映画評 評論

『エルヴィス』〜儚い男の生き様〜【映画評論】

 

今週も新作映画を鑑賞していきたので、感想を綴っていきたいと思います。

ということで、今日は「キング・オブ・ロックンロール」と呼び声高い「エルヴィス・プレスリー」の自伝映画『エルヴィス』のご紹介です!

この作品のポイント

  • 良質な伝記映画
  • 何が「スター」を殺すのか?

『エルヴィス』について

基本データ

基本データ

  • 公開 2022年
  • 監督 バズ・ラーマン
  • 脚本 バズ・ラーマン/クレイグ・ピアース
  • 出演 オースティン・バトラー/トム・ハンクス

あらすじ

スターとして人気絶頂のなか若くして謎の死を遂げたプレスリーの物語を、「監獄ロック」など誰もが一度は耳にしたことのある名曲の数々にのせて描いていく。

ザ・ビートルズやクイーンなど後に続く多くのアーティストたちに影響を与え、「世界で最も売れたソロアーティスト」としてギネス認定もされているエルビス・プレスリー

腰を小刻みに揺らし、つま先立ちする独特でセクシーなダンスを交えたパフォーマンスでロックを熱唱するエルビスの姿に、女性客を中心とした若者たちは興奮し、小さなライブハウスから始まった熱狂はたちまち全米に広がっていった。

しかし、瞬く間にスターとなった一方で、保守的な価値観しか受け入れられなかった時代に、ブラックカルチャーを取り入れたパフォーマンスは世間から非難を浴びてしまう。

やがて故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムでライブを行うことになったエルビスだったが、会場は警察に監視され、強欲なマネージャーのトム・パーカーは、逮捕を恐れてエルビスらしいパフォーマンスを阻止しようとする。

それでも自分の心に素直に従ったエルビスのライブはさらなる熱狂を生み、語り継がれるライブのひとつとなるが……。

公式サイトより引用

良質な伝記映画

最近のトレンド?

 

最近、世界的なトップアーティストの「伝記映画」が業界のトレンドになっているように感じる。

 

2018年、Queenのフレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラブソディ』
2019年、エルトン・ジョンを題材にした『ロケットマン』
2020年、ジュディ・ガーランドを題材にした『ジュディ 虹の彼方に』

と最近の映画のジャンルとして、往年のスター歌手を伝記的に描く作品が多いと思う、今日この頃。
そして、そのどれもが名作・傑作と呼んで差し支えない作品に仕上がっている。

 

 

そんな流れの中で、いよいよ「キング・オブ・ロック」
1950年代に大活躍して「ロック」の歴史の第一歩、パイオニアとも言える「エルヴィス・プレスリー」を題材にしているのが、今作『エルヴィス』だ。

 

今作はそんな彼の一生とを描きつつ、語り部として悪名高いマネージャー「トム・パーカー大佐」が登場し、彼が今際の際でプレスリーについて回想しているという形で物語が描かれている。

特に冒頭が最も特徴的だが、パーカー大佐が今際の際で彼を回想する際。
まさに「夢現」というべきか、割と「ファンタジー」な幻想空間が描かれるなど、作風は非常にポップな雰囲気が全体的に支配している。

かと思いきや、実際のプレスリーの映像や、実際のニュース映像、オーディエンスの様子を挿入することで、リアリティのある「ドキュメンタリー」的描写もある。

 

それでいて、全体的にとっ散らかるということまなく、一本の映画として成立しているのは見事としか言いようがない。

 

さて、そんな「往年のスター」の一生を描く作品がなぜここまで多いのか。
少し考えてみたのだが、まさに「現実は小説よりも奇なり」ということになるのではないだろうか?

