映画評 評論

【映画記事】「風と共に去りぬ」から「未曾有の危機後」の世界を生き残る手段を学べ!

2020年4月25日

鑑賞する前に「長い」「古い」と食わず嫌いするのは勿体ない!
ということで今日も、独自の目線で映画を味わい尽していきます。

今日紹介するのは「風と共に去りぬ」です。

この記事を読むと

  • スカーレット・オハラを深く理解できる。
  • 今後の世界を生き抜く力強さが学べる。
  • 時として「厚かましく」「ポジティブ」「わがまま」の大切さがわかる。
  • 今後の世界を「サバイブ」する手段がわかる。

 

ちなみに「世界中のどこかの町では上映されている」と言われるほどの不朽の名作としても有名だね!

音声評論配信中!!

編集長
今回、AirPodsを通じて評論・・・、若干音声悪いです・・・。

「風と共に去りぬ」について

基本データ

  • 公開 1939年(日本 1952年)
  • 監督 ヴィクター・フレミング
  • 脚本 シドニー・ハワード
  • 原作 マーガレット・ミッチェル
  • 出演 ヴィヴィアン・リー/クラーク・ケーブル ほか

あらすじ

舞台は、まだ黒人奴隷制度が残る1860年代のアメリカ南部(ジョージア州アトランタ市)で、南北戦争の時代だ。

そんな南部で暮らしている本作の主人公で、農園主の貴族娘「スカーレット・オハラ」は、自分と同じ上流階級の美青年「アシュレー・ウィルクス」に恋をしていた。

だが彼は、従姉妹(いとこ)である「メラニー」と婚約をすることになる。

婚約を知ったスカーレットは、激怒し暴れていたところを、偶然目撃した「レット・バトラー」は、彼女に一目惚れをしてしまう。

そしてスカーレットは、アシュレーへの当て付けのためにメラニーの兄「チャールズ・ハミルトン」と結婚をする。

しかし南北戦争が始まってしまい、戦場にいったチャールズは戦時中に病死するのだ。スカーレットは未亡人となり、それを知ったレットバトラーは、再び彼女の前に姿をあらわす。

そんな中、戦況は非常に苦しい状況となっており、南軍は北軍にどんどんと追い詰められていた。

そしてついに、アトランタ(スカーレット達が滞在していた場所)の陥落も目前となっていたのだが、スカーレットやメラニー達は逃げ遅れてしまうも、レットに助けを求め、タラ(スカーレットの故郷)への帰還を目指す。

帰還中、危険地帯をなんとか切り抜けるも、レットからは置き去りにされ、体力的に限界になりながらも、なんとか命辛々、故郷・タラへと戻ってくる。

しかしタラは、すでに北軍に攻め入られたあとで荒廃し、頼りにしていた両親も、母は病死し、父は母の死によっておかしくなっていた。

さらに、お金も食料も全て北軍の連中に奪われ、スカーレットは絶望するも、彼女は飢えを凌ぐ事と故郷を守る事を決意する。

Wikipediaより抜粋

ここからは、ネタバレも辞さずに解説しますよ!

全てを失う物語である前編

序盤はひたすら「スカーレット」にイライラする

この作品は「良くも悪くも」主人公である「スカーレット・オハラ」力強い生き様に、見所の全てが詰まっている、と言っても過言では無い。

序盤の彼女に僕は、その鼻先目がけて「正拳突き」をお見舞いしたくなるほどの気持ちになりましたがね。

 

彼女は南部(アメリカ連合国)の農園主の貴族娘であり、「金持ち」で「絶世の美貌」を持つ。という圧倒的に人生の勝ち組なんですよ。
そして金持ち男はみんなスカーレットにゾッコン。

 

しかも彼女はそれを存分にいかしワガママ放題
そんな中で、本当に好きな相手「アシュレー」が別の女性「メラニー」と結婚すると聞きスカーレットは動揺、しかし持ち前の自己中を発動し、仰天の発言をする。

 

「彼は私が『彼のことを好きだ』と知らないんだわ」と・・・。
だがアシュレイは、そんな彼女ではなくメラニーと結婚する。

 

大暴れして怒り狂うスカーレット、そして一つの考えを導くのだ。私が誰かの妻になればきっと、彼は振り向いてくれる・・・と。
そしてメラニーの兄である「チャールズ」と結婚するのである。

なんという女であろうか、読者の皆様、鼻先目がけて「正拳突き」したくなってきたのでは無いだろうか?

