
今日は新作映画を見てきましたのでその話をします。
ということで「思い、思われ、ふり、ふられ(アニメ版)」について語っていきます。
恐らく、どこよりも詳しく、熱量込めてお届けしますので「少女漫画ファン」の方もぜひお付き合いください!
この記事のポイント
- 重要なのは「恋愛」に対する距離感。
- 読み解くかぎは「タイアップ曲」にあり!!
- 「アニメ版」「実写版」どちらも鑑賞すべき作品。

2本で1つの評論として楽しんでいただければと思います。
目次
「思い、思われ、ふり、ふられ(アニメ版)」について
基本データ
基本データ
- 公開 2020年
- 監督 黒柳トシマサ
- 脚本 吉田恵里香
- 原作 咲坂伊緒 『思い、思われ、ふり、ふられ』
- 出演者 島﨑信長/斉藤壮馬/潘めぐみ/鈴木毬花 ほか
あらすじ
偶然出会った、全くタイプの違う【朱里】と【由奈】
朱里の義理の弟の【理央】と由奈の幼馴染の【和臣】は、同じマンションに住み、同じ学校に通う高校1年生。夢見がちで恋愛に消極的な由奈は、理央に憧れるが、自分に自信がなく一歩踏み出せずにいる。
理央はかつて朱里に想いを寄せていたが、親同士の再婚により、気持ちを告げられないまま、想いを胸のうちに抱えていた。
また、恋愛に対して現実的な朱里は、率直でどこかつかみどころない和臣のことが気になり出し、割り切れない初めての感情に戸惑う。
そして和臣は、ある“秘密”を目撃し、葛藤を抱えることになり…。
それぞれの思いは複雑に絡み合い、相手を思えば思うほどすれ違って−。
思い、思われ、ふり、ふられ(アニメ版)公式サイトより抜粋
アニメ版も見逃せない理由とは?

実写版の振り返り
この「思い、思われ、ふり、ふられ」は「実写版」と「アニメ版」をほとんど同時期に公開という極めて異例の作品だ。
もちろん漫画原作を「実写化」「アニメ化」するということは珍しくないが、その公開スパンの短さはやはり特筆すべき点だろう。
個人的にはこの2つの作品を見て思ったことは「同一原作」を扱っているのにも関わらず、ここまで観賞後の味わいが変わるのかという点は非常に驚かされた。
ということで、この「アニメ版」を評する前に、少しだけ「実写版」を僕がどう評したのか。
その点を最初に振り返っておきたい。
実写版のポイント
「実写版」最大の特徴は「恋愛の結果」を重要視する作品ではなかった。という点だ。
「実写版」では「思い、思われ、ふり、ふられ」という経験をした4人が、その経験から「自分の人生の選択」をする。
「決断」の物語だ。
恋愛の結果よりも、むしろその過程。
そこでの彼らの成長にこそ重きをおいていた、それが「実写版」最大の特徴だと言えるだろう。
そして、それに伴い「前半部」
つまり「理想の恋愛」を描いているパートでは「少女漫画」的な演出、登場人物が思っていることを「心の声」として表現している。
そして「後半部」
それぞれのキャラが「人生の決断をする」ことを描く際には、こうした「少女漫画的演出」をやらないなど、実は考えられた「演出」も施されている。
これらの点から、僕にとって「実写版」は非常に味わい深い作品だった。
恋愛の結実に寄り添うアニメ版
「恋愛の結果」よりも、その「恋愛」を通じて成長した4人を描いた「実写版」
それに対して、「アニメ版」は「恋愛の結実」に寄り添う作品だった。という印象を僕は受けました。
話が一気に飛びますが、それはラストシーンの「カメラ」と4人の距離感にも現れている。
「実写版」ではカメラは4人から離れてエンドロールに入り、「アニメ版」では4人のアップで幕を下ろす。
この距離感の違いこそが、同一原作を別媒体で表現する、それを比較する際に感じた大きな違いだ。