 

まさに、栄光あれば、転落ありという。
これがフィクションではなく、現実(もちろん脚色はある)にあったことで、それを再現している。

 

下手なフィクションなんかよりも見応えがあるし、考えさせられることが多いのだ。

 

 

そして、これらの作品で流れる歌。
それらは時代を超えて我々の耳に届いていて、何かしらのタイミングで聞いたことがある楽曲が目白押しだ。

そんな時代を超えた「楽曲」を歌ったアーティストが、どんな生涯を送ったのか?
それらを追体験する面白さ、これらの作品には確かにあるのだ。

 

 

ポイント

  • 彼らの人生が、まさに「事実よりもドラマティックである」

なぜ、今「プレスリー」なのか?

 

さて、ではなぜ「今、プレスリーなのか?」

 

もっと広げて言えば、、なぜフレディー・マーキュリー、ジュディ・ガーランド、エルトン・ジョンだったのか?

 

彼らには全て共通するのは、現代を先取りした「時代性」を象徴するエピソードがあったということだ。
性的マイノリティの問題だったり、人種差別問題など、今なお世界に渦巻く問題に彼らは密接に関係していた。

 

ではプレスリーはでは何があるのか?
まさに「彼の音楽」だ。

彼は白人でありながら、黒人音楽を白人音楽と融合させた最初の人物だった。
それはこの映画内でも描かれるのだが、まさにその点が、「今、プレスリーを描く」理由だと言える。

 

 

というのも「トランプ前大統領」以降、アメリカでは白人と黒人に溝ができた。
このような差別意識の高まりなどから、白人警察の黒人射殺などの事件がアメリカで頻発。
それに反発する形で「Black Lives Matter運動」の高まりなど、かつてないほどに「人権」が揺らいでいる時期が今なのだ。

 

プレスリーは先ほども述べたが、白人でありながら「黒人音楽を白人音楽と融合させた」第一人者だ。
しかし、それは当時は白人社会から反発を受けた。

さらに一心不乱に下半身を動かしながら歌唱するスタイルもまた黒人的だと批判され、彼は保守派から相当なバッシングを受ける様子が今作では描かれる。

 

それでも彼は自分を曲げずに貫いた。
まずはその姿を描くことで、「音楽に肌の色は関係ない」という、この時代へのメッセージになっているのだ。

 

注意

ちなみに、難しい問題だが、エルヴィスを批判する声として、彼は「黒人音楽」を盗んだという声もある。
黒人音楽を盗み、それをホワイトウォシュしているという批判もあるのは留意したい。

 

 

ポイント

  • まさに彼の音楽こそ、今に伝えるメッセージだと言える

プレスリーの生涯が丁寧に描かれる

 

さて、そろそろ本題に入るが、この作品は前述の通り、彼のマネージャーである「パーカー大佐」の視点で描かれる。

なぜ「プレスリーが亡くなったのか?」

彼がそれを我々に問いかける形で物語は進行していき、プレスリーの一生を追いかけるのが今作だ。

 

元々は貧しい家庭で生まれたプレスリーは、作中でも描かれるが黒人の子供と遊んで過ごしていた。
そこで、どんどん黒人音楽に触れていたのだが、彼にとってそれは特別なことではなかった。

当時は黒人音楽と白人音楽は棲み分けをされていて、容易に聞くことすらできないほどに差別が蔓延していた。
そんな中で彼が黒人音楽を吸収して、それを白人音楽と融合させていったのだが、彼のルーツにおいてそれは特別ではなく自然だったのだ。

 

さて、作中で何度も彼を襲うショッキングな出来事が起きる。
例えばキング牧師の暗殺、JFK暗殺など、歴史の転換点になる事件も描かれ、アメリカに暗い影が落ちる。
そんな時も彼は「歌」を力に、それも原点である黒人音楽に立ち返り、それに立ち向かう姿勢が描かていく。

 

やはりこれも現代に伝えたいメッセージとして重要なことだ。

そんな彼は次第に周囲から理解を得て、もし通りスターダムにのしあがっていく様子が丁寧に描かれていく。

 

