ディズニー総チェック 評論

【映画記事】『アナと雪の女王2』−二作で一つの物語−【ディズニー総チェック】

2021年8月10日

 

今日も「長編ディズニーアニメーション」を公開順に鑑賞し、評論していく「ディズニー総チェック」

今回は通算58作品目の『アナと雪の女王2』を徹底評論してきたいと思います!

 

この作品のポイント

  • なぜ「アナ雪」に、そもそも続編が必要だったのか?
  • 幾重にも張り巡らされた、考え抜かれた構造が凄まじい!
  • これは「ダブル・プリンセス」作品だからこそ、あのラストに繋がる!

『アナと雪の女王2』について

基本データ

基本データ

  • 公開 2019年
  • 監督 クリス・バック/ジェニファー・リー
  • 脚本 ジェニファー・リー
  • 声の出演  イディナ・メンゼル/クリスティン・ベル ほか

あらすじ

エルサはなぜ、その力を与えられたのか?――

かつて、真実の愛によって姉妹の絆を取り戻したエルサアナ
3年の歳月が過ぎ、アレンデール王国の女王となったエルサは、アナ、クリストフ、そしてオラフと共に幸せな日々を過ごしていた。

だが、エルサにしか聞こえない不思議な“歌声”に導かれ、姉妹はクリストフとオラフを伴い、アレンデール王国を離れて未知なる世界へ。

それは、エルサの“魔法の力”の秘密を解き明かす、驚くべき旅の始まりだった…。

ディズニープラスより引用

なぜ、『アナ雪』に続編が必要だったのか?

僕なりの結論!

 

やはり最初に触れなければならないのは『アナと雪の女王』という作品の「凄さ」だろう。

 

詳しくは上記の記事や音声配信で述べているので、そちらを聞いていただければいいのだが、現在の「ディズニー」の中でも「名作・傑作」の一本としての地位は確立している。

さらに「雪だるまつくろう」「生まれてはじめて」「とびら開けて」「レット・イット・ゴー」といった楽曲の素晴らしさもまた、この作品に彩りを添えている。

 

そんな「ディズニー」の歴史の中でも「特別」な作品となった『アナ雪』は、公開されてから、割と早い時期に「続編制作」の話は出てきていた。
そして造り手も『アナと雪の女王2』公開前には、「二本で一つの映画である」と公言していたのも有名な話だ。

 

ただ、これは僕も含めてだろうが、『アナと雪の女王2』の前年に公開された『シュガー・ラッシュ:オンライン』の出来栄え。
そして、そもそも『アナ雪』に続編が、本当に必要なのか?
という、そもそもの疑問も噴出していたのも事実だ。

 

「『アナ雪2』は大丈夫化?」と、期待よりも不安が大きな状態で『アナと雪の女王2』は公開された。

 

 

 

そんな『アナ雪2』に対して、まず結論から述べておきたい。

僕の総論としては、「この映画は、100点満点の続編ではない」かもしれない。
だが、『アナと雪の女王』という作品が”本来”行き着くべき結末。
そこにこの作品はしっかりとたどり着いている。

そういう意味で「作られた意義はある」と考えているし、高く評価している作品だと言える。

 

今回は、なぜそう思うに至ったか? を深堀りしていきたい。

 

ポイント

✅個人的には「必要不可欠」な「続編」だと考えている。

そもそも「エルサ」の問題は解決していない

 

エルサは前作のラストで周囲の人間に受け入れられ、そこで女王としてアナやクリストフ、そして国民と共に、生きていくことになった。

 

一度は「氷の城」で「孤独」に生きていこうとしたエルサ。
「ありのままで」を「孤独」に生きることで体現しようとしていた彼女だが、アナたちと向き合い、「他者」と生きる決断をした。

一見すると、これでエルサは、幸せに生きていけるように見えるし、物語としては完璧な着地だといえる。

 

 

だが「果たして、本当にそうなのか?」
「そもそも、あれで終わりでいいのか?」
作り手には、そんな思いがあったはずだ。

 

 

要は前作の『アナ雪』では、本質的な問題というのは実は何も解決していない。
それが「魔法の力」の件だ。

 

この「魔法の力」は治癒すべきものではない。
これからもエルサが生きていくうえで付き纏うものとして描かれた。

 

確かに前作のラストでは、エルサの力も含めて、彼女を受け入れてくれる人間は増えたと言える。
だけど、「特別な力」を持つ人間を「周囲」が「認めてくれました」というだけでいいのか?

