ディズニー総チェック 評論

【映画記事】『モアナと伝説の海』ー「選ばれたこと」と「選ぶこと」ー【ディズニー総チェック】

2021年7月24日

 

さて、今日は「長編ディズニーアニメーション」を公開順に鑑賞し、評論をしていく「ディズニー総チェック」

今回は『モアナと伝説の海』をチェックしましたので、作品を深堀り解説していきたいと思います!!

 

この作品のポイント

  • 「選ばれたこと」と「選ぶこと」について描く。
  • 今作の特異性

『モアナと伝説の海』について

基本データ

基本データ

  • 公開 2016年
  • 監督 ロン・クレメンツ/ジョン・マスカー
  • 脚本 ジャレド・ブッシュ
  • 声の出演 アウリイ・クラヴァーリョ/ドゥウェイン・ジョンソン ほか

あらすじ

今から3000年前、偉大な航海士たちが太平洋を船で旅し、オセアニア諸島などを発見した。

しかし、その後1000年もの間、誰一人として海へ旅に出る者はいなかった。
そしてその理由を知る者も誰もいない…。

ディズニーが贈る「モアナと伝説の海」は、愛する人々を救うために大海原へと旅立つ女の子の物語。

旅の途中でモアナは、かつての英雄である半神半人のマウイと出会い、“伝統航海術”を教えてもらう。
巨大なモンスターやたくさんの試練がモアナとマウイを待ち受けるが、その道中でモアナは先祖の秘密を知り、自分の運命を受け入れ成長していく。

ディズニープラスより引用

「選ばれる」と「選ぶ」こと

モアナとマウイの共通点

 

今作はモアナとマウイ、2人の主役が「選ばれたこと」に苦悩する物語だ。

 

主人公のモアナは幼少期「海に選ばれる」ことになる。
彼女はずっと「狭い島」から出ていきたい、ずっと「ここでないどこか=サンゴ礁の向こう」を夢見ていた。

 

だけど村長である父の命令で、ずっとその思いを隠してきたのだ。
(アリエルと父の関係と同じく、「親の心、子知らず」「子の心、親知らず」というべきか)

 

 

しかし世界に伝わる「女神テ・フィティ」の伝説の通り、自身の住む島に「闇」が訪れ、島が「死んでいく」ことを目にする。
そして、「海に選ばれた」つまり「テ・フィティ」の「心」を彼女に返す役目を受け入れ、その「運命」に導かれるように大海原に漕ぎ出すことになる。

 

 

そしてモアナは、とある島でマウイという神にも等しい男と出会うことになる。
彼はこの作品で起こる「そもそも」の元凶でもあるのだが・・・。

 

 

このマウイも作中で語られることになるのだが、「選ばれたもの」だ。

彼は「神の釣り針」を持ち、何千年も生きている存在だが、正確には「神」ではなかった。
「半神半人」と呼ばれる存在だったのだ。

 

元々は「人間」で、赤ん坊の頃「海」に捨てられたマウイ。
彼もまた「海」に選ばれたというのか?
とにかく「人智を超えた力」を手に入れることになる。

 

そして彼は、いわゆる世界に「災い」をもたらす張本人だと伝説では言われているが、実際には違う。

 

その力で彼は「太陽」を動かし、「ココナッツ」を人類に分け与え、そして「島」を海中から引き上げるなど、「人間」の文明発達に大きな寄与していたのだ。
そして、そもそも「人間」のために「テ・フィティ」の「心」を盗んだのだ。

 

彼の登場シーンで歌唱される「俺のおかげさ」

 

 

ここで彼は「ありがとう」という言葉を欲していることが描かれるのだが、これが本来の「彼の行動理由」の一つなのだ。

元々「全ては人間のため」
つまり「ありがとう」という言葉を求めてマウイは、「人智」を超えた奇跡で人々の文明発展に貢献してきた。

 

 

深堀りポイント

マウイが「ありがとう」を求める真相とは?

