映画評 評論

『ハリー・ポッターと賢者の石(ドルビーシネマ3D字幕版)』復刻上映!!

2023年7月10日

今回は過去作品のリバイバル上映作品を評論。

ということで、『ワーナー ブラザース スタジオツアー東京‐メイキング・オブ・ハリー・ポッター』の開業を記念して、7月7日(金)より、魔法ワールドの記念すべき一作目が限定公開。

 

『ハリー・ポッターと賢者の石』の特別上映。

 

こちらを鑑賞してきましたので、感想を語りたいと思います。

ちなみにこちらは全国でも3館のみの上映ということで、丸の内ピカデリー/MOVIXさいたま/MOVIX京都。
こちらのドルビーシネマのみで上映ということになっています。

 

基本データ

基本データ

  • 公開 2001年
  • 監督 クリス・コロンバス
  • 脚本 スティーブ・クローブス
  • 出演者 ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン ほか

あらすじ

孤児の少年ハリー・ポッターのもとに、ホグワーツ魔法魔術学校への入学を許可する手紙が舞い込む。

彼の両親は有名な魔法使いで、彼もその血を受け継いでいたことが判明。

ハリーは無事入学し友達もできるが、やがて学校に隠された驚くべき秘密に気づく。

シリーズ全作が完結した今だから言えること!

シリーズとしては問題がいっぱいある

この作品が初めて映画館で公開されたのは2001年。
確か小学4年生くらいだったはず。

この作品でハリーにホグワーツから手紙が届いたのが11歳だから、ほとんど同世代で、このシリーズを完結まで追いかけてきた。
作品世界のキャラクターや、演じるキャスト、そして自分自身。
それらがリンクしつつ、同じように成長しながら、ほとんどキャストの変更なく完結した、ある意味で奇跡のようなシリーズだ。

子供時代自分がハマった映画作品は数々あるが、やはり『ハリー・ポッターシリーズ』は特別なシリーズであると言わざるをえない。

 

とはいえ、”特別”であり”大好き”なシリーズではあるものの、映画作品としては疑問が残る作品も多いのも事実だ。

 

このシリーズは全8作品で構成されている(7だけが前後編)。
その中で明らかに3作目の『アズカバンの囚人』以降の映画作品は、原作が上下巻に分かれていったこともあり、一本の映画としてまとめきれていない。

尺不足という問題に陥っていく。」
結果として「ご都合主義」「説明不足」をどんどん露呈していくのだ。

なんなら「映画版」は原作のダイジェストという立場になっていき、きちんと物語を理解するには、原作の読破が必須とさえ言えるほどになっていく。

 

尺不足が原因でこのような問題に陥ったのであれば、上下巻をそっくりそのまま2本の映画として制作された最終作品『死の秘宝』はどうだったのか?
結論を言うなら、この作品は尺不足よりも深刻な別の問題を露呈したのだ。
それは「シリーズものの」の根幹にまつわる問題を具現化した作品だとも言える。

 

例えば3部作の映画シリーズの2作品目は、物語の大きな流れは解決せずに、尻切れトンボに終わることも多い。
最近でいえば『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』などがそれに当てはまるので、この作品を例に出す。

この作品はマイルスが大ピンチで幕引きをするが、実はこの作品はグウェンの物語を並行し描いていたので、実はグウェンの物語としては父親と向き合うゴールを描いていた。
つまり、物語の大きな流れは宙ぶらりんに終わってはいるものの、その映画中での一つの物語は綺麗に幕を閉じていたのだ。

 

しかし『死の秘宝』はそうはなっていない。
上下巻の原作をそのまま2作品に分けてしまった、だからこそ1作目が「起承」2作目が「転結」というように、ぶつ切りに制作されたのだ。
なので特に一作目は一本の映画としてのカタルシスすらない、なんなら投げやりにすら思えるものになっている。

その分、2作目は常にクライマックス状態という、面白いし謎が解ける爽快感はあるが、これも映画としてみれば「いびつ」なものだ。

 

このように個人的には『アズカバンの囚人』以降のシリーズは、映画としてみればどれも不満の多い出来栄えになっている。
これは揺るぎない評価だ。

 

「センス・オブ・ワンダー」が引き出した最高傑作

ではこの『賢者の石』はどうなのか?
2001年以来22年ぶりに劇場で作品を鑑賞して思ったことは、この作品には「ハリポタらしさ」が詰まっているということだ。

 

この「ハリポタらしさ」とは一体に何か?

例えばそれは「魔法世界の楽しさ」だろう。
さらに「不思議な生物」「楽しそうな授業の数々」「魔法学校の独特のルール」
個人的には年度末の「寮対抗杯優勝パーティ」の打ち上げ感なども「らしさ」だと思っている。

例えば「魔法世界の楽しさ」という点では、ハリーがハグリットに連れられてきた「ダイアゴン横丁」のタイルのレンガが開くシーンから溢れている。
ここまで人間界でロクな目に遭わずに生活してきたハリー。
生きていることすら楽しくないと思わされるような環境で生きてきた彼が、「ここではないどこかに本当の居場所」があると知らされ、実際にそれを目にするシーン。

何もかも初めてで、しかも自分の知っているルール・常識が通用しない、全く別の法則で存在している世界。
そこに足を踏み入れる彼の興奮を、我々も一緒に追体験している「楽しさ」も「驚き」があるわけだ。

 