その着地で「本当に良かったのか」という疑問が作り手に生じたのかも知れない。

 

 

これが従来の「プリンセスもの」との大きな違いだ。 従来の作品では「呪い」「魔法の力」は解けていた。



 

そのことは、今作では序盤から描かれる、

側近に急に声をかけられて、手すりを凍らしてしまうシーン。
何気ないシーンだ。
だからこそ、余計に考えさせられてしまう。

 

「本当にこれで良いのか?」と。

 

そのことが作り手の頭に疑問がよぎったからこそ、続編の構想はすぐに持ち上がったのではないか?

そして、今作は描かれるのは「疑問」と向き合う物語だ。
つまりエルサが「本当の居場所」を見つける物語になっている。

 

 

ポイント

✅「エルサは幸せなのか?」という疑問から生まれた続編だと言える。

幾重に張り巡らされた視点

 

ただ、今作は一見すると「気づかない」様々な視点が張り巡らされているのが面白いポイントだ。
だからこそ、冒頭、今回の「アナ雪2」は入り組んだ話をしているな、と感じるのはこのせいだ。

 

今作は主に3つの視点で物語で語られる。

 

 

  1. 「エルサ」についての視点
  2. 「アレンデール」と「ノーサルドラ」についての視点
  3. 現実に起きた出来事を描く視点(アルターダム騒動)

 

「視点①」
第一に、前述した「エルサ」
彼女が「本当にこれでいいのか?」という点にフォーカスして語られる。
そして「魔法の謎」などに迫る要素、そして「エルサの存在理由」を見つける、などなど、今作のメインストーリーと言える要素だ。

 

 

 

 

「視点②」
二つ目に「アレンデール」と「ノーサルドラ」の関係があげられる。
これは、エルサとアナが「アレンデール」の過去の「過ち」と向き合うという構図で描かれる。

 

実はこれも非常に興味深いといえる。

ある種「メタ視点」から見ると、2006年以降の「新生ディズニー」は、過去作で積み上げた「価値観」
今となっては「認められない」価値観の刷新を行ってきた。

 

要は「過去」と向き合ってきたとも言える。

 

『アナと雪の女王』はある意味で、過去と「向き合う」こと。
そして向き合った先に「新しい価値観」を見出すことで世界的に受け入れられた作品だ。

 

だからこそ、エルサとアナが「アレンデール」の過去と「向き合う」というのは、現実の「ディズニー」と重なるといえる。

つまり、この「アレンデール」「ノーサルドラ」の「過去」を巡る遺恨、そして解決というのは、今の「ディズニー」が主題としていることを反映しているといえるのだ。

 

 

 

 

「視点③」
そして三つ目に、この作品で描かれたこと、それが現実に起きたことを描いているという視点だ。

 

実は今作で語られる「ダム問題」は1980年代に実際に「ノルウェー政府」が「サーミ人」の村を壊して作った史実をもとにしている。
ちなみに、この「サーミ人」というのが、今作に登場する「ノーサルドラ」のモチーフになっている。

 

編集長
この「サーミ人」の現実に受けてきた「差別」を描いた
『サーミの血』も合わせて見るのもおすすめです

 

 

編集長
そもそも、『アナ雪』の世界観で「ダム」という建築物は、
いくらなんでも時代考証として奇妙だ

 

今作での「アレンデール」「ノーサルドラ」の対立は、現実に起きた「アルターダム騒動」をモチーフにしているので、時代考証を無視して「ダム」をキーポイントにしたのだ。

今作ラストで「ダムの崩壊」が描かれるが、これこそまさに「サーミ人」の現実には叶わなかった願いだとも言える。

このように、今作は「現実」に存在した「歴史問題」
それを影のモチーフにしているのだ。

そして、この過去の「歴史問題」に立ち向かう構図になっているのだ。

 

 

 

特に今作の「視点②」「視点③」は「過去」との対立の要素が描かれる。
それに対して今作は「アナ」の歌う楽曲「The Next Right Thing(今できる正しいこと)」
日本語タイトル「わたしにできること」

