
今回は、今朝のツイート内容について、ちょっと深掘りして語ろうかなと思います。
ということで「いま読みたい、”京都小説”」についてのお話。

ただし、この「近鉄と満月」は厳密にいうと「奈良舞台」作品なので、今回は紹介条件に当てはまりませんが・・・。
しかし、この作品を読んで「多くの作品が数珠つなぎ」のように連なっている。
そのことを非常に興味深いと思い「京都」をテーマにした作品。
あくまで「僕の好きな作品」を紹介したいと本棚を漁って記事を書くことにしました。
ちなみに僕は「京都」出身・在住なので、そのあたりも絡めて・・・(絡められるのか?)紹介できればと思います!
昨日紹介した「満月と近鉄」
解説に「ルヴォワール」シリーズの「円居挽」の名前出てきて驚き
しかも「夜は短し」のころの「森見登美彦」と勘違いしたエピソードとか 万城目学も登場……
同じ時代に、”同じ”テーマを語る小説家が交わってる奇跡
「現実は小説より奇なり」 まさにこのこと
(太字部分は、ツイート時に抜けていたものです)
「父上が昔、僕に言ったよ。こうして一冊の本を引き上げると、古本市がまるで大きな城のように宙に浮かぶだろうと。本はみんなつながっている」
森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」 から抜粋しましたが
まさに小説がどこかで繋がってる、
そんなことを再確認させられた
「満月と近鉄」
オススメ!
目次
「いま読みたい”京都小説”」

ということで今回は5作品+1作品の番外編をご紹介。
ラインナップはこちら。
- 古都 川端康成
- 四畳半神話体系 森見登美彦
- 鴨川ホルモー 万城目学
- 珈琲店タレーランの事件簿シリーズ 岡崎琢磨
- ルヴォワールシリーズ 円居挽
- 番外編 いなり、こんこん、恋いろは(漫画) よしだもろへ
「古都」 川端康成

物語は非常にシンプル。
生き別れた双子の姉妹「千恵子」「苗子」が、四季折々美しく描写された京都で再会し、触れ合う物語。
千恵子は裕福な呉服屋に引き取られ、苗子は北山の厳しい環境で貧困に生きている。
そんな2人は共には暮らすことを選ばず、冬に別れる。
その切なさを描く作品。
だからこそ、最後の姉妹水入らずの時間の美しさ。
そこを味わうべき作品だと言える。
さらに京都の四季を描く一行一行の文。
それらが切なくも、美しく、描かれているのが特徴だと言える。
また観光地めぐり的な名所案内描写、伝統行事描写なども細かに描かれており「京都、おいでよ、良いところ」「そうだ京都へいこう」
という気持ちにさせられ、「観光意欲」を湧き立たせられる作品だと言える。
当時「古都」を読んだ方々は、「京都に行きたく」なったんじゃないだろうか?
あと、これに関しては、執筆中の川端康成が睡眠薬などを飲み、「夢現」の状態で筆を進めたのも原因かもしれないが、文章の繋がりの悪さ。
この危うさも、2人の関係がどうなるのか?
そこを際立たせる良いスパイスにもなっている。
今さら、僕が知ったような口を聞くのもおこがましいですが。
名作と呼ばれている、それが十分に感じさせられる作品ですし、「京都小説」という括りで、語るならば”外せない作品”だと思います。
ポイント
✅物語の結末の切なさ、それが「唯一の姉妹水入らずの時間」を美しく、儚く際立たせる。
✅「京都、おいでよ、良いところ」というように、京都の様子・伝統行事を美しく描写。「京都観光意欲」を掻き立てられる作品。
「四畳半神話体系」 森見登美彦

かつて、森見登美彦作品を扱った際に「アホな大学生」の物語。
という話をしましたが、まさにそれを象徴する作品ではないでしょうか?
ちなみに下記リンクにてその際の記述はありますので、よければ読んでください!
「あの時、あのサークルに入っていれば」
といくつもの並行世界で、いくつもの「もしも」を体験する”私”
その側には悪友の”小津”が常に現れ邪魔をする。
この「もしも」という、「選ばない可能性」の先に、「薔薇色」の人生が待っているものではない。
今の自分が「選んだ可能性」と、そんなにも結末は変わらない。という教訓。
これは、人生の厳しさ。だとも言える。
でも逆に言えば、そんなに変化することはない、だから「今の人生」を愛してもいいのだ。
という風にも受け取ることができる。
最後の「小津」へのメッセージがこれまでの、並行世界と逆になっているのが良い。
どこでも「小津」は”私”の「悪友」であるのだ。
そんな存在と出会う人生。
僕も体験したいものだ。
ポイント
✅こんな「大学生活」に憧れる。
✅今の「人生」を肯定してくれる作品である。
「鴨川ホルモー」 万城目学

この作品も「アホな大学生」の織りなす物語なのだが、この作品には「部活」「スポ根」もののような魅力を感じた。
「鴨川ホルモー」という歴史ある競技に、最初は「懐疑的」な主人公の安倍をはじめ登場人物が、徐々に魅入られ、本気で打ち込んでいく。
ある意味で、これは「部活もの」のよくある展開だとも言えるのだ。
やってることは「アホ」極まりないのだが、その真剣な姿に、まるで「高校球児」を見ているかのように、どんどん引き込まれてしまう。
無駄に歴史的な意味合いなど、深く描写され、そこに謎の権威性が生じたり、どんどん物語に引き込まれてしまう、その巧みさたるや。
今も僕らの知らないところで「鴨川ホルモー」が行われているんじゃないだろうか?
そう思うとちょっと日常が楽しく思えてならない。
ポイント
✅今作品は「スポ根」の側面もある作品だと言える。
珈琲店タレーランの事件簿シリーズ 岡崎琢磨

