ディズニー総チェック 評論

【映画記事】「ヘラクレス」ーただ、それだけ出来れば”英雄”さー【ディズニー総チェック】

 

さて、今日も制作順にディズニー映画を評論・解説する「ディズニー総チェック」

ということで今回は「ヘラクレス」について語ります。

 

この作品のポイント

  • 「大人向け」路線から大きく路線変更。
  • 「ヒーロー」とはなにか? 
    典型的な「英雄誕生譚」である。
  • かつての「短所」が「長所」になる。

「ヘラクレス」について

基本データ

基本データ

  • 公開 1977年
  • 監督 ジョン・マスカー/ロン・クレメンツ
  • 脚本 ロン・クレメンツ/ジョン・マスカー/ボブ・ショウ
    ドナルド・マッケンリー/アイリーン・メッキ
  • 声の出演 テイト・ドノヴァン/ジョシュ・キートン ほか

あらすじ

神の息子として生まれたヘラクレスは人間界へ追いやられてしまうが、屈強で不器用な10代の青年に成長する。

ヘラクレスは自分が神の子でありゼロから「本当のヒーロー」になればオリンポスへ帰れると知らされ、赤ん坊時代からの仲間である伝馬ペガサスと英雄専門トレーナーのフィルと力を合わせて努力する。

しかし目の前には障壁がいっぱい。ギリシア人の美女メグと邪悪で短気なハデスの謀略をくぐり抜けなければならない。

ハデスはペインパニックというまぬけな子分を従え、オリンポスを支配しようと企んでいる。

その野望を阻止できる者こそヘラクレスなのだ。

ディズニープラスより引用

大きな路線変更

「大人向け」からの路線変更

 

「ヘラクレス」は「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」のいわゆる「大人向け」路線から、「子ども向け」「大衆向け」に舵を切り直した作品だと言える。

ここでいう「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」に対する「大人向け」というのは、「物語を正しく理解する」には、ある程度の知識が必要であるという事だ。

 

✅「ポカホンタス」・・・どこまでが「史実」で、どこからか「フィクション」かを理解しなければ、この作品にまつわる、諸々の批判が理解できない。

✅「ノートルダムの鐘」・・・特に物語で強烈な個性でえがかれる「フロロー」の行動原理が、子どもには難しい。

 

上記2作品は、それぞれ作品のクオリティや、物語は非常に面白く、深い味わいのあるものになっているのだが、こと興行面においては苦戦。
そこで、今回は明確に路線を変更してきたと言える。

それが、ある意味で「純エンタメ度」の高い作品、つまり「子ども」も「大人」も関係なく楽しめる「大衆ウケ」のいい作劇に明確にシフトしてきたといえる。

 

「神の子」ながら、ヴィランである「ハデス」にその力を奪われ、人間界に追い落とされた主人公「ヘラクレス」
今作は、彼が「神」に戻るため、人間界で「英雄」になることを目指す、そんな作劇になっている。

(原作は一応「ギリシア神話」ということになっているが、設定や名前を借りているだけで、実質ほぼオリジナルと言っても過言ではない)

 

編集長
ちなみに、この物語構成は、及び「神の世界」「人間の世界」の構図など、
後年の「マイティー・ソー」と非常に近い作劇になっているとおもいます!!

 

つまり、硬いことを考えずに楽しめる作りになっているのだ。

ということで、まずは今作が「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」からガラリと変わる路線の作品であること、それを踏まえて「ヘラクレス」をこれから深堀り解説していきたいと思う。

 

 

ポイント

✅前2作品は、意味を理解するには、ある程度の知識が必須、そういう意味で大人向けだと言える。

✅今回は、万人が見て楽しめる作劇にシフトしている。

人との違いに悩む「ヘラクレス」

 

今作は主人公である「ヘラクレス」に感情移入しやすい作劇になっている。

前述したように「オリンポス」の主神「ゼウス」の子である「ヘラクレス」は、物語の冒頭、「ハデス」の策略で「神の力」を奪われ、「人間界」に追放されることから物語が始まる。

ハデスは予言で、ヘラクレスに敗れることを指摘されており、そうならない為に彼を殺そうとするのだ。
だが、それは失敗に終わる。

 

ポイント

赤ん坊のヘラクレスが人間に拾われるシーン。
そこでハデスの手先である「ペイン」「パニック」を結んでしまうシーンは、神話での彼の逸話からきている。

 

