
思いついた瞬間、映画館に行き、一番上映時間の近い作品を見るという「無計画映画鑑賞」をしてきました!
ということで今日は「ダチョウ倶楽部」の「寺門ジモン」さんの初監督作品「フード・ラック! 食運」を見てきましたのでその感想を語りたいと思います。
この作品のポイント
- 観賞後「焼肉」が食べたくなる。
そう思わせただけで、ある意味「勝ち!!」 - ライター業の「素晴らしさ」「危うさ」を語る。
ある意味で戒めという要素もあった。 - 物語の構成など、個人的には期待値以上の出来栄え。

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目次
「フード・ラック! 食運」について
基本データ
基本データ
- 公開 2020年
- 監督/脚本/原作 寺門ジモン
- 原作協力 高橋れい子
- 出演者 NAOTO/土屋太鳳/りょう ほか
あらすじ
良人の母・安江がひとりで店を切り盛りしている焼肉店「根岸苑」は、他界した夫が遺してくれた唯一の形見だった。女手ひとつで店を切り盛りし、息子を育てながら、愛情込めた手料理をふる舞うことが安江にとって幸福な時間であり、良人にとっても美味しい手料理を食べることが何よりも至福の時だった。
人々に愛されてきた「根岸苑」だったが、人気グルメ評論家・古山が書いた事実無根の記事により客足は激減してしまう。
少しずつ活気が戻り始めた頃、忙しく働き続ける安江に構ってほしい一心で起こした良人の行動で、 間もなくして安江は店を閉じることを決めたのだった・・・。それから18年後、家を飛び出し、うだつがあがらないフリーライターとして働く良人は、ある時、編集者の竹中静香とともに“本物“だけを集めた新しいグルメ情報サイトの立ち上げを任されることに。
第一弾のテーマは因縁の「焼肉」!?
引き受けることを決めたものの、仕事に苦悩していた良人に疎遠になっていた安江が倒れたとの報せが届く。
病床の安江に会う覚悟が出来ないまま、取材で訪れた名店の先々で懐かしい「根岸苑」の味と出逢い、“食”を堪能し、“人”との繋がりの中で母の想いを知り、良人の中で変化が起きていく…。
“食運”に導かれた良人が最後に起こした奇跡とは―。
公式サイトより抜粋
「焼肉」を食べたくなる、その時点で成功!

グルメ映画の目的とは?
この作品について、まずは結論めいたことを先に言うと・・・。
この作品「焼肉」を観賞後食べたくなった時点で「勝ち」
つまり「成功」していると言える。
これから作品について「褒めたり」「ここはダメ」と色々、言っていくんですが。
前提として「焼き肉が食べたい」と思わされた時点で、「成功」している。
そのことは揺るがないんですよね!
その「成功」の要因とはなんなのか?
大きな要素の一つに監督の寺門ジモン氏が「焼き肉好き」だ。
と言うことがヒシヒシ伝わってくる点にあるのではないか?
そもそも、映画見てて関心するのは「肉の焼き方」ですね。
正直、そんなに拘ったことないよ!
って素人は思ってしまうが、その拘りを前面に出すことで、我々が普通に食べている時よりも「お肉」が美味しそうに見えてくる。

その拘りの「焼き方」
その「焼かれた肉」を美味しそうに食べる土屋太鳳さんの演技、食べっぷり。
見ていて気持ちがいいのも、我々が「焼き肉」を食べたい欲を刺激する。
この食べっぷりが作品の説得力を一段階上に引き上げてますよね。
いや、「本当に美味しかった」からこそのリアクションだとも言える。
深掘りポイント
ある意味で映画という「虚像」の中で、何かを食べるというのは「現実」の行為だ。
ここだけは「嘘」ではなく「リアル」なのだ。
そして物を食べるということは、人間誰しもが行うもので、共感を得やすいと言える。
美味しい物を食べた幸せ感など、誰しもが共感できる「感覚」だからこそ、強く「共感」してしまうのではないだろうか?
そういう意味で土屋太鳳さんの気持ちの良い「食べっぷり」は、この作品の説得力を何段階も引き上げているのだ。

