
今週も新作映画を鑑賞してまいりましたので、感想を語りたいと思います。
と言うことで、今日は本年度アカデミー賞有力と評判の『アムステルダム』
こちらを鑑賞してきましたので、作品について深堀りします!!
この作品のポイント
- 豪華キャストで魅せる作品
- 「ほぼ実話」として語られるが・・・。
目次
『アムステルダム』について
基本データ
基本データ
- 公開 2022年
- 監督・脚本デヴィッド・O・ラッセル
- 出演者 クリスチャン・ベール/マーゴット・ロビー/ジョン・デヴィッド・ワシントン 他
あらすじ
本年度アカデミー賞有力候補! デヴィッド・O・ラッセル監督が、クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントン、アニャ・テイラー=ジョイ、テイラー・スウィフト、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロら豪華キャストで贈る、愛と友情のクライム・ストーリー。
世界の歴史を変えた衝撃的な陰謀の裏側を描いた、ありえないけど“ほぼ実話”。
1930年代ニューヨーク、かつてアムステルダムで出会った3人の友人たちが ある殺人事件の容疑者となり、思いがけず全世界に渦巻く、巨大な陰謀へと巻き込まれていくことに―
公式サイトより引用
本当にあった「話」と言う体裁

話の筋自体は、よくある話
さて、この作品の物語の構造そのものは「よくある話」だ。
主人公たちがある事件の犯人扱いされてしまい、その濡れ衣を晴らすために奔走。
そして真相にたどり着く、その過程を描くのが今作だ。
さらに、その真相が実は世界を揺るがすものだったと言う。
まぁよくある、クライムサスペンスものの、ど真ん中の作劇だといえる。
さて、そんな今作だが僕なりのまず結論から言っておくと「面白い」作品だと言えるが、気になる部分も目立つ作品だったと言わせてもらいたい。
と言うことでまずはいいところから上げていこうと思う。
まず第一に画面に出てくる人全部スーパースターという「豪華キャスト映画」である点から話していきたい。
元軍人で退役し町医者のバートを演じるのはクリスチャン・ベール。
その相棒のハロルドは、ジョン・デヴィット・ワシントン。
二人とアムステルダムで出会った看護師ヴァレリーをマーゴット・ロビー。
主要三人だけで十分「すごい」メンツが揃っている。
特にこの三人のシーンはどこを切り取っても素晴らしい。
ていうか、この共演を見るだけで十分この作品を見る価値はある。
さらに脇を固めるのも名優だ。
ギル将軍役をロバート・デニーロ。
ちなみにこのギル将軍というキャラは実在したバトラー将軍をモデルにしている。
今作のエンドロールでバトラー将軍の実際の映像が流れるが、ロバート・デニーロが呼吸の間なども含めて完コピしているのは見事としかいう他ない。
さらにゾーイ・サルダナ、ラミ・マレック。
マイケル・シャノン、クリス・ロック。
ちょい役でテイラー・スウィフトを起用している。
よくもまぁ、ここまで集めた。
間違いなく今年観た映画の中で最も豪華キャスト勢揃いだった。
そのため、とにかく画面が豪華。
この共演を見るだけでも十分いおつりがるほどの作品だと言える。
史実のように語られるが・・・
さて、今作はある殺人事件の容疑者となった主人公、バートとハロルド。
二人がかつての友人ヴァレリーと共に無実を証明し、真実に迫っていく物語だ。
今作は冒頭が「ほぼ実話」という触れ込みで始まるために、「フィクション」だけど「実話なんだ」というバランスの味わいになっている。
もちろん実際の人間の名前は使わず、架空の名前が与えられているが、ほぼ実話という触れ込みのため、リアリティを持ってこの物語を観てしまう。
そういう狙いで作られた作品だ。
では現実に起きた事件とは一体何か、それを観ていこう。
この作品は「ビジネスプロット」という1930年代にアメリカで巻き起こった「政治的陰謀論」をモデルにしている。
これは引退した、元軍人のバトラー大佐(この作品ではギル将軍=ロバート・デニーロ)が1933年、下院の委員会で告発したものだ。
内容としては「富裕層」が退役した軍人を集めて、ルーズベルト大統領を倒すクーデターを計画しているというのだ。
この映画でもクライマックスの舞台こそ違えど、ギル将軍の演説がハイライトになっている。
先ほども述べたように「ほぼ実話」という触れ込みのため「これが実際にあった」と観客が思うのは無理はない。
ただ、これは歴史的に見れば「証拠」もなく「起訴」された人間が誰もいない、「もしかしたらあり得る話」として処理されたのだ。
つまり「ほぼ実話」というには、言い過ぎとも言える、むしろ歴史的な観点から見れば、それは大きなミスリードだとも言えるのだ。
そしてバトラー自身も、政治的な思想から「富裕層」を嫌っている面もあり、これはこれで色々ときな臭い話だと言えるのだ。
ちなみに映画でも「起訴」された人間がいないのだが、富裕層が逃げるのがうまい的なナレーションで済まされていて、正直「ほぼ実話」と謳うに相応しいものだったのか、疑問が残るのだ。
つまり「真偽曖昧」な歴史的な事件を「ほぼ実話」とするのに、個人的には抵抗を感じたのだ。
ただ、そこで疑問を感じたとして、処理するのではなく、なぜ「ほぼ実話」という触れ込みで作品を作ったのか?