 

この時点で、彼女への感情移入なんて出来るはずが無いんです!

ちなみにチャールズはその後、一分も経たないうちに戦場で病死する。
この描写は、意地悪なギャグ演出のようにも思わされる・・・。

「アメリカ史」の重大局面「南北戦争」が開戦

ここで少し歴史の勉強。

「南北戦争」とは「アメリカ」国土を二分し「南」(アメリカ連合国)「北」(アメリカ合衆国)が激突した「天下分け目」の決戦である。

基本的には争点として以下の事柄があげられる。

南「アメリカ連合国」北「アメリカ合衆国」
奴隷制賛成
農業中心の産業基盤
安価な労働力である奴隷が必須
反対
商工業中心の産業基盤
奴隷を解放し、「教育」を受けた
「労働者」が欲しい
貿易について自由貿易
他国に綿花を「大量」に売りたい
保護貿易
他国から安い製品を輸入されたくない

考え方の違いは深すぎて、対立は激化。戦争にまで発展するんだ

南部の人間は「貴族」であり、自分たちが「貴族」だから戦争に勝てるという自信を持っており、それはスカーレットの周りの人間も同様に考えていた。

だが「レット・バトラー」だけは違った。

彼は北部の近代装備の優位性に目をつけており、「南部」は負けると宣言したのだ。

このレットはスカーレットに惚れており、この映画は彼とスカーレットの心情の変化を描くのだが、それはひとまず置いていおこう。

「南部」の敗戦、地獄の飢饉と屈辱の日々

戦争は「貴族」だから勝てるものでは無い。
レットの宣言通り、優れた近代兵器を持つ北軍の前に南郡は敗退を重ねる。

 

ここに注目!!

ここでの戦場描写などを是非堪能してもらいたい。
CGなどの技術がなかった時代、セットを組み立て、そこに火を放つ。

当然人間は全てエキストラ。

そこには「リアル」な戦場の臨場感が「実」としてあるのだ。

特にスカーレットが怪我人で埋め尽くされた広場を彷徨うシーンは見逃せない。
映画史に残ると言っても過言では無いだろう。

 

そんな戦争の中、スカーレットやメラニーも激化する戦局で怪我人の手当てをすることになり、スカーレットは疲弊をしていく。


さらにメラニーの出産という出来事があり、スカーレットはアシュレイとの「妻を頼む」という約束を守るためにお産に立ち合い、見事出産を成し遂げる。

そしてアトランタからの命辛々の脱出するも、故郷は焼け野原という現実。

 

物語の前半が終わりを迎える頃、スカーレットは全てを失う。

家から金品は全て奪われ、母は亡くなる。
父は敗戦と妻の死という苦しみで「痴呆症」を患う。

スカーレットは焼け野原の中で貧相な人参を見つけ、それを貪り嗚咽する。

 

そこで「私は二度と飢えさせない、家族をうえさせない」
「例え嘘をついても、盗んでも、人を殺してでも」
と拳を振り上げ叫び、屈辱からの再起を誓うのだ。

ここでの叫びは、今作屈指の名シーンだね!!

前編と後編で変化するスケール感

ここで我々観客は少しずつ、スカーレットに思い入れてしまっているのに気づくのだ。
彼女は悲しい現実から逃れようとするのではなく、何をしてでも「再起」すると硬く誓う。

この作品の開始時にはその「不遜」とも言える態度は我々のイライラのタネだったのが、この決意のシーンではそれが、彼女の強さであることに気づかされるのだ。

スカーレットは何事にも「遜らない」
相手が歴史的な大きな事件であってもだ。

彼女は決して頭を垂れて、その運命に従おうとしない。
絶望を受け入れようとしない、そこから再起することを選ぶのだ。

この再び立ち上がろうとする姿勢が「第二次大戦後」の日本人の心にも響いた。
だからこそ、日本人は「風と共に去りぬ」を愛しているんだろうな

ポイント

この映画の特徴は、前編と後編で映画の語り口が変化する点だ。

✅ 「戦争映画的」大スケールで描かれる前編と違い、後編は非常にミニマムな規模に変化する。

✅ 歴史の流れという大きな「波」には逆らえない、人間の無力さを描く前編。後編ではそこから這い上がる「個人」を描く。

再起の後編、戦後世界をサバイブせよ!

