映画評 評論

【映画記事】「少女邂逅」描かれる”痛み”とは?

 

今日はプライムビデオで鑑賞しました、「少女邂逅」という作品をご紹介します。

 

この記事を読むと

  • ”痛み”を知る少女の悲しきすれ違い。
  • ラストシーンの僕なりの”解釈”がわかる。

「少女邂逅」について

基本データ

  • 公開 2017年
  • 監督/脚本 枝優花
  • 出演 穂志もえか/モラート世理奈 ほか

 

本作はクラウドファンディングで制作された作品とのこと!!

あらすじ

いじめをきっかけに声が出なくなった小原ミユリ

自己主張もできず、周囲にSOSを発信するためのリストカットをする勇気もない。

そんなミユリの唯一の友達は、山の中で拾った

ミユリは蚕に「紬(ツムギ)」と名付け、こっそり大切に飼っていた。

「君は、私が困っていたら助けてくれるよね、ツムギ」
この窮屈で息が詰まるような現実から、いつか誰かがやってきて救い出してくれる──とミユリはいつも願っていた。

ある日、いじめっ子の清水に蚕の存在がバレ、捨てられてしまう。

唯一の友達を失ったミユリは絶望する。

その次の日、ミユリの通う学校に「富田紬(つむぎ)」という少女が転校してくる───。

公式サイトより抜粋

 

「痛み」とは?

”痛覚”のない虫

これは「痛み」を描いた作品だ。

 

主人公のミユリはイジメを受けて「声が出ない」
おそらく毎日人気のないところに連れて行かれて、そして鞄の中身を全てひっくり返されているのだろう。

そんな出来事が積み重なり、声が出なくなったのだろう。
それが冒頭描かれる。

 

そんな彼女が偶然見つけた「蚕」
それを「ツムギ」と名付け、傷ついた心を癒す存在として飼っていた。

だがそれもいじめっ子の清水に見つけられて、捨てられてしまう。

絶望に苛まれる彼女の前に現れるのが紬という少女だった。

 

東京からきた転校生ということで、一気にクラスのみんなと距離を縮める彼女。
見るからにミユリとは真逆のバイテリティを持っている。

 

だが、彼女の登場から今作は、「不思議」な雰囲気は醸し。
そして「「不気味さ」「危うさ」を孕んでいく。

 

この時点で僕は、本作を「鶴の恩返し」的な「ファンタジー」な作品だと思いました。

 

見ていて、この物語がどこにいくのか、それがわからないまま進んでいく。

 

この紬を演じる「モラート世理奈」の独特の雰囲気、どこか美しく、儚く、そして不気味。
彼女の存在なくして本作は、この独特の味わい・雰囲気を醸し出すことが出来なかったでしょう、今作の間違いなくMVPです。

 

そんな紬はミユリと距離を縮めていく。

だけど明らかに、彼女の体からは「糸」が出ている。
だから見ていて、思うんです、彼女はあの「蚕」なんじゃないか?

その疑問を最後まで孕みながら今作は進んでいく。

 

そんな彼女が結果として”夢か現か”雨の中の電話ボックスで問題を出す。

「どうして虫に痛覚がないのか?」

答えられないミユリに彼女は語りかける。

「虫には痛覚がない」「すぐに死ぬから、”痛み”を知る必要がない」


ここでも、やっぱり彼女は「虫なのか」と思わされるのだが、ひとまずそれはおいておこう。

 

言い換えれば「人間」の「一生は長い」
だからこそ、”痛み”を知らなければならない。

 

でも過酷なイジメを受けるミユリは「痛み」をこれ以上感じたいはずがないのだ。

そして、「心」の「痛み」とのバランスをとる、そのために「身体」を傷つける「自傷行為」すら出来ない。

彼女は「痛み」から逃れることができない、だからこそ辛いのだ。

 

そんな彼女を支える紬。
紬との出会いが、少しずつ彼女を変えていくのだが・・・。
今作はそういう単純な話ではない。

 

 

 

ポイント

✅傷ついたミユリは”痛み”を感じたくない。

 