とにかく観賞後「焼き肉」が食べたいと思うこと間違いなし!
「ペンは剣よりも強し」ということ
この作品の主人公、良人、竹中静香の仕事は、「グルメライター」だ。
二人は新しいグルメサイト立ち上げのために様々な「焼き肉店」を取材して回る。
そこで描かれるのは、グルメライターという仕事がもたらす「陰陽」だ。
正確に書くと複雑になるのでここでは割愛するが、良人の母の切り盛りする店「根岸苑」は、過去にグルメタイター古山の間違えた情報によって、大バッシングを食らってしまう。
それが打撃となり、苦しむ母の姿を良人は目にしてしまう。

さらに良人も、またグルメライターとして記事を執筆。
その意図を汲み取られず、彼の記事でひとつの「ベーカリー」に批判が集まるようになってしまい、その店の閉店に関与するという経験をしている。
これらは本人たちの不勉強や、真意が歪曲されているのが原因だが、現実にもある話ではないか?
今は「SNS」などで情報が容易にやりとりされる時代であり、個人が発信するのも容易になっている。
どこで、どの発言が、真意とは異なる捉え方をされるかわからない。
事実「食べログ」などでも様々な情報が右から左に流れ、それが「大きな影響」をする時代。
だからこそ、この「書く責任」というのは、当然自分の「このブログを書く活動」というのにも責任が伴うし、「書く」ことがもたらす影響は決してポジティブな面だけではない。
そのことを強く感じさせられてしまった。
良くも悪くも「ペンは剣よりも強い」
そんな時代の怖さというのをこの作品は描いている。
だが、それとは別に、「書く」「伝える」
そのことの「ポジティブ」な面もこの作品は描いている。
それは、真心を持って「食事」と向き合う。
そのことで書かれた文章は、その「店」の格を確実にあげるということだ。
事実、様々なグルメライターの書いた記事で、今まで注目されなかった店にスポットライトが当たるということもある。
良人もまた、真心を持ってそれぞれの店主や、料理と向き合うことで、その信頼を勝ち得ていく、そして最終的には素晴らしい記事を書き上げるに至るのだ。
そして、そこには「書く」ということの「陰陽」をきちんと理解して、ある意味で「覚悟」を決めて取り組むことになるのだ。
ここに自分は、今こうして「映画評」というのをしている。
つまり曲がりなりにも「書く」ということを実行している、自分自身の行動。
それにも「責任」が伴うということを、強く再実感させられた。
だからこそ、ネットに無数に存在する「ライター」的な仕事や、趣味をしている人間は、今一度、その「責任」というのを向き合わねばならない。
そう強く意識させられてしまった。
食がつなげる「絆」
この作品は良人が直面する「書くこと」についての「陰陽」を描く。
それと同時に、彼の「取材」が、母との絆を取り戻すことに寄与することになる。
一方的に母と疎遠になる道を選んだ良人。
理由は、実は「根岸苑」閉店の食中毒は、彼が引き起こしたからだ。
それ以来、母と口を聞かず、そして成人して母の元を離れた良人。
次に再会した時、母は末期のガンを患っていた。
疎遠になった後悔。
店での食中毒事件への責任感に苛まれる良人。
そして彼は。母との思い出は「食事」にあったことを思い出すことになる。
そして竹中静香との「取材」で、全く関係ないと思っていた店で、母の味が引き継がれていたことに気づく。
実は「根岸苑」は焼き肉の名店で、そこに影響を受けた店も多く。
調理法、レシピ。秘伝のタレ。糠漬け。
今はもう食べることができない。
かつて子供時代の良人が食べた思い出の母の味。
それらが伝えられていたのだ。
「食」は人と人を繋ぐ。
この作品のテーマだが、まさにきちんとその点も過不足なく描かれており、この辺りの物語運び。
もちろんフィクションだからこその偶然だが、そのテーマもきちんと描かれている。
そして最後には「母」の味と、良人が「食」を通じて再会する。
物語の構成も個人的には「よくできている」と思った。
「食べる」ということは?
この作品はさらに「職人=食人」へのリスペクトも込められている。
ただ「焼き肉」を食べるのでは理解できない、こだわり。
どうすればお客様に「最高の料理」を提供できるのか?
そのためのこだわりなど、これは「食通」だからこそ気づく面もきちんと描かれている。
ただ、それらテクニックの部分も大切だが、それよりもっと大切なのは、「気持ち」という面もこの作品はきちんと描いている。
テクニック論だけだと、少し専門性も高く、知識をひけらかされて鼻につく。
だけど、それよりも大切なのは「気持ち」
つまり「心」だということもこの作品はきちんと描いている。
「食べる」という漢字は「人が良くなる」と書く。
これは天道総司の語録だが(仮面ライダーカブトね)、食べて「人に良い気持ち」になってもらいたい。
「幸福」になっもらいたい。
そういう「願い」こそ、非科学的だが、でもその「心」こそ「食」の真理なのかもしれない。
このような面からも、見ていてやっぱり「焼き肉」が食べたい! と強く思わされる。
そういう意味で、やはり「良くできた”食”映画」なのだと言える!!
気になるところも・・・
ただですね、この作品気になる点もあって・・・。
例えばシーンとシーンの繋ぎ、編集部分でちょっと気になる部分があったり、「焼き肉」の映像がアップになるとちょっとボヤけてたり。
なんだろう、良人と静香が焼いてる肉と、アップで映る肉が「別物」に見えちゃったりするんですよね・・・。
多分「見栄え」それこそ寺門ジモン監督の「こだわり」が故だと思うんですが、ちょっと裏目に出てるな、とは思います。
また、良人と古山の「ウンチク対決」
ここで、二人のセリフがテロップで挿入されるのが、個人的には好みじゃないです。
昨今のなんでも説明する「TV的」と言えば良いのか。
確かにTVだと、それこそ流し見など、集中せずに見ているので「有効」かもしれないが、映画はそもそも「全集中」して見ているもの。
だからこそ、逆にテロップが邪魔に感じてしまうんですよね。
確かにこの「テロップの長さ」そのものが古山の「なが!」っていうギャグの伏線にもなってはいるんですが・・・。