彼は、モアナと出会い、最初執拗に「ありがとう」という言葉を求める。
その心情のどこかには、自分を「いらない」と捨てた母に対する、反動もあるのかもしれない。

 

 

編集長
そう考えると、ラストの「ありがとう」「ユア・ウェルカム」
のやり取りはグッとくる。

 

そして「求められるまま」に「テ・フィティ」の「心」を盗んだのだ。
でも、結局それが「厄災」を招いた。

そして「マウイ」はその後「愚か者」としての烙印を押され、「人間」から「感謝」される対象ではなくなったのだ。

 

「母」に捨てられ、そしてなぜか「神」に選ばれる。
そして、人のために行動したのに、今ではただの「愚か者」扱い。

そんな辛い経験をしたマウイ。

だからこそ最初のマウイはあれほどまでに卑屈なのだ。

 

 

ポイント

✅「モアナ」も「マウイ」も「選ばれた」存在だ。

だからこそ「苦しい」

 

今作はこんな「選ばれた」2人が、海を超え徐々に友情を築いていく。

マウイもモアナに、少しずつ心をひらいていく。

 

その際に「ミニマウイ」と呼ばれるタトゥーがいい味を出している。
本心と真逆の言動を取るマウイを、いつも「ミニマウイ」がたしなめる。

これぞ、まさにマウイの葛藤なのだ。

 

最初はモアナの「船」を奪うなど全く折り合うつもりのなかったマウイだが、「釣り針」を奪った「タマトア」との対決から彼の心情は変化する。

そこで自分自身が如何に脆いかを自覚させられたマウイ。
しかし、モアナという、自分自身と比べれば遥かに劣る「人間」に救われたことで、彼もまた、再び「人間」を信じようと考えを改めるのだ。

 

ちなみに彼自身の「強さ」は「釣り針」に依存しており、それを「失う」ことで「自信喪失」をするなどは「MCU」の「マイティー・ソー」シリーズの「ソー」とも非常に酷似する点もある。

 

 

 

 

自分自身の「弱さ」と向き合うマウイ。
そして、再び「英雄」となるために、彼は過去の過ちを償うことを決意をし、物語はクライマックスに突入する。

 

ここまで「マウイ」の心理的葛藤が描かれるが、「モアナ」は「選ばれた」運命から逃げようとはしない。

 

「ブレる」マウイ。
「ブレない」モアナ。

 

だけど「テ・フィティ」の「心」を狙う「テ・カァ」との対決で、ついに「モアナ」も「選ばれた」ことに苦しみを抱くことになる。

 

あまりにも強い「テ・カァ」の前に、マウイの「釣り針」は破損。
彼にとって「力の源」である「釣り針」を失うことは、彼の「心の支え」を失うことと同義なのだ。

そしてマウイは「それを犠牲」にする勇気が持てず、ついにモアナのもとから去ってしまう。

 

目的が果たせない、それは「故郷」の「死」を意味する。
モアナは、自分の「役目」を果たすことができないと、ついには「選ばれたこと」を放棄しようとする。

 

 

ポイント

✅「モアナ」「マウイ」は共に「選ばれたこと」で苦しみを背負うことになる。

「選ぶ」こと

 

しかし「モアナ」は、それでも立ち上がるのだ。

 

「海」に「選ばれた」から、ここまで来たのではない。
「選んで」ここまで来た。
そのことに気づくのだ。

 

そして「自分自身」で「テ・フィティ」の心を返すために「テ・カァ」に挑むことを決意する。

 

それは「マウイ」も同じだ。
「神に選ばれた」そのことで、「過ち」を犯した。
(もちろん根幹には「人のため」という思いがある)

 

それを償うことを選ぶのだ。

 

彼はここで「利己的」から「利他的」な行動をすることを決意する。
それは「英雄」として彼が立ち上がった瞬間でもあるのだ。

 

彼もまた「選ばれた」から「英雄」になったのではない、自分で「選んだ」からこそ「英雄」になれたのだ。

 

そして何とか「テ・フィティ」の心を返すことで、2人は世界に平穏を取り戻すことになる。

 

「選ばれたこと」に苦しんだ2人が、自ら運命を「選び取る」ことで大義を成し遂げる。
これは実人生にも置き換え可能だ。

 