再起のためなら”本当”に何でもする

前編のラストのスカーレットの「再起宣言」
そこにもあるように彼女は本当に何でもするのだ。

 

家で金品を奪おうとする強盗を射殺し手を汚す。その殺した相手から金品を盗む。
まぁ盗みに関してはメラニーの入れ知恵もあるけどね。

 

さらにスカーレットが、この時点では軽蔑しているレット。

お家再興のためには「プライド」すら投げ捨て、彼に金を用意させようとするが失敗。
ここで逆ギレするのがスカーレットらしい。
まぁでもレットは「アトランタ脱出」での、スカーレットをほっぽり出すのは、確かに酷いんだけどね。

 

そんな中妹が婚約する相手「フランク」の商売が上手くいきそうと嗅ぎつけるや、重くのしかかる税金を払うために、彼を騙して、自分と結婚するように仕向け、結婚。
先ほどの「なんでもする」という「宣言」通りの行動を全て行うスカーレット。

 

それを聞きつけたレットが「好きでは無い男と結婚するのが趣味ですね」と言いに来ても、どこ吹く風。

別に妹が結婚すれば「義理の家族」になり、お金の工面もできたろうに・・・
でもこれが彼女の新しい才能の覚醒に繋がるんだ!

その後のフランクに対するあんまりな「かかあ天下」ぶり、厚かましくフランクから経営権を奪い独裁状態。
前編でもその気質は十分あったが、後編になるとそれがいよいよ前面に押し出されるのだ。

 

そして彼女は「商才」を覚醒させ、憎き「北側」との取引きや、「囚人」を低賃金で雇い、働かせるなどの手腕を発揮。


例え周りに「何でもする」と陰口を言われようと、再起のためなら「何でもする」と誓った彼女には綺麗事など通じないのだ。

 

プライドを捨て「何でもする」スカーレットの姿は、「紳士である」から負けない、という意味不明なプライドを掲げ、結果完膚なきまでに叩き潰された「南」の男達への強烈な皮肉にもなっているのだ。

しかしアシュレイが好き

そんな彼女だが唯一変わらないのはアシュレイへの思いだ。
彼が戦地より生還するや否やまた熱をあげる。

アシュレイ、メラニー夫婦は今や、スカーレットに寝食の恩がある。
そしてメラニーはスカーレットのことを本気で頼りにしている。

そんな中、強烈なアプローチを仕掛けるスカーレットに対して、むげには出来ないアシュレイは困惑する。

ここでスパッと男らしく態度を表明しないアシュレイは、スカーレットと違いナヨナヨしている。
まぁ、今や雇われている側になるからね・・・。

もう一つこの映画で学べるのは「思わせぶりな態度はいかんですよ」と言うことだね笑

ポイント

前半では強烈なアプローチにたじろぐアシュレイを不憫に思うのだが、ここではアシュレイが意思表示をしないことに、イライラしている自分がいる。

✅ これも巧みな物語構成で、我々がスカーレットにどんどん感情移入をしている証拠とも言える。

悲劇、フランク死亡

木材販売が軌道に乗ったある日、スカーレットは貧民街で強盗に襲われる。

かつての奴隷であるサムに助けられ一難逃れるが、事件はそれだけには留まらないのだ。

南の国民は、敗戦後も「紳士」としての気概は失っていないのだ。
「紳士は淑女を守る」と言う古くからの男の役目を守るため、
その貧民街を焼き討ちにいく。

それを北側の憲兵に見つかり、アシュレイたちに危機が迫る。

それをレットが機転を聞かせて救うのだが、その最中に頭部に銃撃を受けてフランクが亡くなるのだ。

ここで初めて人を騙して結婚したこと、そして自分のせいで「死者」が出たことに後悔の念を滲ませる。

だがその後、彼女は驚きの選択をする。

三度目の結婚は軽蔑していた「レット・バトラー」

その後、彼女は何度もアプローチをしてきては拒絶していたレットと結婚を決意する。

その前に二人のここまでの経緯を・・・

レットとスカーレットのこれまで

スカーレットは終盤まで、結婚して以降も、レットのことを愛せないでいる、それは大きな理由がある。

二人は本当に似たもの同士という点だ!