これは演出としては間違ってないと思います!
今作を振り返って
ざっくり一言解説!!
思った以上に、きちんと出来ている映画です!!
全然、楽しめました、嬉しい誤算!!
まとめ
寺門ジモン初監督作品、ということで不安たっぷりでしたが、思った以上に「きちん」した作品で、これは「嬉しい誤算」でした。
そもそも「焼き肉映画」で、観賞後に「焼き肉食べたい」と強く思わされる。
この時点で、この作品は「成功」していると言えるのではないか?
やはり、「選んで映画を見る」ということをしていたら、出会えなかった作品だったので、「ランダムに見る」というのは今後も続けたいと思います。
そして、この映画で描かれる「書く」ということの「陰陽」
自分も文を書いて発信している端くれとして、そして「SNS」で容易に発信ができる時代になっていることの、戒めとして、非常に身につまされる部分のある作品でもあった。
もし、何かしらの発信をしているという方は、ぜひ鑑賞するのをオススメしたい。
ただ、見終わった後、「焼き肉」が食べたくなるので、ぜひ行っちゃいましょう!笑
まとめ
- 「焼き肉映画」という狙いは十二分に果たされている。
- 「書く」「発信」することの「重み」を再実感させられる。
- 期待以上に「面白い」作品でした!
ということで、読了ありがとうございます!
また次回の記事でお会いしましょう!