こちらの歌詞に注目したい。

 

 

How to rise from the floor when it’s not you Irising for
あなたのためじゃなかったら どうやって床から立ち上がるのよ
涙こらえて 進もう 一人でも

Just do the next right thing
ただやるの 次にすべき正しいことを
やろう できることを

Take a step, step again
一歩、また一歩
一歩ずつ 進もう

It is all that I can to do the next right thing
それしかできないんだから 次にすべき正しいことをする
歩くことならできる 今の私でも

 

 

 

 

この楽曲は「アナ」の決意の歌だ。
今作のアナは『アナ雪』とは違い、「特別な存在」ではない。
「精霊の歌」も聞こえないし、「魔法の力」もない。

いうなれば「普通の人間」なのだ。

 

編集長
逆に「エルサ」の神秘性は前作よりも際立っていて、
姉妹のコントラストは大きくなっている

 

そんな彼女の決意に満ちたこの歌は、この映画をみている、いわゆる「普通」の人々に刺さるメッセージなのだ。

つまり「過去の過ち」なるものがあるのなら「できること」をして、それを正そうと努力すべきという、実はかなりストレートなメッセージを今作は語っているのだ。

 

そして実際に起きた事件をモチーフにしていることで、「ディズニー」は、やはり「過去の過ち」と向き合っていく。
そんな宣言を『アナと雪の女王2』でしていると言えるのだ。

 

 

このように今作で張り巡らされている視点の数々。
それらをキチンと理解すると、かなり複雑なことを今作は描こうとしていることが伺える。

 

ポイント

✅物語を張り巡らされた「3つ」の視点で見ると、興味深い。

「水」と「氷」

 

このように今作は「3つ」の視点で描かれるが、それらを「水」「氷」という要素でキチンとまとめているのも見事だ。

 

今作で「水」は「歴史」と同義だと言える。
「水」は世界を巡回している、だからこそ「時間を記憶」しているのが今作で追加されたルールだと言える。

エルサの「氷」の力は、物体を「凍らせる」と思われていたが、こちらにも今作で「追加効果」が描かれた。

 

エルサの「氷の力」は過去の歴史を「具現化」する、つまり「歴史を紐解く力」だったのだ。

 

 

それとは逆に「ノーサルドラの森」に作られた「ダム」
これは「水をせき止める」ものにとどまらない。

この作品世界では「水=歴史」なのだが、つまり「ダム」は「歴史」をせき止めるもの、つまり「隠すもの」だとも言える。

最終的にはこれを「壊すこと」で「自然界のバランス」を取り戻すこと、それに加えて「歴史」を開放する、つまり「向き合い」「反省する」という意味も含まれるのだ。

 

 

さらに、今作は「すべての謎が隠された場所」として「アートハラン」が「永久凍土」であるのも見逃せない。
「永久凍土」は「水」を「凍らせている場所」だ。
つまり、今作の世界観では「歴史のすべてが眠る場所」だと言えるのだ。

ここでエルサにすべてを見せるシーンの美しさ、歴史に隠された真実の残酷さ。
それらを、ここまで「美しく」見せるのか、と惚れ惚れさせるシーンなのも見逃せない。

 

 

あと、ここでエルサの「黒歴史的」な「ありのままで」シーンを客観視させるのも、少し笑えたりもしましたが・・・。

 

ここも、それだけにとどまらず、彼女自身が、自分の過去を「客観視」できる段階までに、精神的に成熟したことを見せている。
すなわち、エルサの成長を描く素晴らしいシーンになっているのだ。
「アートハラン」のシーンは非常に見応えたっぷりに描かれているのも、今作の特徴だ。

 

編集長
ちなみに、ここで「エルサ」が凍るのは、前作の「アナ」と対になっているといえる。

 

今作はこのよう「ダム」「水」そして「エルサの氷の力」という要素を非常にうまく、組み合わせているのも特筆すべき点ではないだろうか?

 

 

ポイント

✅「ダム」「水」「氷」という要素をうまく噛み合せた設定がGOOD!