最初の出会いはアシュレイとメラニーの結婚式であった。
そこでレットのいやらしい顔つきは映画史に残るいやらしさなので注目!

いい噂の聞かないレットという男に対して彼女は嫌悪感を抱き、あろうことかアシュレイに拒絶され怒り狂っていたところを見られてしまう。

二度目はスカーレットが一人目の夫を亡くした時のこと。
ある日アトランタで行われたチャリティー社交界に、スカーレットは喪中のため参加できずにイライラしている。

そもそも「愛して無い」から「死んでも悲しく無い」、なぜこんな楽しい社交界に参加できないんだ、と不満なのだ!

そこで「結婚指輪」を戦費にと、差し出すメラニーの聖女ぷり。
それに反して「愛してない人」からもらった指輪を「思い入れなく差し出す」という二人の違い。


でもメラニーはいい人すぎてその行為を「自分と同じように、しかも形見なのに・・・」と感心しているという。

 

事実を知りながら、それをその場で指摘せず、後から、「その指輪を買い戻しておいたよ」と手紙に同封するいやらしいレット。

その社交界であろうことか、ダンスの相手にレットはスカーレットを使命し、二人はダンスをする。

 

この時代で喪中に華やかなことをするなど常識外れだ。
だが二人は「常識にとらわれない」という接点があるのだ、このように少しづつ「二人が似ている」という点が伏線のように張り巡らされている。

 

その後は「敗戦濃厚」な「アトランタ」から「タラ」に逃れる際にレットがスカーレットとメラニーを連れて逃げ出すシーンで出会う。

そこで非常にもレットは途中で二人と別れ「南軍に入隊する」と行ってしまうのだ。
彼は戦争に元々反対だったのだが、それでも焼けてしまう「南」を失う直前に「愛していた」ことに気づいたからだ。

ここでの彼はせめて送り届けてから戦地へ行けよ。と思わなくも無いが、彼は「自由人」なのだ。
型にハマらない。それも実はスカーレットとレットの共通点だ。

そして前述した「税金」を肩代わりしてもらうための接触。
フランクとスカーレットの結婚に際してなど、ことあるごとにレットはスカーレットに会いに来るのだ。

似たもの同士すぎると、結婚生活がうまくいかなっていうよね!
まさしくこの症状が二人には当てはまるんだ。
これも今作から学べる点だね!

二人の結婚生活

レットはスカーレットが「商売」をすることを認めるなど、最初は「似たもの同士」うまくいっていた。
だがそれも長くは続かないのだ。

長女である「ボニー」が生まれ、いよいよ家族が増えという時ですら、スカーレットはアシュレイを思っている。

そして体型の変化などを気にし「もう子供は産まない」とレットに宣言。寝室も別にすると言い出す。

少しづつ亀裂が入る二人の関係。そしてついにレットは娘を連れて離婚を決意する。

重なる悲劇

その後レットは思い直し、娘のためにやり直しを決意するも、二人はうまく交わらない。
些細な口論がきっかけで「二人目を妊娠」していたスカーレットは階段から転落し、流産するのだ。

後悔に苛まれ、もう一度、本当にやり直そうと向きあうレットだが、不幸は連鎖する、ボニーが不慮の事故で亡くなるのだ。

二人を繋ぎ止める最後の希望が失われた時、ついに二人は互いを激しく罵り合う。

いよいよ二人の関係は完全に終わりを告げる。

子煩悩だったレットは自殺を考えるほどに深く嘆くのであった。

悲劇の連鎖は終わらない・・・

その後二人の仲を取り持つため、メラニーが来るのだが、そこで彼女はついに倒れてしまう。

元々病弱で、二人目の出産は命がけと言われていたのだが、無理を押切って出産をしようとしていたが、それが祟った。
さらに二人の関係を修復するために心労したのだろう。

 