変わっていくミユリ、不穏な紬

紬という心のよりどころができて、変わっていくミユリ。
そして「声」を取り戻す。
ここは本当に割とあっさりとですね。

冒頭ではボサボサだった髪の毛を紬に結ってもらい、垢抜けた雰囲気になる。
すると、クラス内でも少しづつ周囲と溶け込むことができるようになっていく。

 

個人的に思うところ

ミユリがクラスに溶け込めるのは良いことだけど、このクラスメイトは
「イジメを見て見ぬふり」していた。

だから、ちょっと嫌な感じもしちゃいましたね。

ただ、そんな何気ない変化で、周囲の反応も変わることもあるのかもしれない。

ただ、その変り気の早さが”怖い”と思いました。

 

そして、紬とは「沖縄にいこう」と約束をする。
どうやら紬は「大石林山」というところに行きたいらしい。

 

人が一人通れるほどのこの穴を3回くぐることで、生まれ変わることができるといわれています。

まず1回目で、失恋や失敗、病気といった悪い過去を捨てることができ、2回目でリセット、3回目で新しく生まれ変われるのだそう。

「たびらい沖縄」より引用

 

そこで生まれ変わり、紬は「ちゃんとした”人間”になりたい」という。
そして「この旅は2人だけの秘密」と指切りをする。

ここでも前述した疑問が頭をよぎりますが、紬がここから旅費を稼ぐため、そして、ここまでの描写から不穏な雰囲気が漂ってくる。

どうやらこの子は”普通”じゃないぞ、と。

 

かたや、ミユリはどうか。

クラスで仲のいい友人が他にもでき、偶然その子たちが「沖縄に行きたい」と言い出す。

ここで紬とミユリの間での”不協和音”のようなものが少しずつ聞こえてくる。

「君だけでよかった」「君だけがよかった」

このキャッチコピーの意味が、この時点ではミユリの思いなのか?
そう思わせるのだが、実はそれがこの後、逆転をしていく。

 

 

ポイント

✅ミユリは少しずつ孤独から抜け出す、紬は逆に”孤独”になる。

 

「蚕」だった少女

不穏に漂う「性的」な影

その後、不穏さを抱きながら。
特にミユリの見る夢などは「ホラー」か。
というほどでしたが、実はここで描かれることが「紬」の真相にも直結することになる。

 

「蚕は、中身に価値はない」「絹糸に価値がある」
「蚕は成虫になっても、食事ができず死ぬ」

 

ミユリの見た夢では、紬はクラスメイトを「人形」にしていた。
感情を捨てさせ・思考を奪う。
おそらく「セックスドール」にしたのだろう。

そして彼女は続ける「中身に価値はなく、外見に価値がある」
これは「性的欲求を満たせれば、中身など必要ない」と言っているに等しい。

これはつまり「女性は”蚕”だ」と言っているのだ。

今作品は、ここの夢に至るまで、実は不穏さ。
すなわち「紬」が、「売春」をしているのではないか?
というのをずっと、直接は言わず、しかし間接的には示唆し続けているのだ。

そのことを察したミユリが見たこの夢。

 

どんどんミユリには紬が理解できなくなっていく。

そして訪れた沖縄への出発日。

 

この日の授業は、ここまで意味深に描かれた蚕の中身を殺して、絹糸を採取する工程に入っていた。
そこで、「紬」はその蚕を殺すのに不快感を表し、暴れてしまう。

 

保健室で対面した2人、いつかのように「問題」を出す紬、答えられないミユリ。
「不正解」
ここでおそらく紬は、ミユリが真の意味で自分を理解していないと悟ったに違いない。

 

そん日の放課後、2人は沖縄に向かおうとするのだが、ここで不意にミユリが紬の太腿を見てしまう。
無数の傷、伸びる糸。

おそらくこの糸は幻影だろうが、それを辿っていった先。
おそらく「性器」を見て「全て」を察したミユリは混乱し、紬から去っていくのだ。

 

ポイント

✅ここまで我々の感じた不穏さが「夢」に現れ、そしてそれが「現実」となる。

実は、逆だった真相

その後、沖縄には行けなかった2人は学校にいくものの、そこで紬は倒れてしまう。

おそらくミユリは紬から拒絶されたのだろう、2人の間に大きな壁ができるのだ。
話は前後するがフラッシュバックの中に枕でミユリを殴りつける紬の姿も描かれている。

 