そこを考えていきたい。
なぜ、この物語を作ったのか?
今作は富裕層が、政治家・政府よりも力を持ち支配をしている。
そして秘密裏に、とんでもない計画をしていた。
そのことに対する反撃が描かれたとも言える。
この構図、実は現代に当てはめることができる。
現代ではGAFAと呼ばれる巨大企業が、ある意味で「政府」よりも力を持っている。
例えば「Twitter社」がトランプ前大統領のアカウントを凍結したが、それにより「一国の大統領」の発言権を、一企業が奪ったとも言えるのだ。
(もちろん、過激な発言を取り除きたいという意志は理解できる)
「Twitter」は現代では、ただのSNSの枠を超え、それこそ「世間」に対する発言の場として、影響を多大に有している。
その「場」を奪うことは、ある意味で公の発言の場を奪っている、それも一国の大統領の場を。
ある意味でこれは「一つの巨大企業」が、ある意味で「政治」を動かしているとも言えるのだ。
それは他のSNSやGoogle・Appleなどもそうだ。
例えばAppleが「日本でiPhoneを販売しない」とすれば、それは「一つの商品を売らない」という意味以上の影響が出る。
Googleもそう、もしも「グーグルマップ」を配信しません。
となれば、どれほどに影響が出るのか?
これも「一つのサービスの停止」以上の意味を持っている。
いつか、語った「映像配信」もそうだ。
「Netflix」「ディズニー」などが「有害」と判断した映像作品の配信を停止すれば、見れなくなる。
一つの企業のジャッジで、世界中に影響が出るのだ。
つまり、この『アムステルダム』の作中の世界の構図は、そっくり現代にも当てはめることが出来る。
そこに対しての「警鐘」という意味合いで「ほぼ実話」として語ったとすれば、それには一定の理解はできるし、狙いもよくわかる。
そういう意味では「ほぼ実話」とは言い得て妙なラインをついてきたなと言えるのではないか。
気になるところも・・・。
ただ、映画としてはやはり気になる点も多い。
先ほど豪華キャストを褒めたが、やはり彼らの出番のための段取りが多く、そこで映画が鈍重になる傾向にある。
見せ場のための時間が存在する点が全体を通して気になったのは否めない。
また、この手の作品は、主人公たちが無実を証明する。
そして真相を暴くシーンこそがハイライトになるはずだ。
だがこの作品ではそこがあっさりとしすぎていて、何ならセリフで片付けられているのが、すごく気になってしまった。
例えば警察が謝罪するとか、そこで協力を申し出るとか、色々あったろうに。
そういうのも無く、いきなり強力しているところがすごく勿体無い気がした。
とにかく、両手を上げて「傑作」です、とは言えない。
個人的には問題点も目立つ映画だったと言える。
まとめ
まとめ
- 豪華キャストの演技を見るだけで楽しい!
- 「ほぼ実話」としたことに意味がある、現代社会を読み解くことができる作品だ!
- ただし、映画としてうまくない点も目立つ、もう少しタイトに作るべき!