そんな人に、他人夫婦の血も凍る修羅場を解決させよう。
というのが間違いな気がするけどね・・・。

 

一気に体調は悪化し、彼女は今際の際に立つ。

ここでスカーレットはメラニーを「憎い恋敵」だと思っていたが、いつもそばに居てくれた、誰よりも「信頼できる友人」であったことに気づくのだ。
(物語冒頭で「病弱で青白い顔した女」だと悪口言いまくってたりしてたんだけどね)

明日は明日の風が吹くのだから・・・。

またも全て失うスカーレット

メラニーの今際の言葉。
その言葉でレットのことを本当は愛していたということに気づき、アシュレイへの「愛」は嘘だったことを自覚したスカーレット。

彼女も前編でのレットが「失う時に気づく」と言っていたように、同じだったのだ。
今まさにレットとの関係が終わろうとしている、その時にようやく彼を愛していた。心から愛していたことに気づくのだ。

好きなものを傷つけてしまう、それに彼女は恐怖していて、生きるための処世術として、アシュレイを愛していると思い込んでいたんだ

しかし、時すでに遅し。レットはスカーレットを捨て家を出ていくのだ。

映画史に残るクライマックス/名台詞

その後、後悔の念で泣き叫ぶスカーレット。

 

娘、親友、愛する者。彼女はまたも大切なもの全て失うのだ。

 

それでも彼女は、また立ち上がる。

 

「今は何も考えられない・・・」
「夜が開けたら考えましょう」
「明日は明日の風が吹くのだから・・・」

 

二度目に全てを失った彼女は、再び、全てを取り戻すために立ち上がろうとするのだ!

ちなみにこの名台詞、直訳だと
「明日という日があるのだから」という方が正しいらしいね!

何もかも失い、残ったもの、それが自分なのだ!

また何もかも失ったスカーレットだが、彼女には何度、いくら奪われようと決して奪われることのないものがあった。

 

それは「タラ」という故郷への愛情だ。

 

序盤ではその意味を理解していなかった彼女が、最後にそのことに気づく。

愛する者、それらが去っていっても、なぜ立ち上がれるのか。

それは彼女に「タラ」という故郷が残っているからだ。

 

どんなに「奪われても」「失っても」それでも残る「最後の物」
それこそが人間の強さの源になるのかもしれない!

最後に流れる今作のメインテーマ「タラのテーマ」それがまた胸に染みるのだ。

ポイント

スカーレットが何度全てを失っても、決して奪わなかったものは「タラ」という故郷の愛情。

✅ 最後に残るものが「人間の強さ」の源になる。

歴史的大作だが、今では問題点も指摘されることは留意

間違いなく映画史に残る作品である「風と共に去りぬ」だが、今では以下の点で「人権」的な指摘を受けることもある。 歴史認識の進歩は、「正しさ」の定義を変えるということがある!

スカーレットが懐かしみ、いい時代だと回顧するのは”奴隷”のいた世界だ

There was a land of Cavaliers and Cotton Fields called the Old South.
Here in this pretty world,
Gallantry took its last bow.
Here was the last ever to be seen of Knights and their Ladies Fair, of Master and of Slave.
Look for it only in books,for it is no more than a dream remembered,
a Civilization gone with the wind…・・・・

かつて在りし騎士道と綿畑の地 
人はその地を古き良き南部と呼んだ 
その麗しい世界で最後に花を咲かせた  
勇気ある騎士達と艶やかな淑女達  
奴隷を従えた主人たち  
今は歴史に記されるだけの儚い思い出となった 
大いなる文化は 風と共に去りぬ・・・・

アーネスト・ダウン 恋愛詩「シナラ」」より

この詩の引用から始まる本作では、やはり、奴隷社会称賛という風に指摘されてしまうとう点は捨て置けない問題である。
もちろん今作品でも「奴隷」の黒人は訛っていたりする描写もある。