また9と4分の3番線から特急に乗り目指す「ホグワーツ」
最初にハリーたちがその全貌を湖の船の上から見上げるシーンは、まさに圧巻の一言だ。
ちなみに、この初めてホグワーツの全貌を目にするシーンも、ハリポタを象徴するシーンの一つとして、メディアでは何度も引用されていたりもする。

そして、奇妙奇天烈な授業の数々。
一体何を学んでいるのか、我々には皆目検討もつかないが、それでも魅力たっぷりに描かれている。

 

その中でも一番観客が真似したくなるのが「呪文学」での「ウィンガーディアムレビオーサ」だろう。
活字では「ぶんぶん振り回さない」「あなたのは発音が違う」とハーマイオニーがロンに教えるシーンがある。
ここを映画という手法で、実際に発音と動きを組み合わせてみせることで、誰もが真似したくなる名シーンにしているのも今作の特徴だ。

 

あと、大きいのは「音楽」だ。
やはり「ハリポタ」を象徴する「ヘドウィックのテーマ」を始めとする楽曲。
これも耳馴染みよく、「魔法界に来た」と思わせてくれるものになっている。

音楽に関しては『アズカバンの囚人』までを映画音楽界の巨匠ジョン・ウィリアムズが手がけており、特に今作品でのメロディはどれをとっても「ハリポタ」らしさに溢れていた。
例えばメディアや、ハリポタのフェアなど、様々なイベントで使用される「ハリポタメロディ」はほとんど、彼が手がけたものが使用されていると言える。

その魅力が最大限に詰まっているのも『賢者の石』の魅力の一つだ。

このように今作は魔法界を「センス・オブ・ワンダー」に溢れる世界として魅せられているという意味で、やはり映画化した価値が十二分にある作品なのだ。

 

 

さて、ここからは個人的に「賢者の石」を推せる理由の一つを語りたい。

そもそも個人的にはハリポタというのは、毎回学年がひとつ上がるごとに、ハリーが「最悪な環境=ダーズリー家」から「ホグワーツ」という、自分の居場所に戻るところから始まるべきだと考えている。
そのため、ラストは「夏休み」に戻るということをキチンと描いて終わるべきなのだ。

これは観客の心理とリンクさせることも可能だ。
「続きが早くみたい」という気持ちは、ハリーの「早く学校に戻りたい」という気持ちとリンクさせることができるのだ。

つまりキチンと変える過程を見せているという点でも、この作品は「わかっている!」と言わざるをえない。
ちなみに『アズカバン』は蹴る過程がなく、『ゴブレット』はいきなり「W杯」のシーンから始まったり、以後の作品は、ここが十分できていないのが評価を下げているポイントだ。

 

ただし、やはり問題はある

ここまで読むと、やはり「良い」ところしかないと思われるかもしれないが、しかし「問題」もそれなりに抱えている作品だと言える。

個人的には「タメ」がない点が惜しい。
というのも、例えば「箒」の授業。
ここでマルフォイが挑発して、ハリーが箒に乗り才能を開花させる。

その結果、見事ネビルの「思い出し玉」をキャッチする。
ここまではいい。

原作ではここでマクゴナガルに見つかり、ハリーは自分がもしかしたら処罰されるかも知れないという不安に押しつぶされそうになるのだが、映画はそこにタメを作らずに、無罪放免。
むしろラッキーというシーンになってしまう。

個人的にこの『賢者の石』確かに原作の要素はキチンと描き切ろうとしてはいるものの、全体的に「タメ」を作ることができていない点が多くあると感じた。

 

特に大きいのは、深夜にハグリットの小屋でドラゴンが孵化するのを見ている3人を、マルフォイがチクり、先生に見つかり罰則を受けるという展開。
ここで1人「五十点」の減点を喰らい、原作では「寮対抗杯」を獲得できなくなると、ハリーたちはすっかり意気消沈する。
しかし映画版では、ここも「タメ」にはせず、3人の意気消沈ぷりはなく、すぐに「禁じられた森」の展開になっていく。

そもそも、この展開ならここで、マルフォイは出す必要はない。
3人がマクゴナガルに見つかって罰則で良いはずだ。
確かに展開を原作通りにやろうとしているのはわかるが、結果中途半端に再現していることで、違和感が出ている。

逆に序盤のダーズリー一家とのシーンは、原作以上にスピーディーでありながら、ハリーが置かれた理不尽な環境を再現できているので、ここは上手い改変だった。

 

これは別の作品にも当てはまるが、「小説」の映画化は、それをそのまま実写に置き換えるのが「正解」ではない。
むしろ映画にするからこそ、独自の展開などでアレンジをするなどは、むしろ推奨されるべきなのだ。
その上手い下手がそれなりに目についたのも事実だ。

ただこれ以降の作品は原作の内容が盛り盛りになり、映画化してもアレンジする余裕もなく、原作のダイジェスト映画と化している。
そう思うと、やはり映画としては「賢者の石」は頑張っているし、出来はいい。
それは揺るぎない評価なのだ。

 

ちなみに今回Dolby×3Dという上映環境で見たが、ホグワーツからの手紙爆弾のシーンは魅力たっぷり。
クディッチのシーンもこれまで味わったことのない臨場感で楽しめた。
そういう意味では、20数年ぶりの「ハリポタ」映画を劇場で見るという体験。

それ自体は非常に素晴らしい体験ができたので、いろいろ文句は言いつつも、やはり素晴らしい映画体験ができたと思っている。

ぜひ機会があれば、見逃す手はない素晴らしい企画なので、劇場で鑑賞することをおすすめします!

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