
さて、今日は久々に新作映画の深堀り解説をしていきたいと思います。
ということで紹介するのは『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』です!
この作品のポイント
- シャア・アムロの思想を受け継ぐのが、ハサウェイ。
- しかし、理想と現実に隔たりがある。
- それでも「テロ」を起こして世界を変革しようとする男の物語。
目次
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』について
基本データ
基本データ
- 公開 2021年
- 原作 富野由悠季/矢立肇
- 監督 村瀬修功
- 脚本 むとうやすゆき
- 声の出演 小野賢章/上田麗奈/ 諏訪部順一 ほか
あらすじ
第二次ネオ・ジオン戦争(シャアの反乱)から12年。
U.C.0105——。
地球連邦政府の腐敗は地球の汚染を加速させ、強制的に民間人を宇宙へと連行する非人道的な政策「人狩り」も行っていた。
そんな連邦政府高官を暗殺するという苛烈な行為で抵抗を開始したのが、反地球連邦政府運動「マフティー」だ。
リーダーの名は「マフティー・ナビーユ・エリン」。その正体は、一年戦争も戦った連邦軍大佐ブライト・ノアの息子「ハサウェイ」であった。
アムロ・レイとシャア・アズナブルの理念と理想、意志を宿した戦士として道を切り拓こうとするハサウェイだが、連邦軍大佐ケネス・スレッグと謎の美少女ギギ・アンダルシアとの出会いがその運命を大きく変えていく。
公式サイトより引用
シャアとアムロを継ぐ男

簡単に今作までを振り返る
最初は今作を深堀りするつもりは全くなかった。
というのも、こと「ガンダム」に関して、みんなの知識はバラバラだし、何をどこまで知っているのか?
まず、「ガンダム知識」に大きな差があるからだ。
そして、同時に語り口も無限にある。
まぁ一言でいうと「大変」ということなんですよ笑
でもせっかく見たし・・・、ということでやっていこうと思い立ったわけですよ!!
まぁ前置きはこのくらいにして、『閃光のハサウェイ』について触れていきたいと思います。
ということで今作は『機動戦士ガンダム』から連なる物語である。
「ガンダム」といえばみんな想像するのは「アムロ」「シャア」だと思いますが、まさにそこからの流れだと言える。
今作の主人公「ハサウェイ」は「ガンダムシリーズ」ではおなじみの「ブライト・ノア」の息子だ。
この「ブライト」は「二度もぶったね」という「ガンダム」の珍シーンでも有名な、アムロを殴った側の人だ。
このハサウェイは『逆襲のシャア』という作品で、初恋の相手を殺してしまったりして、大変な過去を背負ってしまっている。
それは何となく今作でも描かれているが、とにかく「女性」に若干の「トラウマ」を持っているとも言えるのだ。
そんなハサウェイは、「アムロ」「シャア」という英雄の影響を受けているといえる。
というのも、結局「ガンダム」の中心である「アムロ」と「シャア」はお互いに相容れない理念を持っている。
(「Zガンダム」では共闘したりもしてるし、奇妙な縁・友情はあるんだけどね)
それは「人類」と「地球」に対してだ。
シャアの場合
まずは「シャア」だが、そもそも彼は「ジオン」を牛耳る「ザビ家」への復讐を遂げるために「一年戦争(『機動戦士ガンダム』=最初の「ガンダム」)」に参加しつつも、その時を伺っていた。
そして最終決戦中にその本懐を遂げるのだ。
元々、「復讐」をするために行動をしているのだ。
その後『Zガンダム』で「地球連邦」の宇宙移民に対する弾圧に反対をする勢力に加担。
一度は「カミーユ」という青年に「人類革新」の希望を見出すが、結局それが叶わぬことに絶望する。
そして『逆襲のシャア』で人類を粛清するために、巨大な「アクシズ」を地球に落とし、地球環境の寒冷化計画をすすめることになる。
彼はなぜ、そんな行動に出たのか?
それこそが、「地球環境の保全だ」
これは今作でも語れるが、要は「地球温暖化」などの環境破壊が進むことで、地球はもう「死にかけている」
シャアは「地球保全」のため、強制的に「地球を人間の住めぬ環境」にすることで、「地球を再生」させようというのだ。
そして、この思想は実は彼の父である「ジオン・ズム・ダイクン」の思想でもあった。
だが前述の通り、父はその道半ばに「ザビ家」によって謀殺されてしまう。
つまるところ、彼の行動は一貫して「父」の無念を晴らすことだとも言えるのだ。
だが結局「アクシズ落とし」は失敗に終わる。
終生のライバルである「アムロ」によって阻まれてしまうのだ。
ということで「シャア」はこのような思想を持っている。
- 地球環境保全のため「地球から人間を一掃」するべき
→だが、一度は「新人類=ニュータイプ」が人類を変えていくと信じていた(強硬策を取る必要はないと)
→しかし「Zガンダム」のカミーユを見て、それは出来ないことを悟る - つまり「人類」に「希望」はないと見ている
アムロの場合
一方の「アムロ」は、たしかに腐敗している「地球連邦」の連中に辟易している。
だが、それでも「ニュータイプ」に希望を見出しているし、「人類」の可能性を信じている人物だ。
つまり「人類」の革新で「世界は良くなる」と信じているのだ。
「貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類に絶望もしちゃいない!」
アムロがシャアに投げつける、まさにアムロの考えが詰まったセリフだ。
要はアムロの思想はこうだ。
- 「地球環境」も「汚職まみれの政治」も、人類は少しずつ改善することができる。
- つまり「人類に希望」を見出している