しかし、そんな彼が栄光を手にする傍ら、どんどん失っていく様子も描かれる。
彼の一生に大きな影響を及ぼす、それがパーカー大佐だ。

ただ、これも映画を見ているとわかることだが、確かに彼は「悪影響」を及ぼすのだが、彼の尽力なしではプレスリーは世に出ることもなかった。
プレスリーにとって最悪でありながらも、必要な人物だときちんと描かれるのも特徴だ。

 

例えば、こんなグッズ販売のエピソードが印象的に作中で描かれる。
「I love Elvis」という缶バッジ。
これはファンならば買うだろうが、同時に「I hate Elvis」というアンチが買うグッズを作っていた。

 

これはファンとアンチどちらにも目配せをするという、ちょっとどうなんだ?
と思えるエピソードだが、大佐の商売への目配せは確かに、プレスリーを世界に広めるという意味で重要な役目を果たしているのだ。

 

 

さらに話は前後するが、世界的なスターであるにも関わらずプレスリーは世界ツアーなどを行わず、アメリカ・カナダでしか公演をしていない。
これは大佐が実は不法移民で一度国外に出ると、2度とアメリカの土を踏めないかもしれないからだ。

しかし、大佐は衛星放送を使って世界の都市にライブを生配信するという手法をとっていて、これは昨今の「配信ライブスタイル」のある意味先駆け的なことをしていて、この手法は功を奏し、高い視聴率を獲得した。

 

編集長
このライブの模様は「アポロ11号」の月面着陸よりも視聴率が高かった

 

このように、いかに大佐がプレスリーを利用して、儲けるのか?
その様子も丁寧に積み上げられながら描かれていく。

 

 

大佐とプレスリーの関係は複雑だ。
プレスリーにとり大佐は、心から信頼しあえる父であり、親友であり、そして最悪の人間。
何度も袂分とうとするが、切ることができない。

 

憎しみながらも、大佐から逃れることが出来なくなるのだ。
そして、プレスリーは心身ともにボロボロになりながら、薬を飲んで心も体も騙し、それでもステージに立ち続けた。
その結果彼は42歳という若さでこの世を去る。

 

 

何が彼をステージに縛りつけたのか?
作中では最後に大佐の台詞で、彼は「愛」を求めたと言った。

 

そしてその「愛」が彼を殺したと。
作品を全て見ると、さんざん利用しておいて都合のいいことを。と思うかもしれない。
しかしプレスリーが満たされたのは、結局ステージだけだったのも事実だ。

巨万の富や、愛する家族。
それら満たされるものを持っても、彼は結局ステージ上の狂乱・喝采を求めずにはいられなかったのだ。

ある意味でそれは彼にとって身を滅ぼすほど、しかし何にも変え難い「幸福」だったのだろう。

 

 

喜びも悲しも、全てが詰まったプレスリーの生涯が過不足なく描かれる今作。
当然劇場で見るのをお勧めします!

 

 

ポイント

  • 過不足なく生涯を描き切る手腕の高さに驚き
  • プレスリーの全てあ「ステージ」にしかなかったのかも知れない

今作を振り返って

ざっくり一言解説

間違いなく押さえておくべき作品!

伝記映画としておもしろい!

まとめ

 

あえて本文内では触れなかったが、プレスリーを演じる「オースティン・バトラー」
大佐を演じる「トム・ハンクス」

二人の魅力が爆発している映画なのは間違いない。

 

特にオースティン・バトラーのステージ上の所作。
正直僕は本当のエルヴィス・プレスリーに関してほぼ知識なはないが、画面上で写るその姿は、まさに「プレスリー」だと思わせるほどの説得力がある。

 

つまり本人を知らないけど、これが本人だと錯覚させられたということだ。

 

ハリウッドの「往年のスター」の伝記映画は、演者のスキルが毎回高いことも唸らされる。

ぜひ狂乱と興奮のステージシーンも当然今作最大の魅力なのでぜひ劇場でご覧いただきたい。

 

ポイント

  • 本人かと見まごうクオリティ!
  • プレスリーのことがこれ一本で抑えられる優秀な作品!

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