由奈と朱里の友情
ちなみにもう一つ大きな違いという点を挙げるなら、由奈と朱里の友情という点は「アニメ版」の方が重きを置かれていた。
「実写版」では由奈の家族は一切登場しない。
だが「アニメ版」では、朱里が理想とする”家族のあり方”として重要な役目を担わされている。
朱里はこれまで何度も親の離婚を経験して、「帰る場所」「心のよりどころ」を持たない存在だ。
だからこそ、特に「アニメ版」では様々な面で「現実的」な思考をしている。
それはこと「恋愛」に関してもそうだ。
これは意地悪な言い方にも聞こえるかもしれないが、「心のよりどころ」を持っている由奈は、精神的な基盤があるからこそ「夢見がち」だとも言える。
由奈と朱里。
2人は性格も真反対だが、その要因には「心のよりどころ」の有無が起因しているのかもしれない。

真の友情を育むことができたとも言える
「アニメ版」はこの2人が真の友情を育むという点も重要な要素として描かれている。
まず「実写版」では既に「友達」であるという前提で話が始まっていたが、「アニメ版」では2人の出会い、そして学校内でのいざこざ。
それらを乗り越えるという過程がまず描かれていた。
そしてクライマックスの盛り上がりには、朱里と和臣の恋愛の成就という点に加えて、彼女が由奈に抱いていた「劣等感」「心のよりどころ」を求める気持ちに折り合いをつけるという点も描かれていた。
今作で仕切りに描かれる朱里の「宝箱のおもちゃ」
それには鍵がかけられている。
これは彼女の「過去の家族」の思い出や「心のよりどころを求める思い」が封印されていることを意味している。
これは彼女が「心のよりどころ」を持っていたときは、彼女も「夢見がち」な存在だったという証明でもある。
だからこそ、朱里にとって由奈は、自分が捨ててしまったものを持っている、そういう意味で羨望の存在でもあったというわけだ。
だからこそ「アニメ版」では最後に朱里が家族を元に戻そうと行動をする時、「宝箱」を側に置いているのだ。
そしてそれが不本意な形でありながらも開いたことで、結果として朱里は「真の心のよりどころ」を手にすることができたのだ。
ちなみに「実写版」では朱里が「なぜ家族に固執するのか?」
その点が描写不足だと苦言を呈したが、今回の「アニメ版」は「宝箱」という気の利いた小物使いもあって、この点は非常に納得しやすい作りになっていた。
同時進行する「家族の不和」と「理央の行動」
今作のクライマックスでは「朱里」はだんだん険悪になる家族仲に不安を抱いている。
かたや「理央」は「由奈」と交際したことで、彼女の家で過ごすことが多くなる。
そこに灯里が無意識ながらに嫉妬をしていることがうかがえる。
こうしたシーンがあることで、彼女がどれほど「家族」を求めているのか。
という点が窺い知ることができるので、これも、朱里というキャラクターに深みを持たせるいいシーンだった。
そして、この「家族」を守るということの大切さに気づいた理央もまた、「家族を守る」ために行動をする。
そうすることで、2人は真の意味で家族になるという、過去を振り切って成長をしたことを描いている。
どちらも「いい点」「悪い点」がある。
だからこそ両方見るべき!
このように「アニメ版」「実写版」
ここまで指摘したように、描きたい結末や内容が異なるために、その物語の構成も大きく異なっている。
例えば実写版で描かれる和臣の「兄」の存在や、「家族」への夢を打ち明けるエピソード。
朱里の「アメリカ行き」のエピソードなど。
これらは「アニメ版」では描かれない。
「灯里」のキャラ造形も両作品で印象が変わるのも特徴!
ちなみに原作では高校卒業後に、朱里のアメリカ行きなど描かれている。
原作のどの部分を、抽出するか?
そのスタンスの違いが、この同時制作ということの面白味でもあるので、これはやはりどちらも見るべきだと言わざるを得ない。
どちらも原作の重要な要素を、ある意味で独自に拡大して描いている作品だと言える。
個人的には、この両作品共に「いい点」「これはこっちの方が良かった」と思える点も多々あるのも特徴だ。
例えば「理央」と「和臣」の友情形成。
これは「実写版」の方が良かった。
2人で映画を見て、それがお互いに好きな映画だったエピソード。
このおかげで、彼らはこの物語では描かれていないところでも交友を深めていたと想像させられる「実写版」
かたや「アニメ版」はこの2人が「友情」を育むと思しきシーンがないため、2人の関係性が希薄に感じられたりもした。
ただ逆に由奈へのプレゼントに悩む理央と和臣の会話など、これは「アニメ版」では微笑ましかったりもする。
だがこれらは、繰り返しになるが、原作の持つ、どの部分を「拡大」「重要視」するかの違いなので、どちらが良い悪いではなくて、何を「大切」にするかの違いだ。
そしてどちらを、どの分量評価するのか?
これは完全に好みの問題なのかもしれない。
重要なのはタイアップ曲