→だからこそ「人の思い」で「アクシズ」を押し返す奇跡の光を発動できた。
さて、ここまで長々と「アムロ」「シャア」の思想について簡単に振り返ったが、結局『逆襲のシャア』での出来事を経ても人類は何も変わない。
「人間の起こした奇跡」である「アクシズ・ショック」を見ても、人類は変わらずまだ戦争や腐敗を繰り返している。
特に今作は「地球に残れる特例」を設けるという、法律が制定され、一部の特権階級が地球を独占しようとまでしているのだ。
(その権利のないものは、すべて宇宙へ島流し)
深堀りポイント
ただし、これもまた増えすぎた人類を「地球」ではまかないきれない。
地球を残すために「政府高官」「閣僚」「富豪」だけが住める場所にする、そのことで「地球」を保全しようとしているのだが・・・。
しかし、その他の人類は全て切り捨てる。
非常に「差別的」思想にも基づいているのだ。
そのことにハサウェイは憤るのだ。
その戦場で「初恋」の相手が死に、多く命が散った。
にも関わらず、変わらない人間に・・・。
そんな人間に対して「マフティー・ナビーユ・エリン」という組織が反旗を翻す。
その中心人物になるのが「ハサウェイ・ノア」なのだ。
大きすぎる思想と、現実のギャップ
今作の「マフティー・ナビーユ・エリン」の目的は「全人類の地球から追い出す」というものだ。
これは「地球」という星が、人間のエゴで「破壊」されていく。
そうなってはならないという、まさに「ジオン・ズム・ダイクン」「シャア・アズナブル」の掲げた思想を引き継ぐとも言える。
そして今作はそんな「マフティー・ナビーユ・エリン」の中心メンバーであるハサウェイが地球に降り立つ物語だと言える。
そこで、謎の美女「ギギ・アンダルシア」や「ケネス」という友でありライバルとなる男との出会う。
それらがたしかに今作の中心ではあるが、僕はここよりも重要な点があると断言したい。
それが、ハサウェイと市政の人々との出会いであり、交流でのシーンだ。
タクシーの運転手との何気ないやり取り。
「マフティー・ナビーユ・エリン」という組織についての会話だ。
ハサウェイに対してタクシーの運転手は「マフティー・ナビーユ・エリンは、暇人」だというのだ。
というのも、「マフティー」の掲げる目的は「何年先にも地球を残す」ことなのだ。
だけど実際に地球で住んでいる人々は、そんな先のことを考えてはいない。
「明後日のこと」を考えてはいないということだ。
そんなことよりも、生きるために必要な金を稼ぐこと。
「マン・ハント」に「宇宙送り」にされないよう、必死に「今」を生きていくことしか考えていないのだ。
さらに地球環境は悪化しているとはいえ、「食べるのに困らぬ食料はある」
今、現実に生きることが出来ているのに、なぜ「1000年先のことを考えねばならぬのか?」と言うのだ。
そして「マフティー」たちの目的もまた、自分たちを弾圧する「地球連邦政府」と変わらない。
結局は「地球から人類を全て退去させる」こと。
つまり、心から支持されているのではないのだ。
それすなわち「地球連邦政府」に歯向かう組織として、市政の人間の鬱憤を晴らす組織としては、支持はされている。
だけそ、その思想は全く支持されていないという現実が突きつけられるのだ。
ココがポイント
ただし、これは別に「フィクション」「アニメ」だけの話ではない。
例えば現実として「地球温暖化」は確実に進んでいる現代。
そこで、たしかに環境を守ることは大切だが、そのために「何かを捨てよう」と我々はしない。
今、明日を生きるのに精一杯なのに、「明後日」のこと、究極的に言えば「死んだ」後のことなど考えやしない。そ
う考えると、非常に身につまされる話でもあるのだ。
そして、今作が上手いのは「自然描写」だ。
この「マフティー・ナビーユ・エリン」の思想を「肯定」するならば「地球環境が破壊」されている描写をすべきなのに、むしろ今作は「美しい自然」を描いているのだ。
これは、まさにハサウェイの心の葛藤だとも言える。
「本当に自分たちは正しいのか?」という。
自然が美しく描かれるほど、ハサウェイは、掲げた理想が正しいのかわからなくなるのだ。
だが、彼は結局「計画」を遂行するために行動をする。
「地球保全」のために「閣僚」を殺すというテロリズムに手を染めていくのだ。
そんなハサウェイを描くのがこの作品なのだ。
その決意からの決起が、三幕目のMS戦で、迫力いっぱいに描かれる。
そこは、もう解説出来ない迫力なので(若干位置関係とかわかりにくいですが)、ぜひそこは劇場でね!!笑
今作を振り返って
ざっくり一言解説!!
ガンダムを語るって難しいね!!
コンテンツとして、息が長いので、大変だわ・・・。
まとめ
「ガンダム」は息の長いコンテンツで、スピンオフなどを含めると、正直全てを理解するのは困難だ。
今回は、なんとか初見でも分かるように、という意識で書いたのだが・・・、どうでしたか?笑
ただ、今作を見て考えるのは「明後日」のこと、それがどれだけ正しくとも、市政の人間には受け入れてもらえないということ。
そして、その理想を掲げる「マフティー」の行動は、やはりテロリズムであり、市政の人間すら巻き沿いにしている。
その「高すぎる理想」のために「人を殺す」行為は、やはり支持されないということだ。
「暴力」という手段で、世界を変えようとするハサウェイ。
その行為の成果と代償を、我々は今作を通じて見ていくとしなければならない。
ちなみに三部作とのことなので、これからも「閃光のハサウェイ」には注目したいと思う!!

まとめ
- ハサウェイは、シャア・アムロに影響を多大に受ける。
- 「マフティー」の高すぎる理想は、現実と大きなギャップがある。
- ただし、これは「現実」の「環境問題」に対する我々とダブる点もある。