この時点でミユリは「紬が売春をしていた」ということはわかっている。
ミユリは紬のことを何一つ理解していなかったのだ、自分の”痛み”だけを感じて、彼女の”痛み”を知らなかったのだ。

 

沖縄に行くのも、そんな環境から逃れて、ちゃんと「真っ当に”人間”として生きたい」という願いからの行動だったのだ。
それをミユリは理解してくれると紬は思っていたのだ。

 

だからこそ、ミユリも売春をしようとネットで出会いを求めて行動する。

おそらく紬の痛み「性的な痛み」を理解しようとしての行動だろう、しかし、相手はまず「映画にいこう」という。

「そんなものなんだ」というセリフは、同じ痛みを知ることができない、その落胆からの声だったのだ。

 

このは作品ずっと「ミユリというイジメられた少女を助ける紬」
そういう関係性の物語だと思われてきたが、実は違った。

 

父親から性的虐待を受け、そして売春をさせられてきた「紬」が、イジメられ傷つき、いわば同じ「傷ついた境遇」のミユリに助けを求めていたのだ。

 

しかし、それを知ったのは紬の死後だ。
彼女は成虫になったカイコガのように、餓死をした。

何も食べずに、死を選んだのだ。

そういう意味で「紬」は「ツムギ」つまり「蚕」だったのだ。

 

ポイント

✅実は、「ミユリ」に助けを求めていたのは「紬」だった。

✅いくつかの意味で「紬」は「蚕」だった。

最後のリストカット

今作は最後にミユリがリストカットをし、血を流して幕を閉じる。

ミユリは希望の大学に進学をして、そして見送ってくれる友達もできた。
作品の冒頭と比べると、180度違う景色を手に入れたのだ。

だが、それでも「紬」のことが頭から離れない。

 

最後の「リストカット」に込められた意味はなんなのか?

 

それはきっと、彼女の”心の痛み”を理解できなかった。
だから、せめて”身体の痛み”は、覚えておこうということなのではないか?

 

「虫は寿命が短いから、だから”痛み”を知る必要がない」

逆に言えば「寿命が長いからこそ、人間は”痛み”を知る必要があるのだ」

 

ミユリは紬という大切な友達のこと、その”痛み”を知ることができなかった。
だからこそ、せめて身体的な”痛み”で、それだけをせめて理解してあげたかったのではないか?

 

もう一つの解釈

このリストカットの意味をもう一つ考えるなら、「”痛み”を知る勇気」をミユリが得たという解釈もできる。

 

 

この物語は「痛み」を共有できると思っていた「傷ついた魂どうし」が「理解」できないままに終わる。

「人と人がわかり合うのは難しい」

その切なさに、我々は胸をえぐられるしかないのだ。

 

ポイント

✅最後のリストカットは、贖罪の意味を込めて、せめて”痛み”だけでも理解しようとしての行動。

 

 

今作を振り返って

ざっくり一言解説!

「君だけでよかった」「君だけがよかった」の本当の意味を知る作品。

この思いを本当に抱いていたのは、どちらか?
そこに思いをはせずにはいられない。

まとめ

「人と人とがわかり合うことは難しい」

「痛み」を知るもの同志、最初は理解できている。
そう思ったのに、何一つそれができていなかった。

そして秀逸な「蚕」というテーマ。

「少女邂逅」は「少女蚕」という風にも言い換えることができる。

 

近づきすぎると、糸が絡まりあい、サナギになれない蚕。
だからこそ飼育下では”壁”を作らなければならない。

ある意味で「蚕」である「紬」は壁を乗り越え、ミユリに近づいた。
でも絡まって死んでしまったのだ。

「壁」を越えようとした、でも結局それでも「理解できなかった」

その切なさに胸をえぐられて仕方がない。

 

まとめ

  • 「蚕」モチーフの巧みさが見事。
  • 切ないラストに胸をえぐられる。
  • 「君だけでよかった」「君だけがよかった」真の意味に涙。

 

 

読了、お疲れさまでした!
今作の主題歌「ほうかご」を歌う「転校生」
その儚げな世界観もぜひ味わってください。

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