楽曲が描く、視点の距離感
「恋愛の結果」よりも、その「恋愛」を通じて成長した4人を描いた「実写版」
それに対して、「アニメ版」は「恋愛の結果」に寄り添った作品だ。
と冒頭でも語りましたが、この違いを強く印象付けるのは「タイアップ曲」である。
実写版では「Official髭男dism」の「115万キロのフィルム」が使用。
アニメ版では「BUMP OF CHICKEN」の「Gravity」と挿入歌に「リボン」が使われている。
このそれぞれの楽曲の視点の違いは、この両作品の描きたかった結末と密接にリンクしているのが特徴でもある。
そういう意味では、よく考えられたタイアップをしているということだ。
ちなみに僕はあまり音楽に詳しくないのですが・・・。
ある、音楽ブログを読んでいると、この「タイアップ曲」の重要性を気づくヒントがもらえました。
なので、その記事を引用(許可はいただきました)させてもらいながら解説していこかと思います。

こちらも是非チェックしてくださいね!
恋愛をふりかえる視点「115万キロのフィルム」
【最新】Official髭男dism初心者必聴の人気曲ランキング【2020年版】
この記事では7位にランクインしている「115万キロのフィルム」はこのように紹介されている。
2018年リリースの1st Full Album『エスカパレード』の収録曲。
ローム株式会社のCMソングに起用されました。
とある2人の一生の恋愛模様を映画フィルムに例えて歌ったラブソング。
その心温まる内容が共感を呼び、最近では結婚式ソングとしても人気の高い曲となっています。
「アイオライト ブログ」より引用
この解説からもあるように、この楽曲は「恋愛」をフィルムに例えて歌っている。
内容も現在進行形というよりは、少し進んだ時系列から、「恋愛模様」を振り返るような歌詞でもある。