そこで人間の両親に拾われ「ヘラクレス」は人間として、ただし「神の力」の断片を保持しているので、「怪力・身体が丈夫」なのだ。
それが彼を苦しめることになる。

 

そこから少年に成長したヘラクレスは、その怪力で両親の仕事を助けるのだが、力が有り余るが故にトラブルを頻発させ、周囲の人間から厄介者扱いされる。

そこでの彼のトラブルを描くシーンは、ギャグテイストで描かれているのだが、よくよく考えると相当つらい描写とも言える。

 

手助けしようとすれば、あっちに行けと言われ。
同い年の友達が遊んでいて、それに加わろうとしても仲間に入れてもらえない。
あげく、それがトラブルを招く。

結果、描かれ方は完全にギャグで、コメディのようだが、施設一つが完全に崩壊。
ヘラクレスはますます、自分が他人と違うことに心を痛め、悩むことになるのだ。

 

そこで両親はヘラクレスに真実を語る。
「お前は捨て子だった」と。
そして、「神の子」である証とも言える「メダル」を彼に手渡すのだ。

そして自身が「神の子」であり、また自分も「神」であることを知るヘラクレスは、自身もその地位に戻るために「人間界」で「ヒーロー」になることを夢見るのだ。

 

 

つまり最初の彼の「ヒーロー」になりたいという動機は明らかに、自分自身のため。
本当の居場所を求めて、人間界から「神の世界」に移りたいという強い思いが原動力となっているのだ。

 

 

ポイント

「ヘラクレス」は人間界で、明らかな疎外感を抱いている。

✅そんな彼が「ヒーロー」を目指すのは、自分自身のためである。

「ヒーロー」とは?

 

そこから、ヘラクレスは師匠となる「フィル」と出会い、彼のもとで修業をする。

このフィルというキャラクターはまた味わい深い。
自身の育てた弟子が文字通りの「ヒーロー」になることを夢見ているものの、弟子が夢半ばで力尽きるなど、彼は弟子の「死」と共に、その「夢」を諦めしまった。

最初はヘラクレスの弟子入り志願を断るものの、彼の素質を見抜き、修行をつけるなど、ヘレクレスにとってかけがえのない存在となっていく。

 

いわばこの物語は、フィルという「人生の目的を見失った男」がヘレクレスとともに、その夢にもう一度チャレンジする物語とも言える。

 

個人的には彼を観ていると、ボクシング漫画の金字塔「あしたのジョー」「丹下段平」を想起させられもした。

 

 

そんなよもや話はさておき、今作でヘラクレスはフィルの元で修行し、立派な肉体を手に入れ、いよいよ「ヒーロー」としての活躍を始めようと、「テーベ」へ向かう。

その道中に今作のヒロイン「メグ(=メガラ)」と出会うことになるが、彼女は「ディズニー作品」では、また異色の存在なので、ここは後で後述することにする。

 

「テーベ」の街でも、最初は全く「ヒーロー」として認められないヘレクレス。
そんな彼を亡き者にしようとハデスが送り込む刺客を倒すことで、彼はどんどん知名度を上げていき、ギリシアで一番の人気者にまで上り詰めるのだ。

 

だが、それでも彼は「真のヒーロー」と認められない。
「人助け」「怪物対峙」「天変地異との戦い」
それでもダメ・・・。

彼はどんどん不満をつのらせていくことになる。

 

このように、この作品は、ヘラクレスに「ヒーローとは?」という問いかけを続けることになるのだ。

 

 

ポイント

✅何をしても、「ヒーロー」と認められない、そのことに苛立つ「ヘラクレス」

異色のヒロイン、メグ

 

今作でヘラクレスと恋仲になるメグは経歴が異色だ。

 

彼女は元カレの命を救うために「死の管理人」的な立場のハデスと契約する。
だが、その男は薄情にも浮気、メグの元を去るのだ。

そのため彼女は極度の男性不信になる。

さらにメグは、ハデスとの契約で、彼の手先となっており、彼の命令を受けてヘラクレスに近づいてくる。
いわば「悪女」とも呼べる存在なのだ。

ちなみに吹き替えは、工藤静香さんだが、メチャクチャ合ってる気がするのは、僕だけでしょうか??

