
まとめ
ということで、毎回「ピクサー」作品を見て思うことは「クオリティ」の高さですね。
今回もそれは言うに及ばず、きちんと感動させてくれるし、笑わせてくれる。
これぞ「娯楽映画」のお手本ですよね。
だから実は、作品について語るのが毎回難しかったりするのも事実。

ある意味ではブロガー泣かせな側面もあってね笑
なので今回は「ピクサー」の歴史を振り返り、「なぜクオリティが高いのか?」を考えてみたりしました。
そして今作品「2分の1の魔法」という邦題も素晴らしかったと思います。
きちんと物語を通じて、「2分の1」という意味を、何重にも描けていて(最近で言うと「リメンバー・ミー(原題 Coco)」級に素晴らしい邦題を付けた)、ここは「GOOD」です。
そして日本の「ディズニー社」の方々が今回テーマにした「スキマスイッチ」「全力少年」
これをエンドロールで歌詞を表示しながら流していましたが、歌詞を見ていて「この作品のための書き起こしか!?」と思わされて、この選択も「GOOD」でした!
と言うことで、間違いなく「楽しめる」作品!
やはり「ピクサーにハズレなし」と今回も思わずにはいられませんでした。
この記事のまとめ
- ジョージ・ルーカス、スティーブ・ジョブズの「イズム」が「ピクサー」に伝わり、そして息づいている。だから「ハズさない!」
- 娯楽映画のお手本のような作劇に「参りました!」としか言いようがない。
と言うことで、今日も読了ありがとうございました!
また次回の記事でお会いしましょう!!