映画評 評論

『告白、あるいは完璧な弁護』ーめちゃくちゃ面白いぞ!!ー

2023年6月27日

基本データ

  • 公開 2023年
  • 監督 ユン・ジョンソク
  • 脚本 ユン・ジョンソク
  • 原案 『インビジブル・ゲスト 悪魔の証明(スペイン語)』
  • 出演者 ソ・ジソブ/キム・ユンジン/ナナ 他

 

今回は久々に韓国映画を鑑賞してきました。

と言うことで『告白、あるいは完璧な弁護』について今日は語っていきたいと思います。

 

あなたは、思いがけぬ“真実”を目撃する。

IT企業社長ユ・ミンホの不倫相手キム・セヒが密室のホテルで殺された。

事件の第一容疑者となったミンホは潔白を主張し、100%無罪を勝ち取る敏腕弁護士ヤン・シネを雇い事件の真相を探り出す ― 。

そこで以前に起きた1つの交通事故がセヒの殺人に関係しているかもしれないと告白し、事件の再検証がはじまるが…。

錯綜する2つの事件と証言。
その真実は誰のためのものなのか。
欲望に隠された〈衝撃の事実〉に辿り着いたとき、切ない“痛み”があなたを襲う。

 

 

信用できない語り部のミスリードが面白い!!

ネタバレ厳禁の作品

まず、この作品を気になってたり、観にいきたいとか、そう思っている方はこの感想を読まずに劇場に行くべきだと最初に言っておきたい。

そもそも本評論だけでなく、基本的にこの作品の公式サイトすら「ネタバレ注意」と言うページがあるので、もう何も調べずに行くことをオススメしたい。

まっさらな状態こそこの映画を最大限・余すことなく楽しめると思うので、ぜひそうしてくれ・・・・。
それが僕からの願いだったりもする。

 

とか言いつつも、このブログではネタバレをしながら映画の感想を書いていくので、それでも言い方は、この先も読んでもらいたい。

さてこの映画、物語は先ほどの「あらすじ」でも紹介したように、基本的にはこう言う流れだ。

IT企業社長ユ・ミンホの不倫相手キム・セヒが密室のホテルで殺された。

事件の第一容疑者となったミンホは潔白を主張し、100%無罪を勝ち取る敏腕弁護士ヤン・シネを雇い事件の真相を探り出す ― 。

そこで以前に起きた1つの交通事故がセヒの殺人に関係しているかもしれないと告白し、事件の再検証がはじまるが…。

 

冒頭釈放されるユ・ミンホ。
彼はマスコミの目を避けるために、山奥の別荘へと逃げ込むように、そこに身を隠している。
そして来るべき裁判のために敏腕弁護士ヤンの到着を待つ。

そこにやってきたヤンは、彼を弁護するために事件の詳細を聞き取る。
そして、映画はミンホの回想へと繋がっていく。

 

さてこの作品最大の特徴は基本的には「山奥の別荘」でミンホの回想を中心に進んでいくことになる。
つまり大きな出来事・見せ場はない。

非常に静かな映画だと言える、しかしこの映画、非常にミステリとして見応えが多いのだ。

と言うのもこのミンホ。
彼の供述は作中でも序盤で明らかになるが、「嘘」にまみれている。
つまり彼は全く信用できない語り部なのだ。

その都度「嘘をついたままでは、完璧な弁護をできない」とヤンが主張。
それに応える形で彼が本当の話を暴露を繰り返し、ことの真相に向かっていく。

 

なるほど、この作品は彼が抱えている「外に出せない事実」をヤンが引き出し、そして最終的には彼の無実を証明する話なのか。
彼の冤罪を晴らす物語のように見えてくる。
そういう気持ちで映画を見ていくと、この映画「ミンホが不倫相手セヒを殺害した」とは別の、とある「交通事故」のことが語られる。

それを見る限り、どうやらこの事件の真相的には「セヒが悪いのか?」
でもこれ少し、展開として無理があるのでは??
と言う疑問が生じながらも、「まぁでもなんとなく筋は通るのか」と言う微妙なラインの話が続いていく。

そう思っていると、ヤンが「いや、まだお前は嘘をついているな?」と詰めていき、ミンホの先ほどまでの話が嘘だとわかっていく。

そして、最終的にミンホが全部悪いこと、つまり「犯人お前じゃん」と言うことが明らかになるのだ。

もう一捻り加えられている

そこから、我々観客は別の感情を抱くことになる。
「なるほど、これは”嘘”をでっちあげて、ミンホを無罪にする話なのか」と。

前述したように映画の中盤で彼が警察にしたり、ヤン弁護士に話した内容は「嘘」ばかり。
自分でセヒを殺害しているし、密室から誰かが逃げたと言うことすらもでっち上げている。

こんな状況で「無罪」を勝ち取るには、証拠の捏造、完璧な罪の擦り付けの相手が必要だ。

 

ここから今作品「真実」を「嘘」で塗り固めてしまい、あたかも「嘘」を「真実」として提示して見せる。
このストーリー作りに主眼が置かれていく。

編集長
読んでいる人は少ないかもだが、個人的には「円居晩」の「ルヴォワールシリーズ」
での「蒼龍会」での「事実」を書き換えて信用を得る系統の物語味を感じた。

 

かと思いきや、実はこの「ヤン」と言う人物の正体もまた・・・。
と言う捻りが加えられている。
実はこの「ヤン」は本物の「ヤン」ではなく、彼らの事件に巻き込まれた被害者「ハン・ソンジェ」の母だったことが明らかになり、彼の口から全ての事実を聞き出すことが目的だった。

しかしその目的がバレてしまい、大ピンチという大展開が最後に待ち受けている。

 

ここからどうなるのか!?
と言う展開で非常に面白いクライマックスに突入していく。

 

果たして犯罪を隠し切れるのか?
それとも、彼の罪は明らかにされるのか?

結末は劇場で見てほしい。

一つの嘘が、嘘をよぶ

この映画最大の学びがあるとすれば、そもそも「嘘」をつかなければよかったと言うことだ。

 

そもそも、全てのことの発端になった「交通事故」の隠蔽。
これは、ミンホはセヒとの不倫がバレたくないがためだ。
そんなプライドを捨てて、救急に通報していたら、そもそも誰も死んではいない。
ミンホとセヒは「鹿」を避けようとしただけで、実は事故を起こしたわけではないのだ。

それで済んだだけだが、ミンホの自分の人生を守ろうとする、それだけの理由で「嘘」に「嘘」を重ねた結果、多くの死人、犠牲者が出ることになった。

 

最初はそれだけだったが、「嘘」をつき続けると、人間はそれが如何にも「本当に起きたこと」と錯覚もする。
ミンホは「嘘」を「嘘」で正当化していく過程で、彼自身がでっち上げた物語を「真実」だと信じようとしていたし、それを「現実」のものにしようとしていた。

恐ろしいのは、「金」と「権力」があれば、ある程度「事実」を捻じ曲げてしまうことも可能だと言うことだ。
本当かどうかはさておき、それは我々社会の中でも起こり得ることだ。

そして「被害者」「弱者」はこうした時、最初に傷つけられるのである。

 

そうした世の中だからこそ、この映画最後の「大逆転」は非常にスッキリした味わいがあるのではないだろうか。

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