「ダブルヒロイン制」としての着地

 

そして話は前後するが、一番はじめに「そもそもエルサ問題」は解決していない、だからこそ「続編を作った」と述べたが。
だが、実は「そもそも、前作で解決・回収していない要素」がまだあるのだ。

つまり、それを成し遂げていないから「続編」が必要だった理由だと言える。

 

それはなにか?
『アナと雪の女王』というタイトルからもわかるように、本質的には「アナ」と「エルサ」の物語なのだ。

そして「ダブルヒロイン制」「ダブルプリンセス制」を敷いているのだ。
つまり、この設定を完結させるには、二人が「プリンセス」として並び立つ絵面でなければならないのだ。

 

 

だからこそ、今作は「ノーサルドラ」にエルサ。
「アレンデール」にアナ。
二人が架け橋となり、「自然」と「人間界」のバランスを整える役目を担うラストが用意されているのだ。

 

エルサは「第五の精霊」として、「自然の精霊」と「人間」をつなぐ役目、それこそが「自分の力」を活かす道だと気づいた。
つまり、彼女はここに至ってようやく「真の役目」に気づき、「力」を尽くす道を見つけることができたのだ。

 

これまでエルサを「悩ませ続けた力」
それを、活かせる場所にたどり着くことができたともいえる。

 

 

 

アナは「人間」として、「アレンデール」の「過去の過ち」を乗り越え、これからは「自然界」と手を取り合い生きていくことを決めた。
そして「女王」として、その道に国を導く決意そしたのだ。

 

 

つまり、二人が「別々の世界」に別れ、それぞれが互いを支え合う。
ようやく2人の「ヒロイン」を起用したことで考えられるラストに到達できたのだ。

 

そして最後は聖霊と、世界を駆け回るエルサの姿が描かれる。
さらに前作の最後と同じく「雪だるまつくろう」のメロが流れ、離れていても姉妹の心はつながっている、そのことを再確認させるのだ。

 

これこそが『アナと雪の女王』という作品で最も理想的なラストだと言えるのだ。

 

 

ちなみに補足ですが、つくり手たちの言葉によれば、「エルサが神話的、アナがおとぎ話的」
『アナと雪の女王』はこれらを共生させた物語だということだ。

 

『ジ・アート・オブ アナと雪の女王2』

神話が描くのは『ふつうの世界で暮らす不思議な力を持った存在』で、彼らは世界の重みを背負わなければならず、たいてい悲劇的な結末を迎える。

一方、おとぎ話が描くのは『不思議な世界におけるふつうの存在』で、主人公は困難に直面して苦労するものの、最後には成長してそれを乗り越える。

 

最終的にその両者が、今作では、それぞれの世界へと帰着していくといえる。
やはり二人が並び立つ形でしか、今作は幕を下ろせなかったのだ。

 

 

ポイント

✅そもそも、姉妹が「プリンセス」として並び立つことが、『アナと雪の女王』の理想的なラストだと言える。

今作をふりかえって

ざっくり一言解説!!

『アナ雪』世界を補完する、やはり『アナ雪』は「二部作」である!!

まさに「2つで1つの映画」

まとめ

 

ということで、今作は非常に複雑な視点を持つ作品である。

その分、難しいと感じた方は、ぜひこれを読んで、再度『アナと雪の女王2』を見ていただけると、楽しさ倍増するだろう!!

 

評論では指摘できなかったが、確かにクリストフの扱いに苦慮した感じとか見受けられるし、そこを不満に思う人もいるかも知れない。
ただ、今作が「アナとエルサ」に絞った話だったので、これは受け入れるしかない。

オラフもクレイジーさは前作以上だし、何気に「キー」になるセリフを発していたり、オラフ好きは満足だったかも知れない。

 

とにかく、僕は色んな意味で「完璧」なバランスの続編だと思っているし、今作が出来たことで『アナ雪』世界がより魅力的になったと思っている。

もしも一作目しか見ていないなら、それはもったいないので、ぜひ『アナと雪の女王2』も見てもらえると嬉しい!!

 

やはり、『アナ雪』の着地として、今作を見ないのは、ありえないですよー!!

 

まとめ

  • 複雑な視点を理解すれば、楽しさ倍増!
  • 『アナ雪』の着地として、理想の結末である。
  • 前作と合わせてみると『アナ雪』世界がもっと好きになる。

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