映画評 評論

『アントマン&ワスプ クアントマニア』〜伝説再始動〜

2023年2月26日

『アントマン&ワスプ クアントマニア』評論

『アントマン&ワスプ クアントマニア』
監督 ペイトン・リード
脚本 ジェフ・ラブネス
出演者 ポール・ラッド/ラリー・リーバー

【あらすじ】
新たな「アベンジャーズ」へ続く物語が、ついに始動。最小&最強のアベンジャーズ、アントマンは、<量子世界>に導く装置を生み出した娘キャシー達とともに、 ミクロより小さな世界へ引きずり込まれてしまう。そこで待ち受けていたのは、過去、現在、未来すべての時を操る能力を持つ、 マーベル史上最凶の敵、征服者カーン。彼がこの世界から解き放たれたら、全人類に恐るべき危機が迫る…。 アベンジャーズで最も”普通すぎる男”アントマンが、マーベル史上最大の脅威に挑むアクション超大作。

 

 

 

行き先の再設定


今作は行き先の再設定をしたことに意味がある作品だ。
マーベル・シネマティック・ユニバースの「フェイズ1・2・3」いわゆる「インフィニティ・サーガ」が完結。

その次の段階である「フェイズ4」は、作品単体では素晴らしい物もある(「ノー・ウェイ・ホーム」)が、全体像。

つまりこれらの作品が「一体どうクロスオーバーするのか?」という明確なゴールがなく走り出していた。

その上「ドラマ」での作品配信という、個人的には愚策を繰り返し、正直なところ興味が薄くなりつつあった段階だった。
しかも、今後はその「ドラマ」でのキャラがシリーズに本格参戦するということで、見ることが「マスト」な状況になりつつある。

この「フェイズ4」は「エンドゲーム」以降の世界ルールの再構築、いわば戦後処理。
それプラス、「ヒーロー」が自分とは何か?
確固たるアイデンティティを持ち合わせていない作品も多い。
つまり、これまでのフェイズに比べると「選択」「悩む」という点にフォーカスされているのも特徴だ。
「プラス」ドラマ版で「重要な情報」をされりと出したり、この「ドラマ版」も多くが「旧世代」から「新世代」へのバトンタッチの作品になっている。
つまり「顔見せ興行」にすぎないのだ。

さらに「マルチバース」の導入で、マーベルスタジオが制作した以外の、過去の「マーベル映画」も、「あり得た一つの可能性」として、今後MCUの流れに入り込んできている。
(ソニー版「スパイダーマン」など)

つまり、このフェイズから一気に「見ておくべき作品」の数が膨大に膨れ上がってしまったのだ。


先ほども言ったが、このフェイズ、基本的には「戦後処理」「ヒーローのアイデンティティ」「世代交代」「マルチバースの導入」という要素があまりにも多すぎる。
そして「明確なゴール」が提示されていないので、「何を見ているのか?」という気持ちにさせられた人も多く、脱落者を多く出してしまったのだ。

マーベルトップのケヴィン・ファイギも今後は「ドラマの数を削減」「作品公開のペースを見直す」と発言。
明らかに戦略のミスを認めたとも言える。

しかも「アントマン&ワスプ クアントマニア」から「物語は動く」とも発言。
実質フェイズ4は「何も起きない」ということを認めたのだ。

さて、ということで明らかに失速を見せたシリーズ。
ここからどう巻き返すのか?
という期待を込めてこの映画を見たんですが・・・。

やはりファイギはわかっている。
ここで再度ゴールを提示したのだ、それが「シリーズの敵」の明確化。
つまりゴールの明示だ。

元々「フェイズ5」は『ザ・マーベルズ 』から始まる予定だったが、おそらくこの『ザ・マーベルズ』は今後のながれ見せる作品に適してないということだったのだろう。
今後のシリーズのヴィラン「カーン」を出す今作から仕切り直したのは、このシリーズの新しい流れを見せたかったからであろう。

それは非常に良い判断だったと言える。

 

過去のアントマンシリーズとは、明確に別物


ただし、この作品が『アントマン』シリーズらしさがあったのか?
そこには少し不満もある。

個人的にこのシリーズは「もしかしたら身近に小さなヒーローがいるかも知れない」という身近さが魅力だった。
ただ、今作は「クアントマニア」
これは造語だが意味としては「量子」という小さなものを意味する副題がついているが、もはや「量子」とは「小さい」ことを意味する言葉だが、むしろ逆で「宇宙」のように大きな世界である、ことが描かれる。

 

つまり「規模感」はかなりデカい話だとも言える。
イコール魅力であった「身近さ」は完全に失われてしまったのは痛手だろう。
(一作目のトーマスのプラレールで戦うシーンなど、遊び心があった)

さらにシリーズとして魅力だった「ケーパーもの」という侵入という面白さも今回は描くことが出来ておらず、ここもシリーズとしては不満の残るポイントだ。


ただ、ここを少々擁護すると、元々主人公スコットは「娘」と一緒にいたい。

それを願う男だった。


だが、それは「エンドゲーム」で達成され、実は彼の最大の目的はもう遂げられている状態なのだ。

そして社会復帰も果たしている。
実は彼の当初の目的は達成されている状態ではある。
つまり深堀しようのない段階ではある。
それはそもそも「映画」として「語り代」はもうないとも言えるのだ。

 


だからこそ今作が描いたのは「幸せ」「目的」を達成したからこその「安全を取ろうとする」心理だ。
これまではなんとか家族のため「ヒーロー」的な行動をする場面もあったが、今作は「我関せず」というスタンスを貫こうとする。

だが、それでも弱気者のために結局は「立ち上がる」
つまり最終的に彼が「自発的」に「ヒーロー」になるという決断を下すという意味では、非常に良い三部作の締めくくりだったと感じた。


後、結局敵に勝てたのは、彼が「小さいから」だし「アリと話せるから」という。

ある意味で「小さい」ことで、宇宙でもトップクラスに強いカーンを倒すことができたという、ある意味で「小さい」アイデンティはきちんと描いていたのも、よかったのではないか?

 

まぁ確かにジャネットがあまりにも隠し事しすぎているところとか、最初に量子世界の機械を動かす前に説明してりゃよかったんじゃない?

ちゃんと話し合い大切なんだよ!ってことがあったりね。

ただダレンのあまりにもアホすぎる再登場など笑いどころもあって、個人的にはアントマン三部作の最後として及第点以上はあげてもいい作品だったと思います。

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