これは「実写版」で描かれる「恋愛」の結果よりも、それを通じて成長したことが重要なのだ。という視点とも非常に相性がいい。
つまり、「振り返れば」恋愛で「傷つき」「傷つけた」「悩んだ」経験も素晴らしいものだった、人生の掛け替えのない「大切」な瞬間だった。
という味わいが、この楽曲の少し離れた視点で強化されているというわけだ。
前述したが「実写版」は最後にカメラが4人から遠ざかって、最後は俯瞰するような視点で幕をおろす。
「物語性」「カメラワーク」「楽曲」という合わせ技で、やはり「実写版」は「恋愛そのものの結果よりも、この恋愛を通じた経験こそ大切だ」という視点を強化しているのだ。
寄り添う「BUMP OF CHICKEN」
【最新】BUMP OF CHICKEN初心者必聴の人気曲ランキング【2020年版】
さて次に「アニメ版」を担当した「BUMP OF CHICKEN」の楽曲「Gravity」「リボン」についてだが、この作品との関係性は、バンド名の由来紹介にある説明がそのまま当てはまるので、引用をする。
BUMP OF CHICKENのバンド名の由来はドラムの升さんが「~of~」というバンド名にしたかったことから、
「弱者の反撃」、「臆病者の一撃」という意味を持たせて命名されました。言葉の由来はゴロが良さそうなものを英語の辞書で引いたらこれだったからだという。
「俺たちのような臆病者でも何かできるんだ!」という想いが込められています。この想いから、BUMP OF CHICKENの歌はいつも弱者の味方で、人々の心の傷や痛みに寄り添った優しい歌が多いんだ。
「アイオライト ブログ」より引用
「アニメ版」の結末は4人の、この瞬間の「恋愛の結実」という点にこそ重きをおいている。
「思い」「思われ」「ふり」「ふられ」という先にあった「幸せな瞬間」
つまり全員の「幸せ」が成就したこと。そこに寄り添うのが、「Gravity」だ。
これは「BUMP OF CHICKEN」がずっと「人々に寄り添う」バンドだからだ。
だからこそ「アニメ版」は4人にカメラが近づいていき幕が下りる。
この「幸せな瞬間」「日常」にこそ、そっと寄り添う。
そういう意味で「BUMP OF CHICKEN」の楽曲はまさに、そのバンド性と相まって、これも映画で描きたかったことを、より強調して伝えることに一役を買っているのだ。
挿入歌「リボン」の流れるタイミング
「由奈」と「理央」の結ばれるシーンで流れる「リボン」
ここまで紆余曲折した2人。
「傷つき」それでも「もがいた」、その先にあった幸せな時を祝福するように彩る。

歌詞の内容とシーンの親和性が非常に高い
そしてバンド名に込められた「臆病者でも何かできる」という思い。
これは、この作品で一番「臆病」だった由奈が、勇気を振り絞るという点にもリンクするのだ。
今作を振り返って
ざっくり一言解説!!
実写版、アニメ版両方見ると”意図”がわかって面白い!!
両方見ると、その違いが浮き彫りになってくる!!
まとめ
同一原作を「アニメ」「実写」で描くというこの企画。
どちらが「良い」「悪い」というよりも、両方を見て浮き彫りになる「違い」というところに注目するのが、この企画の楽しみ方ではないだろうか?
それぞれが、どの「要素」を大切にしているか。
どういった「結末」を描きたいのか。
このような点が、両作品を見ると浮き上がってきて、それが「違い」として現れる。
そのことに気付きながら、見る楽しみが両作品にはあった。
とにかく「アニメ版」は「恋愛の結実」
「思い、思われ、ふり、ふられ」という先にあった「幸せな今」にこそ、寄り添って幕が下りる。
4人のキャラクター我々観客の視点の距離感が近い。
だからこそ「良かったね」という風に思えるし、これからの彼らの幸せこそ願って劇場を後にすることになるのだ。
そして「タイアップ曲」についても文量を割いて解説したが、これも今回は非常に需要な役割を果たしていた。
楽曲のもつ「対象との距離感」
この「距離感の違い」こそ、この企画で描かれた2つの結末を最後にもう一度強調してくれるので、より作品を味わい深いものにしてくれている。
これは「素晴らしいタイアップ」だったのではないだろうか?
とにかく、この企画は両方見ることに「面白味」がある。
そしてこの評論も「実写版」「アニメ版」のどちらも読んでいただけると、より楽しいと思いますので、是非よんでくださいね!
まとめ
- 「アニメ」「実写」で描かれる結末が違う。
- タイアップ曲も結末にしっかりあっている。
- 両方見ることで「企画の意図」が見えてくるので、両方見るのが「オススメ」
というわけで、読了ありがとうございました!
また次の記事でお会いしましょう!!