「選ぶ」ことでこそ、人生を切り開くことができる。

今作はそんな「人生」という「大海原」を、どう生きるのか?
そんなことを教えてくれる作品だと言えのだ。

 

 

ポイント

✅「選ばれる」ことが重要ではない、「選ぶこと」が重要なのだ。

モアナの特異性/不満ポイント

 

今作の主人公「モアナ」は、一応「ディズニープリンセス」の一人にカテゴライズされている。

 

確かに「村長」の「娘」という点を考えると、それには当てはまるし、「狭い世界」から「外界」に思い馳せる。
その点からみると「オーロラ」「アリエル」近年の作品だと「ラプンツェル」「アナ」に近い欲求を持っていると言える。

 

 

だけど、それらと違うのは「外界への思い」が「男性」へと結びつかない、つまりその思いの帰結が「恋」に結びつかない点が挙げられる。

 

 

今作は明確にその「ライン」に話が乗らないように描かれる。
つまり「ディズニープリンセス」という括りに入る「キャラクター」は必ずしも「恋」をする必要はない。
そう断言するにいたったのだ。

 

それに関しては「新生ディズニー」の「プリンセスもの」の「現代的解釈」としては間違ってはいない。

 

ただし、これを強調しすぎたことで、今度は「恋愛否定」が目的化されている感も否めないのだ。

事実、「恋愛」は「恋愛」で尊いものなのだからという点もまた正しいといえる。

 

そういう点が若干引っかかるといえば、引っかかるというのが、正直なところ・・・。

 

 

だからこそ『モアナと伝説の海』を「プリンセスもの」にカテゴライズするのは、余り得策ではないのだ。

むしろ「プリンセスもの」というジャンルは「守りつつ」
ただ「女性主人公」という扱いにしていくほうが、いいのではないか?

 

 

ついでに「不満」なポイントもいくつか上げておきたい。

それは「海」の「助け」が非常に気まぐれな点だ。
そもそも一度目の「テ・カァ」戦では一切助けてくれない。
ていうか、あそこまで力があるのなら、「テ・カァ」に海水をぶっかけるとか、いくらでも手段はありそうなものだ。

それが急に「二度目」は助け多め。
でも、そもそも、あそこまで力があるなら(以下繰り返し)・・・。

 

もう一つは「海」に対するモアナの父親の葛藤などが描かれないで、最後には「大海原」へ!!
みたいな感じになっている点も気になる点ではある。

確かに、彼の「トラウマ」描写はあるし、「海」に出ることを禁ずる理由は理解できる。
ただ、この父の心理的成長などを描かない点はもったいないのではないか?

なんなら、ラストにモアナを助けに「船」を率いてやってくるくらいでも良かったのではないか?

とかそういう点が気になったりするのも事実だ。

 

これに関しては「前作」の『ズートピア』が素晴らしすぎたので、比較するのも可愛そうな話ではあるのだが・・・。

 

 

ポイント

✅「恋愛否定」の目的化に見えなくもない。

✅全体的にモヤモヤもある・・・。

 

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

「選ぶこと」ことが、大切だ!!

まとめ

 

ということで『モアナと伝説の海』を振り返って来ましたが、一つ触れておかねばならないのは「海描写」だ。

今作は「海」が舞台で、その表現にの「美しさ」もまた魅力のひとつなのだ。

 

穏やかな海、険しい海。
優しい夜の海。

「海」の表情の変化にも注目せなばならない。
そういう意味では今作は、「海」も主要な登場人物の一人だと言えよう。

 

そして、今作はやはり「選ぶこと」の重要さを描いている。
人間は「選ばれるから」何かを「成し遂げる」のではない。

自ら「何を成し遂げるのか」を「選んで」こそが人生なのだ。

 

我々も「モアナ」のように、挑戦という「大海原」へ飛び出さなければならない。
今作は、そのことを教えてくれる作品だったと言えよう。

 

まとめ

  • 「選ばれる」よりも「選ぶ」ことの大切さ。
  • 若干「恋愛否定」が目的化されている感も否めない。
  • 若干の「不満」は残るものの、全体的には「良作」である!!

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