ただし、こういう指摘があるからと言って、この映画内では黒人の扱いは「酷すぎる」とも言い切れない。

スカーレットに付き従う「黒人使用人」のマミーは、愛情たっぷりに描かれているし、貧民街で助けてくれるサムの存在など、今作において重要な役目を果たす。

 

マミーを演じた、ハティ・マクダニエル
彼女は今作品で「アカデミー賞」で「助演女優賞」を獲得し、「黒人」として、オスカーを初めて受賞した。

だが、当時「人種隔離政策」が施行されており、「黒人」は会場となったホテルに入ることが許されておらず、ハティは特例で出席をした。

が、ヴィヴィアン・リーたち共演者と同じ席につく事は許されてなかった。

この作品が作られた当時は、こうした差別が蔓延をしていた時代であった。

 

 

だが、やはり人を奴隷とする「南部」「アメリカ連合国」を良き時代と回顧するのには、そこに反感を覚える人間が多くいるのは当然である。
今では公の場で「アメリカ連合旗」を掲げてはならない。

 

そう言った「人権」という価値観の進歩が、過去の価値観を変えることがある。それも留意して置かなければならない。

「正しきこと」「良きこと」とは時代の進歩とともに変化する。もちろんその逆も然りだ!

今作を振り返って

ざっくり一言解説!

わがままも、ここまでいくと立派!

最終的にはスカーレットを応援しちゃってる自分がいるんだ

まとめ

この作品は「失う物語だ」
前編では経済基盤や故郷を失い、そこから後編では再起をする。

そのために手段を選ばない姿、前編では鼻持ちならないスカーレットの「前向き」さ「強引さ」が、後編では「ポジティブ」な意味に変化するのだ。

日本での初演は「戦後間もない頃」
当時の観客は彼女と同じように焼け野原の故郷を見ている。おそらくこの物語が心に響いたことだろう。

それが今でも「風と共に去りぬ」を日本人が愛している理由ではないか?

そして、前編は「南北戦争」という大きな歴史のうねりを主題にし、人々が無力にも全てを奪われる。というスケールの大きな物語展開をし。
後編はミニマムなスケールで描かれ「メロドラマ」の要素を多分に含むことになる。

物語のスケール感の変化も見逃せないポイントだ!

 

だが前後編どちらも、最終的には「失う」ところに物語は帰結し。

しかし彼女は再起を誓い、物語が締め括られる。


前編では経済基盤を、後編では経済基盤ではなく「愛するもの」を失う。

だが失ったものを、取り戻そうと決意するのは、やはりスカーレットという人間の強さの現れだ。

 

この強さはこれからの「未曾有の危機後の世界」で必要なのかもしれない!

 

本文では書ききれなかったが「メラニー」の存在もまたこの作品では大きな役目を果たしている。

(ご冥福をお祈りします)

この物語でスカーレットはメラニーを疎ましく思っている。
愛していたアシュレイを奪った恋敵として。

二人は生き方も随分違う。


「唯我独尊」のスカーレットに対してメラニーは「慈悲」の塊、生母のような人間だ。
そんな彼女の生き方こそ、本来スカーレットがなりたかった「母親」の姿なのだ。

 

それを分かっていたからこそスカーレットはメラニーを心の底では愛していた。
メラニーもスカーレットの強さに憧れていたのだ。

 

お互いに、お互いの持ち得ない部分を持っていた。
だからこそ二人は真の「友情」で結ばれたのだ。
悲しいことにスカーレットはそれを失う時に気づくのだが。

この映画が教えてくれることは、「大切なものは失う時に気づく」という点もあるよね!

だが、「何度、失っても」それでも残る物がある。

 

それが最も大切な物なのだ、それさえあれば人間は何度でも立ち上がることができるのだ。
その決断をするスカーレットに最後はどうしたって思い入れずにはいられない。

 

スカーレットはこれからどう生きていくのか、そこを考えずにはいられないのだ。

今作品の総括

  • 今作品は「失い」続けるスカーレットが最後に「大切なもの」に気づく物語。
  • 失ったものを取り戻そうとする。
    その姿勢こそ、今後の世界を生き抜くのに大切なものかもしれない。

と、いうわけで読了お疲れ様でした!
また次の記事でお会いしましょう!

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