 

編集長
ディズニーヒロインに元カレの存在が示唆されるのは初めて!

 

ハデスの指示でヘラクレスの弱点を知るために近づくメグ。
だが、そんな指示とは裏腹に、メグはヘラクレスの純真無垢さに惹かれることになるのだ。

そして、メグはヘラクレスを愛し、ハデスの指示を拒否するまでに至る。

だが、ここで2人が愛し合っていることに気づいたハデスは彼女を、取引の材料にし、ヘラクレスの力を全て奪い取ることに成功するのだ。

 

 

ポイント

✅メグは「ディズニーヒロイン」には珍しい、悪女要素を持ち合わせている。

「誰かのために」戦うこと!

 

全ての力を失ったヘラクレスはハデスの刺客に敗北寸前まで追い込まれるが、ハデスとヘラクレスの契約が「メグの命がけの行動」で破棄されることで逆転する。

力を取り戻し、神の国に攻め入るハデス達を一網打尽にすることに成功するのだ。

 

だが、それと引き換えにメグが死んでしまう。
ヘラクレスはハデスのもとに赴き、死者の魂の中からメグの「魂」を救うために、飛び込むことになる。

通常ならば、生者は戻ることのできない場所だが、ヘラクレスは見事に戻ってくるのだ。
それは、ついに彼が「真のヒーロー」と認められたからだ。

 

 

ここで、この作品が提示してきた「ヒーローとは?」という問いかけに答えがでる。

そもそも、ヘラクレスのテーベの街でのヒーロー稼業も、全ては「人間の世界」にて味わった疎外感から逃れたい。
「神に戻りたい」という「自分のため」の行動だったのだ。

 

だが、メグを救いたいという行動は、初めて彼が「他人の為」にした行動ともいえ、それが彼を「真のヒーロー」と認めさせる結果になるのだ。

 

編集長
そういう意味では「メグ」のヘラクレスを救うための行動も、また英雄的だと言えるのだ。

 

「自分のためではない」「誰かのために」
そんな「利他的」な行動ができることこそ、「ヒーロー」なのだ。

今作は、そんな「ヒーロー論」を我々に提示して幕を下ろすのだ。

 

そして彼は、かつての「短所」である「力」を誇りに思い、それをこれからは「長所」として、人助けをしていくのだろう。
そんなヘラクレスの成長譚としても、今作は中々味わい深い作品だと言える。

 

 

ポイント

✅「利己的」ではなく「利他的」な行動、それが「ヒーロー」なのだ。

✅かつての「短所」を誇れる自分になる!

 

今作を振り返って

ざっくり一言解説!!

「ヒーローとは?」という問いかけ、そして「大衆向け」として非常に楽しい作品!

ここで、話のトーンを「大人向け」からより戻したのは、素晴らしい判断!

まとめ

 

今作は「ポカホンタス」「ノートルダムの鐘」から、大きく路線変更をしており、その狙いは上手く言っている。
純エンタメ作品として楽しい作品に仕上がっている。

 

そして最大の問いかけである「ヒーローとは?」というある種の「ヒーロー論」をこの作品は描いていく。

 

そもそも「人間界」に疎外感をいだき、本当のいるべき世界「神の国」に戻りたいと願った「ヘラクレス」
彼は、最初は確かに「人助け」をしていたが、その行動の根っこには「自分のため」という思いがあったのだ。

 

だが、それは「真のヒーロー」ではない。

 

メグの命がけの行動。
「自分ではなく、誰かのため」に行動する、それこそが「ヒーロー」なのだ。

 

そしてヘラクレスも自らの「命を顧みず」にメグを救う。

そのことで彼も「真のヒーロー」と認められるのだ。

 

そして最後には「神の国」で「神」として生きるのではなく、限りある生命を「人間」として生きる決意をする。

 

 

少年のころ、彼にとってはある種のトラウマであった「人との違い」そして、最初は恨んだであろう自分の「力」

 

でも最後には、「一度は恨んだ力」をこれからも「人のために」使おうという意思表示をするヘラクレス。

彼は「真のヒーロー」になることで、自らの過去の「トラウマ」にも打ち勝ったのだ。

 

 

まとめ

  • 「ヒーロー」誕生譚として、誰しもが楽しめるエンタメ作品。
  • かつての「短所」を「長所」に変える物語でもある。

さて、読了ありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう!

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