「第1回京都本大賞」受賞作品。
「京都」で「コーヒー」にまつわる仕事をしていて、この作品に触れないワケにはいかない。
日常に潜む不思議を若いバリスタ「切間美星」が「コーヒーにこじつけて」解決する。
「人の死なないミステリ」いわゆる「コージー・ミステリ」という区分に入る作品だ。
なんと言っても特徴はただ一つ「美星」の魅力萌え。
そこに一点突破をかけている作品だと言える。
個人的にはちょっと「こじつけ」というか、強引なところも目立つ作品だと思ってもいるが、シリーズ化に際して「キャラの魅力」「キャラを立てる」というのは非常に重要。
そこができているので、シリーズが進むごとに、どんどん引き込まれているのも事実だ。
個人的には「実写」もしくは「アニメ」
他媒体で展開するのも近いかなぁ。なんて思っていたがそこは予想が外れました笑
ポイント
✅「キャラの魅力」を重要視するならハマること間違いなし。
✅シリーズを重ねるごとに、面白さが増します!!
ルヴォワールシリーズ 円居挽

円居挽による「ミステリ」作品。
京都において古来から行われる「貴族」の間で行われる「私設裁判」「双龍会」での戦いを描いている。
「嘘」「騙し」「証拠偽造」もなんでもあり。
その場で聴衆を納得させられれば、「事実」なんてどうでも良い。
そんな条件で行われる「双龍会」に勝つために、登場人物が「策略」を張り巡らせるこの作品。
毎回きちんと最後に「やられた」と思わされる。
その手腕は本当に見事。
僕は1作目の「丸太町ルヴォワール」
今作品の一行目から、読了後に振り返ると「まさか・・・」
その快感というか、奥深さにやられてしまいましたね。
またこの作品、きちんと「恋愛」がシリーズ通じて描かれており、「恋愛小説」としても楽しめるのではないでしょうか?
龍樹落花の”虚偽”を言葉巧みに惑わす必殺技「落花戻し」からの「落花狼藉堪忍な」
達也の「指し手黙すは棋士の瑕だ」など、名(迷)台詞も魅力。
それぞれのキャラクターが「騙し」「騙され」言葉で斬り合う、新感覚ミステリー!!
ポイント
✅「なんでもあり」でも読了後は全て「納得」できる。
✅各キャラクターの得意戦術など、それぞれの各人「戦い方」を差別化されているのも特徴。
番外編 いなり、こんこん、恋いろは(漫画) よしだもろへ

本棚の「京都小説」を探していると出てきたので、ついでにご紹介。
(漫画なので、趣旨とは違いますが笑)
主人公「伏見いなり」が「伏見稲荷」の主神「宇迦之御魂神=うかさま」と友情を育み、互いに恋の願いを叶えようと奮闘する物語。
「人間ながら”神の力”を使い、恋を叶えようとする」いなり。
うかさまから「変化の力」を授かった「いなり」がその力で「丹波橋くん」と付き合おうと努力する。
「神の力をすて、人間と恋をしたい、一緒になりたい」と願う、うかさま。
しかし邪魔をするのは「神・人間」という身分に、シスコンの「兄」
そんな2人の恋の模様を、時にはギャグを交えて語っていく作品。
個人的に僕が高く評価しているのは「いなり」の「神の力を使い好きな子と付き合う」
これに、いなりが「ズルいこと」だと気づき、それではダメだと気づくシーンですね。
ちゃんと「自分の力」で「恋を成就させる」ことの意味に、自分で気づく、ここに僕はグッときましたね。
また地元民だからわかる「あの高校」や「あの中学」のモチーフ。
キャラクター名が京阪駅名からきているなど、「よしだもろへ」の見ていた景色は、僕の子供時代の景色でもあるんだろうな。
と非常に親近感が湧くのも特徴!
個人的に「アニメはもっと評価されて良いはず!」と思ってます。
(ただ、アニオリの結末に関して言いたいことある派ですが)
ポイント
✅「神の力」を使ってではない、自分の力で「恋を成就」させる。そのことに「いなり」が気づくシーンがGOOD!
まとめ

ということで、「京都作品」のご紹介いかがだったでしょうか?
「あの作品がない」「これがない」などいろいろあるでしょう、今回は「いま、手元にある作品」ということで紹介しましたので悪しからず・・・。
そうそう、本屋に入ると京都を舞台にした作品、しかもファンタジー色を伴う作品が多いと感じることがある。(当然「京都の本屋だから」と言われればそれもあるだろう)
それは、京都という都市の古さと関係しているのかもしれない。
例えば京都なら平安の頃から「双龍会」が行われていそうだし、「龍師」を育てる「龍樹家」もあってもおかしくない。
「鴨川ホルモー」なる不思議な競技が行われているのにも「京都」だから。
とある程度納得させられてしまう。
「歴史」がある。
だからこそ、人知れず謎に包まれた文化が”あった”と書いても、そこにリアリティを持たせることが出来るという効果を持っているというわけだ。
そういう視点かあら見ると京都はファンタジーの舞台にしやすいのかもしれない。
今後も映画のみならず、こうした小説などにも触れ、見聞を深めていきたいと思う。
願わくば、不思議な出来事に僕も出くわさないか?
などと不毛な「願望」を少し抱きながら。
最後に「京都」ソングを紹介!!